気候変動でヨーロッパワインがピンチ!?地理的表示(GI;ジーアイ)システムの硬直性が脆弱性の増大につながる可能性




欧州ワインがピンチ 気候変動で〝GI〟難しく 国際研究グループが指摘(2024年12月7日、日本農業新聞)で紹介されている、イタリアなどの国際研究グループによれば、地理的表示(GI;Geographical Indication(ジオグラフィカルインディケーション))の考えが定着している欧州ワインで、約5%の銘柄が今後の気候変動に適応できず生産が難しくなるなど脆弱性がとても高いそうです。特に南ヨーロッパのワイン産地が最も脆弱であるそうです。

Nature誌に掲載されたこの論文を読み、要点をまとめました。

【参考リンク】

  • Tscholl, S., Candiago, S., Marsoner, T. et al. Climate resilience of European wine regions. Nat Commun 15, 6254 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-50549-w

地理的表示(GI、原産地に基づいてワインを分類および規制するシステム)の概念は、ワインのアイデンティティを定義し、製品のユニークな特徴と原産地との強いつながりを確立する上で重要な役割を果たしています。実際、世界で最も有名なワインの多くは、ブドウの品種ではなく、その原産地で知られています。

これまでも気候変動は常にワイン造りに影響を与えてきましたが、現在の気候変動の速度は前例のないスピードであり、これまで歴史的に培ってきたもの、具体的には、好ましい立地条件、最適なブドウ品種、伝統的なブドウ栽培方法とマッチしなくなってきています。

例えば、ブルゴーニュとシャンパーニュはピノ・ノワールから作られるワインで知られていますが、ピノ・ノワールのブドウを栽培できなくなった場合、代替のブドウ品種はラベルの資格を得ることができず、また、ワイン産地の規制を改正するプロセスを経ずに、栽培者が地域外からブドウを調達したり、新しい栽培技術を導入したりすることは法律上許可されないそうです。

ワインの特徴をなすテロワール(ブドウ畑を取り巻く環境)という歴史的な考え方がありますが、気候変動への適応には柔軟性が必要だと研究グループは指摘しています。

適切なブドウ品種の開発を制限した狭い範囲のブドウ品種、固定された管理方法など地理的表示システムの硬直性は、脆弱性の増大につながる可能性があります。

現状の厳格な栽培基準や栽培地域を定める方法を維持したままだと、今日知られているワイン産地の多くは今後変化することが予想されます。

「なぜデザインなのか 原研哉 阿部雅世 対談」によれば、ヨーロッパの文化は保守であると書かれています。

ヨーロッパの文化というのは保守だと思うのです。
ヨーロッパにおける保守は「進歩を疑う」ということだと思います。要するに、いかにあなたが天才的な合理性を持っていたとしても、人類が何千年もかけて築いてきたこの叡智をあなた一代で覆すことはできないでしょう、という視点。覆すにしても、その膨大な叡智を覆すのだという重みを持って覆しなさいという慎重な態度が背景にある。積み重ねられてきた文化の堆積の尊厳をすごく大事にしているしそうだと思うんですね。

テロワールというのはその最たるものなのでしょう。

積み重ねられてきた文化の堆積の尊厳を大事にし、人類が築き上げてきた叡智を覆すにはそれ相応の態度で行うべきだというのはその通りです。

ただその叡智を一気に壊してしまうような気候変動が起きているのも私たちは実感しています。

私たち祖先もいろんな環境変化に対応して、試行錯誤を繰り返しながら、その土地にあった作物を作り上げてきたはずです。

地理的表示システムは、気候変動に適応し、テロワールと消費者のつながりを維持しながら、アップデートしていく必要があるのではないでしょうか?

我々の祖先が歴史をつないできたように。

【追記(2025年6月22日)】

豪ワイン農園、気候変動に知恵 「日焼け止め」や「大根」活用(2025年6月22日、時事通信)によれば、オーストラリアのワイン農園は気候変動対策のために、ブドウを猛暑から守る専用の日焼け止めの散布や、干ばつや豪雨で弱った土壌の再生の下草として大根を植えるなどの対策をしているそうです。

〇粘土由来のカオリナイトを主成分とするブドウの日焼け止めを開発。夏にブドウの木全体をコーティングするように散布し、酷暑から保護している。気温が35度を超えると光合成が衰え、ブドウの成熟は遅くなるが、日焼け止めを使うと木の温度上昇を抑え、計画通りに成熟を進められるという。

〇ブドウの木の列の間で野菜を育て、土の湿度を保つとともに、昆虫や微生物のすみかをつくって土を活性化させている。特に大根は地中深くに伸びるため、効果が大きいことが分かった。







生成AIで脳が退化してしまう!?AIで人の思考力が低下するというMITやMicrosoftの研究




生成AIを使って何かをするということが日常的になっていますね。

それによる社会への影響が少しずつ出てきていますが、私たち自身への影響はどのくらいあるのでしょうか?

そう思ったのはこの投稿がきっかけ。

自身が行うタスクをAIに決めてもらってそれを実行する、これは方向性としてはあってるんだけど、AIが決めたことを実行することにおいて脳は使われていないんじゃないか、もしAIに不具合が起きた時に何も決められなくなるんじゃないか、と考えたからです。

より効率的に物事を進めていく、つらいことを手放すという意味でAIの活用はいいことなのだと思うのですが、例えば実行するタスクを決めるという作業において、それを脳でどうすべきかを考えることこそがそもそも重要なのではないかと思ったりするのです。

例えば、MITの研究によれば、ChatGPTを使用してエッセイを書いたグループは、自力で書いたグループに比べ、脳の神経接続性が最大で55%も低下したそうです。

自身が書いたエッセイから一文を引用してもらうテストで「書いたはずなのに思い出せない」現象が起きているのですが、何かを考えるうえでLLMにその部分をお願いしてしまうと、自分で考えることを手放ししてしまって、思考がつながらないというか、ひとかたまりの記憶(チャンク)として残らないということが起こっているのではないでしょうか?

マイクロソフトとカーネギーメロン大学が「ChatGPT(チャットGPT)」のような生成AIを使う人の間で批判的思考能力が低下しているとの調査論文を発表したという記事もありました。

【参考リンク】

こうしたことを「認知負債(Cognitive Debt)」で説明できるという記事がありました。

認知負債とは、

目先の認知的な負荷をAIに肩代わりさせることで、短期的には「楽」ができるものの、長期的には批判的思考力、記憶力、創造性といった知的資本を失っていく状態

を指す。

自身の脳の負担をAIに「肩代わり」してもらうことで、短期的には楽ができたようでも、長期的には知的資本が失われていくというのは怖い話です。

「AIを使うと簡単にブログが自動的にできるんですよね」という投稿を見たのですが、人間が書いたのかAIが書いたのか、という議論もありますが、AIを活用すると脳が使われなくなっていくのであれば、将来の認知症リスクが高くなる可能性があるとも言えます。

認知症になる人とならない人の差とは?で紹介したアメリカやヨーロッパで認知症の発症率が低下している理由の仮説としては2つとして、1つは、心血管疾患のリスク要因がコントロールされていること、もう1つは、良い教育を受けていることがあるそうです。

良質な教育は、たとえば過去に忘れたことのある言葉の同義語を増やした記憶領域など、脳により多くの容量を付与することで保護効果が得られると考えられているそうです。

若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?で紹介したジョンズ・ホプキンス医科大学の研究によれば、高齢になっても認知機能にまったく問題がない修道女は、脳にアルツハイマー型認知症と同じ変化が確認されているにも関わらず、病気の症状が表れにくいことが分かったそうです。

なぜ高い言語技能を習得していることが認知機能の低下を防いでくれるのかはわかっていないものの、結果として認知症を防ぐことにつながっているというのはすごいことです。

苦労しながらも自分自身で考え抜いたものとAIが考えたものを比べた際に、結果としてAIが考えたものの方が良いものであったとしても、自分自身で苦労して考えた末出した答えというのはその思考のプロセスを含めて自分の知的資本になっているのだと思います。

専門家の方々にはこういう視点の論議をもっとしてほしいなぁと思います。

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら







【皮膚ガス研究】なぜ汗は臭うの?加齢臭を抑制してモテ臭を出す方法(食べ物)とは?




2024年7月4日放送の「The Time」に出演した東海大学関根嘉香教授によれば、体のにおいは人の皮膚から出るガス(=皮膚ガス)がもとになっていて、現在わかっているだけで、800種類以上のガスがあるそうです。

■汗はなぜにおうの?

汗はほとんど無臭なのですが、かいた汗をそのまま放っておくと、皮膚表面の常在菌が分解し、納豆のようなにおいのガス「イソ吉草酸」が出ます。

これが汗臭(あせしゅう)と呼ばれるもの。

「一般的に気になるといわれる体臭の多くは、汗や皮脂をもとに作られる、表面反応由来の皮膚ガスが原因です。

■中高年独特のニオイとは?

〇ミドル脂臭

汗の中に乳酸が含まれ、乳酸を常在菌が分解すると「ジアセチル」になって皮脂臭と混ざり、古い油のようなにおい、いわゆる「ミドル脂臭」が出ます。

〇加齢臭

加齢に伴って、皮脂が酸化しやすくなり『2-ノネナール』が発生して、枯草や古本のようなにおい、いわゆる『加齢臭』が出ます。

■モテ臭とは?

桃のような香りの「γ-ラクトン(ガンマラクトン)」は10代の女性から多く出ることから「モテ臭」と呼ばれています。

■においを抑える方法とは?

猛暑でベトベト汗 チーズ?使い古した油?「ミドル脂臭」に注意 においの原因と対策(2025年6月19日、テレ朝ニュース)によれば、東海大学理学部の関根嘉香教授がミドル脂臭や加齢臭対策について解説しています。

〇汗は放置することで、皮膚ガスになる成分ができてしまう

〇においを抑える方法は汗をかく習慣をつけておくこと。

冬の間に汗をかかず、急に熱くなって汗をかくと、塩分を多く含んでいるためなかなか乾かずに、皮膚の常在菌が活発になって多くのにおい物質「汗臭」を作り出してしまいます。

そのため、汗をいっぱいかいて「サラサラ汗」にすることが重要。

〇汗をこまめにふきとる

■ミドル脂臭や加齢臭を抑え、モテ臭を増やす方法

『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは「皮膚」これまで知られてこなかった「皮膚」の驚くべき機能とは!?(2023/2/7、日本テレビ)によれば、「2-ノネナール」を減らす食べ物はカシス(アントシアニン)や梅などのポリフェノールを多く含んだ食べ物が良いそうです。

カシスを1週間(1日6g)摂取する実験によれば、「2-ノネナール」が47%減少したそうです。

パッシブ・フラックス・サンプラー法によるヒト皮膚ガス測定に関する研究

ブラックカラント(カシス)には抗酸化物質が含まれており、摂取によって 2-ノネナールの生成を抑えることが期待される。

カシスに含まれる抗酸化物質を摂取することにより、不飽和脂肪酸の体内の酸化が抑制され、2-ノネナールの生成を抑える、つまり加齢臭を抑えることができるそうです。

腸内 γ-ラクトンの生成機序は不明であるが、乳酸菌や酵母等は不飽和脂肪酸を用いて γ-ラクトンを生成する報告がある 7)。NZBC には食物繊維が含まれている為、NZBC 摂取により乳酸菌が増殖し、γ-ラクトンの生成が促進された可能性が考えられる。

γ-ラクトンは腸内環境の影響を受けるため、腸内環境を整えるのによい、食物繊維やビフィズス菌(乳酸菌)を多く含む食べ物を摂取することにより、γ‐ラクトンの生成が促進されると、いわゆる「モテ臭」が出て、加齢臭の抑制につながることが期待されます。

ニオイが気になる方は抗酸化物質を含むカシスブルーベリー、梅(梅ジュース)を積極的に摂りましょう!

→ 抗酸化物質・抗酸化食品 について詳しくはこちら

【追記】

【カズレーザーと学ぶ。】梅ジュースを摂取すると赤ちゃんのような匂い(皮膚ガス)が出る!

2025年4月15日放送のカズレーザーと学ぶ。で梅ジュースを摂取すると抗酸化作用によって皮膚から赤ちゃんのような匂いが出てくると話題になりました!

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【関連記事】

P.S.

皮膚ガスを検知して疲労度やストレス度を測るデバイスの開発|皮膚ガス検査・分析による健康管理で病気診断・予防|東海大学(2016年)によれば、皮膚ガスの物質を分析することで、糖尿病などの生活習慣病を予防するなど健康管理ができるそうです。

コロナワクチン後遺症の重大発見!?なぜスパイクタンパクが長期間残るのか?ワクチン接種後症候群(PVS)の解明への第一歩




イェール大学が2025年2月19日に発表した研究では、COVID-19ワクチン接種後に一部の人々が経験する慢性的な症状「ワクチン接種後症候群(PVS)」について調べた結果がまとめられています。

この研究は、プレプリント(査読前の論文)としてmedRxivに掲載されており、今後の研究の方向性を示す重要な手がかりを提供しています。

■研究の背景

COVID-19ワクチンは世界中で多くの命を救い、重症化や長期COVIDの予防に役立っています。

しかし、ごく少数の人々がワクチン接種後に慢性的な症状(例えば、極端な疲労、脳霧、めまい、運動不耐性など)を報告しています。

これを「ワクチン接種後症候群(PVS)」と呼び、ヤエール大学の研究チームは、その原因やメカニズムを解明するために「LISTEN研究」を行いました。

この研究では、PVSを報告した42人と、症状のない22人(対照群)の血液を分析し、免疫系の違いや特定のタンパク質の存在を調べました。

■主な発見

●免疫系の違い

PVSの人は、対照群と比べて免疫細胞に明確な違いが見られました。

・CD4+ T細胞(免疫を調整する細胞)が少ない。

・TNFα+ CD8+ T細胞(炎症を引き起こす細胞)が多い。

これらの違いは、PVS患者の免疫系が通常とは異なる反応を示している可能性を示唆しています。

炎症が高まっている一方で、免疫を抑える機能が弱まっていると考えられます。

●スパイクタンパク質の持続

COVID-19ワクチンは、ウイルス表面の「スパイクタンパク質」を利用して免疫を活性化します。

研究では、PVS患者の一部で、ワクチン接種後数か月から数年経っても血中にこのスパイクタンパク質が残っていることがわかりました。

これは、スパイクタンパク質が体内で異常に長く残るか、排出が遅れている可能性を示しています。

●エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)の再活性化

PVS患者の一部で、過去に感染したエプスタイン・バール・ウイルス(EBV、ヘルペスウイルスの一種)が再活性化している兆候が見られました。

これは、免疫系のバランスが崩れることで、潜伏していたウイルスが再び活動を始めた可能性を示しています。

●ロングCOVIDとの類似性

PVSの症状や免疫プロファイルは、ロングCOVID(COVID-19感染後の長期症状)と似ている部分があります。

例えば、免疫の異常やウイルス再活性化は、どちらの状態でも見られる特徴です。

■研究の限界

ただし、この研究はまだ初期段階で、以下のような限界があります:

参加者が少人数(42人+22人)であるため、結果を一般化するにはさらに大規模な研究が必要です。

プレプリントのため、査読(他の専門家による厳密なチェック)が済んでおらず、結果の信頼性が確定していません。

この研究は、ワクチンが危険であるとか、接種を避けるべきだという主張を支持するものではありません。

研究者自身も、COVID-19ワクチンが多くの命を救い、全体として非常に安全であることを強調しています。

PVSは非常にまれなケースであり、ワクチン接種の全体的な利点がリスクを大きく上回ることは変わりません。

しかし、一部のメディアやSNSでは、この研究が誤解され、「ワクチンが危険」と誇張されることがあります。

実際、研究チームは政治的な議論に利用されることを懸念しており、患者の声を聞きながら科学的な理解を深める必要性を訴えています。

■まとめ

今回の研究から気になることは、なぜスパイクタンパクが長期間残るのかという点です。

COVID-19ワクチン接種後にまれに起こるPVSについて、免疫系の異常やスパイクタンパク質の持続、ウイルス再活性化といった特徴はロングCOVIDと似たメカニズムを持つ可能性があり、今後の診断や治療の開発に役立つ手がかりとなります。

【参考リンク】

  • イェール大学ニュース:https://news.yale.edu/2025/02/19/immune-markers-post-vaccination-syndrome-indicate-future-research-directions[](https://news.yale.edu/2025/02/19/immune-markers-post-vaccination-syndrome-indicate-future-research-directions)
  • medRxiv論文:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2025.02.18.25322379v1[](https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2025.02.18.25322379v2)







【関連記事】

グルテンフリーとアトピー性皮膚炎の関係について調べてみた!




先日アトピーのお子さんをお持ちのママにどんな対策をされてるんですかと質問したところ、「グルテンフリーをしています」ということでした。

そこでグルテンとアトピーの関係について調べてみました。

ある研究によれば、アメリカの看護師を対象とした大規模な健康調査で、グルテンの摂取量が多いと、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎にかかるリスクが高まるのか調べたところ、グルテンの摂取量が多い人と少ない人を比較しましたが、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎のいずれとも明確な関連は見られなかったそうです。

つまり、グルテンを普通に食べていても、これらの皮膚疾患にかかる可能性が高まるわけではない、と考えられます。

【参考リンク】

グルテンはなぜか悪いというイメージがついているんですよね。

52歳モデルがヴィーガン食で「死にかけた」慢性の消化器疾患「セリアック病」と診断!ヴィーガン食によりセリアック病を起こすことがあるの?によれば、セリアック病では、小麦や大麦などに含まれるたんぱく質グルテンを摂取することにより免疫系が小腸を攻撃し、栄養の吸収を阻害してしまうので、グルテンアレルギーやセリアック病の予防・改善のため、「グルテンフリー」小麦・大麦・ライ麦などに含まれる「グルテン」というたんぱく質を避ける食事法があります。

多くの人がグルテンフリーが健康に良いという時にはこの情報をベースにしたものを参考にしているのではないでしょうか?

グルテン・小麦=老化の原因!?グルテンフリーだとアンチエイジングになるって本当?調べてみた!でも書きましたが、グルテンフリー食が一部の人々にとって健康上のメリットをもたらす可能性はあり、また小麦製品の過剰摂取がAGEsを通じて老化に間接的に影響する可能性はありますが、誰もがグルテンフリーだからといって健康に良いわけではなく、グルテンがそもそも「悪」ではないんですよね。

もう一つ考えられるのは「アレルギーマーチ」という考え方です。

アトピー性皮膚炎は、保湿剤で乳児の発症率3割減少するによれば、アトピー性皮膚炎のある乳児は、食物アレルギーを持っていることが多く、また、国内では未就学児の10~30%がアトピー性皮膚炎を患っているそうです。

皮膚のバリアーを高めてアトピー予防|フィラグリンに変異があるとアトピー性皮膚炎を発症しやすくなる!?|アレルギーマーチを防ぐには?によれば、子どもの場合、成長とともに、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ぜんそく、鼻炎と進む傾向があるため、「アレルギーマーチ」と呼ばれます。

乳児期に湿疹があると、さまざまな抗原が入りやすくなって、アレルギーマーチを引き起こすと考えているので、湿疹を放置せずに早く治療することが食物アレルギーやぜんそく、花粉症などの発症予防につながる可能性があるそうです。

食事前に子供の口の周りにワセリン(保湿剤)を塗ることで食物アレルギーを予防!なぜワセリン(保湿剤)を塗るとアレルギーが予防できるの?によれば、乳幼児はかぶれたら食事前にワセリンなどで保護するという方法がぜん息予防のためのよくわかる食物アレルギー対応ガイドブックなどでも紹介されています。

1.乳幼児の皮膚はとても薄く、新生児の場合、大人の半分しかありません。また、皮脂分泌量が圧倒的に少ないため、乾燥しやすい、かぶれやすい、炎症を起こしやすい、という特徴がある。

2.特に、口まわりは、外からの刺激を受けやすく、特に炎症を起こしやすい場所である。

3.口周りがただれていると、つまり、口周りのバリア機能が低下していると、そこに付着した食べ物のアレルゲンが侵入し、食物アレルギーを発症してしまうことがある。

4.そこで、食事前に口の周りを清潔にしたうえで白色ワセリンなどの保湿剤を口周りに塗っておくことで食物アレルギーの発症を予防する。

つまり、今までの記事を含めて総合的に考えると、食物アレルギーのリスクになるような食品を取り除くことで、アレルゲンの侵入を防ぎ、食物アレルギーの発症を防ぐことで、アトピーの発症を防ぐまたは症状を軽減するという考えになっているのではないでしょうか?

そこで、グルテンフリーがアトピーに良いという考え方になっているのかもしれません。

最後にこの記事のまとめを2つ。

●グルテンを普通に食べていても、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎の皮膚疾患にかかる可能性が高まるわけではない。

評価:このポイントは論文の結論と完全に一致しており、正確です。一般的なグルテン摂取がこれらの皮膚疾患のリスクを高める証拠はありません。

●グルテンフリーをすることで食物アレルギーのリスクを減らしてアレルギーマーチを防ぎ、アトピーの発症を防ぐまたは症状を軽減したいと考えているからこそグルテンフリーの食事を選ぶ人が増えているのでは?

評価:この考えは部分的に妥当ですが、以下の補足が必要です:

グルテンフリーがアトピー予防やアレルギーマーチ抑制に効果的なのは、グルテン関連のアレルギー(小麦アレルギー、セリアック病)を持つ人に限られる可能性が高いです。

一般の人がグルテンフリーにすることでアトピーやアレルギーマーチを予防できるという科学的証拠は不足しています。

グルテンフリー食の人気は、セリアック病や健康トレンドの影響で「グルテンが悪」と誤解された結果とも言えます。

Q&A

Q1: グルテンフリーにするとアトピーが良くなるの?
A: 小麦アレルギーやセリアック病がある人には効果がある場合がありますが、普通の人にはアトピー予防や改善の効果は科学的にはっきりしていません。無理にグルテンを避けると栄養不足になるリスクもあるので、医師や栄養士に相談するのがおすすめです。

Q2: アレルギーマーチって何?
A: 乳幼児期にアトピー性皮膚炎が始まり、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎へと進行するパターンのこと。皮膚のバリアを保つ(保湿剤を使うなど)ことで、アレルゲンの侵入を防ぎ、進行を抑えられる可能性があります。

Q3: グルテンが「悪」って本当?
A: グルテンはセリアック病や小麦アレルギーの人には問題ですが、健康な人には悪影響の証拠は少ないです。グルテンフリーが流行しているのは、一部の病気の情報が広まりすぎた誤解が原因かもしれません。

■結論

グルテンフリーがアトピーやアレルギーマーチの予防に役立つ可能性は、特定のグルテン関連アレルギーを持つ人に限られます。

論文の結果からも、一般的なグルテン摂取がアトピー性皮膚炎のリスクを高めるわけではないことがわかります。

グルテンフリー食を選ぶ人が増えている背景には、健康トレンドや誤解が影響していますが、科学的根拠に基づいた食事選択が重要です。

アレルギーマーチの予防には、乳幼児期のスキンケアや湿疹の早期治療がより効果的と考えられます。

→ アトピー性皮膚炎とは|アトピーの症状・原因・改善方法・予防 について詳しくはこちら

【補足】 他の関連論文・情報のまとめ

論文1: The Link between the Clinical Features of Atopic Dermatitis and Gluten-related Disorders(Sur et al., 2019)

概要: グルテン関連疾患(セリアック病、小麦アレルギー、非セリアックグルテン過敏症:NCGS)とADの関連を症例報告で検討。

内容: 32歳の女性とその娘2人(6歳、9歳)がADとグルテン関連疾患を併発。グルテンフリー食(GFD)を導入後、ADの症状が大幅に改善した。特に、母親は4か月齢でADと診断され、12歳でセリアック病(CD)と診断後、GFDで皮膚症状が軽減。娘もグルテン再導入で症状が悪化した。

結論: グルテン関連疾患を持つAD患者では、GFDが症状改善に有効な場合があるが、因果関係は不明で、さらなる研究が必要。

限界: 症例報告(3人)に基づくため、広く一般化できない。

ポイント: セリアック病やNCGSを持つ特定のAD患者では、GFDが効果的かもしれないが、症例規模が小さく、科学的証拠としては限定的。
論文2: Gluten Intolerance and Its Association With Skin Disorders: A Narrative Review(2023)

概要: グルテン不耐症(特にセリアック病)と皮膚疾患(AD、乾癬、蕁麻疹など)の関連をレビュー。

内容:
セリアック病(CD)はグルテン不耐症の代表で、皮膚症状(特に蕁麻疹様皮膚炎:DH)を伴う。ADとの関連は一貫しない。

169人の横断研究では、AD患者の51%がGFDで症状改善を報告(出典84)。また、Sur et al.の症例報告(上記)を引用し、GFDでAD改善の例を提示。

セリアック病患者の約60%がADを含む皮膚症状を有し、GFDで改善する傾向がある。

結論: ADとグルテン不耐症の関連は一部の患者で認められるが、GFDの効果は個人差が大きく、さらなる臨床試験が必要。

限界: 多くのデータが症例報告や小規模研究に基づくため、因果関係の証明は不十分。

ポイント: グルテン不耐症(特にCD)がある場合、GFDがADの症状を軽減する可能性があるが、普遍的な効果は未確立。
論文3: Atopic Dermatitis and Celiac Disease: A Cross-Sectional Study of 116,815 Patients(Shalom et al., 2020)

概要: AD患者におけるセリアック病(CD)の有病率を調査。

内容:
AD患者は非AD対照群と比べ、セリアック病の有病率が1.6倍高い(0.6% vs 低率)。重症AD患者ではCDの有病率が約3倍。

セリアック病患者はADや蕁麻疹様皮膚炎(DH)を合併しやすい。

結論: ADとセリアック病には関連があるが、AD患者全体でのCD有病率は低い(0.6%)。グルテンがADの直接的原因とは考えにくい。

限界: グルテンフリー食の効果は直接評価していない。

ポイント: AD患者の一部にセリアック病が関与する可能性があるが、グルテンがADの主要な引き金ではない。
その他の情報源
Healthline: Does Eating Gluten Worsen Eczema Symptoms?(2025)

グルテンがADの原因ではないが、セリアック病やNCGSを持つ人では、グルテン摂取がADの症状悪化を引き起こす可能性がある。

2018年のレビューでは、NCGS患者の18%がAD様の皮膚症状を報告。GFDで改善する場合がある。

推奨:グルテンが引き金と疑う場合、1週間GFDを試し、症状を記録。栄養士の指導が必要。

National Eczema Association: Gluten-Free and AD(2016)

セリアック病患者の30%がADに関連する抗グリアジン抗体を持つ(1985年の小規模研究)。しかし、2001年の研究では、セリアック病児と非セリアック児でAD有病率に差がない。

GFDは重症AD患者で試す価値があるが、4~8週間で効果がなければ継続の必要性は低い。

Medical News Today: The Gluten-Eczema Connection(2022)

グルテンがADの原因ではないが、セリアック病患者ではDH(ADと類似)が頻発。GFDでDHは改善するが、ADへの効果は証拠が不足。

グルテンが引き金と疑う場合、食品日誌で症状を追跡し、医師と相談。

ポイント: セリアック病やNCGS患者ではGFDがAD症状を軽減する可能性があるが、一般のAD患者への効果は限定的で、科学的証拠は不十分。

■グルテンフリーとアトピー性皮膚炎の関係:総合的な考察

(1) グルテンフリー食の効果が期待できるケース

セリアック病(CD): セリアック病患者の10~25%が蕁麻疹様皮膚炎(DH)を合併し、GFDで改善する。AD患者でもCDが関与する場合、GFDが有効な可能性がある(例:Sur et al.の症例)。

非セリアックグルテン過敏症(NCGS): NCGS患者の18%がAD様症状を報告し、GFDで改善する場合がある。

小麦アレルギー: 小麦(グルテン含有)がアレルゲンの場合、GFDがAD症状を軽減する可能性がある。

(2) グルテンフリー食の効果が限定的なケース

一般のAD患者: 提供された論文(Drucker et al.)や他の研究(Shalom et al.)では、通常のグルテン摂取がAD発症のリスクを高めないことが示されている。GFDの普遍的な効果は証明されていない。

アレルギーマーチとの関連: 乳幼児期のADが食物アレルギーやアレルギーマーチ(喘息、鼻炎への進行)を引き起こす可能性があるが、グルテン特異的なアレルギーがない場合、GFDは予防効果が低い。

(3) グルテンフリー食のリスクと注意点

栄養不足: GFDはビタミンB群、鉄、食物繊維の不足リスクを高める。特に小児では成長に影響する可能性がある。

コストと負担: グルテンフリー食品は高価で、厳格な食事管理が必要。

誤診のリスク: DH(セリアック病関連)がADと誤診される場合がある。セリアック病の検査(血液検査、腸生検)が推奨される。

(4) アレルギーマーチとグルテンフリーの視点

「アレルギーマーチ」(AD→食物アレルギー→喘息・鼻炎の進行)は重要です。乳幼児の薄い皮膚はアレルゲン侵入のリスクが高く、湿疹の早期治療や保湿(例:ワセリン)がアレルギーマーチ予防に有効です。グルテンフリー食は、小麦アレルギーがある場合にアレルゲン除去として役立つ可能性がありますが、グルテン非特異的なADでは効果が期待できません。

■全体のまとめ

主要な結論

グルテン摂取とADのリスク:
一般的なグルテン摂取はADの発症リスクを高めない(Drucker et al., 2019)。通常の食事でグルテンを避ける必要はない。

グルテンフリー食の効果:
セリアック病(CD)、非セリアックグルテン過敏症(NCGS)、または小麦アレルギーを持つAD患者では、GFDが症状を軽減する可能性がある(Sur et al., 2019; 2023レビュー)。

しかし、AD患者全体でのGFDの効果は一貫せず、科学的証拠は限定的。

アレルギーマーチとの関連:
乳幼児期のADはアレルギーマーチの起点となり得るが、グルテンフリー食が予防に有効なのは小麦アレルギーなどの特定の場合に限られる。スキンケア(保湿、湿疹治療)がより効果的。

実践的なアドバイス:
グルテンがADの引き金と疑う場合、医師や栄養士の指導のもと、1~3か月のGFDを試し、食品日誌で症状を記録。

セリアック病やグルテン過敏症の検査(血液検査、腸生検)を検討。

無闇なGFDは栄養不足やコスト負担を招くため、慎重に判断。

グルテンフリー食は、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、小麦アレルギーを持つアトピー性皮膚炎患者で症状改善の可能性がありますが、一般のAD患者への効果は限定的で、科学的証拠は不十分です。アレルギーマーチの予防には、乳幼児期のスキンケアがより重要です。グルテンフリーを検討する場合、医師や栄養士の指導のもと、短期間の試行と症状記録を行い、栄養バランスに注意しましょう。グルテンの「悪」のイメージは誤解に基づく部分が多く、バランスの取れた食事選択が大切です。







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