「日本再興戦略」(落合陽一)レビュー|NewsPicksのLive Picks「Weekly Ochiai」(動画)を合わせて見ると理解が高まる!




「日本再興戦略」(落合陽一)レビュー

by hakuraidou

「日本再興戦略」(著:落合陽一)の目次を参考にまとめてみたいと思います。

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

第1章 欧米とは何か

「欧米」というユートピア/「西洋的な個人」の時代不適合性/「わかりやすさ」の対極にある東洋思想 /日本というブロックチェーン的な国家/平成という破壊の時代を超えて 

ここで気になったのは2つで、一つは西洋的と東洋的の違い、もう一つは翻訳語についてです。

●西洋的と東洋的の違い

「魔法の世紀」(#落合陽一)を読んで考えたこと|西洋と東洋の考え方の違いでは「魔法の世紀」(著:落合陽一)を読んだ際に、世界が西洋的な分析する思考習慣から東洋的な包括する思考習慣を取り入れて、バランスよいものになることが必要ではないかと書きました。

「頭のでき」(著:リチャード・E・ニスベット)を参考にそれぞれの考え方の違いを簡単にまとめます。

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●西洋的

西洋人の知覚や志向は分析的で、身の回りのうち比較的小さな部分、何らかの方法で影響を与えたいと思う物事や人に意識を集中させる。

そして、その小さな部分の属性に注意を向け、それを分類したりその振る舞いをモデル化しようとしたりする。

また、形式的な論理規則を使って推論することが多い。

●東洋的

東洋人は幅広い物事や出来事に注意を払い、物事や出来事同士の関係や類似性に関心を持つ。

また、対立する考え方の「中庸」を探すなど、弁証法的な考え方を使って思考する。

東洋人は他者に注意をはらう必要があるため、外部の幅広い社会環境に目を向け、その結果として物理的環境にも意識を注ぐ。

「アースダイバー」(著:中沢新一)では、このように書かれています。

アースダイバー

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人間の心は、本質的に都市的な作られ方をしているのだけれど、そこには「無意識」という釣り堀があって、暗い生命の欲望がへら鮒のように見えない水中を泳ぎまわっている。この「無意識」とコミュニケーションを交わし合うことによって、人間の心は「自然」の豊かさを失わずにすんでいる。

夢を見たり、妄想を抱いたり、ときには今まで現実世界の中には出現していなかった新しいアイディアのイメージを思いついたりするのも僕達が知らず知らずのうちに行なっている「心のへらぶな釣り」のおかげなのである。

アジア人にとって世界はすべての要素が切れ目なく連なりあった複雑な場所である。それを理解するには部分を見るのではなく全体を見なければならない。

2冊の本を私なり解釈によれば、西洋人から見た世界はすべての要素が切れ間があり、隔たりがある世界であり、東洋人から見た世界はすべての要素が切れ間なく連なりあった世界です。

西洋的なものがよい、東洋的なものがよいというのではなく、考え方のバランスがあまりにも西洋的なものにバランスが傾き過ぎていたために起きている現状のひずみを少し東洋的なものにバランスを移行することができれば、世界はもっとバランスよくなるのではないかと思うのです。

●翻訳語

NHK「100分de名著」ブックス 荘子

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『NHK「100分de名著」ブックス 荘子』で翻訳について書かれているのですが、外国語を翻訳する際にはどうしても自国に元々あった言葉で訳す必要があるため、どうしても言葉の意味が入り込んでしまうということがあり、よくよく考えると、外国語と翻訳語とではニュアンスが違う言葉というのが見受けられます。

また、時代が変わっていく中で、ある言葉の意味が変わっているにもかかわらず、同じように使っていることで違和感を感じる言葉もできてきています。

つまり、現代に合わせた言葉のアップデートの必要性です。

私たちは明治以降に作られた明治翻訳語をベースに物事を考えているのですが、この言葉が現代とそぐわなくなってきているのではないかと思うのです。

【参考文献】

近代に生まれた言葉はたくさんあり、その言葉を基に私たちはモノを考えているのですが、例えば自然という言葉には「翻訳語成立事情」(1982、岩波新書、柳父章)を参考にすると、「おのずからそうなっているさま。天然のままで人為の加わらぬさま」とあります。

つまり、自然とは「手つかずのもの」という意味です。

しかし、もし「自然」が人為的なものであってもそれが気付かないものであったら、それは自然であるでしょうし、また、山や森を守るために人の手を入れていることは果たして自然ではないと言い切れるでしょうか。

つまり、自然の意味もとらえようによってはアップデートできるのです。

自然とは観察の対象ではなく「我々自身も、自然の一部である」という考え方をベースに、自然という言葉の意味をアップデートすることができれば、自然のとらえ方もアップデートされます。

これから、「情報社会(Society4.0)」に続く、AI(人工知能)や IoT といったテクノロジーによる未来社会を目指すのであれば、明治以降に生まれた近代語をそのまま使うのではなくて、この時代にあった言葉の意味にアップデートをする必要があるのです。

荘子の胡蝶の夢-物化の構造と意味-(橋本敬司)

万物が我と一体である荘子において、言語によって一だと説くこと自体が、言語によって世界を分断し、世界が一つである世界を破壊してしまう行為であった。つまり、現実世界は、言語的に作り出された幻想にすぎなかったのである。




第2章 日本とは何か

日本の統治構造を考える/イノベーティブな日本の宗教/日本にはカーストが向いている /百姓という「多動力」/中流マスメディアの罪日本は超拝金主義/日本を蝕むトレンディードラマ的世界観/「ものづくり」へのリスペクトを回復せよ 

「アート×テクノロジーの時代」(著:宮津大輔)

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日本では、古来、神や精霊、霊魂を、身の回りのあらゆるものに見るアニミズム思想が存在し、それらを八百万の神と呼んで敬っています。山や巨木をはじめ、トイレや台所、はては米粒の中にまで神様がいると考えられているのです。また、長い年月を経た道具にも付喪神として神や精霊が宿るといわれています。p269

ただ技術が大きな社会変革を起こすときこそ、世の中全体が同じ方向を目指すのではなく、そこに「他との違いを認め許容・共存する」考え方や「複眼的、多視点」であることが何よりも重要である p278

日本で根付いていた身の回りのものに、神様や精霊などが宿るという考え方が大事にされてきました。

妖怪や幽霊もある種この考えに近く、だからこそ妖怪や幽霊に関するマンガやアニメを受け入れやすかったのではないでしょうか。

そして、この考え方は、ブロックチェーンやIoTというような現在注目されているテクノロジーについて考えるときに役立つと思います。

→ 「アップデート・シティ(更新都市)」|既存の言葉・価値観をアップデートし、シームレス・インタラクティブ・非言語のレイヤーを重ねる について詳しくはこちら

第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか

コンビニに行かなくなる日/「人工知能と呼ばれているもの」の本質/最適化・統計・創発/東洋のイメージをブランディングする/人と機械が融合する自然/テクノロジー恐怖症との折り合い 

第三章ではテクノロジーについて取り上げていますが、最も教務深かったのが「5G」でこのブログでもよく取り上げています。

【5G 関連記事】

5Gのようなテクノロジーの恩恵でワクワクするような未来が見れそうだと感じる人がいる一方で、テクノロジー恐怖症ともいえるようにテクノロジーに否定的な人もいます。

大事となってくるのは、新しいテクノロジーが生まれていく中で、例えばスマホネイティブでない世代もスマホを持つようになったように、新しいテクノロジーに適用していくのですが、誰でも使えるようなインターフェースにすることであり、それが新しい自然であるとしていくことです。

「SOCIETY5.0」というコンセプトをアップデートしよう!|キーワードは「超主観空間」「計算機自然(デジタルネイチャー)」「無限概念」「東洋的」「融け合う」

第4章 日本再興のグランドデザイン

人口減少・高齢化がチャンスである3つの理由/ゲートのない世界へ/ブロックチェーンと日本再興/日本はトークンエコノミー先進国/地方自治体によるICOの可能性/シリコンバレーによる搾取の終わり /ビットコインの未来を占う「3つの問い」 

第4章が最も勇気が出る章ですよね。

高齢化社会をイメージする図としてよく紹介されるのがこのような図です。

参考画像: [将来の税はどうなるの?] 少子・高齢化|国税庁スクリーンショット

高齢者が増えて子供が少なくなってしまう少子高齢化になると、その生活を支えることができなくなるとしてよくこのような図が紹介されます。

確かに、高齢者が増えると、税金が使われる医療、年金、介護などに必要なお金が増えます。

このブログでも、医療費が増加傾向にあることや国民皆保険が持続不能だと医師が答えたというニュース、75歳以上同士の「老老介護」初の30%超のニュース、老後のお金に対する不安のニュースなどに高齢化社会のネガティブな面についてこれまで取り上げてきました。

しかし、高齢化社会をチャンスととらえようという動きも出ています。

例えば、大人用紙オムツの売上が子供用オムツの売上を追い抜いた!?|日本の紙おむつが国際規格化|高齢化社会がビジネスチャンスに変わる!?によれば、大人用紙おむつの評価方法に関する規格「ISO15621尿吸収用具―評価に関する一般的指針」が改訂し、欧米の「テープ止め型(体にテープで固定するタイプ)」ではなく、日本が提案する装着車の症状や生活環境に合わせたきめ細かい高齢者介護学科脳になるパンツ型やテープ止め型のおむつに吸着パッドを挿入するタイプなどを規格化されました。

つまり、世界に先行して高齢化社会に突入している日本は、医療費削減のアイデアやよりよい介護の方法を実行できる立場にあり、それらのやり方をスタンダードにすることができるというビジネスチャンスがあるのではないでしょうか?

https://twitter.com/ochyai/status/863280246140698624で落合陽一さんはAIやロボットなど自動化技術によって、高齢化社会で成長する方法を提案しています。

参考画像:新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)

新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)によれば、患者のQOLの最⼤化に向けて、⾼齢となっても⾃分らしく⽣きることの出来る「⽣涯現役社会」の実現に向けて、⾃⽴⽀援に向けた介護や質・⽣産性の⾼い介護の提供の実現が必要であるとして、ケアプラン作成を⽀援するAI(人工知能)や介護現場のニーズに基づいた介護ロボット(センサー含む)を開発・活⽤が必要になるとあります。

高齢化社会をベースにすると発想を転換すると、それに合わせたテクノロジーが生まれることによって、もしかすると、若者にとっても過ごしやすい社会になるかもしれませんし、すでにそうした兆しも見えています。

→ 「少子高齢化による高齢化社会は日本にとってのビジネスチャンス(医療・介護など)になる!」と発想を転換してみない? について詳しくはこちら

仮想通貨・ブロックチェーン・トークンエコノミー・ICOが日本が新しい成長をするための力になってくれるといいですね。

【関連記事】

第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)

日本だからこそ持てる機械化自衛軍/インド・中国・北朝鮮/揺らぐ民主主義

第6章 教育

新しい日本で必要な2つの能力/幼稚園には行かなくてもいい/センター試験をやめよ /MBA よりもアート 

第6章では、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力の2つの教育が重要であり、また、アートを学ぶこともすすめています。

アートはなぜ価値が高いのか?|なぜバスキアの作品は高額で落札されたのか?

ZOZOTOWN(ゾゾタウン)を運営するスタートトゥデイ代表前澤友作さんがジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)の作品を約62億と約123億で落札したというニュースを聞いたことがある人も多いと思います。

【参考リンク】

ただ、ふと疑問に思った人もいるのではないでしょうか、なぜバスキアの作品はこんなに高額なのだろうか?、と。

堀江貴文さんがこの疑問をチームラボ代表の猪子さんがぶつけて解説をしてくれています。

【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」

(2017/8/29、スタディサプリ進路)

猪子:結局世紀を語る時に、大量消費社会がきて、マスメディアが出てきて、人類の価値観がどう変わっていったかをちゃんと説明しようと思ったら、ウォーホル抜きには説明できないんですよ。現代の工業製品をニュートン抜きには語れないのと同じように。

<中略>

猪子:ウォーホルにとって、バスキアは影響の大きな人物だったんです。共同制作もしていました。ウォーホルのある時代を説明するには、バスキアも外せないわけです。

産業革命が起き、物を大量生産できるようになり、いいものを安く手に入れられるようになりました。

アンディ・ウォーホルが出てきたことによって、「みんなが知っているものがかっこいい」という概念が生まれ、それ以降ラグジュアリーブランドが生まれ、巨大な産業が生まれていきました。

歴史において、ウォーホル抜きでは美の価値観が変わったことを説明することができず、また、すでに亡くなっているため作品が増えることがないので、価値が下がることはないそうです。

バスキアはそのウォーホルにとって影響力のある人物であり、ウォーホルを語るうえで欠かせない人物でもあるため、バスキアの作品は高額で取引されているのだそうです。

→ 『#落合陽一「日本人とお金」を語る』まとめ|日本人はお金が大好き(拝金主義)!?|お金ではなく価値を見るとよい!?|研究・リサーチになぜお金が集まるのか?|知名度は価値に変換できる?|金融教育は小学生からやるべき|人間に投資するのが一番価値が高い! について詳しくはこちら

第7章 会社・仕事・コミュニティ

「ワークアズライフ」の時代/兼業解禁と解雇緩和をセットにせよ/士農工商を復活させよ/「ホワイトカラーおじさん」の生かし方/年功序列との決別/「近代的人間」からの卒業/「自分探し」より「自分ができること」から始める/モチベーション格差の時代

なぜ企業はジェンダーダイバーシティ(男女の多様性)を重要視するようになったのか?|AccentureやGoogleは社内男女比「50対50」を目指すによれば、最近のトレンドとしては、企業の社員における男女比を50対50にしましょうというのがトレンドであり、記事を最初に書いた当初は良い考え方だと思っていました。

しかし、落合陽一さんの講演を聞いた後、考え方が変わりました。

【SoftBank World 2017】特別講演 落合 陽一 氏

男女比をフィフティフィフティにしようという考え方は標準化しようという考え方であり、あるところでは男女比が9:1のところがあったほうがよいところもあるはずです。

重要なのは、その時々によってその割合のバランスを変えられるということです。

問題をフィフティフィフティで解決しようとすると、無駄が多い社会になってしまう可能性があるというのが落合陽一さんの意見です。

企業を評価する人たちは「社員の男女比50対50」というような数字はわかりやすくて評価しやすいのだと思いますし、私もそのうちの一人でした。

多様性(ダイバーシティ)を考える際には、何が標準かを決める考え方(この場合には「社員の男女比50対50」)によって多様化を目指すのではなく、その時々によってその割合のバランスを常に変え続けるようにすることで、本来の意味での多様性が実現するのではないでしょうか。

落合陽一×猪瀬直樹 異色対談「激論! 近代の超克」

(2017/5/19、クーリエ・ジャポン)

落合 対して日本には、「適材適所」という考え方があります。聖徳太子の時代からおこなわれていたことで、たとえば会社は必ずしも男女半々じゃなくてもいい、女性が9割の会社があってもいいじゃないかと考える。それを無理やり対等にもっていこうとすると、むしろ多方面に歪みが出てくる。

「平等」にロジカルに対抗しうる唯一の概念が「適材適所」だと僕は考えていて、しかもそれは、日本人の多くが納得できる考え方だと思うんです。だから「適材適所」は一つの突破口になる概念じゃないでしょうか。

恣意的にではなく、”自然と”男女比が50:50になったとしたら、それは問題ないことだと思いますが、男女比が50:50であることが平等だから制度としてやらなければならないというのはゆがみが出てきてしまうのではないでしょうか。

企業側は適材適所でその人を選んだことをしっかりと説明できるようにすることのほうが重要なのかもしれません。

→ AI・ロボットが働く未来ではクリエイティブな仕事が求められる|PUSH型からPULL型への移行とモチベーション(内発的動機づけ)がキーワード について詳しくはこちら

まとめ

NewsPicksのLive Picks「Weekly Ochiai」(毎週水曜22時~)では毎週1つのテーマについて落合陽一さんがトークをしてくれるのですが、「日本再興戦略」をベースにトークテーマが選ばれていたようで、今回の内容は実にわかりやすいものでした。

もし、あなたが「日本再興戦略」が難しいなと思っていたり、もっと理解を深めたいと思っている人はぜひNewsPicksのLive Picks「Weekly Ochiai」の動画を見てみることをおすすめします。







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