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「完全栄養食(パーフェクトフード・完全食)」に成長性はある?ない?キーワードは高齢者の低栄養・健康寿命・食糧問題!




2019年5月13日放送の「あさチャン」でパーフェクトフードの特集がありました。

■「完全栄養食(完全食)」に成長性はある?ない?キーワードは高齢者の低栄養・健康寿命・食糧問題!

以前のブログで日清食品のAll-in PASTA(完全栄養食のパスタ)について取り上げましたが、「完全栄養食(完全食)」の成長性はあるのかどうか考えてみたいと思います。

完全栄養食(完全食)として注目しているのは、日清食品(All-in PASTA)、BASE FOOD(BASE PASTA/BASE RAMEN/BASE BREAD)、COMP(パウダータイプ/グミ/ドリンクタイプ)です。

日清食品(All-in PASTA)のページを見ると、アレンジレシピの提案だけでなく、麺とソースがカップにセットされお湯をかけるだけで簡単に調理ができるカップパスタセットもあることから、忙しい現代人でランチ難民だけど、栄養はしっかりと摂りたい人をターゲットにしていると考えられます。

BASE FOOD(BASE PASTA/BASE RAMEN/BASE BREAD)は、パスタ・ラーメン・パンと完全栄養食の横展開していることから、一つの食品の用途ではなく、バリエーションを持つことで完全栄養食の幅を広げようとしていると考えられます。

COMP(パウダータイプ/グミ/ドリンクタイプ)は、ビジネスマンやエンジニア、クリエイター、ゲーマーなど仕事で忙しい、趣味に没頭したいけど、栄養バランスの悪さも気になる(食の楽しみを求めるタイプではない)方をターゲットにしていることが考えられます。

■完全栄養食、4つのターゲットへのアプローチ

完全栄養食については4つのターゲットへのアプローチが考えられます。

1)偏食や子供の肥満、ヤセの問題などを栄養バランスを整えることを完全栄養食によって解決する

【クローズアップ現代(NHK)】女性の痩せすぎ問題|痩せ過ぎと低体重児・モデルのヤセ過ぎ問題20代女性の5人に一人が「やせ」|摂取カロリーは終戦直後よりも少なくなっている!?によれば、20代女性の5人に一人が「やせ(BMI18.5未満)」という状態であるそうです。

また、2013年の20代女性の平均エネルギー摂取量は、終戦直後よりも少ないそうです。

2)忙しい現代人のための栄養補給

アメリカ人の朝食をとる時間は平均で一日12分に減っている!?によれば、アメリカ人の朝食をとる時間は平均で一日12分までに減っているそうで、これは、昼食や夕食に費やす時間の約半分なのだそうです。

これは、母親が仕事を持つようになるといった変化によるもので、それだけではなく、子供を預けたり学校に送るといったことでさらに忙しくなっていることが関係しているようです。

アメリカ人の食生活が1日3食からスナック(軽食)を頻繁に食べる食習慣に移行している!?という記事を紹介しましたが、あまりにもみんなが忙しすぎて軽食を頻繁に食べる食習慣に移るというのもわかる気がします。

完全栄養食がその軽食(スナック)の中に入ることで栄養バランスを整えるということも考えられます。

3)どうしても食事の量が減ってしまって栄養のバランスがとりづらくなってしまった高齢者を助ける

要介護者の4割が低栄養傾向|家族の7割は「低栄養」の意味知らないで紹介した日清オイリオグループが60歳以上の要介護者(要介護度1~3)を在宅で介護しており、介護食を作っている100名を対象に実施した「低栄養に関する実態調査」によれば、要介護者の4割が低栄養傾向にあることがわかったそうです。

これまでにも要介護者の中にはたんぱく質が不足する低栄養の人が多いということを紹介してきました。

適切な食物摂取ができず、栄養状態が悪化していることを「低栄養」と呼びます。

低栄養になると、免疫が低下したり、筋肉が減少したり、骨が弱くなったりすることで、感染症に掛かりやすくなったり、骨折するおそれが高くなるようです。

今回紹介した厚生労働省のまとめによれば、高齢者はたんぱく質の摂取量が少ないと、フレイルティの出現リスクが増加するそうです。

なぜ高齢者になるとタンパク質が不足しがちなのでしょうか?

肉料理が苦手だったり、以前は、家族のために栄養を考えて、肉や卵などを使って料理をしていた人が、一人暮らしになってから、自分が好きなものだけを食べることで食が偏るようになって、肉や卵を使った料理を食べなくなってしまったり、食事の量自体が減ってしまったり、中高年の頃からのメタボ対策のための粗食を継続してしまったりすることで、たんぱく質が不足してしまうということがあるようです。

食品3Dプリンタで見た目も食感も楽しい介護食の開発|山形大学で紹介した山形大学工学部は食べ物を噛む力や飲み込む力が弱くなった人にも、食べ物の形や食感を楽しんでもらおうと3Dプリンタで作った介護食の開発に取り組んでいるそうです。

従来の高齢者向けの食べ物を小さく刻んだ「きざみ食」、ミキサーにかけてドロドロにした「ミキサー食」は見た目が悪く、またまとまりが悪いために帰って誤嚥を引き起こしやすいものであるという問題があります。

現在山形大学で開発されている3Dプリンタで作った介護食が完全栄養食であれば、栄養不足の高齢者を助けることができるでしょう。

4)食糧問題を解決する手段(爆発的に増加している人口を支えていけるだけの食料を作り出すことは不可能だと考えられている)

食料問題を解決する2つのアプローチ|「90億人の食」をどう生み出すか?|Farmbotが農業の問題を解決する!?によれば、日本だけを見れば高齢化社会であり人口が減少していっている国なのですが、世界的に見れば、世界人口は増え続けています。

記事によれば、2050年までに世界の人口は70億人から90億人に拡大すると予想されています。

そこで、将来必ず起こりうる問題が「食糧問題」です。

その問題をいろんな食品で解決しようとアプローチがなされているようです。

その解決策の一つして考えられているのが「完全栄養食」です。

■完全栄養食で考えておくこと

●暇になる時代に忙しい現代人の栄養補給を助ける完全栄養食の存在価値とは?

僕はインスタやFacebookがそろそろ終わると思っている|国光宏尚 gumi (Hiro Kunimitsu)|note(ノート)によれば、AI時代になると、モノを作る作業は人間がやる必要がなくなり、暇になるという仮説が立てられています。

つまり、完全栄養食のアプローチの中には、忙しい現代人の栄養補給を助ける一面がありますが、この仮説が正しければ、この分野での成長率はAI時代の浸透に伴って低くなることが考えられます。

時間が豊かになることで食事をより豊かな方向に求める人が増える可能性があるでしょう。(食糧問題を抜きにしておきます)

●食事には栄養を摂る以外の機能があること

もう一つ考えておくことは、食事には栄養を摂るという機能しかないのかという点です。

食事が不要になる完全栄養食「ソイレント(SOYLENT)」とは?|ソイレントだけを30日間飲み続けたらどうなるか?【動画】

Soylent: How I Stopped Eating for 30 Days

この動画では「ソイレント」だけで30日間生活するという実験を行なったところ、他のものが食べられないというストレスのほかは肉体的には健康に異常は見られなかったそうです。

しかし、本当に栄養だけがとれればいいのでしょうか?

「ソイレント」だけで30日間生活するという実験を行なった男性の健康診断を行った医師によれば、食事は単に栄養を補うだけでなく、人に喜びを与え、社交性を保つものであるとコメントしています。

介護に携わる方に話を聞いた際に驚いたのは、「食べる」という行為が人間にとっての喜びにつながっているという視点です。

高齢者の介護では3分炊き、5分炊きといったように介助レベルに応じて食事を作り、提供するのですが、本当に食事が難しくなると、おかゆの液体部分をすくったようなものを食事として提供するそうです。

そこまでいくと、腹部に穴を開けて胃に直接水分や栄養を送る「胃ろう」を選択してはどうかと考えることもあるそうです。

ただ、大事なのは、食事における噛んだり、飲み込んだりすることの大事さであり、そのことが食べることへの喜びにつながるため、その選択をするのは難しいとのことでした。

【参考リンク】

食事は香りで楽しみ、見て楽しみ、食べて楽しむことのできる一種のエンターテイメントであり、また、コミュニケーションを円滑にするためのツールでもあります。

●そもそも美味しいのか?

そもそも美味しくないと、食を入れ替えるという判断にはなりづらいですね。

BASE FOODがBASE PASTAをリニューアルした理由も一つはおいしくなかったからなのでしょうし、代替肉のBEYOND MEATが注目されているのも「美味しいから」という前提条件があるからです。

■まとめ

完全栄養食市場は、高齢者の低栄養の問題を解決する手段として、健康寿命を延ばす対策の解決手段として、そして、食糧問題を救う一つのアイデアとして魅力的な市場です!

食事の持つエンターテインメントの一面やコミュニケーションを円滑にするためのツールとしての一面を大事にしたところが完全栄養食のトップになるのではないでしょうか?

【追記(2019/7/10)】

「フードテック領域に料理人がほとんどいない」と書かれているnoteがありましたが、やはり前提条件として「そもそも美味しい」がなければ、新しい食・サービスに移行していかないはずです。

完全栄養食を含めたフードテック領域に料理人が活躍することが市場を広げるために欠かせないのではないでしょうか?







完全栄養食だけ生活を6年続けた男性の健康状態とは?




「食事は効率が悪い」 “完全食だけ生活”を6年続ける男性、健康診断は「1個だけC」 管理栄養士に聞くメリ・デメと+αすべき食品(2024/4/24、ABEMA TIMES)では、一日2回ドリンクタイプの完全食とプロテインを混ぜたものを摂取する生活を6年間続けている笠原元輝さん(35)さんの健康状態とその食生活のメリット・デメリットが紹介されています。

健康診断の結果、脂肪が少なすぎたことにより「中性脂肪がC」という結果が出ていますが、現時点では体に異常は見られないようです。

管理栄養士の方によれば、完全栄養食だけの食生活のデメリットとして「咀嚼をしていないこと」が挙げられています。

○人間は唾液を出して咀嚼をすることで胃腸が刺激されて消化吸収が進むのですが、咀嚼をしていないことによって、栄養が消化吸収されていない可能性がある(タンパク質→アミノ酸、炭水化物→糖質のように分解されないと吸収されない)のではないか?

噛む(咀嚼)ことによる3つの健康効果によれば、唾液には消化吸収を助ける成分が含まれていて、噛んだ回数に比例して唾液は分泌されるそうです。

つまり、咀嚼していないことによって消化吸収をされていない可能性があるというわけですね。

○咀嚼には顔の筋肉と骨にも効果がある。骨粗しょう症が顔面に起こると皮膚が寄り、しわやたるみの原因になってくる。

スクレロスチンの値を下げて骨量を増やし骨粗鬆症を予防する方法で紹介した骨が作り替えられるメカニズムについて簡単に説明すると、骨は、新しく強い骨を維持することで疲労骨折などを防ぐために、常に作り替えられていて、大人では3~5年で全身の骨が入れ替わっているそうです。

骨の中には、骨を作る「骨芽細胞(こつがさいぼう)」と骨を壊す「破骨細胞(はこつさいぼう)」があり、この2つの細胞が骨の作り替えを行なっているそうです。

作り替えのペースを指示するのが「骨細胞」であり、「骨細胞」が骨を作る・骨を壊すという「メッセージ物質」によって作り替えの指示を行なっているのですが、作り替えのバランスが崩れると骨粗鬆症を起こしてしまいます。

骨細胞には骨にかかる衝撃を感知するという働きを持っており、その衝撃があるかないかによって、骨を作るペースを決めているそうです。

骨に衝撃がかからない生活をすると、骨を作らないでよいと考えてしまい、骨細胞が「スクレロスチン」を大発生させることによって、骨芽細胞の数を減らし、骨を作ることを休んでしまい、骨量が減ってしまうのです。

骨に衝撃がかからない生活というのは、運動をしないで一日中座っているような生活です。

この話を顔に置き換えてみると、咀嚼をしないこと=骨に衝撃がかからない生活をしているということに入るのだとしたら、影響も少しあるのかもしれませんね。

ただ、【ガッテン】血糖値を下げる!オステオカルシン(骨ホルモン)を増やす「かかと落とし」のやり方|オステオカインが全身の臓器を制御しているによれば、骨には神経細胞のネットワークのように刺激が伝わる性質があるため、刺激が体の骨全体に伝わるため、日ごろから運土をしていればその点はカバーできるのではないでしょうか?

むしろ気になるのは、噛む(咀嚼)ことによる3つの健康効果でも紹介した咀嚼には脳への刺激を増やす働きがあり、よくかむことで、脳の血流がよくなって、記憶力や集中力も高まるそうですが、咀嚼をしないことにより、脳への血流への影響はどう表れるかの方が気になるところです。

■完全栄養食にプラスするとよい食品

管理栄養士の方によれば、完全食は加工品で菌が入りにくいため、善玉菌を摂らないと腸内環境が悪くなるので、発酵食品を摂るのがおススメなのだそうです。

■まとめ

今回の記事のポイントは「咀嚼」がどれくらい体にとって必要かを問うているところです。

完全栄養食で栄養を取り入れているようでいて、実は咀嚼をしないことにより体に消化吸収されていないのではないかというのは重要な視点でした。

咀嚼をしない生活によって体にどんな影響が現れるのか、それとも現れないのかは気になるところです。

食事が不要になる完全栄養食「ソイレント(soylent)」とは?|ソイレントだけを30日間飲み続けたらどうなるか?【動画】では、「ソイレント」という完全栄養食だけで30日間生活するという実験を行なったところ、他のものが食べられないというストレスのほかは肉体的には健康に異常は見られなかったそうです。

ただ食事には栄養を摂取するということ以外に別の側面があります。

「ソイレント」だけで30日間生活するという実験を行なった男性の健康診断を行った医師によれば、食事は単に栄養を補うだけでなく、人に喜びを与え、社交性を保つものであるとコメントしています。

介護に携わる方に話を聞いた際に驚いたのは、「食べる」という行為が人間にとっての喜びにつながっているという視点です。

高齢者の介護では3分炊き、5分炊きといったように介助レベルに応じて食事を作り、提供するのですが、本当に食事が難しくなると、おかゆの液体部分をすくったようなものを食事として提供するそうです。

そこまでいくと、腹部に穴を開けて胃に直接水分や栄養を送る「胃ろう」を選択してはどうかと考えることもあるそうです。

ただ、大事なのは、食事における噛んだり、飲み込んだりすることの大事さであり、そのことが食べることへの喜びにつながるため、その選択をするのは難しいとのことでした。

【参考リンク】

食事は香りで楽しみ、見て楽しみ、食べて楽しむことのできる一種のエンターテイメントであり、また、コミュニケーションを円滑にするためのツールでもあります。

今回紹介した方は元々食を通じた喜びに関心がないようでしたので当てはまりませんが、食を通じて人とつながっていくというのは面白いものだと個人的には思います。