■スマートウォッチは病気の早期発見に役立つ|正常値とベースライン値の確立が重要|スタンフォード大
by LWYang(画像:Creative Commons)
スマートウォッチが毎日勝手に健康診断をしてくれる…病気の早期発見のための強力なツールだ
(2017/1/13、TechCrunch)
スタンフォード大学のMichael Snyderの研究チームが最近発表した、長期的な実験の結果によると、スマートウォッチは確かに、疾病の診断や監視の役に立つ。
スタンフォード大学のマイケル・スナイダーの研究によれば、フィットネスモニターや他のウェアラブルバイオセンサーが心拍数、肌の温度などの異常が起きているかを知らせてくれることにより、病気になっていることを伝えてくれるそうです。
現在進行中の研究の重要な要素は、正常値またはベースライン値を確立することなのだそうです。
Verily(元Google X)のProject Baseline studyの目的は、病気のサインを見つけ病気の予防をすること!?で紹介したGoogle Xが行なうプロジェクト「Baseline Study」では、尿・血液・唾液・涙といった成分からデータを収集・解析し、健康の基準値(ベースライン)を見つけることで、生体の状態や病態を示す指標「バイオマーカー」を発見し、健康維持や病気の早期発見に役立てることを目指していました。
ザッカーバーグ夫妻、人類の病気を予防・治療するプロジェクトで30億ドルを投資によれば、ザッカーバーグ夫妻は、心臓疾患、感染症、神経系疾患、ガンといった病気が起きてから治療をするのではなく、病気を予防するためのプロジェクトに取り組んでいるようです。
ザッカーバーグは「アメリカでは病気にかかった人々を治療するための支出に比べて、そもそも人々が病気にならないように研究するための支出はわずか50分の1しかない」と述べた。
病気が発症してからではなく、健康な体が病気になりそうなサインを見つけるというアイデアは、東洋医学における「未病」という考え方に近いものです。
人によっては、健康診断などの検査結果で異常がないにもかかわらず、体がだるい、疲れやすい、頭痛、肩こり、めまい、眠れないなどといった体の不調に悩まされた経験もあるのではないでしょうか。
「はっきりとした症状はでていない」「数値には現れないけどなんだか体調がよくない」というときを、健康な体から病気の身体へと向かう途中だと考えるとすれば、その途中で起きる「サイン」に着目して、何らかの対処を行なうことが最も効果的な医療になっていくのではないでしょうか。
そのためにも、病気かそうではないかの「Baseline(ベースライン)」を見つける研究に注目が集まっていると考えられます。
■スタンフォード大学が掲げるスローガン「Precision Health」とは?
Precision Healthとはどのような考え方なのでしょうか?
スタンフォード大学医学部によれば、「Precision Health(直訳すると、精密医療・高精度医療でしょうか?)」をスローガンとして掲げているようで、プレシジョン・ヘルスとは、病気の予防、病気の発症予測、健康とQOL(生活の質)をできる限り維持することを目的とし、データサイエンスツールを活用して膨大な研究と臨床データを患者や医師が利用できるようにすることを考えているようです。
■まとめ
フィットネストラッカーのデータから心房細動は脳卒中によるものと判断され救われたケースがあるによれば、すでにフィットネストラッカーをつけている人の心拍数のベースラインと異常値のデータを参考に病気を判断したケースがありました。
Fitbitのおかげ。世界初、フィットネストラッカーが人命救助
(2016/4/20、ギズモード)
患者の検査の際に、腕に付けるアクティビティトラッカー(Fitbit Charge HR)を着用していることが確認されました。それは患者のスマートフォン上のアプリケーションと同期されており、フィットネス・プログラムの一環として彼の心拍数が記録されていました。このアプリケーションを患者のスマートフォンを通じて閲覧したところ、彼の心拍数のベースラインが毎分70から80回であり、脳卒中が発生した大体の時間において突如、持続して毎分140から160回の幅へと上昇していたことが分かりました。心拍数はジルチアゼムを投与するまで上昇した状態が続きました。
Fitbitのデータのおかげで、心房細動は脳卒中によって引き起こされたものであり、電気的除細動を行って良いことが確認されたということです。
フィットネストラッカー「Fitbit Charge HR」に記録されている心拍数のデータを参考に、医師は心房細動は脳卒中によって引き起こされたと判断し、電気的除細動を行なったそうです。
ウェアラブルデバイスで得た生体データによる病気の予兆を検知することで運転手の突然の体調変化による死亡事故を未然に防ぐシステムによれば、リストバンド型の血圧測定デバイスを運転手につけてもらい、脈拍、心電図、体温、呼吸数、血中酸素濃度をクラウド上でモニターすることで、病気の予兆を検知するサービスが考えられています。
また、福井の京福バスではIoTで交通事故を防ぐシステムの実証実験が行われているそうで、運転手がNTTと東レが開発した機能素材を使った衣類を着用することにより、心拍数をリアルタイムでチェックし、また運転手の動作(急ハンドル・急ブレーキ)や車の動きを総合して分析し、事故を未然に防止することを目的としています。
今後、様々な生体データのベースラインを見つけることができれば、スマートウォッチでの健康管理にもっと活かせるようになるのではないでしょうか。
【参考リンク】
Wearable sensors can tell when you are getting sick
(2017/1/12、Stanford Medicine)
An important component of the ongoing study is to establish a range of normal, or baseline, values for each person in the study and when they are ill.
【参考リンク(論文・エビデンス)】
- Li X, Dunn J, Salins D, Zhou G, Zhou W, Schüssler-Fiorenza Rose SM, et al. (2017) Digital Health: Tracking Physiomes and Activity Using Wearable Biosensors Reveals Useful Health-Related Information. PLoS Biol 15(1): e2001402. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.2001402
【参考リンク】
How Stanford Medicine will “develop, define and lead the field of precision health”
(2015/6/8、Stanford Medicine)
Precision health includes precision medicine but boldly expands its focus. Precision medicine provides personalized treatments once illness occurs; in contrast, precision health aims to prevent and predict illness, maintaining health and quality of life for as long as possible. Precision health draws on data science tools to translate volumes of research and clinical data into information patients and doctors can use.
【参考リンク】
【関連記事】
- ウエンツ瑛士さんの体調管理方法は「風邪ひくかも」というような違和感を無視しないこと!
- 予防医療が広がることで、自分の健康状態を天気予報を見るようにダッシュボードで見て予測できるような未来になる!?
- Apple Heart Study|Apple Watchの心拍センサーを使って心房細動を通知するアプリ スタンフォード大学と提携
- Apple ARKitと機械学習を活用して相手の生存期間を予測し表示するアプリ版「#デスノート」のアイデアを活かした健康管理アプリができる!?
- 「ストレスの見える化」ができるツールやアプリに注目!|体の動き・皮膚ガス・皮膚の色の変化・声帯の変化・脈拍の変動
- 【肌の上のラボ】汗を分析するデバイスで病気診断|ノースウエスタン大学
- 皮膚ガスを検知して疲労度やストレス度を測るデバイスの開発|皮膚ガス分析による健康管理で病気予防|東海大学
- 保険とIoTを融合した健康増進サービスの開発に注目!|ウェアラブルデバイスをつけて毎日運動する人は生命保険・医療保険の保険料が安くなる!?
- 心拍・心電位などの生体情報を取得できる機能素材「HITOE」を使ったウェア「C3FIT IN-PULSE」を活用して不整脈の臨床研究|東大病院・ドコモ
- 「HEARTILY」|東大とドコモ、RESEARCHKITで脈の揺らぎを測定するアプリを開発 不整脈と生活習慣病の関連性解析
- 「GLUCONOTE」|東大とドコモ、RESEARCHKITで糖尿病と生活習慣の関連性を研究するアプリを開発
- 糖尿病アプリで行動が変化し、空腹時血糖値や収縮期血圧が試験前より改善|東大病院
- 「メタボウォッチ」|早稲田大学、ResearchKitでメタボリックシンドロームになりやすい生活習慣をチェックするアプリを開発
- 不整脈とは|不整脈の症状・原因・判断する基準の脈拍
- 浦和MF鈴木啓太選手の病気は「不整脈」、今オフ手術へ(2014/12/8)
- 一時意識消失の松村邦洋さん、急性心筋梗塞による心室細動が原因だった
- AED 市民救命で社会復帰2倍 京大、心停止患者調査
- 脈拍の簡単な測り方|脈はどこでとればいいの?
- 脈拍の正常値の範囲|脈拍の状態を知ることで健康管理をしよう!
- 脈をとって脳梗塞の原因となる心房細動を見つけよう!
- 心房細動患者の脳梗塞リスクを計算する方法
- なぜ心房細動による脳梗塞が増えているのか?2つの理由
- 肥満+高めの血圧で心房細動のなりやすさが1.7倍に上がる!?
P.S.
なぜフィットネストラッカーがダイエットの妨げになってしまうのか?|ピッツバーグ大学によれば、6か月間低カロリーの食事と運動、ダイエット日記に記録し、カウンセリングに参加したグループは平均して約7.7kg~8.6kgの減量に成功しましたが、その後の18か月でウェブサイトに活動記録を残すダイエットを行なったグループもフィットネストラッカーを装着したグループも両方ともリバウンドしているという結果が出ています。
ただフィットネストラッカーを装着したグループのほうが体重が増えていることから、フィットネストラッカーを使ったからといって減量を助けることにはつながるわけではない、ということではないでしょうか。
フィットネストラッカーをつけることで行動パターンに影響を与えてしまうこともある可能性があるので、今後の研究で明らかにしてほしいですね。