by mrhayata(画像:Creative Commons)
スパイク・ジョーンズ監督は、声に恋するというアイデアを10年前に思いつき、そのアイデアを温めていたそうで、今回の映画(『her/世界でひとつの彼女』)は、現在のテクノロジーの発展によって、アイデアがよりリアルなものに感じられるようになったからこそできたのだろう。
「人工知能型OSに恋するなんてことがあるだろうか?」
と最初は思うかもしれない。
でも、ありえないとも言えない。
今の現実を見れば、それに近いことが起きているし、いまこの瞬間も恋をしている人もいるかもしれない。
ただ、この作品で話したいことは、決して人工知能と恋することを面白おかしく描くということではなくて、心を通わせあえることの重要さなんだと思う。
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『her/世界でひとつの彼女』スパイク・ジョーンズ監督来日!トークイベント
(2014/5/29、cue)
野村:人工知能型OSと恋に落ちるというストーリーを着想したきっかけは?
スパイク:人工知能と男が恋に落ちるというのは10年位前に思いついてはいたんですが、5年くらい前に脚本を書き始めた時は、それはあくまでも入り口に過ぎなかったんです。人とテクノロジーの関係を描きたかったわけではないんです。
人がどうしたら繋がるのか?ということだったんですね。リアルに、誠実に、人と心を通わせるのはとても難しいことです。
今、テクノロジーのせいで人々は互いに関係が築けないと言われていますが、昔だって別の事を言い訳にお互い心を通わすことを避けていたんです。
現代社会を生きる我々は忙しいし、コミュニケーションの形は日々変わるし、毎日受け取る情報量もとても多いです。
だから人工知能と恋するということは、そんな中で本当に愛する人に自分を晒して通じ合うことの難しさ、それがどれだけの挑戦なのか、ということを描くためのきっかけだったんです。
OSとは、どんなに恋をしても、触れることができない。
恋をすると面白いと思うのが、「触れたい」という感情がなぜか生まれること。
映画『今夜、ロマンス劇場で』彼女の秘密篇(30秒)【HD】2018年2月10日(土)公開
綾瀬はるかさんと坂口健太郎さんが出演する映画『今夜、ロマンス劇場で』は触れると消えてしまう人との恋愛が描かれています。
触れたいという感情が生まれるのは、一つになりたい(一体化したい)、存在していることを実感したい、安心したい、といった感情が生まれるからではないだろうか。
しかし、触れるためには、実にいくつかの条件が必要となってくる。
「触れる」ためには、触れる相手と体がそこに同時に実在しないといけないからだ。
「愛撫・人の心に触れる力」(著:山口創)
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触れるという触感覚の特徴は、触れる対象と触れる身体がそこに同時に実在するという「同時性」と「実在性」にある。見たり聞いたりするのとは違って、「今、ここで」両者が同時に実在しなければ成り立たない感覚である。ここから「直接性」という性質が現れ、「肌で感じる」「皮膚感覚でとらえる」といった表現が生まれた。だから触感覚は、視覚や聴覚のあり方を基礎づける「根源的感覚」であって、視覚や聴覚と並列的に論じることはできないのである。
「見る」「聞く」ということは、現在のテクノロジーを持ってすれば、そこにいなくても感じることはできる。(直接会う場合と情報量は違うだろうけど)
ただ、「触れる」ためには、そこに相手が存在していないといけない。
「愛撫・人の心に触れる力」(著:山口創)では、なぜ人が触れたいという欲求を感じるのかについてこのように書かれています。
現代人が、「触れたい-触れられたい」という強い欲求を感じるというのは、単に物理的な皮膚への接触刺激が不足しているということではなく、人と感情を分かちあい、一体化することへの渇望であると考えられないだろうか。
希薄化する人間関係やヴァーチャルなコミュニケーションに偏った現代人は、他者の身体と私の身体が分け隔てなく感じられるような、密度の良い親密な関係を求めているのである。
自分と相手と感情をわかちあい、一体化したいということを「触れる」ということを通じて、感じあいたいのではないだろうか。
映画を見ていない段階だけど、おそらく映画の本筋とは違うとは思う。
だけど、直接会う(触れる)ことができるというのがどれほど貴重なことで、素晴らしいことなのか、は間違ってないと思う。
でも、映画を見る前と見ない後ではまた考えが違ってくるのかもしれない。
「触れる」ことができない人工知能型OSとの恋、「触れたら消えてしまう」人との恋の結末は、どのようなものになるのだろうか。
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