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ブルーベリーのアントシアニンが糖尿病網膜症の原因となる高血糖が引き起こす網膜細胞のダメージを防ぐ!




今回紹介する研究によれば、ブルーベリーのアントシアニンが、高血糖による網膜毛細血管内皮細胞のダメージを防ぐ効果があることを示すことから、糖尿病網膜症を予防することが期待されます。

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【参考リンク】

■概要

この研究は、ブルーベリーに含まれるアントシアニン(抗酸化物質)が、糖尿病性網膜症(糖尿病による目の病気)の原因となる高血糖が引き起こす網膜の血管細胞(ヒト網膜毛細血管内皮細胞:HRCECs)のダメージを防ぐ効果を調べたものです。

ブルーベリーの抽出物(BAE)や主要なアントシアニン成分(マルビジン、マルビジン-3-グルコシド、マルビジン-3-ガラクトシド)が、酸化ストレスや炎症を抑え、細胞を保護するメカニズムを明らかにしました。

※ヒト網膜毛細血管内皮細胞(HRCECs):これらは網膜の血管を構成する細胞で、糖尿病性網膜症でダメージを受けやすい。

■どんな研究をしたの?

高血糖による網膜細胞のダメージに対して、ブルーベリーのアントシアニンが抗酸化作用や抗炎症作用で保護するかを調べます。

■結果

●細胞生存率の向上

・高血糖(HG)は24時間後に細胞生存率を大幅に低下させました(64% vs 正常群100%、P<0.01)。

・BAE、Mv、Mv-3-glc、Mv-3-galを事前に処理した細胞は、生存率が有意に改善(P<0.05)。特にMv-3-glc(91%)とMv-3-gal(86%)が強い効果を示した。

・48時間後では、高血糖による生存率低下は見られず、アントシアニンの効果も弱まった(時間依存的な効果)。

※ブルーベリーアントシアニン抽出物(BAE)、マルビジン(Mv)、マルビジン-3-グルコシド(Mv-3-glc)、マルビジン-3-ガラクトシド(Mv-3-gal)。

●酸化ストレスの抑制

・活性酸素(ROS): 高血糖はROSを大幅に増加(4倍以上、P<0.001)。BAE、Mv、Mv-3-glc、Mv-3-galはROSを有意に減少(P<0.01〜0.001)。

特にMv-3-glcは48時間後でもROSをほぼ正常レベルに抑えた。

・抗酸化酵素(CAT、SOD): 高血糖はCATとSODの活性を低下。BAEとアントシアニンはこれらの活性を高め(P<0.05)、酸化ストレスを軽減。

・Nox4(ROS産生酵素): 高血糖はNox4の量を増加(P<0.01)。Mvは24時間と48時間でNox4を抑制(P<0.05)。BAEとMv-3-galは48時間で抑制(P<0.05)。ただし、Mv信号はMv-3-glcでは効果なし。

●血管機能への影響

NOとeNOS: 高血糖はNOkeyboard_arrow_right NO(血管を広げる物質)とeNOS(NOを作る酵素)を増加。Mv-3-glcとMv-3-galはNOを減少(P<0.001)、血管拡張を抑制。

BAEは24時間で軽度に抑制。ACE(血管収縮に関与)は高血糖で増加したが、Mvは抑制し、BAE、Mv-3-glc、Mv-3-galは逆に増加させた。

●血管新生と炎症の抑制

VEGF(血管新生因子): 高血糖はVEGFを増加(P<0.01)。BAE、Mv、Mv-3-glc、Mv-3-galは24時間でVEGFを抑制(P<0.05〜0.01)。Mv-3-glcは48時間でも抑制効果を維持。

Akt経路: 高血糖はAkt(細胞増殖や血管新生を促すタンパク質)を活性化。BAE、Mv-3-glc、Mv-3-galはAktを抑制(P<0.05)。

ICAM-1とNF-κB(炎症因子): 高血糖はICAM-1(炎症による細胞接着を促す分子)とNF-κBを増加(P<0.001)。MvとMv-3-glcはICAM-1を強く抑制(P<0.001)、NF-κBも抑制(P<0.05)。Mv-3-galも抑制効果あり(P<0.01)。

■なぜブルーベリーのアントシアニンが効果的だったの?

抗酸化作用: アントシアニンはROSを減らし、CATやSODといった抗酸化酵素の働きを高めることで、酸化ストレス(細胞を傷つける反応)を抑える。特にMv-3-glcはROS抑制効果が強い。

抗炎症作用: ICAM-1やNF-κBを減らし、炎症を抑える。これにより、網膜の炎症が原因で起こる血管の異常な接着を防ぐ。

血管保護: VEGFやAktを抑えることで、異常な血管新生(糖尿病性網膜症で問題となる新しい血管の形成)を防ぐ。一方、NOを増やすことで血管拡張を促し、血流を改善。

これらの効果は、ブルーベリーに豊富なマルビジンやその配糖体(Mv-3-glc、Mv-3-gal)が特に強い働きを持つため。

■まとめ

この研究によれば、ブルーベリーのアントシアニン(BAE、Mv、Mv-3-glc、Mv-3-gal)が、高血糖による網膜毛細血管内皮細胞のダメージを防ぐ効果があることを示しました。

特にMv-3-glcとMv-3-galは、ROSや炎症因子(ICAM-1、NF-κB)を減らし、VEGFやAktを抑えることで、細胞の生存率を高め、酸化ストレスや炎症から保護してくれることから、ブルーベリーは糖尿病網膜症の予防が期待される果物と言えそうですね。

ちなみに、1日1カップ(約150g)程度が目安で、冷凍ブルーベリーでも効果は期待できるそうですよ。

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認知症予防に欠かせない「アブラナ科の野菜」。パワーを最大限に引き出すためのコツを紹介(2024年12月15日、毎日が発見ネット)によれば、認知症リスクを減らすために毎日食べたい食材としてアブラナ科の野菜を紹介しています。

その理由としては、アブラナ科の野菜には、認知症予防に欠かせない「抗炎症力」「解毒力」「抗酸化力」という3つの力が備わっているから。

■抗炎症力

炎症が認知症の主な原因であることは述べたとおりですが、アブラナ科の野菜の成分は、不要な炎症を抑える力に優れます。 たとえば葉酸(ビタミンB9)などのビタミンB群は、「ホモシステイン」の上昇を抑えるほか、脳の神経細胞に働きかけて記憶力や思考力の低下を防ぎます。

アブラナ科野菜と全死亡および疾患別死亡との関連について(国立がん研究センター)でもアブラナ科野菜に多く含まれるイソチオシアネートや抗酸化性ビタミンの持つ抗炎症および抗酸化作用が死亡リスクの低下に寄与している可能性を指摘しています。

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葉酸塩

多くの観察研究により、ホモシステイン濃度の上昇とアルツハイマー病および認知症の発生率との間に正の相関が示されている[18,47-48]。すべてではないが、多数の観察研究により、血清中葉酸塩濃度の低下と、認知機能の低下や認知症およびアルツハイマー病のリスクの上昇との相関関係も認められた[47,48,50]。

菜食者の血清葉酸濃度に及ぼす因子の検討

高齢者では、葉酸やビタミンB12が血液中のホモシステイン濃度の上昇を抑制し、認知能力の低下、痴呆の予防に関連しており、葉酸の欠乏はアルツハイマー病や血管性痴呆の危険因子となり、血漿ホモシステインの上昇は認知機能低下の危険因子となる可能性が報告されている。血清葉酸濃度を低下させない食事は、動脈硬化の予防だけではなく認知能力低下の予防につながる可能性が高いと考えられる。

【参考文献】

  • Duthie SJ, Whalley LJ, Collins AR, Leaper S, Berger K, Deary IJ. Homocysteine, B vitamin status, and cognitive function in the elderly. Am J Clin Nutr. 2002 May;75(5):908-13. doi: 10.1093/ajcn/75.5.908. Erratum in: Am J Clin Nutr. 2003 Feb;77(2):523. PMID: 11976166.
  • Ueland PM, Refsum H, Beresford SA, Vollset SE. The controversy over homocysteine and cardiovascular risk. Am J Clin Nutr. 2000 Aug;72(2):324-32. doi: 10.1093/ajcn/72.2.324. PMID: 10919921.
  • Quadri P, Fragiacomo C, Pezzati R, Zanda E, Forloni G, Tettamanti M, Lucca U. Homocysteine, folate, and vitamin B-12 in mild cognitive impairment, Alzheimer disease, and vascular dementia. Am J Clin Nutr. 2004 Jul;80(1):114-22. doi: 10.1093/ajcn/80.1.114. PMID: 15213037.

■抗酸化力

クレソンに含まれるイソチオシアネートの抗酸化作用でがん予防|みんなの家庭の医学によれば、アブラナ科の野菜には抗酸化作用を持つ「イソチオシアネート(Isothiocyanate)」という栄養素が含まれているそうです。

イソチオシアネートが体内に入ると、抗酸化物質が大量に作られ始め、抗酸化物質が、全身の細胞内にある有害な活性酸素を無毒化してくれます。

■まとめ

今回の記事では、アブラナ科の野菜には野菜の色の成分「フィトケミカル(ファイトケミカル)」と呼ばれる植物性化学物質の一種の「イソチオシアネート」という成分が多く含まれているのもポイントと紹介されていましたが、がんリスクを下げる抗ガン食材とはどんな食べ物なの?では抗酸化作用を持ちがん細胞の増殖や転移を抑える働きを持つ栄養素の一つとしてスルフォラファンがあり、代表的なものにキャベツやブロッコリー(ブロッコリースプラウトも)などのアブラナ科の野菜を紹介しました。

アブラナ科の野菜は体にいいといわれてきていて、最近ではどういった成分が体にいいかが具体的にわかってきましたが、最近行われた「国民健康・栄養調査」によれば野菜の摂取量が男女とも過去最少であり、心配されます。

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野菜摂取量の平均値(20 歳以上、性・年齢階級別)
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積極的にアブラナ科の野菜を摂っていきたいですね。

■アブラナ科の野菜とは?

アブラナ科の野菜には青汁で有名なケール、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、カリフラワー、クレソン、大根、白菜、小松菜、水菜、チンゲン菜、菜の花などが含まれます。

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ユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取による腸内細菌叢の調節を介して内臓脂肪蓄積の抑制作用および抗炎症作用を示唆する研究結果を確認【論文・エビデンス】




■ユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取による腸内細菌叢の調節を介して内臓脂肪蓄積の抑制作用および抗炎症作用を示唆する研究結果を確認

ユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取による内臓脂肪重量および炎症性サイトカイン量の減少を確認

(2018/10/12、武田コンシューマーヘルスケア)

武田コンシューマーヘルスケアとユーグレナ、東北大学大学院農学研究科食品機能健康科学講座食品化学分野の都築毅准教授との共同研究で、微細藻類ユーグレナの粉末と野菜粉末の同時摂取により、腸内細菌叢の調節を介して内臓脂肪蓄積の抑制作用および抗炎症作用を示唆する研究結果を確認しました。

図:白色脂肪組織重量(A:腎周囲脂肪組織重量、B:精巣周囲脂肪組織重量)
ユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物の摂取により、内臓脂肪である腎周囲脂肪組織重量および精巣周囲脂肪組織重量を有意に減少させることを確認しました
表:白色脂肪組織重量
ユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物の摂取により、内臓脂肪である腎周囲脂肪組織重量および精巣周囲脂肪組織重量を有意に減少させることを確認しました
精巣周囲脂肪組織面積比
ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスでは、精巣周囲脂肪面積の有意な減少が確認されました

マウスを、1.通常食を与えたマウス群、2.パラミロン粉末を与えたマウス群、3.ユーグレナ粉末を与えたマウス群、4.ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を与えたマウス群の4つに分け、2ヵ月間経口摂取する実験を行った結果、ユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物の摂取により、内臓脂肪である腎周囲脂肪組織重量および精巣周囲脂肪組織重量を有意に減少させることを確認し、ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスでは、精巣周囲脂肪面積の有意な減少が確認されました。

血中炎症パラメータ
ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスではIL-6の有意な減少、そしてユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスではIL-1betaの有意な減少が確認されました

また、健康長寿者では炎症性指標が低レベルに維持されていると報告されていることから、主要な炎症性サイトカインであるIL-6およびIL-1beta(血清中の炎症性サイトカインIL-6およびIL-1beta: 生体内の様々な炎症症状を引き起こすサイトカイン。サイトカインとは生体内で免疫の伝達を担うたんぱく質のこと)を測定した結果、ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスではIL-6の有意な減少、そしてユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスではIL-1betaの有意な減少が確認されました。

更に、ユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスの腸内細菌叢では、Lactobacillus属などの宿主に有益な菌の増加を、ユーグレナ粉末およびユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を摂取したマウスの腸内細菌叢では、炎症に関係する有害菌のClostridiaceae科の減少を確認しました。

これらの結果から、ユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取による腸内細菌叢の組成変化が、内臓脂肪および血清中の炎症性サイトカインの減少に寄与したものと考えられます。







【参考リンク(論文・エビデンス)】
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