『代謝年齢』が若い人は長生きする?1~96歳・18,476人の血液から老化を調べた研究

■「代謝年齢が若ければ長生きする?」

私たちには「実年齢」がありますが、同じ50歳でも、体の状態まで同じとは限りません。

2026年に『Science Translational Medicine』に掲載された研究では、1~96歳の18,476人を対象に血液中の代謝物を調べ、56種類の年齢に関連する代謝物を特定。さらに機械学習を使って「代謝年齢(metabolomic age)」を推定するモデルを開発しました。

研究チームは、推定された代謝年齢が実年齢からどのくらいずれているかを「代謝年齢の加速(metabolomic age acceleration:mAA)」として評価しました。

そして興味深いことに、代謝年齢の加速が大きいことは、健康状態の悪化や好ましくない生活習慣と関連していました。

さらに2019~2025年の追跡では、代謝年齢の加速がみられた人では、脂肪肝、高血圧、糖尿病などの慢性疾患の発症リスクだけでなく、全死亡リスクも高くなっていました。

では逆に、

「代謝年齢が若ければ、長生きできるのでは?」

と考えたくなります。

ただ、ここは注意が必要です。

今回の研究は、代謝年齢を若返らせることで寿命が延びることを証明した介入研究ではありません。

つまり、

代謝年齢が若い
↓
長生きする

という因果関係が証明されたわけではありません。

現時点では、

代謝年齢の進み方が、その人の現在の健康状態や将来の健康リスクを捉える指標になる可能性がある

と考えるのが適切でしょう。研究者らも、血漿メタボローム解析から得られる老化指標が、健康状態、慢性疾患リスク、死亡と関連する可能性を示した研究と位置づけています。

■「運動を増やす」「揚げ物を減らす」と代謝年齢は若くなる?

今回の研究では、生活習慣と代謝年齢との関係についても調べられています。

そのため、

「だったら運動を増やしたり、食生活を改善したりすれば、代謝年齢を若くできるのでは?」

という疑問が出てきます。

実際、今回の研究では、代謝年齢の加速(mAA)が大きいことと「好ましくない生活習慣」との関連が報告されています。

ただし、

「運動を増やす」「揚げ物を減らす」
↓
「代謝年齢が若返る」
↓
「長生きする」

という一連の因果関係まで、今回の研究によって証明されたわけではありません。

そのため、「運動を増やして揚げ物を減らせば老化を逆転できる」と結論づけるよりも、生活習慣と代謝年齢との関連が見つかり、さらに代謝年齢の加速と慢性疾患や死亡リスクとの関連も示されたと捉えるのがよさそうです。

■まとめ

今回の研究で特に興味深いのは、「何歳なのか」だけでは捉えきれない体の状態を、血液中の代謝物から評価できる可能性を示したことです。

同じ50歳でも、体の中では同じように年を重ねているとは限りません。

将来的には「実年齢」だけではなく、こうした生物学的な老化の違いから健康リスクを捉える研究がさらに進んでいくのかもしれません。

ただし現時点では、「代謝年齢を若返らせれば長生きできる」とまでは言えないことも押さえておきたいところです。

【参考文献・資料】
Cao L, Chen Y, Zhang W, et al. Metabolomic aging and mortality clocks based on ensemble learning identify systemic aging risk across the human life span in 18,476 individuals. Science Translational Medicine. 2026. DOI: 10.1126/scitranslmed.adz4815. Science Translational Medicine掲載論文
Huang H, Chen Y, Xu W, et al. Decoding aging clocks: New insights from metabolomics. Cell Metabolism. 2025;37(1):34-58. 代謝物を利用したaging clockの考え方、特徴、限界などをまとめたレビューです。
Metabolomic-based aging clocks. npj Metabolic Health and Disease. 2025. 分子老化時計にはエピジェネティック、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなど複数のアプローチがあることを整理したレビューです。

■「体の年齢」を測る研究はいろいろある

今回紹介した「代謝年齢」は、血液中の代謝物から体の老化状態を捉えようとするものです。

一方で、これまでにもAGE(終末糖化産物)の蓄積から体の「糖化」を評価する研究や、血液中のタンパク質が年齢によってどのように変化するのかを調べる研究が行われています。

つまり、「実年齢は50歳」というひとつの数字だけではなく、代謝、糖化、タンパク質など、さまざまな角度から「体がどのように年を重ねているのか」を捉えようとしているわけです。

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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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プロテインの摂取は腎臓に悪い!?プロテインについて改めて調べてみた!




フィットネスクラブで怖い腎臓病が増加中…健康と美容のために摂取するとかえって”死を早める粉”の正体(2024/6/8、プレジデントオンライン)では、簡単にまとめると、プロテインの摂取が腎臓に悪いということでしたので、プロテインについて改めて調べてみることにしました。

間違いだらけの“プロテイン”摂取!?(2023/10/11、NHK)で解説されている鈴木志保子さん(神奈川県立保健福祉大学大学院 研究科長)の意見をまとめてみます。

1)たんぱく質が重要だという情報が広まったことにより、必要のない人が、必要以上に摂っていることにより、プロテインの摂り過ぎ(過剰摂取)が問題になっている

2)たんぱく質がないと人は生きていけないが、私たちの体に必要な栄養素には適正な摂取量があり、少なくても多くても困るという特性を持っている。(多すぎると過剰摂取、少なすぎると低栄養)

3)たんぱく質の処理は肝臓で行われる。摂取したたんぱく質は消化されてアミノ酸となり、体内で利用される。一方、余分なアミノ酸はそのまま体内に貯蔵されるわけではなく代謝されるため、必要以上に摂ればよいというものではない。

4)たんぱく質(プロテイン)を摂るからマッチョになるのではなく、いいトレーニングを前提に、足りない栄養素がある際に補充するという考え方

5)たんぱく質を含む食事をきちんと食べれば運動後にプロテインは必要ない(昔は言われていたが今はエビデンス上なくなっている)

※これは「運動後のたんぱく質摂取に意味がない」という意味ではありません。運動前後を含め、1日を通して必要なたんぱく質を十分に摂れているか、次の食事をいつ摂れるかなどによって考え方は変わります。

例:体重1kgあたり1gのたんぱく質が必要で、体重60㎏の人の場合一日60gのたんぱく質が必要となり、3食で割ると1食20gとなる。

朝ごはんの場合、食パン6枚切り1枚(たんぱく質6.2g)、卵1個(たんぱく質7.3g)、牛乳1杯(たんぱく質6.6g)→合計20.1g

■補足|たんぱく質と肝臓・腎臓はどう関係する?

ここで、「たんぱく質の処理」と肝臓・腎臓の関係について整理しておきます。

食事から摂取したたんぱく質は消化によってアミノ酸となり、体内で新しいたんぱく質の合成などに利用されます。余ったたんぱく質をそのまま「たんぱく質」として蓄えておく仕組みはないため、余剰分は代謝されます。

この過程で肝臓はアミノ酸やアンモニアの代謝に重要な役割を果たしています。

つまり、たんぱく質の代謝を考えるときには肝臓、最終的な窒素代謝産物の排泄を考えるときには腎臓という、両方の臓器の働きを考える必要があります。

そのため「プロテインを摂ると腎臓に悪いのか?」を考える場合にも、単純に「プロテイン→腎臓」という話ではなく、摂取したたんぱく質が体内でどのように利用・代謝・排泄されるのかという一連の流れから考えることが大切です。

この知識をベースに先ほどの記事に戻ってみます。

おそらく反感を買いやすいのは「プロテインによい効果は一切ありません」「プロテイン由来のタンパク質が筋トレの効果向上に寄与することはない」というところではないでしょうか?

適切な言葉に置き換えると、3食の食事ですでに必要なたんぱく質を摂取できている人が、さらにプロテインを追加する必要があるのか、まず普段の食事から見直してみようということではないでしょうか。

たんぱく質の代謝には肝臓が関わり、その窒素代謝産物の排泄には腎臓が関わります。ただし、こうした生理的な働きが増えることと、それによって健康な人の肝臓や腎臓が障害されることは同じではありません。健康な成人を対象にした研究では、高たんぱく食による明確な腎機能への悪影響が確認されていない報告もあります。

そのため、「プロテインは腎臓に悪い」と一律に考えるのではなく、自分の健康状態や運動量、普段の食事を踏まえて、本当に追加のたんぱく質が必要なのかを考えることが大切です。

たんぱく質を摂ることは重要なんだけれども、3食の食事の中にたんぱく質を含む食べ物が入っていれば、決してプロテインを摂る必要がないのに、たんぱく質を摂らないとよくないよーということを過剰に宣伝してしまって、誤ってプロテインを摂ってしまうことには注意が必要ということなんだと思います。

ただもう一つの見方として、フレイル・サルコペニアの人にとってのたんぱく質摂取の重要性の話があります。

高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。

しかし、フレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できると考えられます。

ここで1つ考えなければならないことがあります。

それは、中高年における生活習慣病対策・メタボ対策とフレイル対策ではぶつかってしまうところがある点です。

例えば、これまでにも要介護者の中にはたんぱく質が不足する「低栄養」の人が多いということを紹介してきました。

適切な食物摂取ができず、栄養状態が悪化していることを「低栄養」と呼びます。

低栄養になると、免疫が低下したり、筋肉が減少したり、骨が弱くなったりすることで、感染症に掛かりやすくなったり、骨折するおそれが高くなるようです。

たんぱく質摂取と骨格筋|たんぱく質の関与|フレイルティ及びサルコペニアと栄養の関連|高齢者|厚生労働省によれば、高齢者はたんぱく質の摂取量が少ないと、フレイルティの出現リスクが増加するそうです。

なぜ高齢者になるとタンパク質が不足しがちなのでしょうか?

それは、肉料理が苦手だったり、以前は、家族のために栄養を考えて、肉や卵などを使って料理をしていた人が、一人暮らしになってから、自分が好きなものだけを食べることで食が偏るようになって、肉や卵を使った料理を食べなくなってしまったり、食事の量自体が減ってしまったり、中高年の頃からのメタボ対策のための粗食を継続してしまったりすることで、たんぱく質が不足してしまうということがあるからです。

つまりは、中高年(メタボ対策)から高齢者(フレイル対応)への食習慣の移行ができていないことが低栄養の原因の一つになってしまっているのです。

【ガッテン】大豆たんぱく質で筋力アップ(二川健)&心疾患予防(家森幸雄)!必要摂取量!によれば、筋委縮(サルコペニア)が進む寝たきりの方たちに「大豆たんぱく質8g」を30日間摂取してもらう実験を行ったところ、約7割の方に筋力改善(筋力が約40%アップ)の傾向が見られたそうです。

年代や性別で食事のやり方を変えていく必要があるという視点が大事であり、「たんぱく質は大事な栄養素」といっても、誰に言うかによって全然意味合いが違ってきます。

読者側(メッセージの受け取り手)も自身の健康状態を把握した上でこうした健康に関する記事を正しく読む姿勢が必要なのではないでしょうか?

■健康な人が高たんぱく食を続けると腎臓は悪くなる?

「たんぱく質を多く摂ると腎臓に負担がかかる」という表現をよく見かけますが、ここでは「腎臓の仕事量が増えること」と「腎臓が障害されること」を分けて考える必要があります。

2018年に発表されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、腎疾患のない成人を対象とした28研究、1,358人のデータが解析されています。

高たんぱく食では介入後のGFR(糸球体濾過量)がわずかに高くなっていましたが、介入前から介入後までのGFRの変化を比較すると、通常・低たんぱく食との有意な差は認められませんでした。研究者らは、健康な成人では高たんぱく摂取がGFRに悪影響を与えなかったと結論づけています。

また、2026年のメタ解析を紹介する資料でも、CKD(慢性腎臓病)のない成人を対象とした22件のRCTで、高たんぱく食による腎障害を示す一貫した所見はみられなかったとされています。一方、この解析に含まれる研究期間は7日~2年であり、長期間にわたる安全性まで証明したものではありません。

つまり現在の研究からは、「健康な成人が高たんぱく食をすると腎臓が悪くなる」と単純に言うことは難しいようです。

ただし、これを反対方向に広げて、「健康なら2g/kg、3g/kgといった大量のたんぱく質を何十年摂り続けても安全」とまで言うこともできません。

「悪影響が確認されていない」と「長期間の安全性が証明された」は同じ意味ではないからです。

【参考文献】

■では、子どもにプロテインを飲ませるのは危険なの?

最近、Xで「子どもにプロテインを飲ませること」について議論になっています。

「成長期だからたんぱく質はしっかり摂ったほうがいい」「スポーツをしている子どもならプロテインを飲ませてもいいのでは?」という意見がある一方で、「子どものうちから必要以上にプロテインを摂取すると、腎臓への負担が心配」という意見もあります。

では、実際のところ、子どものプロテイン摂取について何がわかっているのでしょうか?

ここで大事なのは、

「プロテインを飲むと腎臓が悪くなるのか?」

という問いと、

「そもそも、その子に追加のたんぱく質が必要なのか?」

という問いを分けて考えることです。

■子どもにもたんぱく質は必要。でも「多ければ多いほどいい」わけではない

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、子どものたんぱく質の推奨量が年齢・性別ごとに設定されています。

例えば1日の推奨量は、

3~5歳:男女とも25g
6~7歳:男女とも30g
8~9歳:男女とも40g
10~11歳:男子45g・女子50g
12~14歳:男子60g・女子55g
15~17歳:男子65g・女子55g

となっています。

さらに小児期では、1歳以降のたんぱく質について総エネルギー摂取量に占める割合として13~20%という目標量も示されています。

つまり、成長期の子どもにとってたんぱく質が重要なのは間違いありません。

ただ、

「成長期だからたんぱく質をできるだけ多く摂ったほうがいい」

という話ではないことにも注意が必要です。

■「○g以上摂ったら腎臓を壊す」という基準があるわけではない

ここが今回の議論で誤解されやすいポイントではないでしょうか。

「たんぱく質の摂りすぎが危険というなら、いったい何gから腎臓に悪いの?」

という疑問が出てきます。

しかし、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、たんぱく質について推定平均必要量、推奨量、目標量は設定されていますが、耐容上限量は設定されていません。

ここで注意したいのは、

「上限量が設定されていない」=「どれだけ摂っても安全」

という意味ではないことです。

反対に、

「推奨量を少し超えたら危険」

という意味でもありません。

食事摂取基準における「推奨量」は、対象となるほとんどの人が必要量を満たす量として設定されている指標です。

そのため、推奨量を「ここを超えたら危険になる上限値」として扱うのは適切ではありません。

■健康な大人の研究結果を、そのまま子どもに当てはめていいの?

もう一つ考えておきたいのがここです。

高たんぱく食と腎臓については成人を対象とした研究が数多くあります。しかし、「健康な成人で明らかな腎機能障害が確認されなかった」という研究結果があったとしても、それだけで、

「成長期の子どもが長期間、必要量を超える量のプロテインを摂っても安全」

と結論づけることはできません。

子どもについて調べた研究もあります。

「Generation R Study」では、2,968人の子どもを対象に、1歳時点のたんぱく質摂取量と6歳時点の腎臓の大きさや腎機能との関連が調べられました。

その結果、食事や生活習慣などの要因まで調整すると、幼児期のたんぱく質摂取量と6歳時点の腎臓の大きさや腎機能との間に独立した関連は認められませんでした。

これは少なくとも「子どもがたんぱく質を多く摂ると腎臓が悪くなる」と単純に言える研究結果ではありません。

一方で、この研究は「子どもがプロテインを長期間、多量に摂取しても安全か」を検証した臨床試験ではありません。したがって、この結果から「子どもはいくらプロテインを摂っても安全」と結論づけることもできません。

つまり、

「子どもの高たんぱく摂取が腎臓を壊すことが証明されている」

と言い切るのも慎重になる必要がありますし、その反対に、

「腎臓を壊すという証拠がないのだから、子どももたくさん摂って大丈夫」

と考えるのも飛躍があります。

「危険性が証明されていないこと」と「長期的な安全性が十分に証明されていること」は同じではないからです。

「プロテインが悪い」ではなく「食事+プロテイン」で考える

そしてもう一つ重要なのは、プロテインだけを切り離して考えないことではないでしょうか。

例えば、

朝食、学校給食、夕食、おやつなどからすでに十分なたんぱく質を摂っている子どもが、さらにプロテインを追加している場合、

「プロテインを何g飲んでいるか」

だけを見るのではなく、

「食事とプロテインを合わせて、1日を通してどれくらいのたんぱく質を摂っているのか」

を見る必要があります。

反対に、食が細い、偏食がある、競技スポーツをしているなど、個人によって食生活や必要性は違います。

また、腎臓病など疾患がある場合には、健康な子どもとは同じようには考えられません。厚生労働省の食事摂取基準自体も、疾患を持つ人の治療を目的とする場合には、関連する治療ガイドラインなどの栄養管理指針を用いるという考え方を示しています。

■「必要なのか?」を最初に考えてみよう

今回改めて調べてみると、「子どもにプロテインを飲ませていいか?」という議論は、

プロテインは安全か危険か

という二択だけではうまく整理できないように思います。

考える順番としては、

その子が普段の食事からどれくらいたんぱく質を摂っているのか
年齢や性別、体格、活動量などを考えると不足しているのか
食事で補うことができるのか
それでも不足する場合にプロテインなどで補う必要性があるのか

という順番で考えたほうがわかりやすいのではないでしょうか。

これはこの記事の最初に紹介した、

「プロテインを摂ればよいのではなく、食事を基本として、足りない栄養素がある場合に補う」

という考え方ともつながります。

■まとめ|「たんぱく質は大事」と「たくさん摂ればいい」は違う

今回の子どものプロテイン論争を見ていると、健康情報を読むときには、

「科学的にわかっていること」と「まだ十分にわかっていないこと」を分けて考えることが大切

なのだと思います。

現時点では、健康な子どもについて「プロテインを飲めば腎臓を壊す」と単純に断定するのは難しい一方、「健康なら必要以上にたんぱく質を摂取しても問題ない」と断定できるわけでもありません。

そして何より、たんぱく質は子どもの成長に必要な栄養素です。

大切なのは、

「プロテインは危険か、安全か?」

だけを見るのではなく、

「この子に必要なたんぱく質はどれくらいで、普段の食事からどれくらい摂れていて、追加する必要があるのか?」

という視点ではないでしょうか。

この記事で紹介したように、高齢者では逆にたんぱく質不足による低栄養やフレイルが問題になることがあります。

子ども、成人、高齢者、運動をする人、腎機能が低下している人。

同じ「たんぱく質は大切」というメッセージでも、誰に向けて言っているのかによって、その意味は変わります。

だからこそ、「たんぱく質は腎臓に悪い」「プロテインはいくら摂っても大丈夫」といった一言だけで判断するのではなく、自分の年齢や健康状態、食生活まで含めて考えることが大切なのではないでしょうか。

■なぜ「プロテイン論争」は噛み合わないのか?

今回、Xでの議論を見ていて感じたのは、プロテインを肯定する側と慎重な側では、そもそも答えようとしている質問が違うのではないかということです。

「健康な人が高たんぱく食をすると腎臓が悪くなるのか?」という問いと、「必要量を食事から摂れている人が、さらにプロテインを摂る必要があるのか?」という問いは別です。

前者については、健康な成人を対象とした研究では、高たんぱく食による明確な腎機能への悪影響が確認されていない研究があります。

しかし、それは「必要量を超えて摂取することを積極的に勧めるべき」という意味ではありません。

反対に、「必要以上に摂る必要はない」という栄養学的な考え方も、「一定量を超えたら健康な人の腎臓が壊れる」という証明ではありません。

さらに子どものプロテインについて考えるのであれば、健康な成人の研究結果をそのまま当てはめられるのかという問題もあります。

「害があるのか」「必要なのか」「どこまで安全なのか」「その研究結果を誰に当てはめられるのか」。

これらを分けて考えないと、同じ「プロテイン」について話していても、議論はなかなか噛み合わないのではないでしょうか?







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ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

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投稿日: 2024年6月10日 11:36

同じ「久山町研究」なのになぜ結論が真逆? 糖尿病が増えた理由を研究結果から読み解く

Xを見ていると、とても興味深い議論がありました。

福岡県久山町で長期間行われている「久山町研究」について、

久山町では糖尿病予防のために従来型の糖尿病食を指導したにもかかわらず、糖尿病が増えた。つまり、高糖質・低脂質の日本食では糖尿病を防げないのではないか。

という意見がある一方、

まったく逆で、久山町では食生活の変化や肥満などが糖尿病増加の背景として考えられる。伝統的な日本食が原因だったわけではない。

という意見もあります。

不思議なのは、どちらも「久山町研究」を根拠として挙げていることです。

いったい、どちらが正しいのでしょうか。

久山町研究の論文や資料を確認していくと、この問題は「糖質制限か、日本食か」という単純な話ではありません。

むしろ、

「研究で実際に確認された事実」と「その事実を説明するための仮説」を分けて考えることが大切

だということがよく分かる事例でした。

■まず「久山町研究」とは?

久山町研究は、福岡県久山町の地域住民を対象に1961年から続けられている疫学研究です[1,2]。

久山町研究の公式資料によると、40歳以上を対象に複数のコホートが設定され、その後の健康状態について継続的な追跡が行われています[1,2]。

そのため、「日本人にどのような病気が起こっているのか」「どのような要因と病気が関連しているのか」を長期間検討するうえで重要な疫学研究です。

糖尿病についても、非常に興味深い調査が行われています。

■1988年から2002年に糖尿病は増えていた

ここは今回の議論の出発点です。

久山町の40~79歳の地域住民を対象とした1988年と2002年の調査では、75g経口糖負荷試験(OGTT)によって耐糖能が評価されています[3,4]。

その結果、糖尿病の頻度は、

男性:15.0% → 23.6%

女性:9.9% → 13.4%

へ上昇していました[3]。

また、その後に1988年、2002年、2007年、2012年の4回の調査を比較した研究でも、1988年から2002年にかけて2型糖尿病の年齢調整有病率が男女とも有意に増加したことが報告されています[4]。

したがって、

「1988年から2002年にかけて久山町で糖尿病有病率が上昇した」

というところまでは、研究結果として言えることです。

問題はここからです。

なぜ糖尿病が増えたのでしょうか?

■「糖尿病が増えた」と「○○が糖尿病を増やした」は違う

ここが今回の議論で最も重要なポイントです。

研究で観察されたのは、

1988年より2002年のほうが糖尿病の割合が高かった

という現象です[3,4]。

ところが、ここから、

高糖質・低脂質の食事指導が行われた
↓
それでも糖尿病が増えた
↓
高糖質・低脂質食が糖尿病を増やした

と考えると、一つ重要な段階が抜け落ちています。

「一緒に起きたこと」と「それが原因だったこと」は同じではないからです。

■「町全体を使った高糖質食の介入試験」ではない

久山町研究そのものは長年にわたる貴重な疫学研究ですが、1988年と2002年の糖尿病有病率の比較を、

「高糖質・低脂質食の効果を調べた14年間の食事介入試験」

と捉えるのは適切ではありません。

1988年、2002年、2007年、2012年の糖尿病有病率を調べた論文では、4回の横断調査を使って時代的推移を分析しています[4]。

つまり、このデータから確認できるのは、異なる時点で調査された久山町住民の糖尿病有病率がどのように変化したかです。

そのため、この比較だけから、

「住民が14年間、糖質50~60%の食生活を守り続け、その結果として糖尿病になった」

とは言えません。

ここはかなり重要です。

「食事指導が行われていた地域で糖尿病が増えた」という話と、「その食事指導によって糖尿病が増えた」という因果関係は別の問題です。

■久山町の実際の食生活も変化していた

では、久山町住民はずっと「昔ながらの日本食」を食べ続けていたのでしょうか。

久山町研究の栄養調査を見ると、そう単純でもありません。

文献[3]には、久山町住民の三大栄養素のエネルギー比などについて、次のデータが掲載されています。

年 炭水化物エネルギー比 脂質エネルギー比 動物性脂質比1965 68.6% 15.6% 29.9%
1985 55.9% 25.4% 42.3%
1994 54.2% 26.2% 41.2%
2004 57.2% 24.5% 47.5%

[3]

長期的に見ると、1965年から1985年にかけて炭水化物エネルギー比は68.6%から55.9%へ低下し、脂質エネルギー比は15.6%から25.4%へ上昇しています。また、動物性脂質比も1965年の29.9%から2004年には47.5%となっています[3]。

したがって、

「久山町住民は昔ながらの高炭水化物・低脂質食をずっと維持し、その結果として糖尿病が増えた」

と単純に説明することは難しいでしょう。

ただし、逆方向にも注意が必要です。

この栄養摂取状況の変化だけを見て、

「食生活が変化したから糖尿病が増えた」

と因果関係まで断定することもできません。

食生活が変化したという観察結果と、それが糖尿病増加の原因だったという結論も、やはり別だからです。

■実は2002年以降、糖尿病は増え続けていない

ここは「久山町の悲劇」というストーリーだけを読むと見落としやすい部分です。

その後、久山町研究では1988年、2002年、2007年、2012年の4回の調査が比較されています[4]。

OGTTで評価した2型糖尿病の年齢調整有病率は、

1988~2002年:男女とも有意に増加
2002~2012年:男性では有意な増加なし
2002~2012年:女性では統計学的に有意ではないものの減少傾向

でした[4]。

さらに前糖尿病については、男性では1988年から2002年に増加した後、2002年から2012年には有意に低下しました。女性も同じようなパターンでしたが、統計学的有意差には至りませんでした[4]。

つまり、

「久山町では糖尿病が増え続けた」

という表現も正確ではありません。

正確には、

1988年から2002年に糖尿病有病率が大きく上昇し、その後はOGTTで評価した有病率のさらなる上昇は確認されなかった

ということになります[4]。

■では、研究者自身は何に注目したのか?

1988~2012年の研究で研究者が注目した要因の一つがBMIです。

特に、高齢者では1988年から2002年にBMIが大きく上昇した年齢層と、糖尿病有病率の上昇がみられた年齢層に対応するパターンがありました[4]。

論文では、BMIの時代的変化が2型糖尿病有病率の推移に寄与した可能性があり、肥満の管理が糖尿病有病率を低下させるうえで重要である可能性を指摘しています[4]。

ただし、ここにも注意が必要です。

研究者は、

「肥満だけが糖尿病増加の原因だった」

と証明したわけではありません。

あくまで、BMIの変化が糖尿病有病率の時代的推移に寄与した可能性を示していると考えるのが適切でしょう[4]。

■食事そのものを調べた別の久山町研究もある

久山町研究には、食事と耐糖能異常の発症を前向きに調べた研究もあります[5]。

1988年に正常耐糖能だった40~74歳の1,075人を1993~1994年まで追跡し、食事要因とIGT・糖尿病の発症との関連を調べました。

追跡期間中、

119人がIGTを発症
24人が糖尿病を発症

しました[5]。

多変量解析では、男性ではベースライン時の飲酒量、女性では追跡期間中のP/S比(多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比)の低下が耐糖能異常と関連していました[5]。

少なくとも、この研究の結論も、

「炭水化物を多く摂ったため糖尿病になった」

というものではありません[5]。

もちろん、この研究も観察研究なので、特定の栄養素だけが糖尿病の唯一の原因だったと証明するものではありません。

■ではなぜ「久山町の悲劇」という話になるのか?

実は、「糖尿病、久山町の悲劇と糖質制限法」というタイトルの2017年の総説があります[6]。

この総説では、

従来の糖尿病食では糖尿病発症を予防できないことが久山町研究で示された

という立場から久山町研究が論じられています[6]。

ここで重要なのは、久山町研究で観察された事実と、その事実をどう解釈するかを分けることです。

整理すると、

久山町研究から比較的明確に言えること
・1988年から2002年に糖尿病有病率が上昇した[3,4]
・2002年以降はOGTTで評価した2型糖尿病有病率のさらなる増加は確認されなかった[4]
・久山町住民の栄養摂取状況は長期的に変化していた[3]
・糖尿病有病率とBMIの時代的変化に対応する部分がみられ、研究者はBMIが寄与した可能性を指摘した[4]
・食事を前向きに調べた別の研究では、男性の飲酒、女性のP/S比低下と耐糖能異常との関連が報告された[5]

ここまでは研究から確認できることです。

ここから先は「解釈・仮説」

一方、

高糖質・低脂質食を食べたから糖尿病が増えた

というのは、久山町の糖尿病増加という現象を説明しようとする一つの解釈です。

逆に、

日本食から食生活が変化したから糖尿病が増えた

という説明についても、それを単独の原因として断定するなら、研究で直接証明された事実とは区別する必要があります。

さらに、

厚生労働省が推奨するPFCバランスが糖尿病を増やしている

というところまで広げることは、今回確認した久山町研究の結果から直接導くことはできません。

大切なのは「事実 → 仮説 → 検証」を飛ばさないこと

疫学研究を読むときには、

事実
↓
原因についての仮説
↓
その仮説を検証する研究

を区別することが大切です。

今回なら、

事実

1988~2002年に久山町で糖尿病有病率が上昇した[3,4]。

■そこから考えられる仮説

仮説A
食事の栄養素構成が影響したのではないか。

仮説B
肥満・BMIの上昇が影響したのではないか。

仮説C
食生活を含む生活習慣の時代的変化が影響したのではないか。

このように仮説を立てること自体に問題はありません。

むしろ、観察された現象について仮説を立て、その仮説を別の研究によって検証することが科学では重要です。

問題になるのは、

「自分の仮説と研究結果が矛盾しない」

ことを、

「研究によって自分の仮説が証明された」

と置き換えてしまうことです。

■同じ研究からなぜ正反対の結論が生まれるのか?

今回のX上の議論を見ていて興味深いのは、ここだと思います。

「1988~2002年に久山町で糖尿病が増えた」

という出発点は同じです[3,4]。

ところが、その原因を、

「従来型の高糖質・低脂質食だった」

と考えれば、

「従来型糖尿病食では糖尿病を予防できなかった」

という話になります[6]。

一方、

「肥満や食生活など生活習慣の変化だった」

と考えれば、

まったく違ったストーリーになります。

つまり、同じデータを見ていても「事実」と「原因についての仮説」を一緒にしてしまうと、正反対の結論まで作れてしまうわけです。

だからこそ、

「その研究で本当に確認されたことは何なのか?」

「どこから先が研究者や投稿者による解釈なのか?」

を切り分けて読む必要があります。

■まとめ

久山町研究から、

「伝統的な日本食を続けると糖尿病になる」

と結論づけることは難しいでしょう。

一方で、

「伝統的な日本食なら糖尿病にならない」

と結論づけることもできません。

研究から比較的明確に確認できるのは、1988年から2002年に久山町で糖尿病有病率が上昇したことです[3,4]。

その後の研究では2002年以降のさらなる増加は確認されず、BMIの時代的変化が糖尿病有病率の推移に寄与した可能性なども指摘されています[4]。

そして今回の議論で最も大切なのは、

研究で確認された「事実」と、その事実を説明するための「仮説」は別である

ということではないでしょうか。

研究結果を読むとき、

「この研究で直接確認されたのはどこまで?」

「ここから先はデータなのか、それとも解釈なのか?」

と一度立ち止まる。

それだけでも、SNSで正反対の主張を見たときに、研究をかなり冷静に読み解けるようになるのではないでしょうか。

【参考文献・資料】

[1]九州大学大学院医学研究院「久山町研究」
久山町研究の公式サイトです。福岡県久山町の地域住民を対象として60年以上にわたり生活習慣病などの疫学調査を行っており、健診受診率、剖検率、追跡率が世界トップレベルであることなど、研究の概要を確認できます。
久山町研究公式サイト

[2]九州大学大学院医学研究院 久山町研究「Trends in cardiovascular diseases and diabetes mellitus」
久山町研究の研究デザインを理解するための公式資料です。1961年以降に複数のコホートが設定され、各コホートの追跡率が99%以上であることなどが説明されています。
Hisayama Study公式解説を読む

[3]川村良一、土井康文、清原裕.「4. 久山町研究の結果から」『糖尿病』2008;51(6):477-479.
久山町における糖尿病・耐糖能異常、肥満、栄養摂取状況の時代的変化をまとめた資料です。1988年から2002年の糖尿病有病率について、男性15.0%→23.6%、女性9.9%→13.4%と報告しています。また、1965~2004年の炭水化物・脂質・動物性脂質などの摂取状況の変化も掲載されています。
J-STAGEで論文PDFを見る

[4]Mukai N, Hata J, Hirakawa Y, et al. “Trends in the prevalence of type 2 diabetes and prediabetes in a Japanese community, 1988–2012: the Hisayama Study.” Diabetology International. 2019;10(3):198-205.
1988、2002、2007、2012年の4回の調査を比較した論文です。OGTTによる2型糖尿病の年齢調整有病率は1988~2002年に増加しましたが、その後は男性でほぼ横ばい、女性では非有意の減少傾向でした。研究者はBMIの時代的変化が糖尿病有病率の推移に寄与した可能性を指摘しています。
PMCで全文を読む

[5]Kiyohara Y, Shinohara A, Kato I, et al. “Dietary Factors and Development of Impaired Glucose Tolerance and Diabetes in a General Japanese Population: The Hisayama Study.” Journal of Epidemiology. 2003;13(5):251-258. DOI: 10.2188/jea.13.251.
1988年時点で正常耐糖能だった1,075人を追跡し、食事要因と耐糖能異常・糖尿病発症を調べた研究です。追跡中に119人がIGT、24人が糖尿病を発症し、多変量解析では男性の飲酒量と女性のP/S比低下が耐糖能異常のリスク因子として残りました。
J-STAGEで論文を見る

[6]江部康二.「糖尿病、久山町の悲劇と糖質制限法」『脂質栄養学』2017;26(1).
久山町研究を「従来の糖尿病食では糖尿病発症を予防できなかった」という観点から論じた総説です。今回の記事では、久山町研究そのものの結論ではなく、研究結果に対する一つの解釈として区別して扱う必要があります。
J-STAGEで総説PDFを見る

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「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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クエン酸には疲労をとる効果があるの?「翌朝が楽になる」という体験談を論文から検証

「たくさん歩いた日やライブ・遠征の夜にクエン酸飲料を飲むと、翌朝の体が全然違う」

そんな投稿がSNSで話題になっています。

紹介されていたのは、クエン酸を2,700mg含む機能性表示食品のレモン飲料。投稿者は、よく歩いた日の寝る前に飲む習慣を続けたところ、翌日の疲労感がかなり違うと感じているそうです。

では、本当にクエン酸には「疲労をとる」働きがあるのでしょうか。

論文や機能性表示食品の科学的根拠をもとに、現在わかっていることを整理します。

■クエン酸とは?

クエン酸は、レモンや梅などに含まれる酸味成分です。

また、私たちの細胞が糖質や脂質などからエネルギーを取り出す過程には「クエン酸回路」という仕組みがあり、クエン酸はその代謝経路に登場する物質の一つです。

ただし、

クエン酸回路にクエン酸が登場する
=クエン酸を飲めばエネルギーがどんどん作られる

と単純に説明することはできません。

食べたクエン酸が、そのまま細胞内のクエン酸回路を加速させると考えるのは単純化しすぎです。「クエン酸回路に必要だから疲労回復に効く」という説明だけでは、効果の根拠として不十分です。

一方、クエン酸とエネルギー代謝の関係については研究されており、クエン酸摂取による疲労感への影響を調べたヒト試験もあります。そのため、「クエン酸回路とは無関係」ということでもありません。

重要なのは、「クエン酸回路にクエン酸が登場する」という生化学的な説明と、「クエン酸を摂取すると人の疲労感が軽減する」という臨床的な効果を分けて考えることです。

■ヒトを対象とした研究ではどうだった?

1.軽い運動前にクエン酸1,000mgを摂取した研究

2017年に発表された研究では、21~34歳の成人男性11人を対象に、軽い運動の前にクエン酸1,000mgを摂取する場合と、水を飲む場合が比較されました。

その結果、クエン酸を摂取した条件では、運動後の疲労感が低く、利き手の握力が高い結果となりました。また、体調アンケートでは「眠い」「全身がだるい」という回答も少なくなりました。

一方で、翌朝の疲労感については、クエン酸と水の間に有意差がありませんでした。今回のSNS投稿を考えるうえで、この点は重要です。

この研究からは「運動後すぐの疲労感を抑える可能性」は示唆されますが、「寝る前に飲めば翌朝の疲れが取れる」とまではいえません。

2.運動後のレモン果汁・クエン酸を調べた研究

2001年の研究では、運動経験のある健康な成人男性6人が、1時間の自転車運動をした後に、次のいずれかを摂取しました。

レモン果汁+グルコース
クエン酸+グルコース
グルコースのみ

・クエン酸は体重1kg当たり0.4gと、市販品1本よりかなり多い量だった
・クエン酸群、レモン果汁群、対照群のいずれも体重1kg当たり1.5gのグルコースを含む条件だった
・市販のクエン酸飲料をそのまま検証した試験ではない

レモン果汁またはクエン酸を摂取した場合、運動後に上昇した血中乳酸濃度の低下が早くなりました。

ただし、この研究には注意点があります。

・対象者が6人と非常に少ない
・市販品1本よりかなり多い量のクエン酸を使用している
・クエン酸だけでなく、多量のグルコースも一緒に摂取している
・調べたのは運動後60分までの血液成分である
・主観的な疲労感や翌朝の回復を中心に調べた試験ではない

そのため、「血中乳酸が早く低下した」という結果を、そのまま「翌日の疲労が取れた」と読み替えることはできません。

3.クエン酸2,700mgを継続摂取した研究

クエン酸の「継続摂取」について調べた研究もあります。

2007年に『薬理と治療』に掲載された研究では、疲労を自覚する人を対象として、レモンクエン酸を含む飲料を継続して摂取した場合の疲労感などへの影響が調べられました。

この研究について紹介する二次資料では、疲労を自覚している24人がレモンクエン酸2,700mgを含む飲料を8日間継続摂取し、主観的な疲労感の軽減傾向がみられたほか、作業効率に関する評価にも変化が認められたとされています。

ただし、対象者数が24人と小規模な研究であることには注意が必要です。また、この研究は「疲れた日の寝る前に1回飲んだら、翌朝どうなるか」を調べたものではありません。

むしろ、現在の機能性表示食品の届出表示にある「継続的な飲用で日常生活や運動後の疲労感を軽減する」という考え方に近い研究です。

したがって、この研究も「寝る前にクエン酸を飲めば翌朝の疲れが取れる」というSNS上の体験談を直接証明するものではありません。

4.625人を対象にしたプラセボ対照WEB調査もある

同じ2007年には、より多くの人を対象にした研究も報告されています。

『薬理と治療』35巻7号には、「レモンクエン酸の疲労感軽減効果―疲労感を自覚する625名を解析対象としたプラセボ対照WEB調査―」という研究が掲載されています。疲労感を自覚する625人を解析対象としたプラセボ対照WEB調査です。

なお、この研究には大阪市立大学大学院医学研究科の研究者に加え、ポッカコーポレーションなどに所属する研究者も参加しています。研究結果を読む際には、研究規模や試験方法とともに、こうした研究者の所属についても確認しておくことが大切です。

J-GLOBALの文献情報では、この研究の目的として、レモンクエン酸による疲労感軽減作用の再現性などを検討したことが確認できます。

ただし、今回確認できた公開情報では抄録の全文が表示されておらず、摂取したクエン酸量、摂取期間、具体的な疲労感の変化や統計解析結果までは確認できませんでした。したがって、公開情報だけから「625人を対象とした研究でクエン酸の疲労感軽減効果が確認された」と断定することはできません。

また、この研究も「疲れた日の寝る前にクエン酸を1回飲むと、翌朝の疲労が軽減する」というSNS上の体験談を直接検証した研究とは確認できません。

■乳酸は「疲労物質」なの?

以前は、運動で乳酸がたまることが疲労の原因だと説明されることがありました。

しかし現在では、乳酸を単純な「疲労物質」とみなす説明は適切ではありません。乳酸は運動時のエネルギー代謝によって生じ、別の組織でエネルギー源として再利用される物質でもあります。

2001年研究では「血中乳酸濃度の低下が促進された」と報告されています。しかし、血液中の乳酸濃度が早く低下することと、本人が感じる疲労や翌朝の回復が改善することは同じではありません。

「血中乳酸の変化」と、本人が感じる「疲労感」、筋肉の損傷、睡眠不足、脱水、エネルギー不足は、それぞれ分けて考える必要があります。

【クロ現プラス】乳酸革命|乳酸は”エネルギー源”|乳酸トレーニングを取り入れた競泳・萩野公介選手の肉体の秘密とは?【論文・エビデンス】

■機能性表示食品ではどう評価されている?

SNS投稿で紹介されていた「キレートレモン クエン酸2700(155ml)」は、クエン酸2,700mgを含む機能性表示食品です。なお、この155mlびんの商品はメーカー公式サイトでは2026年8月の終了商品と案内されています。

公式の届出表示は、

クエン酸は継続的な飲用で日常生活や運動後の疲労感を軽減することが報告されています

という内容です。1本にはクエン酸2,700mg、ビタミンC1,350mgが含まれています。

ここで注目したいのが、「継続的な飲用」という部分です。

商品の表示は「疲れた日の寝る前に1回飲めば、翌朝の疲れが取れる」とするものではありません。したがって、「よく歩いた日の就寝前に1本だけ飲み、翌朝の疲労感を軽くする」というSNS上の飲み方は、届出表示が直接示している摂取条件・効果とは異なります。

届出資料の研究レビューでは、無作為化比較試験4報が評価され、4報中3報でVAS(Visual Analog Scale:視覚的アナログスケール)による疲労感への肯定的な結果が認められました。このうち、クエン酸2,700mgを継続摂取したヒト試験も報告されています。

一方、評価対象が4報と少ないこと、研究方法に偏りが生じる可能性、VAS以外の評価指標が十分でないことなども限界として記載されています。

また、機能性表示食品は国が個別に効果を審査して認定する制度ではありません。事業者が安全性と機能性の根拠を消費者庁へ届け出て、自らの責任で表示する制度です。

なお、この商品の機能性は、商品そのものを使った臨床試験ではなく、機能性関与成分であるクエン酸に関する研究レビューによって評価されています。

■「翌朝が楽」という体感は否定すべき?

体感を「気のせい」と切り捨てる必要はありません。

今回の体験談について、次の要因が実際にどの程度影響したかはわかりません。ただし、クエン酸以外にも、体感に影響し得る条件があります。

・水分を補給した
・糖質を摂取した
・酸味や炭酸でリフレッシュした
・「これを飲めば回復できる」という期待があった
・飲んだ後にしっかり睡眠を取った
・その日の運動量や疲れ方が普段と違った

実際、「キレートレモン クエン酸2700」にはクエン酸だけでなく、砂糖、レモン果汁、ビタミンC、炭酸なども含まれています。1本のエネルギーは35kcal、炭水化物は9.5gです。

したがって、製品を飲んだ体験と「純粋なクエン酸単独の作用」は分けて考える必要があります。

■梅干しやサプリでも代用できる?

「クエン酸が含まれていれば、梅干しやサプリでも同じ」とは限りません。

研究や機能性表示食品では、

クエン酸の摂取量
飲む期間
飲むタイミング
対象者
運動条件
一緒に含まれる成分

などが決められています。

梅干しの場合は製品ごとにクエン酸量が異なるうえ、塩分も含まれます。サプリメントやゼリーについても、クエン酸量と摂取目安を確認する必要があります。

「梅干し1個なら同じ」「どのレモン飲料でも同じ」とは断定できません。

■以前の「梅に疲労軽減効果」という研究との関係は?

以前のハクライドウ記事では、2010年の報道をもとに、和歌山県の産学官共同研究で梅果実成分の肉体疲労軽減効果が示され、梅由来のクエン酸と梅酢ポリフェノールを併用すると効果が高まったと発表されたことを紹介しています。

ただし、過去記事には試験方法や対象人数、摂取量、原著論文などの詳細が掲載されていないため、今回取り上げたクエン酸単独の臨床試験と同列には扱えません。

参考: 梅に疲労軽減効果|和歌山県が産学官の共同研究で実証

■寝る前にクエン酸飲料を飲む場合に注意したいこと

機能性表示食品は、商品に書かれた1日の摂取目安量を守ることが基本です。

ただし、酸味の強い飲料を寝る直前に飲む習慣には別の注意点があります。

・酸性飲料を口の中に長時間残さない
・飲んだ後は水で口をすすぐ
・酸味で胃に不快感が出る人は、空腹時を避けるなど自分の体調に合わせる
・糖質やカロリーも確認する
・疲労感が長期間続く場合は、飲料だけで対処しない

特に、強い疲労が続く、休んでも改善しない、発熱、息切れ、動悸、体重減少などを伴う場合は、単なる運動後の疲労とは限りません。

■まとめ

現時点では、クエン酸の継続摂取や運動前の摂取によって、日常生活や運動後に感じる主観的な疲労感が軽減する可能性はあります。

ただし、研究数は少なく、小規模な試験も含まれています。

また、「たくさん歩いた日の就寝前に1回飲めば、翌朝の疲れが大きく軽減する」という摂取方法と効果は、今回確認した研究からは判断できません。

SNSの体験談は、クエン酸を試すきっかけにはなります。しかし、その体感がクエン酸そのものによるものか、水分、糖質、睡眠、期待感なども含めた結果なのかは、体験談だけでは判断できません。

疲れた日の基本は、食事、水分、睡眠、休養です。クエン酸についても、「飲めば疲労そのものが取れる」と考えるのではなく、疲労感を軽減する可能性のある選択肢の一つとして捉えるのがよさそうです。

【参考文献・資料】

河野良平ほか「低負荷運動直前のクエン酸摂取が血中乳酸値および疲労感へ及ぼす効果:無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験」薬理と治療 45巻3号、395-403、2017年。成人男性11人の試験で、運動後の疲労感には差が認められた一方、翌朝の疲労感には有意差が認められませんでした。
三宅義明ほか「ヒトにおけるレモン果汁およびクエン酸摂取が運動後の血中乳酸濃度に及ぼす影響」日本栄養・食糧学会誌 54巻1号、29-33、2001年。成人男性6人を対象とした運動試験です。なお、この研究には当時のポッカコーポレーションの研究者が参加しています。
消費者庁「https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/」届出番号D591
「届出番号D591の機能性・研究レビュー要約」
ポッカサッポロフード&ビバレッジ「キレートレモン クエン酸2700」。紹介されていたのは、クエン酸を2,700mg含む機能性表示食品「キレートレモン クエン酸2700」です。なお、今回参照した155mlびんの商品は、メーカー公式サイトで2026年8月の終了商品と案内されています。
消費者庁届出番号D591に関する研究レビュー。無作為化比較試験4報のうち3報でVASによる肯定的結果が報告される一方、論文数の少なさなどが限界として挙げられています。
梶本修身ほか「『レモンクエン酸配合飲料』の疲労を感じやすい健常者における抗疲労作用」『薬理と治療』35巻7号、809-819、2007年。
梶本修身ほか「レモンクエン酸の疲労感軽減効果―疲労感を自覚する625名を解析対象としたプラセボ対照WEB調査―」『薬理と治療』35巻7号、821-828、2007年。疲労感を自覚する625人を解析対象としたプラセボ対照WEB調査。







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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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投稿日: 2026年10月11日 09:10

シャンプーハット・恋さん、扁桃腺がんと中咽頭がんを公表|首のしこりも症状?中咽頭がんとは

お笑いコンビ「シャンプーハット」の恋さんが2026年10月13日、自身のYouTubeチャンネル「こいちゃんパラダイス」で、扁桃腺がんと中咽頭がんを患っていることを公表しました。

みなさまへご報告

病状については、がんの本体は口の中の扁桃腺にある扁桃腺がんで、首にできた中咽頭のしこりは、そこから転移した「転移先」であり、さらに、見えないうしろの場所にもう1つ小さいがんが検査で見つかっており、計3つの状態。

ステージは「1」。ただし医師からは「サイズ的にギリギリ1」「大きくなっていたら2の可能性もある(限りなく2寄りの1)」と言われているそうです。

報道によれば、恋さんは10月19日から芸能活動を休止する一方、動画配信は続ける意向だということです。

恋さんは今年8月、首にしこりができたことを明かし、大阪のがんセンターで精密検査を受けていたと報じられています。

「中咽頭がん」とは、いったいどのようながんなのでしょうか?

以前、ハクライドウでは、とんねるず・石橋貴明さんが食道がんと咽頭がんを併発したことを紹介しました。

とんねるず・石橋貴明さん、食道がんと咽頭がんの併発を公表

「咽頭がん」といっても、咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分けられます。

国立がん研究センター東病院によると、中咽頭がんではHPV(ヒトパピローマウイルス)感染の関与も指摘されています。

今回は、中咽頭がんについて、首のしこりなどの症状や原因、HPVとの関係、治療法をまとめます。

■中咽頭とはどこのこと?

「のど」は、空気や食べ物の通り道となっており、そのうち咽頭は、

上咽頭
中咽頭
下咽頭

の3つに分けられます。

その中間に位置するのが「中咽頭」です。

中咽頭がんは、この中咽頭に発生するがんで、頭頸部がんの一つに分類されています。

咽頭は呼吸だけでなく、ものを飲み込む「嚥下」や発声にも関係する場所です。

そのため、中咽頭がんの治療では、がんを治療することとともに「飲み込む」「声を出す」といった機能をできるだけ残すことも重要になります。

【関連記事】
とんねるず・石橋貴明さん、食道がんと咽頭がんの併発を公表 芸能活動休止へ
つんく♂、喉頭がんで声帯摘出手術を受け声を失ったことを告白

■首のしこりは中咽頭がんの症状の一つ

今回のニュースで気になるのが、恋さんが中咽頭がんを公表する以前に、首のしこりができたことを明かしていたという点です。

もちろん、首にしこりがあるからといって、中咽頭がんというわけではありません。

ただ、国立がん研究センターの「がん情報サービス」では、中咽頭がんの症状として、

・飲み込むときの違和感
・おさまらない咽頭痛
・のどからの出血
・口を大きく開けにくい
・舌を動かしにくい
・耳の痛み
・口の奥・のど・首にできるしこり
・声の変化

などを挙げています。

また、初期のうちは自覚症状がみられない場合もあります。

さらに、中咽頭がんでは頸部リンパ節に転移していることも多いとされています。

そのため、「首のしこり」というのも、中咽頭がんを知る上で覚えておきたい症状の一つです。

■咽頭がんの症状・初期症状・サイン

咽頭がんは、がんができる場所によって上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに分けられ、それぞれ現れやすい症状が異なります。

●上咽頭がん

上咽頭がんは、初期には自覚症状がみられないことがあります。

国立がん研究センターによると、見つかったときに最も多くみられる症状は、頸部リンパ節への転移による首のしこりです。

そのほか、

・鼻づまり
・鼻血
・鼻水に血が混じる
・耳がつまった感じ
・聞こえにくい
・首のしこり

などがあります。

さらに進行すると、目がぼやける・かすむ、物が二重に見えるなどの症状が現れることもあります。

●中咽頭がん

中咽頭がんについても、初期には自覚症状がない場合があります。

症状としては、

・飲み込むときの違和感
・おさまらないのどの痛み
・のどからの出血
・口を大きく開けにくい
・舌を動かしにくい
・耳の痛み
・口の奥やのどのしこり
・首のしこり
・声の変化

などが挙げられています。

今回、中咽頭がんを公表したシャンプーハット・恋さんが、その前に「首にしこりができた」ことを明かしていたというニュースともつながるポイントです。

ただし、首のしこりにはさまざまな原因があるため、「首のしこり=中咽頭がん」という意味ではありません。

●下咽頭がん

国立がん研究センター東病院では、下咽頭がんの症状として、

・声がれ(嗄声)
・のどの違和感
・のどの痛み
・血痰

などを挙げています。

進行すると、飲み込みにくさ(嚥下障害)や呼吸困難が現れることもあります。

●「ちょっとしたのどの違和感」だけの場合も

注意したいのは、初期から必ずはっきりした症状が出るわけではないことです。

がん研有明病院「咽頭がん」では、初期にはのどの違和感や軽い痛み程度で、強い症状がないことも少なくないと説明しています。また、首のリンパ節への転移を「首のしこり」として自覚したことから発見される場合もあります。

「強いのどの痛みがないから大丈夫」とは限らず、咽頭がんは初期には自覚症状がないこともある一方、のどの違和感や首のしこりなどが発見のきっかけになることがあります。

■中咽頭がんの原因は?

では、なぜ中咽頭がんになるのでしょうか?

咽頭がんというと、まず喫煙や飲酒を思い浮かべる人が多いかもしれません。

実際、国立がん研究センター東病院によれば、咽頭がんの発症要因には過度の飲酒や喫煙があり、中咽頭がんについては、それらに加えてHPV(ヒトパピローマウイルス)感染の関与も指摘されています。

ここは、中咽頭がんを理解する上で重要なポイントです。

つまり、

「咽頭がん=喫煙・飲酒」だけではなく、中咽頭がんにはHPV感染と関連するタイプもある

ということです。

ただし、今回の報道だけから「恋さんの中咽頭がんがHPVによるものだった」と判断することはできません。

恋さん個人の発症原因と、中咽頭がん一般について分かっている発症要因は分けて考える必要があります。

■HPVと中咽頭がんにはどんな関係がある?

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、中咽頭がんの一部と関連しています。

そして中咽頭がんの場合、HPVとの関連は単に「原因の一つ」というだけではありません。

診断された中咽頭がんでは、HPV感染との関連を示すp16というタンパク質が陽性か陰性かによって、TNM分類や病期分類が異なります。

また、HPV感染に関連する中咽頭がんは、そうでない中咽頭がんと比較して予後がよいことが知られています。

ここまで違いがあることを考えると、同じ「中咽頭がん」という病名でも、その背景には異なるタイプが存在することが分かります。

■HPV関連中咽頭がんなら治療法も違うの?

ここは誤解しやすいところです。

国立がん研究センターの2026年更新情報では、p16陽性か陰性かによって治療の選択が変わることはないとしています。

一方、日本頭頸部癌学会が編集した「頭頸部癌診療ガイドライン2025年版」では、

HPV関連中咽頭がんで放射線治療・化学放射線療法を行う場合、放射線量を低減できるか
化学放射線療法で使用する薬剤を変更できるか
中咽頭がんに経口的切除術が有用か

といったテーマがクリニカルクエスチョン(日々の臨床現場で医療従事者が患者の診断や治療、予後などに関して抱く「解決すべき疑問」)として取り上げられています。

HPV関連中咽頭がんについては、治療による身体への負担をどう考えるかという点も研究・検討されていることが分かります。

■中咽頭がんはどのように治療する?

中咽頭がんでは、

手術
放射線治療
化学放射線療法
薬物療法

などが行われます。

どの治療法を選択するかは、がんのステージや性質、患者の体の状態などを調べた上で検討されます。

また、中咽頭がんでは「飲み込む」「声を出す」といった機能をできるだけ残すことも重要です。

そのため、腫瘍の場所や広がり、転移の有無に加えて、機能温存についても考慮して治療法を決めていきます。

たとえば早期の場合、口から器具を入れてがんを切除する「経口的切除術」ができることもあります。一方、がんが進行して切除範囲が大きくなると、飲み込むことや発音・発声といった機能に影響する場合があります。

■「咽頭がん」を一括りにしないことも大切

以前、ハクライドウでは、とんねるず・石橋貴明さんが食道がんと咽頭がんを併発したニュースを取り上げました。

とんねるず・石橋貴明さん、食道がんと咽頭がんの併発を公表

今回、中咽頭がんについて調べてみると、「咽頭がん」と一括りにしないことも大切だと分かります。

咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられ、発生部位によって特徴があります。

中咽頭がんについては、喫煙や飲酒だけではなく、HPV感染が関与するものがあるという点が大きな特徴の一つです。

■まとめ

シャンプーハットの恋さんは2026年10月13日、中咽頭がんを患っていることを公表しました。

報道によれば、恋さんはそれ以前の8月に首にしこりができたことを明かし、その後精密検査を受けていました。

中咽頭がんは初期には自覚症状がないこともありますが、飲み込むときの違和感、治らない咽頭痛、耳の痛み、声の変化、口の奥・のど・首のしこりなどが症状として現れることがあります。

そして今回、中咽頭がんについて知っておきたいポイントの一つが、喫煙や飲酒だけではなく、HPV感染が関与するものもあるということです。

ただし、中咽頭がんになる原因は一つではありません。

今回の恋さんについても、本人から公表されていない原因を推測することは避ける必要があります。

今回のニュースをきっかけに、「中咽頭がんとはどんな病気なのか」「首のしこりなど、どのような症状があるのか」を知っておくことが大切なのではないでしょうか。

※この記事は病気に関する一般的な情報を紹介するものであり、診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合には、医療機関に相談してください。

【参考資料】
国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん」
国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん 治療」
国立がん研究センター東病院「咽頭がん」
日本頭頸部癌学会「ガイドライン」
頭頸部癌診療ガイドライン2025年版
シャンプーハット・恋さん、中咽頭がんを公表 Yahoo!ニュース







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