「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」によれば、アトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚では、健常者の皮膚と比較して黄色ブドウ球菌が高頻度に分離されることが古くから知られています。https://t.co/8JI2MGK2WU
AD患者の病変部皮膚での黄色ブドウ球菌の定着率は約70%https://t.co/bSjrzjblVM— ばあちゃんの料理教室|ばあちゃんの台所から学ぶ、食と健康の知恵 (@4050health) August 2, 2026
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」によれば、アトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚では、健常者の皮膚と比較して黄色ブドウ球菌が高頻度に分離されることが古くから知られています。
アトピー性皮膚炎(AD)患者の病変部皮膚での黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の定着率は約70%あるそうです。
そこで浮かんだ疑問は、「アトピーの肌はなぜ黄色ブドウ球菌が増えやすいのか?肌が弱いから菌がつくのか、菌がつくから肌が悪くなるのか?」 。
■わかっていること
1)定着率が高い
健常者の皮膚では黄色ブドウ球菌の定着は比較的少ない(鼻腔などで20〜30%程度)のに対し、アトピー患者の病変部皮膚では約70%(報告によっては60〜90%以上)で高頻度に分離されます。
非病変部でも健常者より高く、病勢が強いほど菌量が増え、皮膚の細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性が低下して黄色ブドウ球菌が優位になります。
2)なぜアトピーの皮膚で増えやすいのか?
アトピーの皮膚環境が菌に有利になるためです。
皮膚バリア機能の低下(フィラグリン遺伝子変異や乾燥など)により、菌が付着・侵入しやすくなる。
Th2型炎症(IL-4、IL-13など)により、抗菌ペプチド(LL-37やβディフェンシンなど)の産生が抑えられる。
皮膚のpHがアルカリ寄りになり、自然保湿因子が減少する。
常在菌(表皮ブドウ球菌など)のバランスが崩れ、黄色ブドウ球菌を抑制する力が弱まる。
3)黄色ブドウ球菌がアトピーを悪化させる仕組み
スーパー抗原(エンテロトキシンなど):T細胞を過剰に活性化し、炎症を増悪させる。
δ毒素:マスト細胞を刺激してヒスタミンを放出させ、かゆみを引き起こす。
α毒素やプロテアーゼ:角質細胞を傷害したり、バリアをさらに破壊する。
フェノール可溶性モジュリン(PSM)やリポタンパク質:サイトカインを誘導して炎症を助長。
バイオフィルム形成により、除去されにくく持続的な刺激になる。
これにより、かゆみ → 掻破 → バリア破壊 → さらなる菌定着・炎症という悪循環が形成されます。
重症化やアトピーマーチ(喘息・アレルギー性鼻炎への進展)にも関与する可能性が指摘されています。
■「鶏が先か卵が先か」
現在の理解としては、皮膚の状態が先に悪くなる(バリア機能低下が先行)ケースが多いとされています。
遺伝的な要因やTh2型炎症(IL-4、IL-13など)によって皮膚バリアが最初から弱い人が多く、その結果、抗菌ペプチドが減り、皮膚のpHがアルカリ寄りになり、黄色ブドウ球菌が付着・増殖しやすくなります。
つまり「肌の健康状態が悪いから菌が定着しやすい」ということですね。
ただ、乳幼児を対象にした前向き研究では、臨床的にアトピー性皮膚炎と診断される前に、皮膚に黄色ブドウ球菌が定着していることが観察されています(Meylan et al., 2017など)。
菌が定着し、菌が産生する毒素が皮膚バリアを壊し、かゆみや炎症を誘発します。
菌が増えると、皮膚の細菌叢の多様性が低下し、さらに悪化してしまいます。
結果として、「バリアが弱い → 菌が増える → 炎症・かゆみが増す → バリアがさらに壊れる → さらに菌が増える」という悪循環になっているんですね。
そう考えると、どちらか一方が原因になっているというよりも、相互に影響しあっているという方が適切ですね。
■どのような対策をするといいの?
ニキビの場合には、顔を触る習慣がポイントになるのですが、アトピーでも同様の考え方が大切になってきます。
〇清潔にする
汗や汚れを落とす(入浴・シャワー)ことで菌の過剰増殖を抑えられます。
ただし、熱いお湯や強い石鹸で洗いすぎるとバリアをさらに傷つけ、逆効果になります。
ぬるめのお湯+低刺激の洗浄料が基本です。
〇手洗い・接触を減らす
鼻腔が菌のリザーバーになっていることが多いので、鼻を触った手で皮膚を掻いたり触ったりすると再定着しやすいです。
手洗いを習慣化するのは有効です。特に悪化時は、清潔なガーゼや手袋で掻破を防ぐのも一つの手です。
〇バリア修復
保湿剤をしっかり使う(入浴後すぐに塗るなど)ことで、菌が定着しにくい環境を作ることができます。
炎症を抑える治療(ステロイド外用薬や生物学的製剤など)をすると、菌量も自然に減ることが多くの研究で示されています。
■まとめ
まとめると、「肌が弱いから菌がつく」がベースにあり、そこに「菌がついてさらに肌を悪くする」が重なっています。
そのため、対策のためには、「肌を守る(保湿+適切な清潔+炎症コントロール)」ことが大事なんですね。
ニキビ対策と同様に清潔にする、触らないようにするというようにシンプルに考えていくとよいのではないでしょうか?
ただし、自己判断で極端な消毒に走らず、必要に応じて医師に相談をしてくださいね。
→ アトピー性皮膚炎とは|アトピーの症状・原因・改善方法・予防 について詳しくはこちら
【参考文献】
- Totté JEE, et al. Prevalence and odds of Staphylococcus aureus carriage in atopic dermatitis: a systematic review and meta-analysis. Br J Dermatol. 2016;175(4):687-695.
(病変部約70%、鼻腔約62%のメタ解析) - Wang Z, et al. Understanding the role of Staphylococcus aureus in atopic dermatitis: strain diversity, microevolution, and prophage influences. Front Med. 2024.
(鼻腔からの自己定着が主な供給源であると明記) - Chiu LS, et al. Staphylococcus aureus carriage in the anterior nares of close contacts of patients with atopic dermatitis. Arch Dermatol. 2010(または関連誌).
(前鼻孔がリザーバーであること、近接者の保菌についても言及) - Meylan P, et al. Skin colonization by Staphylococcus aureus precedes the clinical diagnosis of atopic dermatitis in infancy. J Invest Dermatol. 2017.
(乳幼児で診断前に定着が見られる研究)
【追記】
アトピー性皮膚炎患者の約70%で病変部に黄色ブドウ球菌が定着している点と、洗濯・タオル・枕カバーなどの「雑菌」の関係について考えると、黄色ブドウ球菌とアトピーは「相互に悪循環を作っている」のではないでしょうか?
〇肌の状態が先に悪くなる場合が多い:バリア機能低下(フィラグリンなどの問題、乾燥、Th2型炎症による抗菌ペプチド減少、pHのアルカリ寄りなど)により、菌が付着・増殖しやすい環境になる。
〇菌がさらに悪化させる:スーパー抗原や毒素(δ毒素、α毒素、プロテアーゼなど)で炎症やかゆみを増強し、掻破→バリア破壊→さらに菌が増える、というループを形成する。
〇メタ解析では病変部定着率約70%、非病変部約39%、鼻腔約62%と、健常者より明らかに高い。重症度と菌量も相関する。
主なリザーバーは自分の鼻腔や皮膚であることが多く、タオルや寝具は「二次的な汚染源・再定着の場」になり得ます。
完全に無関係ではないが、主因ではない、という位置づけです。
■洗濯・タオル・枕カバーと黄色ブドウ球菌の関係
黄色ブドウ球菌は布上で数日〜数週間生存可能です(綿で比較的長く残る報告あり)。
湿ったタオルでは特に増殖しやすく、枕カバー・シーツにも皮脂・汗・角質が蓄積して菌が検出されます。
タオル:使用中にブドウ球菌を含む細菌が検出されやすく、湿ったまま放置すると増える。天日干しやしっかり乾燥でかなり減るがゼロにはならない。
枕カバー:1週間未洗いで細菌数が大幅増(企業調査で「トイレ便座の約1万7千倍」という数字が出ることも)。顔が長時間接触するため、敏感肌・アトピーでは摩擦や汚れの再付着が刺激になりやすい。
洗濯効果:低温洗濯+洗剤だけでは不十分で残存しやすい。60℃前後の温水洗浄、または酸素系漂白剤、高温乾燥(または急速完全乾燥)で大幅に減らせる。塩素系漂白剤も有効だが、素材や肌への刺激に注意。
■避ける・減らすための現実的な対策
〇タオル
顔用は毎日交換(または使い捨て)を検討。
湿ったまま放置しない。洗濯後はしっかり乾燥(天日or乾燥機)。
可能なら温水+酸素系漂白剤を時々使う。
〇枕カバー・シーツ
敏感肌・アトピー傾向なら枕カバーは2〜3日に1回(または上にタオルを敷いて毎日交換)。
シーツは週1回程度。
温水(40〜60℃)+洗剤、時々酸素系漂白剤。完全乾燥を徹底。
〇全体
鼻を触った手で皮膚を触らない、手洗い習慣。
保湿をしっかり(バリア修復が菌の定着を抑制)。
炎症コントロール(医師の指示に従った外用薬など)が菌量を自然に減らす効果も大きい。
共有タオル・寝具は避ける(特に二次感染時)。
自己判断で極端にせず、必要に応じて皮膚科医に相談してくださいね。
論文でわかる生乾き臭の正体と対策/科学が示す60℃洗浄・酸素系漂白剤・急速乾燥で紹介した「生乾きを避ける」「60℃や酸素系漂白剤」は、黄色ブドウ球菌を含む雑菌対策として有効な手段の一つになります。
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