■AIを活用した救急医療支援システム
by Intel Free Press(画像:Creative Commons)
(2017/1/18、日経デジタルヘルス)
救急車から患者の問診結果やバイタルの情報がAIに送信されると、患者の状態を解析し、受け入れ医療機関の選定結果を返信。同時に患者の状態は受け入れ施設に送信される。それにより救急車到着前に必要な情報などを医師が把握できる。
東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座の高尾洋之准教授のプロジェクトとは、スマホアプリ「Join」とAIを活用し、救急搬送中の患者のデータ(問診結果・バイタル)を解析し、トリアージ(患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決めて、限られた医療資源をどう振り分けるかを決める)を実施し、受け入れ医療機関を選定する仕組みを作ることにより、情報を共有し、治療開始までの時間を短縮することで、救命率の向上や後遺症の軽減を目指すというものです。
AEDを使った措置を受けた後、社会復帰をした患者が8年間で30倍以上に増えた|京都大健康科学センターで紹介した京都大健康科学センターの石見拓教授らの研究グループの調査によれば、AEDを使った措置を受けた後、社会復帰をした患者が8年間で30倍以上に増えたことが分かったそうです。
AED 市民救命で社会復帰2倍 京大、心停止患者調査(2010/3/19)で紹介した京都大保健管理センターの石見拓助教と大学院生の北村哲久さんらのグループによれば、一般市民によるAEDによる除細動を受けた人(心室細動が起こってAEDが必要になった患者)の社会復帰率は全体の2倍だったそうです。
いかに早く救命措置を行うことがその後の社会復帰に関係するという調査結果が出ているので、いかに治療開始までの時間を短縮するか、そして、その情報を共有するかは重要だと思います。
Joinは複数の医療関係者間でコミュニケーションを取るためのアプリ。スマホでリアルタイムに会話ができるチャット機能を持ち、X線CTやMRIなどの医用画像、心電図や手術室内の映像も共有できる。
例えば、脳梗塞の場合、脳梗塞の治療は血栓を溶かす薬「t-PA」と「血栓回収療法」で劇的に改善されている!によれば、発症後4.5時間以内に「t-PA(tissue plasminogen activator:組織プラスミノーゲン活性化因子)」の治療を行なったり、発症から8時間まで血栓回収療法を行なえば、後遺症の程度を軽減することが可能なのですが、こうした迅速な判断が求められる場面で役立つことが期待されるのが、複数の医療関係者間でコミュニケーションをとることによって、チーム医療を支援する「Join」なのだそうです。
さらに、高尾准教授は、チーム医療を支援する「Join」と救急搬送時の患者への問診を行うアプリとAIを組み合わせた「Cloud ER」という仕組みを考えているそうです。
もう搬送先を迷わない!「Cloud ER」実証研究 慈恵医大など4団体、AIが搬送の要否や搬送先を「判断」
(2017/2/3、m3.com)
まず搬送要請を受けた救急隊員が、リストバンド型のウエアラブルデバイスを患者に装着。これは、カフがなくても、血圧、脈拍、体温、心電図などを測定できる端末だ。5~8問程度の簡単な問診や観察で得た情報も合わせて、スマートフォンで、クラウドサーバーに情報を転送する。AI(人工知能)が患者の容体情報と近隣医療機関の情報を基に総合的に判断して、適切な受入医療機関を選定。搬送中の患者情報も受入医療機関の救急医や専門医に対してリアルタイムに送ることで、救急隊員はコンサルティングを受けながら救急車内で応急処置できる一方、受入病院は、受入準備や患者転送にも柔軟に対応できる。
腕時計型端末が異常を検知した時に、緊急時に職員を急行させたり、救急車を手配する新見守りサービス「セコム・ホームセキュリティNEO」によれば、セコムは、高齢者らが急病で倒れたことなどを検知する腕時計型の端末「セコム・マイドクターウォッチ」を開発し、端末が異常を検知したときには、緊急時に職員を急行させたり、救急車を手配するなどの新サービスを2017年夏に始める計画なのだそうですが、「Cloud ER」という仕組みは、倒れた後の先を支えるサービスといえそうです。
「Cloud ER」の仕組みとは、患者に血圧や脈拍、心電図などのバイタルサインを測定するリストバンド型のウェアラブルデバイスをつけて、問診や観察で得たデータを解析し、受け入れ医療機関を選定を行ない、同時に救急車内での応急処置の指導もできるというものです。
この仕組みは素晴らしいアイデアだと思いますので、さらに幅広く利用してもらうために、この仕組みをオープンにして、多くの企業が乗り入れやすいものにすることが大事だと思います。
■まとめ
医療・健康分野におけるICT化の今後の方向性(平成25年12月、厚生労働省)によれば、
健康寿命を延伸するためには、ICTを利用した個人による日常的な健康管理が重要
だと書かれています。
ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー:情報通信技術)の略です。
ICT医療においては、ICTを活用した個人の健康管理がスタートであり、カギとなります。
例えば、ヘルスケア分野でIOTを活用する実証実験開始|IOTで市民の健康データを取得し、新サービス創出、雇用創出、生活習慣病の予防を目指す|会津若松市によれば、スマホアプリやウェアラブルデバイスなどから取得した市民の様々な健康データを集約し、オープンデータ化し、そのデータを活用して新サービスの創出、医療費の削減などを目指していくそうです。
この実証実験でもスタートとなっているのは、スマホアプリやウェアラブルデバイスなどから生体データを取得することです。
つまり、予防医療を行なっていくためには、ウェアラブルデバイスをさらに普及していく必要があるわけです。
救命率が向上する「Cloud ER」の仕組みをウェアラブルデバイスを開発している企業が取り入れやすく情報をオープンにすれば、ウェアラブルデバイスの普及につながっていくのではないでしょうか?
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