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■徐々に薬剤がしみ出る埋め込み型デバイスによる網膜色素変性症の治療の開発に期待|東北大
by US Army Africa(画像:Creative Commons)
(2016/12/13、東北大学)
東北大学大学院医学系研究科 細胞治療分野の阿部 俊明(あべ としあき)教授らのグループは、網膜色素変性症動物モデル(変異型ロドプシン遺伝子[P347L]トランスジェニックウサギ)に対する薬剤(ウノプロストン)徐放デバイスの網膜保護効果を報告しました。本研究によって、本邦の特定疾患に指定されており、難治性で治療法のなかった網膜色素変性症の治療法開発に貢献することが期待されます。
(2016/12/18、日本経済新聞)
東北大学大学院医学系研究科細胞治療分野の阿部俊明教授らのグループは、薬剤を徐々に放出する装置(徐放化デバイス)を作成し、網膜色素変性症モデルのウサギに対して行なった実験で、網膜変性から視細胞を保護することが示唆されたことから、網膜色素変性症の治療法の開発に役立つことが期待されます。
参考画像:埋込み型薬剤徐放デバイスによる網膜色素変性症治療へ(2016/12/13、東北大学)|スクリーンショット
(2016/12/13、東北大学)
最近の報告で、緑内障の治療薬であるウノプロストン注 1 は、視細胞を直接的に保護することで網膜の錐体細胞注 2 の変性を抑制する可能性が示唆されました。しかし点眼による治療は患者の治療への理解と積極的な意思に依存し、また、点眼のみでどのくらい有効な濃度の薬剤が網膜へ到達するのかという課題がありました(図 1)。
緑内障の治療薬であるウノプロストンには網膜変性から視細胞を保護する効果が期待されますが、点眼による治療は患者が点眼を忘れてしまう可能性があったり、点眼薬は眼内に行きにくい(点眼のみでどのくらい有効な濃度の薬剤が網膜へ到達するのか)という課題がありました。
そこで我々は、ウノプロストンを徐々に放出する装置(徐放化デバイス)を作成し、後眼部の強膜上に留置して、錐体細胞が集まっている網膜の中心部(黄斑部局所)に薬物を送る方法を検討しました(図 2A)。
そこで、作成されたのが、ウノプロストンを徐々に放出する装置です。
徐放化デバイスはデバイスの埋め込み手術が必要という欠点があるものの、薬剤が眼内に行きやすく、患者が点眼を忘れることによって投薬計画が崩れるということがないというメリットがあります。
その徐放化デバイスを強膜上に埋め込んで、錐体細胞が集まっている網膜の中心部に薬物を送る方法を試すためにウサギによる実験を行ったところ、32週間の長期にわたって網膜変性から視細胞を保護することができたそうです。
この研究成果によって、これまで治療法が確立されていない網膜色素変性症の治療法の開発に貢献されることが期待されます。