「小売」タグアーカイブ

【レビュー】「小売再生-リアル店舗はメディアになる」を読んで、”小売りの未来”を考える!




【目次】

■【レビュー】「小売再生」を読んで、”小売りの未来”を考える!

長崎島原手延べえごまそばを販売するハクライドウはお店での試食販売をおこなうポップアップストア(ポップアップショップ)を開催しています。

→ えごまそば・はちみつポップアップストアを開催しました!(生産者市場マルカズ)|9月29日

そこで、どんな風にしたら小売店舗を応援することができるのかなと考えているのですが、そのヒントを探ろうと「小売再生-リアル店舗はメディアになる」(著:ダグ・スティーブンス)を読んでみました。

小売再生リアル店舗はメディアになる【電子書籍】[ ダグ・スティーブンス ]

価格:1,944円
(2018/10/1 18:24時点)
感想(0件)

ネット通販事業者だろうと、5000店の実店舗を擁する小売チェーンだろうと、行く手には、今日の小売とは似ても似つかない未来が待ち構えている。今後、何十年か先には、店という概念も、消費者のショッピングのあり方も、小売のビジネスモデルさえもがらりと変わる。小売が根底からつくり直されようとしているのだ。

小売に携わっている人で、この文章を読んでピンとくる人と、全く何を言っているのかわからないという人とでは大きな差が生まれるんじゃないかと感じています。

もうすでにその兆しが現れています。

一つはアマゾンの動きです。

Amazon、「予測出荷」の特許を取得 ― 注文される前に商品を出荷(2014/1/20、TechCrunch)によれば、アマゾンの特許に関するニュースで、購入者が何を買うかを、実際に買う前に予測して配達時間を短縮するシステムがありました。

こんなアイデアバカげていると思う人もいるでしょうが、予測出荷しなかったとしても、Amazon Dash Buttonのようにポチっとするだけで注文が完了したりするアイデアもありますし、また、IoTを活用して重量や使う回数から判断してレコメンドするアイデアが出てきてもおかしくありません。

アマゾンは注文におけるステップを減らそう、減らそうとしていて、最終的にそのステップをゼロにした場合、商品を新しいものにスイッチングする(変える)機会がなくなってしまうわけですから、小売店舗ではモノを売ることができなくなります。

このことは、メーカーのマーケティング担当者にとっても恐ろしいニュースとなることでしょう。

つまり、アマゾンは、アマゾンさえあれば日用品の買い物が済んでしまう未来を考えているのであり、品揃えしている商品数が世界一多くて、当日配達で、商品を選ぶことさえもなくしてしまったとしたら、現在存在する従来型のほとんどの小売店舗は必要がなくなり、姿を消してしまうでしょう。

もう一つは新リテールの時代の到来の予感です。

これからはEC(Eコマース)がなくなり、全ての小売がインターネットと結合する「ニューリテール」の時代が到来するというのがアリババのジャック・マーの言葉です。

現在、リテール各社はネットからリアル店舗への進出を行ない、「オンラインとオフラインの融合(Online merge Offline)」という動きが始まっています。

なぜネットから実店舗へと動き始めているのでしょうか?

理由としては、顧客のショッピングにおけるデータを知り、その情報をフィードバックして、次に生かすこと、そして、ユーザーと交流する機会を増やすことで、信頼感を得ること、体験型マーケティングをすることでしょう。

すでに旅行の際のお土産屋さんではニューリテールの兆しが見られます。

旅行先ではお土産物を買わずに自宅に帰ってから購入するという動きが始まっているのです。

その理由としては、あるお土産屋さんで購入した土産品が別のお店でもっと安く売られているとショックを受ける、お土産物は重くてかさばるからです。

お土産物屋さんは、ニューリテールの時代を感じていないと、旅行客は試食だけを行なってしまって購入されないということが起こりうるのであり、そのためにも、自宅に帰った後、ECサイトでの購入を促す仕組みを早急に作り上げる必要があります。

■美団点評のケース

「美団点評」はフードデリバリー事業のケースですが、このケースを大きく小売りと捉えると、全ての消費データを基にして新しいサービスを作り、リリース後にアンケート調査やSNSでの反応、実際の利用データを収集しフィードバックして、サービスをブラッシュアップするということが標準になっていくことでしょう。

コロナ以降ではその傾向が顕著に表れてくるでしょう。

■中国の農村ライブコマースのケース

【関連記事】

■小売店舗はどうなっていく必要があるのか?

ショッピングのあり方が変わる時代に小売店舗はどう変化していけばいいのでしょうか?

「お客様にとって必要なものをメーカーと開発する」

これも一つの答えでしょうが、モノがあふれる時代に一つのものが消えたとしても消費者はそもそも気づかないかもしれません。

だってAmazonの陳列棚から一つの商品が消えたとしても、気づかない人がほとんどではないでしょうか。

気づくとしたら、希少価値のあるもの、もしくは昔ながらの記憶を思い起こさせるような愛着のあるもの。

小売店舗が提供するものとして考えられる答えは「体験」です。

印象に残る体験を生み出す小売業者になることです。

「小売再生」には今の小売店舗のことを

「これまでの店は商品が集まる場であり、有体に言えば、見てくれのいい倉庫のようなものだった」

と書かれています。

小売店舗側が一生懸命努力して選び抜いた商品が並べられていたとしても、その思い入れを感じされるものがなければ消費者にとっては同じモノです。

では体験といっても、どのようなものを提供すればよいのでしょうか?

2018年9月29日放送の「ズームインサタデー(ズムサタ)」でキャンプ特集が取り上げられました。

そこには、キャンプを楽しむ人たちの姿がありました。

キャンパーがどんな気持ちでそのグッズを使っているのかを見ているとキャンプをしたくなりました。

これが「体験」のヒントです。

ただキャンプ用品を並べられていても「キャンプ用品が並べられているな」としか思いませんが、キャンプを心の底から楽しんでいる姿を見ると、参加してみたいなと思わせてくれます。

そして、「小売再生」にはこのようなことが書かれています。

入場チケットを払ってでもその小売店舗に行きたいか?

小売店舗はモノを売るところではなく、体験・エンターテイメントを提供する場となっていくのです。

■まとめ

この変化は小売店舗にとどまるものではないと思います。

卸売業、広告メディア、メーカーにも大きな影響が出てくるでしょう。

今まで人気だった小売店舗が急激な変化についていけずに、納入する業者に大きな打撃を与えるでしょう。

店舗がメディアになる時代に広告代理店やメディアを運営する企業も店舗を作る必要になるでしょう。

小売店舗で得られる消費者のデータをメーカーに販売する時代になるでしょう。

つまり、この本は「小売店舗」に限らず、ショッピングに関わる全ての人が読むべき本だと思います。

書籍はこちら↓

小売再生 リアル店舗はメディアになる [ ダグ・スティーブンス ]

価格:1,944円
(2018/10/1 18:35時点)
感想(0件)

電子書籍はこちら↓

小売再生リアル店舗はメディアになる【電子書籍】[ ダグ・スティーブンス ]

価格:1,944円
(2018/10/1 18:36時点)
感想(0件)







■ニューリテールの兆しとなるツイート

ショッピングにおいて、Googleで検索するよりも、Amazonや楽天といったショッピングサイトで検索したほうが早いので、ショッピング分野においてGoogleが必要なくなってしまう未来だって考えられます。

移動手段のない高齢の買い物難民が増える時代には、買い物客をお店に連れてくる仕組みを作り上げたり、お店自体が移動していくことが必要になるでしょう。

クラシルと10Xが小売のDX/ネットスーパーの立ち上げ事業でバチバチ!




クラシルと10Xが小売のDX/ネットスーパーの立ち上げ事業でバチバチ
クラシルと10Xが小売のDX/ネットスーパーの立ち上げ事業でバチバチ

Boxed Water|unsplash

■クラシルと10Xが小売のDX/ネットスーパーの立ち上げ事業でバチバチ

クラシルが小売事業者のDXの支援を主目的として、初期費用無料、システム開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能なサービス「クラシルリテールプラットフォーム」の提供を開始しました。

この事業は10Xの開発不要でネットスーパーを立ち上げ可能な 「Stailer(ステイラー)」と競合するため、クラシルと10Xがバチバチにやりあってると話題です。

ただ、市場の健全な成長には共創/競争が欠かせないですよね。

特にあまりにも市場が大きく、また難易度も高いため、多くの企業が参入することにより、英知が結集した結果、生鮮食品ECが大きく進化していくことが期待されます。

■クラシル

■10X

■クックパッド

買い物機能は、地域の生産者や市場直送の食材を1品から送料無料で購入いただけます。購入した商品は、出荷した当日に新鮮な状態のまま、地域に設置された生鮮宅配ボックス「マートステーション」へお届けいたします。自分の選んだマートステーションに帰宅途中に立ち寄って商品を受け取れるため、仕事帰りにスーパーに寄る時間のない方や、買い物をする時間がない方でも便利にご利用いただけます。

各地域に設置された共同集荷所へ近隣の生産者が商品を出荷、その日の夕方には各地のマートステーションまで配送されるため、地域の食材を高い鮮度を保ったままお届けすることができます。提供地域ごとに独立した自立分散型の流通とすることで、その地域の生産者の食材を周辺の消費者へ販売、地産地消を推進していくことが可能です。

現在、総戸数100戸以上のマンションの居住者からマートステーションの設置のリクエストを受け付けています。設置費用は無料で、マンションの共用部にマートステーションを設置することで、居住者は事前にアプリから注文した商品を、一品から送料無料で受け取ることができるようになります。また、管理組合・管理会社向けにも、オンラインでの設置お申し込み・お問い合わせ・資料請求を随時受け付けています。

設置に伴う初期費用・毎月の運用費用・電気代は一切かかりません。設置工事も不要で、電源のある屋内であれば、どこでも設置可能です。また、居住者のみ利用可能にするセキュリティコードや、購入者のみがQRコードでの解錠できるシステムにより、セキュリティについても安心してご利用いただけます。マートステーションは、お申し込みから3週間〜1ヶ月程度で導入可能です。

コンビニエンスストアをはじめ、ドラッグストア、コインランドリー、カラオケボックスなど、設置可能なスペースがある小売店舗にマートステーションを設置いただいております。受け取り場所になることで、店舗や施設を普段利用していない利用者の来店や、飲料やその他日用品の“ついで買い”が期待できます。また店舗や施設のスタッフの福利厚生、地域の活性化にも効果的です。

■まとめ

1.メディアが小売り事業を行なう時代に!

レシピサイト(レシピ動画を含む)と電子チラシを押さえることにより、消費者が購入するものがわかるようになり、ネットスーパーは仕入れ予測の精度が向上し、廃棄ロスも減少することでしょう。

また、消費者がどんな料理を作っているのかというデータは生産者やメーカーにとってはすごい価値を持っているわけですが、レシピサイトのデータを活用した新商品開発も行われるようになり、そのことが売れ筋商品の予測や廃棄ロスの減少にもつながることが考えられます。

【レビュー】「小売再生-リアル店舗はメディアになる」を読んで、”小売りの未来”を考える!では、店舗がメディアになる時代に広告代理店やメディアを運営する企業も店舗を作るようになり、小売店舗で得られる消費者のデータをメーカーに販売する時代になると書きましたが、実際にそうなってきましたね。

2.ビフォアデジタル or アフターデジタル

気になるのはレガシーシステムをそのまま活かしながらネットスーパーを作り上げることが本当にいいのかという点です。

現場にいるわけではないのですが、ECを小さいながらやっている立場から見ても、毎日変化する商品にどう対応していくのでしょうか?

以前「アフターデジタル」を読んだ際に感じたのですが、レガシーシステムをそのまま活かしながらネットスーパーを作り上げるということが、ビフォアデジタル的な考えのまま外から見える構造をコピーしがちになるということにならないのかどうか気になっています。

「小売りのDX」を実現するうえでデジタルを基盤とする必要はないのでしょうか?

もしこれがビフォアデジタル的な発想で行われるのあれば、難航していた『MOTHER2』の開発を立て直すべく現場に現れた岩田聡さんの有名なセリフがぴったり当てはまると思います。

デジタルを基盤として、リアル(レガシーシステム)を内包するようなものを作り上げる形は様々な批判があるでしょう。

ただ、数年先から見通すとあの時やっておいてよかったとなるはずです。

このまま進んでいくのであれば、数年後におそらく息詰まることになるでしょうから、その時にもこの岩田さんの言葉がグッとくることになるでしょう。

あの時試行錯誤した時間があったからこそ動いたのであって、決して無駄ではなく、悩んだ人たちの試行錯誤は全てネットスーパーの中に生きているということになると思います。

3.レシピサイトのレシピ提案と電子チラシによるレコメンド機能は強烈!

アマゾンが目指す未来を予想すると、amazon dash button と以前取得した特許(いつもこのぐらいのペースで注文しているから送っときました(予測発注))から見える未来は、変える必要がない必需品は自動的に送られてくる未来です。

あまりに忙しすぎる現代の人にとっては考える必要もなく、購入する必要もないため、うれしい未来かもしれません。

ただ、この未来を別の視点から見ると、ブランドをスイッチする機会をなくしてしまう未来です。

アマゾンが自動的に変える必要がない必需品を送り届ける未来は消費者にとっては楽な未来であったとしても、マーケティング担当者にとっては怖い未来かもしれません。

それは消費者がブランドをスイッチングする余地がない未来なのですから。

そう考えると、ブランド側としては、新商品を作り出して新しいカテゴリを作り上げ、アマゾンの中で最も利用される必需品になるか、アマゾン以外のところで消費者から求められる商品を作るか、について考えていく必要があります。

しかし、今はそれも難しい時代です。

モノと情報が余っている時代となっているからです。

例えば、アマゾンのレコメンドを見たことがある人はわかるでしょうが、この中からある一つの商品がなくなっても気づくことはないでしょう。

また今は情報が多すぎて処理できないほどの情報量であり、人々は情報自体には価値を感じなくなっていくでしょう。

モノと情報が余っている時代において、小さな個人や企業は変える必要がない必需品以外で消費者から求められる商品は何なのかを考えていかなければなりません。

一つのヒントはPinterestです。

Pinterestの月間アクティブユーザー数が4億人を超えた!自社のアイテムを投稿し売上増に繋げる企業が増加

ピンタレスのユーザーの97%がブランド検索をしないということは、小さな企業にとっては大きなビジネスチャンスです。

実際にそうしたビジネスチャンスをつかんだ企業も現れています。

日本ではピンタレストはまだまだ認知の拡大段階ですが、ピンタレストのショッピング機能を活用することが小さな企業の売り上げ増につながるようになるときがくるかもしれません。

レコメンドではなく「発見」に価値を置くコミュニティにおいてブランドを育てていくことが一つの方法になっていくのではないでしょうか?