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がんによる死亡率が12年連続ワースト1青森県の胃がん・大腸がん検診で4割見落とされた可能性があった!?

Medical check-up

by Army Medicine(画像:Creative Commons)




■がんによる死亡率が12年連続ワースト1青森県の胃がん・大腸がん検診で4割見落とされた可能性があった!?

以前からこのブログでは青森県はがん死亡率ワースト1(12年連続)というニュースを紹介してきました。

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そこで、その理由の仮説として青森県の生活習慣に問題があるのではないかと思い、その原因に関するデータや改善案を紹介してきましたが、NHKのニュースによれば、がん検診で見落としがあったそうです。

胃がん・大腸がん 検診で“4割見落とされた可能性” 青森県

(2017/6/29、NHK)

検診を受けて異常なしと判定されたのに1年以内にがんと診断された人を見落としの可能性があると定義し、その割合を調べたところ、検診の段階でがんを見落とされた可能性がある人はバリウムによるX線検査を行った胃がんで40%、便に含まれる血を調べる「便潜血検査」を行った大腸がんで42.9%、子宮の入り口の細胞を調べた子宮頸がんで28.6%に上ることを示す分析結果がまとまりました。

平成23年度に自治体によるがん検診を受けた青森県内の住民2万5000人を追跡調査したところ、胃がん大腸がんのおけるがん検診の段階で患者の4割が見落とされていた可能性があることがあることがわかったそうです。

がんの発見率を100%にしようとすると、がんでない多くの人に本来必要でない精密検査を行うことで結果として健康被害を引き起こすおそれがあるためで、20%程度であれば多くの場合、初期のがんでもあり次回の検診で見つければ影響も少ないためだということです。

20%程度であれば次回の検診で見つければ影響も少ないため問題ないと考えられますが、胃がん・大腸がんの場合は40%を超えているため、がん検診の質(仕様書通りに検診が行なわれていないなど)が低いというような何らかの問題が隠されているのではないかというのが今回の報道のポイントです。

また、今回は青森県の追跡調査だけでわかったことですが、もしかすると、全国的に調べれば、同じようなガンの見落としが見つかる可能性もあります。

【参考リンク】

■国立がん研究センターの声明「検診に見落としがあったという評価をするのは難しい」

【追記(2017/7/14)】

青森県のがん検診での見落としに関する報道について

(2017/7/13、国立がん研究センター)

本調査により示されている見落としの割合は、10市町村での予備的なものであり、40市町村ある青森県全体の実態を反映するものではありません。また、調査期間が短く、症例数が10例以下と少なく、さらには見落としに含めるべきではない症例も含められている可能性があります。

1)事業対象自治体が少なく、がんの数が非常に少ない
2)十分な観察期間が確保できていない
3)偽陰性(見逃し)として計上されたがんに偽陰性として計上するべきでないがんが含まれている

国立がん研究センターによる青森県のがん検診での見落としに関する報道についての全文をお読みいただくとして、ポイントとしては、調査は予備的なものであり、また調査期間が短く、症例数も少なく、見落としに含めるべきでない症例も含まれている可能性があるため、検診に見落としがあったという判断をするのは難しいということです。

がん検診を受ける側の私たちにとっては、がん検診による見落としをゼロにしてほしいと単純に思ってしまいますが、完全にゼロにすることはできないそうです。

検診の感度を上げて「見落とし」を抑えることにのみ注目すると、逆に、がんではないのにがん疑いとされる受診者(偽陽性者)が多く発生することになります。

例えば、乳がん検診への関心高まる|乳がん検診が推奨されるのは40代以上、その理由とは?によれば、乳がんの早期発見のためには乳がん検診を受けることが重要なのですが、実際には乳がんではないのに、「疑いあり」と診断される偽陽性で無駄な検査を受けたり、診断が確定するまでの間に精神的に不安になったりすることや、X線による被曝(ひばく)リスクが高まることなどで、乳がん検診による「不利益」が「利益」を上回るとされるため、20から30代は乳がん検診は推奨されていません。

つまり、がん検診においては、偽陽性を最小化することが重要なのです。

偽陽性を最小化にすることと見落としを少なくしていくこと、両方を目指す必要があるので大変だとは思いますが、今回の報道により、がん検診に対する関心が高まり、より良い方向に進むといいですね。




■まとめ

日本のがん検診受診率は上昇傾向にあるものの、欧米に比べて低い!?|平成28年国民生活基礎調査で紹介した平成28年国民生活基礎調査によれば、男性の胃がん検診、肺がん検診、大腸がん検診の受診率は上昇傾向にあるのがわかります。

また、女性の胃がん検診、肺がん検診、大腸がん検診、子宮がん検診(子宮頸がん検診)、乳がん検診の受診率も上昇傾向にあるのがわかります。

国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることでも書きましたが、医療費が増え続けている現在、今後予防医療は重要なカギとなると考えられますので、がん検診の質が向上していくことが望まれます。

大腸ポリープ・大腸がんの早期発見率98%!AIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステム|国立がん研究センター・NECによれば、大腸がんの予防には、いかにして内視鏡検査時に前がん病変であるポリープの段階で見つけ摘除することが重要なのですが、医師による見逃しの例があるという報告があります。

国立がん研究センターとNECは、約5,000例の内視鏡画像をNECのAI技術に学習させることにより、前がん病変としてのポリープと早期がんの発見率は98%というリアルタイム内視鏡診断サポートシステムを開発したそうです。

肉眼では見つけにくいことや大腸がん内視鏡検査を行う医師の技術が不足しているために見逃していたということをテクノロジーの力で補助するようになっていくのでしょうね。

バリウムによるX線検査を行った胃がんで40%、便に含まれる血を調べる「便潜血検査」を行った大腸がん42.9%の見落としの原因が解明され、それがもしガイドラインに沿って行われていなかったというような行動が原因だとしたら、それをテクノロジーの助けを借りて支援していくことが必要なのではないでしょうか。







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2012年に「がん」と診断された人は約86万人|11年よりも1万4000人増加

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by Nicolas Alejandro(画像:Creative Commons)

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【目次】




■2012年に「がん」と診断された人は約86万人

がん患者、12年86万5238人に増加 男性の大腸がん急増

(2016/6/29、日本経済新聞)

国立がん研究センターによる全国47都道府県のがん患者数の最新データによれば、2012年にがんと診断された人は約86万人と過去最多だったそうです。

国立がん研究センターによれば高齢化の進行が原因としています。

推計値と実測値(47都道府県単純合計値)の比較 グラフ

参考画像:日本のがん罹患数・率の最新全国推計値公表2012年がん罹患数86.5万人|国立がん研究センタープレスリリース(2016/6/29)

■男性では大腸がんの患者が急増

男性では、11年に4位だった大腸がんの患者が急増して2位となった。

<中略>

部位別にみると、男性が胃、大腸、肺、前立腺、肝臓の順になった。前立腺がんは増勢が止まったものの、大腸がんが増えている。女性は乳房、大腸、胃、肺、子宮の順で11年と同じだった。

男性のがん、「大腸がん」が初の1位、「胃がん」を抜き(2015/8/4)で紹介した国立がん研究センターが公表した「がん診療連携拠点病院」(409施設)の2013年の診療実績によれば、男性の部位別症例数では、大腸がんが初めて1位になっており、今回の記事を合わせても、男性の大腸がんが増えていることがわかります。

がん診療連携拠点病院」(409施設)の2013年の診療実績による部位別症例数のデータは次の通り。

【日本の男性】

  1. 大腸がん
  2. 胃がん
  3. 前立腺がん
  4. 肺がん

【女性】

  1. 乳がん
  2. 大腸がん
  3. 肺がん
  4. 胃がん




■がんの種類に地域差がある

がんの種類によって罹患率に地域差があり、胃がんは東北地方や日本海側で高い傾向にあることも分かった。肝がんは西日本で高い傾向がみられた。乳がんは東京で非常に高かった。

●胃がん

胃がん

参考画像:日本のがん罹患(りかん)数・率の最新推計値公開|国立がん研究センタープレスリリース

以前も取り上げましたが、なぜ胃がん患者は日本海側で多い傾向にあるのか?で紹介した国立がん研究センターによるがんと診断された患者数の都道府県別の推計値によれば、「胃がん」は、特に地域の特徴が顕著に現れており、日本海側の県で平均よりも多い傾向にありました。

なぜ、胃がん患者は日本海側で多い傾向にあるのでしょうか?

理由としては、今回の記事によれば、食塩の摂取量といった食生活が関係しているのではないかということでしたが、一番大きな要因はピロリ菌を持っているからではないでしょうか。

胃がんの原因としては、最近の研究によって、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)が大きく関わっているのではないかと考えられています。

ピロリ菌感染者6000万人!|あさイチ(NHK)によれば、胃がん患者の98パーセントがピロリ菌の感染者であったという調査結果があるそうです。(もちろん、ピロリ菌感染者が必ず胃がんになるわけではありません。)

もしかすると、日本海側ではピロリ菌に感染しやすい環境、例えば、ピロリ菌感染者の親が口をつけた食べ物を子供に与える習慣を持つ家庭が多い、ピロリ菌がいる井戸水を使用していたりといったことがあるのかもしれません。

→ 胃がん|胃がんの症状・原因 について詳しくはこちら

●肝がん

肝がん

参考画像:日本のがん罹患(りかん)数・率の最新推計値公開|国立がん研究センタープレスリリース

肝臓がんは近畿以西の西日本に多い傾向があります。

肝臓がんになるほとんどの原因はウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)から肝硬変になったものであるため、肝臓がんの予防するためには、肝硬変になる前に、肝炎ウイルス検査や肝機能検査を行ない、肝炎を早期に発見し、治療を行うことが第一です。

また、糖尿病の人はそうでない人に比べて、肝臓ガンになるリスクは1.97倍高いそうです。

→ 肝臓がん について詳しくはこちら

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●乳がん

乳がんは東京で非常に多かったそうですが、乳がんが高くなる要因に当てはまる人が多いのかもしれません。

乳がんリスクが高くなる要因

  • 初潮が早い(11歳以下)
  • 閉経が遅い(54歳以上)
  • 初産年齢が高い(30歳以上)
  • 妊娠・出産歴がない
  • 授乳歴がない
  • 祖母、親、子、姉妹に乳がんの人がいる
  • 肥満度が高い(閉経後)
  • 喫煙している
  • 大量に飲酒する習慣がある
  • 運動不足

→ 乳がんの症状・原因・ステージ分類・検査・予防法 について詳しくはこちら







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大腸がんと腸内細菌の関係、ゲノム解析で大腸がん予防法の発見につなげる|国立がん研究センターなど

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by University of Exeter(画像:Creative Commons)

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大腸がんと腸内細菌の関係を調査へ 室温便でゲノム解析

(2016/7/8、朝日新聞)

最近のDNA解析技術の進歩で、腸内細菌を集団のままゲノム(全遺伝情報)解析をして細菌の種類を調べることができるようになり、病気とかかわりを調べる研究が盛んになっている。

 ただ、便には1グラムあたり1千億個の細菌が含まれ、排便後すぐに雑菌が増えるので、直後にドライアイスなどで冷凍保存することが必要で、より簡単な保存方法が求められていた。グループは、微生物の繁殖を抑える溶液を使って、室温保存ができないか検討。8人の凍結便と室温保存便でゲノム解析の結果を比べたところ差が少ないことを確認した。

国立がん研究センターなどのグループは、従来は凍結していた研究試料の便を室温で保存しても解析できる手法を確立したそうです。

今後、大腸内視鏡検査を受けた5千人の患者の腸内細菌のゲノム解析をし、食事などの生活習慣と合わせて、大腸がんの原因を調べ、がんの予防法を研究していくそうです。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら







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がん患者、初の100万人超 死亡は37万人 16年予測|国立がん研究センター

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by Guilhem Vellut(画像:Creative Commons)




がん患者、初の100万人超=16年予測、死亡は37万人―がんセンター

(2016/7/15、時事通信)

同センターが過去の患者数や推計人口を基に予測した。発症は男性が57万6100人で、女性が43万4100人。部位別では大腸がんが14万7200人と最も多く、胃がん肺がんが13万人台で続く。前立腺がん、乳がんもそれぞれ9万人を超えるとみられる。

 死亡では肺がんが7万7300人と最多。男性が約7割を占め、喫煙者の割合が多い団塊の世代の高齢化が影響しているとみられる。次いで大腸がん、胃がん、膵臓(すいぞう)がん肝臓がんが多くなりそうという。

国立がん研究センターによれば、今年新たにがんと診断される患者は101万200人で、死亡する患者は37万4000人に上るとの予測を発表しました。

このデータを昨年の予測と比べてみましょう。

がんにかかる人、今年の予測は98万人 大腸がんが1位|国立がん研究センター(2015/4/28)

部位別では大腸がんが13万5800人で最も多く、肺がん13万3500人、胃がん13万3000人、前立腺がん9万8400人、乳がん8万9400人の順。

死亡者数の予測は37万900人で昨年の推計値より約4千人増えた。部位別では、肺がんが最多で7万7200人、大腸がん5万600人、胃がん4万9400人、膵臓(すいぞう)がん3万2800人、肝臓がん2万8900人の順だった。

1年前は、部位別で3位だった大腸がんが、胃がんや肺がんを抜いて一位になることが大きなニュースになりましたが、今年の予測は今年新たにがんと診断される患者が100万を超えることが大きなことで、その他は昨年と大きな違いはないようです。

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大腸がんの再発の原因となる「がん幹細胞」を抑制する新規化合物を開発|国立がん研究センター

Preparing medical response to disasters - Nairobi, Kenya - 05-2010

by US Army Africa(画像:Creative Commons)

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大腸がん再発防ぐ?新物質を開発 国立がんセンターなど

(2016/8/27、朝日新聞デジタル)

国立がん研究センターなどの研究チームは26日、大腸がんの再発を防ぐ可能性がある新たな物質を開発したと発表した。従来の抗がん剤が効きにくく、再発や転移をしやすい「がん幹細胞」を抑える効果があり、新たな抗がん剤として実用化をめざすという。

<中略>

患者の9割は、細胞の増殖などを制御する「Wnt(ウィント)シグナル」と呼ばれる細胞内の命令系統に異常が生じて、がん細胞やその元になるがん幹細胞の増殖・発生が引き起こされるという。

大腸がんの90%以上の患者で、大腸がんの発生に必須なシグナル伝達経路「Wntシグナル経路」に遺伝子異常が起こることによってがん細胞やがん幹細胞の増殖・発生が引き起こされていましたが、国立がん研究センターなどの研究グループは、大腸がんの発生に必須なシグナル伝達経路「Wntシグナル経路」を阻害することができる新規化合物を創出したそうです。

大腸がん幹細胞を抑制する新規化合物を創出

(2016/8/26、国立がん研究センター)

従来の抗がん剤は腫瘍を縮小することができましたが、薬剤が効かない「がん幹細胞(がんの根元の細胞)」が残ってしまい、がんが再発する原因になっていました。この新規化合物はがん幹細胞が腫瘍を再度作る働きを抑えることが動物実験で明らかになりました。国立がん研究センターでは、現在、大腸がんに対する新規治療薬として実用化を目指しています。)

今回の研究によって、新規化合物はがん幹細胞が腫瘍を再度作る働きを抑えることが動物実験でわかっており、現在国立がん研究センターでは大腸がんに対する新規治療薬としての実用化を目指しているそうです。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら







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