【目次】
■育児と介護を同時に行なう「ダブルケア」の原因と実態とは?
by John Benson(画像:Creative Commons)
内閣府の「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(2016年)によれば、一人や一つの世帯が同時期に介護と育児の両方に直面する「ダブルケア」の実態は次のようになっています。
参考画像:ダブルケアを行う者の年齢構成|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
参考画像:ダブルケアに直面する前後の業務量や労働時間の変化|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
●ダブルケアを行う者の推計人口は25万3千人
●男女別では、男性が8万5千人、女性が16万8千人と女性が男性の約2倍であり、女性に負担が偏っている
●ダブルケアを行う者は30歳~40歳代が多く、男女ともに全体の8割を占めている
●「業務量や労働時間を減らした」者は、男性で約2割、女性で約4割となっており、そのうち離職して無職になった者は、男性で2.6%、女性で17.5%となっている
晩婚化・晩産化(出産年齢の高齢化)が進んだ結果、子育てと親の介護を同時に行わなければならない問題である「ダブルケア」に注目が集まっているそうです。
このことは、日本だけでなく、アメリカにも同じような事が起きています。
アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデアによれば、アメリカにおける事情としては、アメリカのベビーブーマー世代が高齢化するにつれて介護を必要とする高齢者の増加や介護を必要とする期間の長期化、必要な介護を受けるための経済的な仕組みが整っていないことにより、親の介護を自宅でする結果、就労することができないというのが現状のようです。
この問題には、なぜか女性が無償の介護を請け負わざることをえなければならないこと、介護サービスを受けるための経済的な仕組みが不足していること、介護を必要とする高齢者の増加と介護期間の長期化ということが隠されています。
参考画像:主要国の医療保障制度の概要|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
今回取り上げるポイントは、女性への負担が大きいということです。
アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデアで紹介した米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のハミルトン・プロジェクト(The Hamilton Project)が発表した報告書によれば、アメリカでは2016年、成人の3分の1(37.2%)以上が仕事に就いておらず、そのうち「働き盛り世代」(25~54歳)に当たる人たちの5分の1近くが就業していないそうで、その理由としては、女性の36%が介護のために仕事に就けないそうです。
女性が無償の介護を行なわずに就労していた場合の収入や年金を考えると、大きな損失を生んでいることがわかります。
【参考リンク】
- アメリカの家族介護者支援:現状と課題|立命館大学 人間科学研究所
本来であれば、男性と女性が介護の役割を分け合うというのが必要だと思うのですが、家族内で高齢者の主介護者役割を担うのはなぜか女性が圧倒的に多いそうです。
この問題を解決するためには、介護の役割は男女で分け合うと意識を改めて、両方にとって介護負担を軽くするために、テクノロジーや様々な仕組みを活用していくということが必要になるのではないでしょうか。
■まとめ
参考画像:「ダブルケア」を身近な問題と思うか|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「高齢社会に関する意識調査」(2016年)における 「「ダブルケア」の問題はあなたにとって身近な問題だと思うか」という質問に対する回答に対しては、45.4%の人が「ダブルケア」の問題を身近な問題として「思う」「どちらかというと思う」と回答しています。
現役世代の多くが「ダブルケア」の問題を抱えてしまう可能性がありえます。
ダブルケアに関する調査2018(2018/7/18、ソニー生命)によれば、「育児より介護が先に始まった」という割合はダブルケアラーの12%、30代では20%に及び、また、過去にダブルケアが続いた期間は「3年超」39%、「10年超」10%となり、かなりの負担がかかることが分かります。
だからこそ、いかに育児の負担と介護の負担を軽くすることができるのかが重要になってきます。
特に、女性への負担が大きく、介護のために労働時間を減らしたり、無職になったりするケースもあり、無償の介護を行なわずに就労していた場合の収入や年金を考えると、大きな損失を生んでいることがわかります。
女性が働きながらでも、子育ても介護もできるようにするためにはどのようにしたらよいか、自分事として考えていく必要があるのではないでしょうか?