ある投稿をきっかけに、エネルギーについて考えてみました。
この一年ずっとエネルギーが枯渇気味で、何も出来ないことが続いている。エネルギーってどうやって取り戻すんだろう。みんなはどうしてるんだろう。休みのほとんどをベットで寝て過ごしている。
(元投稿:https://x.com/yty050/status/2091465438454841469)
■エネルギーって、どんなイメージを持っていますか?
「エネルギー」と聞いて、みなさんはどんな絵を思い浮かべるでしょうか。
源泉のように、地中から湧き出してくるもの。
ゲームのライフゲージやバッテリー残量のように、減ったら充電して回復するもの。
長い休みより短い休みを何度も? 科学が教える本当に効く休暇の取り方では、毎日の仕事や勉強でバッテリーが少しずつ減っていくので、年に1回長い充電をすると、一時的に満タン近くになるけど、またすぐに減り始めて、数日から1週間で元に戻ってしまうというようなバッテリー型のイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?
つまり、疲れたら寝て、回復するのを待つという方法。
しかし、もしかするとエネルギーとはもっと違うイメージなのではないかと思ったのが、岡本太郎さんが「芸術は爆発だ!」と言った言葉です。
「爆発」とは、蓄積されたエネルギーが一気に外へ噴き出す現象です。
爆発が起きるためには、まずエネルギーが内部に蓄えられ、発電所がしっかり動いている必要があります。
ここで視点を細胞レベルにまで下げてみると、私たちの体の中には、まさに「発電所」が存在します。
それがミトコンドリアです。
■ミトコンドリア——体のエネルギー発電所
ミトコンドリアは、食事から得られる糖や脂質と、呼吸で取り入れた酸素を使って、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー通貨を作ります。
筋肉を動かすのも、脳で考えるのも、免疫を働かせるのも、ほとんどがこのATPに依存しています。
しかし、ミトコンドリアは年齢とともに減少・機能低下していく傾向があり、特に30代以降は顕著だと言われます。
若いころのようにスタミナが続かない、回復が遅い——そんな体感の背景には、この発電所の数が減ったり、効率が落ちたりしていることがあるのです。
では、どうすればミトコンドリアを増やしたり、機能を高めたりできるのか。
スタミナアップ!ミトコンドリアを増やす2つの方法|#ためしてガッテン #NHKによれば、「エネルギー不足の状態をわざと作る」ことで、細胞内のスイッチをオンにすることです。
細胞はATPの量を常に監視しており、不足を察知すると、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)などの経路を通じてPGC-1αという「ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーター」を活性化させ、発電所を増やそうとします。
■ミトコンドリアを増やす主な方法
1. ちょっときつい運動をする(特にインターバル速歩)
運動は最も確実な刺激の一つです。
特に、息が上がる程度の負荷を短時間かけることで、AMP/ATP比が上昇し、AMPK→PGC-1α経路が活性化してミトコンドリアの生合成が促されます(複数のレビューで確認されている標準的なメカニズムです)。
具体的な方法として、信州大学の能勢博特任教授らが長年研究してきた「インターバル速歩」がおすすめです。
・「速歩3分(ややきついペース)」+「普通歩行3分」を交互に繰り返す。
・1日合計で速歩が15分程度になるように(例:5セット)。
・週に合計60分程度の速歩時間を目標に(毎日できなくても、週4日以上など調整可能)。
能勢先生らの研究では、中高年を対象に5ヶ月間継続した結果、体力(最大酸素摂取量など)が平均15〜20%向上し、生活習慣病の指標も改善したことが報告されています。
1分程度の短い速歩でもスイッチは入るため、「こまめに1分早歩き」から始めるのも有効です。
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2. 食事のカロリーを抑えたり、空腹の時間を長くとる
カロリー制限や間欠的な空腹は、エネルギー不足シグナルを送り、サーチュインやAMPKを介してミトコンドリア生合成を促進します。
ヒトを対象とした研究でも、適度なカロリー制限が筋肉のミトコンドリア量や関連遺伝子の発現を増加させることが示されています。
・完全な断食である必要はなく、1日の摂取カロリーを軽く抑える
・夕食後から翌朝まで空腹時間を長めにとる(例:12〜16時間)
といった程度からで十分効果が期待できるケースが多いです。
3. ミトコンドリアを助ける栄養素(タウリンなど)
●タウリン
イカ・タコ・貝類(特に牡蠣)などに豊富なタウリンは、ミトコンドリアの機能保護や、一部の研究で生合成関連遺伝子(PGC-1αなど)の発現を高める可能性が指摘されています。
動物実験や一部のヒト研究、ミトコンドリア病(MELAS)での臨床応用例もあります。
食品から積極的に摂るのが基本ですが、必要に応じてサプリメントを検討するのも一案です。
→ タウリンが多く含まれる食べ物 について詳しくはこちら
●ビタミンB群・鉄
ウナギや豚肉などに多く含まれる「ビタミンB群」やレバーなどに多く含まれる「鉄」はミトコンドリアがATPを作り出すのを助ける働きをしてくれるそうです。
→ 鉄分を多く含む食品 について詳しくはこちら
■まとめ
ここまで「エネルギー不足の刺激を与えてミトコンドリアを増やそう」と書いてきましたが、これはあくまで一般的な健康な人や、軽度の疲れを感じている人向けの話です。
元の投稿のように「一年以上エネルギーが枯渇気味で、休みのほとんどをベッドで過ごしている」状態の方や、新型コロナ後遺症(Long COVID)、慢性疲労症候群(ME/CFS)、その他の疾患を抱えている方には、特に慎重さが必要です。
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近年の研究では、Long COVIDやME/CFSの患者さんで、ミトコンドリアの機能低下(酸化的リン酸化の抑制、ATP産生の減少など)や構造的な変化が観察されるケースが報告されています。
こうした状態では、通常の「ちょっときつい運動」が逆に「労作後倦怠感」を引き起こし、症状を悪化させるリスクがあります。
したがって、
1)まずは医師や専門家に相談し、基礎疾患の有無を確認する
2)「増やそう」とする前に、十分な休息と睡眠、栄養を最優先する
3)運動は「1分だけ早歩き」「家の中をゆっくり歩く」など、超軽いものから始め、翌日以降に悪化しないかを必ず観察する
4)カロリー制限も無理のない範囲で。極端な空腹は避ける
5)焦らず、発電所を「少しずつ増設する工事」くらいの長期的な視点を持つ
といった配慮が欠かせません。
エネルギーは、ただ溜め直すだけでなく、発電所そのものを増やすことで、少しずつ取り戻していける可能性があります。
でも、枯渇が深刻なときは、まず「これ以上減らさない」ことを大切にしてください。
源泉のように湧き出るもの、バッテリーのように充電するもの、爆発のように一気に噴き出すもの——エネルギーにはさまざまな顔があります。
あなたの体の中の小さな発電所が、少しでも元気を取り戻せることを願っています。
【参考文献】
●インターバル速歩・運動とミトコンドリア
- 能勢 博. メリハリをつけて歩くインターバル速歩-その方法と効果のエビデンス-. 日本顎口腔機能学会雑誌. 2012;19(1):1-9.
- Nose H, et al. 関連研究多数(信州大学グループによる中高年対象の介入研究。体力向上15-20%、生活習慣病指標改善など)。
- 運動によるミトコンドリア生合成のレビュー例:
Hood DA, et al. Exercise is mitochondrial medicine for muscle. Antioxidants. 2022.
(AMPK/PGC-1α経路の標準的解説)
●カロリー制限・空腹とミトコンドリア
- Civitarese AE, et al. Calorie restriction increases muscle mitochondrial biogenesis in healthy humans. PLoS Med. 2007.
(ヒトでのカロリー制限によるミトコンドリア量増加を示した代表的研究) - 間欠的ファスティングやカロリー制限がミトコンドリア機能を改善する近年のレビュー多数。
●タウリン
- Ohsawa Y, et al. Taurine supplementation for prevention of stroke-like episodes in MELAS. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019.
(MELAS患者での臨床応用例) - Jong CJ, et al. The Role of Taurine in Mitochondria Health: More Than Just an Antioxidant. Molecules. 2021.
●Long COVID / ME/CFS とミトコンドリア
複数の研究で酸化的リン酸化の抑制、ATP産生低下、ミトコンドリア形態変化が報告されている。
- 例: Functional and Morphological Differences of Muscle Mitochondria in Chronic Fatigue Syndrome and Post-COVID Syndrome. Int J Mol Sci. 2024.
- Multi-omics analysis of long COVID reveals persistent mitochondrial dysfunction. Front Immunol. 2026.
Oxidative stress is a shared characteristic of ME/CFS and Long COVID. PNAS. 2025頃の関連研究。
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