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■トランス脂肪酸の摂取が細胞死を促す|動脈硬化症の発症のメカニズム解明につながる発見|東北大
by Mattie Hagedorn(画像:Creative Commons)
トランス脂肪酸による疾患発症機序の一端を解明-動脈硬化症発症のメカニズム解明に繋がる発見-
(2017/4/17、東北大学プレスリリース)
●食品中に含まれるトランス脂肪酸が細胞の自殺(細胞死)を促す仕組みを発見。
●過剰な細胞死は、動脈硬化症の発症・進展につながる。
●動脈硬化症等の、疾患メカニズム解明につながることが期待される。
東北大学大学院薬学研究科の平田祐介助教、野口拓也准教授、松沢厚教授、青木淳賢教授、福永浩司教授らの研究グループによれば、トランス脂肪酸が細胞死を促進することを明らかにしました。
■背景
トランス脂肪酸の摂取と健康への影響|農林水産省
トランス脂肪酸については、飽和脂肪酸(ミリスチン酸及びパルミチン酸)、塩分のとりすぎ、過体重、アルコールのとりすぎとともに、心血管疾患(CVD)、特に冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高める確実な証拠があるとされています。
その具体的な証拠としては、次の事項が記載されています。
代謝研究で、トランス脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを飽和脂肪酸と同様に増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすため、飽和脂肪酸よりも血液の脂質プロファイルをアテローム性(動脈硬化などの原因となる)に変化させることが示されている。
いくつかの大規模コホート研究では、トランス脂肪酸の摂取は冠動脈性心疾患のリスクを増やすことが示されている。
トランス脂肪酸を摂取すると、LDLコレステロールを増やしたり、HDLコレステロールを減らすため、動脈硬化などの原因になったり、また、狭心症や心筋梗塞などの心臓の筋肉へ血液を供給する冠動脈が狭くなったりふさがったりすることによって、心臓への血液供給が減少または完全に遮断される病気である冠動脈性心疾患のリスクを増やすことがわかっています。
これまでの調査結果から、トランス脂肪酸は動脈硬化症などの循環器系疾患や糖尿病などの生活習慣病のリスク要因とされていますが、そのメカニズムはほとんどわかっていませんでした。
■研究結果
今回の研究では、トランス脂肪酸には細胞死亢進作用(細胞には細胞死をするための仕組みが備えられているが、この仕組みを必要以上に活性化する作用)を促進する仕組みがあることを発見しました。
動脈硬化症の発症・進展には、細胞外ATPといった自己由来の起炎性因子(damage-associated molecular patterns: DAMPs、生体内で産生された物質が炎症を起こす)は、障害を受けた組織から漏れ出し、マクロファージ(貪食細胞:悪い菌や死んだ細胞を食べてくれる)による炎症や細胞死を惹き起こすことから、トランス脂肪酸による細胞死亢進作用は動脈硬化症の発症・進展に影響をもたらすことが考えられます。
■まとめ
by Mark Bonica(画像:Creative Commons)
飽和脂肪酸・トランス脂肪酸が早死リスクを上昇させる|不飽和脂肪酸に置き換えると死亡リスクが低くなる|米ハーバード大によれば、トランス脂肪酸の摂取量が2%増加することに、早死リスクが16%高まることと関連していることが明らかになっていましたが、今回の研究によれば、トランス脂肪酸による動脈硬化症の発症のメカニズムの一端を分子レベルで明らかにしました。
動脈硬化を予防するためにも、トランス脂肪酸の摂取には注意したほうが良いようです。
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