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STEAM教育|なぜ子供の教育に「Art(芸術)」が欠かせないのか?




【目次】

■STEAM教育|なぜ子供の教育に「Art(芸術)」が欠かせないのか?

City of the Future: Fourth Class at Tam High

by Fabrice Florin(画像:Creative Commons)

大人にこそ必要な「STEAM+SF教育」とは何か

(2017/2/13、Forbes Japan)

就任当時のオバマ大統領は、OECDが世界の15歳を対象に実施するPISA(学習到達度調査)で、アメリカの子供たちの成績が低いことに驚き、小中学校での「STEM」教育あるいは「STEAM」教育に力を入れた。現在の子供たちが将来、よりよい職を得るために欠かせないと考えたのだ。

AMAZON、STEMおもちゃの定期購入サービスを開始|世界の教育は「遊びながら学ぶ」という方向に進んでいる!?で紹介しましたが、STEMとは、Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉で、当時のオバマ大統領が積極的に教育に取り入れようとしたことで注目されました。

President Obama on the Importance of STEM Education

この「STEM」にArt(芸術)を加えた言葉が「STEAM」です。

なぜ「Art(芸術)」が必要なのでしょうか?

この問いへの回答としては、「なぜデザインなのか 原研哉 阿部雅世 対談」の言葉が最も適切だと思います。

なぜデザインなのか。

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図工というのは、言い換えれば「クリエイティビティ」ですね。いま日本の基礎教育の中で図工の時間が減っているのですが、これはのりで色紙を貼るような「作業の時間」が減るのではなくて、「創造性」の時間が削減されていると考えたほうがいい。国語、算数、理科、社会、図工はあまりに身近になっているので、ピンと来ないところがありますが、言い換えれば「言語」「数学」「科学」「世界」「創造性」です。科学に創造性を掛け合わせるからノーベル賞級の独創的な研究が生まれる。クリエイティビティを過小評価してはいけないし、させてもいけない。

「Art(芸術)」は小学校の授業に当てはめると「図工(図画工作)」に当たり、この図工を「Creativity(創造性)」と言い換えると、図工の時間が減るということはクリエイティビティ(創造性)を大事にしていないということになります。




■なぜクリエイティビティ(創造性)が大事なの?

ではなぜクリエイティビティ(創造性)が大事なのでしょうか?

「創造力」に関しては「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)の言葉が印象的です。

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創造力を刺激する遊びを通じて、子供の知識が広げられないと、すでに知っている事柄同士の関係を築くことはできない。仮に関係を築くことができたとしても、それは非常に限定された方法でなされたにすぎず、それでは子供のファンタジアを発達させるに至らない。

子供を創造力溢れ、のびのびしたファンタジアに恵まれた人間に育てたいなら、可能な限り多くのデータを子供に記憶させるべきだ。記憶したデータが多ければ、その分より多くの関係を築くことができ、問題に突き当たってもそのデータをもとに毎回解決を導き出すことができる。

創造力とは、知識同士の関係性をつなぎあわせ、それを表現する方法であるとするならば、ある問題に対して、国語(「言語」)、算数(「数学」)、理科(「科学」)、社会(「世界」)という授業で学んだ知識同士をつなぎ、どのような手段・方法で解決するかを考える上で欠かせないものです。

子供が描いた絵に対して大人が創造力があると表現することがありますよね。

なぜ大人は子供が描いた絵に対して創造力があると表現するのでしょうか。

それは、無関係なもの同士をつなげたことによって、大人では想像できなかったものを描いたからです。

ただ、それは、ランダムに組み合わせたものが意図せず偶然作られたもの(子供によっては意図して作るケースもあるかと思います)であり、また、子供たち自身がメッセージ性をもって作り上げたものではありません。

「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)にはこう書かれています。

無知こそが最大の自由を与えると信じるのは間違っている。
むしろ知識こそが自己表現の手段を完全に操る力を与えるのだ。
それにより、手段とメッセージに一貫性をもたせ、明確に自己表現できるようになる。

子供に対しては、遊びや授業を通して、様々な表現方法があることを記憶させることによって、自分が本当に伝えたい・解決したいことができた時に、最も気持ちと一致した表現方法で表現することができるはずです。

言葉で表現することや絵で表現すること、映像で表現すること、写真で表現することなど様々な表現方法がありますが、多くの知識を持つことが自己表現に役立つのです。

しかし、それは芸術家になれということではありません。

創造力は生きる上での大事な力になってくれます。

クリスマスにピザ店で持ち帰り用のピザを提供するのが遅いからと言って怒る人。

人にはどうすることもできないような大雪にもかかわらず、飛行機が飛べないことに対して怒る人。

このツイートでは「想像力」という言葉を使いましたが、創造力が欠けた人は変化に対応することが難しいのだと思います。

「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)

創造力を欠いた人は、人生で避けて通ることのできない様々な変化にうまく適応できない。例えば、多くの親が自分の子供を理解できなくなってしまうのがそうだ。

創造力のある人は常に共同体から文化を受け取り、そして与え、共同体とともに成長する。創造力のない人はだいたい個人主義的で頑なに自分の意見をほかの個人主義者のそれと対立させようとする。

創造力が欠けていると、それぞれの関係性を結びつけることが難しく、変化に対応するのが苦手になってしまうのでしょう。

創造力は人生を楽しく生きる上での大事な力になってくれるはずですので、子供の時から遊びや授業を通じて教えてほしいですね。

原田セザール実:科学好きの子供を作るには

(Aug 2015、TED Talk)

リンダ・リウカス:子供に楽しくコンピューターを教えるには(Oct 2015、TED Talk)







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【仮説】『料理』は『創造力』を育てる方法|Tinkering(ティンカリング)やブルーノ・ムナーリの視点から




cooking in progress

by Jaume Escofet(画像:Creative Commons)

【仮説】『料理』は『創造力』を育てる方法

私はストレス解消の一環として時々料理を作っています。

完全に趣味で料理を作っているので、時短料理や簡単・手抜き料理ではなく、手の込んだ料理を作りたいと思って、NHKの今日の料理のレシピを見て作ったり、最近ではバーミキュラ(Vermicular)のライスポット(Ricepot)を購入し、無水調理や低温調理なども試しています。

※おいしい銀シャリが手軽に作れますし、無水にも関わらずにこんなに水分って野菜から出るものなんだ、低温調理機能がついていればローストビーフが簡単に作れるもんだんだなど調理家電のすごさに驚いていますが、その話は別の機会に。

ある時、ふと考えが浮かびました。

「『料理』は『創造力』を育てる方法なのではないか」という仮説です。

これまで、このブログでは、以前から創造力はどのようにして生み出されるのかについて関心を持ってブログに書いたり、またここ最近STEM教育に関心をもってこのブログでも取り上げています。

そこで、「創造力はどのようにして生み出されるのか」や「どのようなことがSTEM教育に役立つのか」について学び、言葉を書き留めているのですが、「料理」で例えるとぴったりくることが多いと感じたのです。

例えば、#Sony ロボット・プログラミング学習ができるSTEM教育キットKOOV|「Tinkering(ティンカリング)」とデザイン力を育てるでは、「Tinkering(ティンカリング)」の重要なポイントは、頭で考えるだけでなく、手を使い触りながら考えることも大事であり、手触りで試行錯誤する過程が非常に教育効果が高いと学んだのですが、「料理」こそ手触りで試行錯誤しながら作っていくものですよね。

また、創造性・創造力ということについて、私自身の指針の一つともなっている「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)には、保存しなければならないのは、作品ではなく、そのやり方や企画の立て方であり、問題に対して何度もやり直せると感じられることが重要だとあります。

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「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)

集団で作った作品を壊すのは、特に幼年期の場合、模倣のモデルを作らせないため。

保存されるべきは、そのやり方であり、企画を立てる方法であり、出くわす問題に応じて、再びやり直すことを可能にさせる柔軟な経験値である。

「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)によれば、模倣のモデルを作らせないため作品を必ず壊すようにするとありましたが、「料理」は必ず食べてなくなってしまいます。

大事なのは、どのようにして作ったか(レシピ)、どのような段取りで作るとよいのか、味付けをどのように変えるとよりおいしくなるのかを考えることにあります。

創造力を刺激する遊びを通じて、子供の知識が広げられないと、すでに知っている事柄同士の関係を築くことはできない。仮に関係を築くことができたとしても、それは非常に限定された方法でなされたにすぎず、それでは子供のファンタジアを発達させるに至らない。

子供を創造力溢れ、のびのびしたファンタジアに恵まれた人間に育てたいなら、可能な限り多くのデータを子供に記憶させるべきだ。記憶したデータが多ければ、その分より多くの関係を築くことができ、問題に突き当たってもそのデータをもとに毎回解決を導き出すことができる。

さまざまな料理の作り方、食材の選び方というような知識を広げることができれば、新たな関係を築くことにより、新しい料理が生み出されます。

仮に、「焼く」という調理方法しか知らない子供はその限定された方法でしか、料理を作ることができませんが、そこに、煮る、蒸すなどの調理方法があることを知れば、新しい料理を作ることができるようになります。

無知こそが最大の自由を与えると信じるのは間違っている。
むしろ知識こそが自己表現の手段を完全に操る力を与えるのだ。
それにより、手段とメッセージに一貫性をもたせ、明確に自己表現できるようになる。

子供が描いた絵に対して大人が創造力があると表現することがありますよね。

なぜ大人は子供が描いた絵に対して創造力があると表現するのでしょうか。

それは、無関係なもの同士をつなげたことによって、大人では想像できなかったものを描いたからです。

ただ、それは、ランダムに組み合わせたものが意図せず偶然作られたもの(子供によっては意図して作るケースもあるかと思います)であり、また、子供たち自身がメッセージ性をもって作り上げたものではありません。

子供が料理の作り方や食材の選び方などを学ぶことによって、自分でこんな料理と作りたいと思った時に、最も創造したものと一致した調理方法で表現することができるはずです。

つまり、「料理」を作ることは「創造力」を育てる方法の一つだと考えられるのです。

まとめ

「『料理』は『創造力』を育てる方法である」という仮説が正しいとすれば、「どのようにしたらおいしい料理を作れる教え方ができるのか」ということを通じて、創造力のあふれる教育方法に活かせるのではないでしょうか?

レシピ動画アプリでお手軽な料理を見るのも楽しいですが、手の込んだ料理がどのような過程を通じて作られるのか、どのような丁寧な仕事がその料理にされているのかを知るとまた一味違った味わいをするものです。

きっとそれが料理を生命を維持するだけのものから食事を通じて感動を味わえる存在に変わっていき、様々な分野に対する好奇心にもつながっていくのではないでしょうか?







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創造力は学べる!?|創造力は才能か?それとも身につけられるものか?

Breaking News on My Desk

by Moses Mehraban(画像:Creative Commons)




創造力は才能?それとも教えられるもの?最新の研究から見えてきた答え

(2014/8/18、ライフハッカー)

1.オープンネス

「スコアが特に高い人たちは、pMTG(右後部中側頭回)にある灰白質の体積が大きいことがわかりました。pMTGとは、創造性に関連する脳の領域です」とデリストラティ博士。

<中略>

その結果、pMTGの大きさと「オープンネス」と呼ばれる特徴に、高い相関があることがわかりました。オープンネスがある人とは、常に新しい経験を追い求め、想像力豊かな人のことです。そして、オープンネスは後から育てられる特性です。

創造性に関するテストで高得点を出した人は、pMTGという創造性に関する脳領域が大きいことがわかったそうです。

そして、このpMTGの大きさと「オープンネス」に高い相関があることがわかったそうです。

つまり、新しいもの(食べ物・外国語)に挑戦する、新しい人に会うといった好奇心旺盛な人こそオープンネスを育てることができ、そうした人は創造性を高めることができるということですね。

ところで、「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、脳には、「一回分類してしまうと、それ以外の尺度では分類できなくなってしまう」という頑固さとも呼べるような性質があり、創造的であるためには、画一的な見方をする脳に対して常に挑戦をしなければならないそうです。

「オープンネス」は、創造性にとって欠かせないものということではないでしょうか。

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2.創造性は脳の処理速度に依存する!?

ある研究で、「情報を高速に処理できる人の脳は、より多様な情報を結びつけたり、より独創的な関連付けを行える」ことがわかったそうです。「これは創造性を示す指標でもある」とデリストラティ氏。

どんなに新しく刺激的な経験をインプットしても、処理能力には限界があるということですね。

ただ、その処理能力は伸ばせると思います。

「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、脳の中の情報の通る量の抵抗が下がったり上がったりすると、道が増えたり太くなったりするそうで、神経細胞は使えば使うほど密になるそうです。

つまり、創造することをやりすぎてしまうことで、その処理能力は上がるということですね。

■まとめ

「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)の中に、「センスは学べる」という言葉があります。

センスというのは学べないものだと思っていたので、どういうことなのだろうと思っていました。

人間の認識は感性も含めて記憶の組み合わせでできています。

ですから、創造性も記憶力から来るということが出来ます。

新しい認識を受け入れてネットワークを綿密にしていくことが、クリエイティブな仕事というものに近づいていくヒントになるのです。

ひとつ認識のパターンが増えると、組み合わせの増え方は、統計学的には莫大な数になる。

<中略>

同じ視覚情報が入ってくるにもかかわらず、認識するためのパターンの組み合わせが違う。だからそれぞれの人の見方に個性が出るわけだし、創造性が生まれる。

そう思うと、日常生活においていかに新しい視点を加えることが大切かということがわかります。

同じものを見ていても、人によってモノの見方が違うため、全く人と違ったものを創造します。

大事なことは、新しい視点を加えていくことです。

「ファンタジア」という創造性について書かれた本の中で、創造性と子供についてこう書かれています。

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子供を創造力溢れ、のびのびしたファンタジアに恵まれた人間に育てたいなら、可能な限り多くのデータを子供に記憶させるべきだ。記憶したデータが多ければ、その分より多くの関係を築くことができ、問題に突き当たってもそのデータをもとに毎回解決を導き出すことができる。

子供は創造性に溢れていて、大人と違った発想をするという意見があります。

ただそれは子供の中にある限られた視点から情報を組み合わせているため、大人からは面白い発想をするように見えているだけかもしれません。

「海馬 脳は疲れない」「ファンタジア」に共通するのは、「記憶」です。

認識のパターンの記憶が多ければ多いほど、多くの関係を築くことができ、新しいアイデアや解決策を考えることができるのです。

つまり、「創造性は学べる」のです。







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人間は一番疲れている時に一番創造的になれる!?

tired

by Nicolas Alejandro(画像:Creative Commons)




人間は一番疲れている時に一番創造的になれる!?

(2012/2/13、ライフハッカー)

研究では、学生に対して1日の様々な時間に、問題を解決する課題を与えました。

学生が最も洞察力を発揮したのは、脳の機能が最もよく動いていない時だったそうです。

この結果を受け、研究者は創造力を必要とする授業を、こういった脳の機能の動きがよくない時間に取ることを推奨しています。

多くの人にとって、最も脳の働きの良くない時間は朝一番か昼食後です

最も脳が働いていない時間が最も創造的になれるそうです。

意外だったのは、朝一番が最も脳の働きがよくない時間だったということ。

最も脳の働きがいいから朝活などが流行っているものと思っていました。

P.S.

そういえば、アイデアが浮かぶと言われるときは、

風呂・トイレ・寝る前・馬上(今で言えば電車・バスでしょうか)

と言われていますよね。

夢想状態に近いときほど、そうしたアイデアが生まれやすいのではないでしょうか?







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