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なぜ高血糖でも低血糖でも脳の認知機能が低下するのか?

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■血糖値が高くなると認知機能が低下する

血糖値、高すぎても低すぎても認知機能に悪い影響

(2016/2/3、朝日新聞)

実は、この血糖の高い状態が、認知機能に問題を引き起こします。特に注意力や遂行能力(段取りよく物事を進める能力)が損なわれます[1]。

糖尿病になると、認知症の発症リスクが2倍高くなる!?で紹介した東京大の植木浩二郎特任教授によれば、糖尿病になると認知症の発症リスクが2倍高くなるそうです。

→ 糖尿病の症状・初期症状 について詳しくはこちら

血糖値の高さが脳に影響を及ぼす可能性があることが、2つの研究で示されています。

糖尿病がアルツハイマーのリスク高める?

(2015/5/26、WSJ)

ミズーリ州セントルイスのワシントン大学の研究者らは、マウスの実験で血糖値を異常に高い値に引き上げたところ、脳内のアミロイドベータの生産も増加し、双方に何らかの相関性があることを突き止めた。

ピッツバーグ大学で実施された約180人の中年の成人を対象とした試験では インスリン依存型(1型)糖尿病の患者は、この疾患を持たない被験者と比べ、はるかに多くの脳内病変が認められ、認知機能は低下していた。

なぜ血糖値が高いとアミロイドβが生産されアルツハイマーのリスクが高まるのでしょうか。

インスリンには血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を調節する働きがありますが、今回の記事によれば、インスリンはアミロイドから脳を守る働きもあるそうです。

アルツハイマー病は、アミロイドβタンパクが脳にたまることで、神経細胞が死滅し、萎縮し、認知機能が低下することから起きると考えられています。

つまり、インスリンの分泌が低下したり、生成されなくなるということは、アミロイドから脳を守ることができなくなり、認知機能が低下してしまうと考えられます。

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら

■低血糖でも認知機能が低下する

 また、薬などを使って血糖値を下げる糖尿病の治療をしている患者さんの中に、血糖値が低くなりすぎることで認知機能に問題が起こることがあります。糖尿病の患者さんで、意味の通らない、わけのわからないことをおっしゃっているときはこの症状を起こしている可能性があります。すぐに血糖値を測り、低血糖であれば糖を補充する必要があります。

低血糖でおこる一時的な認知機能の低下は、血糖値を上げることによって治ります。ただ、低血糖が続くと脳がダメージを受けます。

高齢の糖尿病患者では、こうした低血糖の症状を起こす回数が多いほど、認知症の発症のリスクが高くなることが報告されています

糖尿病治療中の低血糖とは?症状とは?によれば、糖尿病治療をしている人の中には低血糖症状を起こすことがあります。

それは、人間の体に備わっているインスリンであれば、微妙なコントロールを行なってくれますが、薬の場合は、そうではないため、低血糖を引き起こしてしまうようです。

低血糖の症状としては、軽~中程度では、冷や汗・手指の震え・動悸があり、重度では、集中力の低下・意識の錯乱があり低血糖を繰り返すと、血糖値のコントロールが効きにくくなり、さらには、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性があるそうです。

そして、今回の記事によれば、血糖値が低くなりすぎると、認知機能に問題が起こることがあり、高齢の糖尿病患者で低血糖の症状を起こす回数が多いほど、認知症の発症リスクが高くなるそうです。

つまり、血糖値は認知機能を守るためにもコントロールする必要があるのです。

→ 血糖値(正常値・食後血糖値・空腹時血糖値)・血糖値を下げる食品 について詳しくはこちら




→ アルツハイマー病の「脳糖尿病仮説」の実証|「メマンチン」が脳インスリンシグナルを改善|東北大 について詳しくはこちら




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炭水化物の摂取量が多くなると死亡リスクが高くなり、脂質の摂取量が多いほど死亡リスクが低下し、飽和脂肪酸の摂取量が多いと脳卒中のリスクが低くなる!?

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■炭水化物の摂取量が多くなると、死亡リスクが高くなり、脂質の摂取量が多いほど死亡リスクが低下し、飽和脂肪酸の摂取量が多いと脳卒中のリスクが低くなる!?

ごはん

by Tatsuo Yamashita(画像:Creative Commons)

ランセット誌に掲載されたMahshid Dehghanさんらによる五大陸18カ国で脂肪および炭水化物摂取と心臓血管疾患および死亡との関連性について調べたコホート研究によれば、次のようなことがわかったそうです。

●炭水化物の摂取量が多くなると全死亡率のリスクの上昇と関連すること

●脂肪(脂質)の摂取は全死亡率のリスクの低下と関連すること

●脂肪(脂質)は心血管疾患、心筋梗塞、心血管疾患の死亡率と関連していなかったこと

●飽和脂肪酸は脳卒中と逆相関しているということ

飽和脂肪酸悪玉論の真相とは?|飽和脂肪酸は心臓疾患の原因にはならない?によれば、飽和脂肪酸悪玉論が叫ばれるようになってから、飽和脂肪酸の摂取量は減り、炭水化物の摂取量が増え、植物油の摂取が増えているという変化が起きているそうです。

飽和脂肪酸の摂取量が減ったから炭水化物の摂取量が増えたとは短絡的に言えませんが、炭水化物の摂取量は増えているそうで、炭水化物の摂り過ぎは、肥満や糖尿病の原因になり、さらには心臓疾患になる可能性も高まります。

<糖尿病>ごはんをよく食べる習慣がある女性の発症リスクが高い|厚生労働省研究班によれば、ごはんを多く食べる習慣のある女性は、食べない女性に比べて糖尿病になる危険性が高いそうです。

【参考リンク】

  • 米飯摂取と糖尿病との関連について|多目的コホート研究|国立がん研究センター

    女性では米飯摂取が多くなるほど糖尿病発症のリスクが上昇する傾向が認められました。摂取量が最も少ないグループに比べ1日3杯および1日4杯以上のグループでは糖尿病のリスクがそれぞれ1.48倍、1.65倍に上昇していました

低炭水化物スコアと糖尿病との関連について|多目的コホート研究

女性で低炭水化物スコアが高いほど糖尿病発症のリスクが低下

低炭水化物/高動物性たんぱく質・脂質スコアが高いほど糖尿病リスクが低下

また、多目的コホート研究によれば、女性では、低炭水化物/高動物性たんぱく質・脂質スコアが高いほど糖尿病のリスクが低下していたそうです。

飽和脂肪酸摂取と循環器疾患発症の関連について|多目的コホート研究|国立がん研究センター

飽和脂肪酸を食べる量が少ないグループで脳卒中のリスクが上昇

飽和脂肪酸を食べる量が多いグループで心筋梗塞のリスクが上昇

従来、飽和脂肪酸は血清のコレステロール値を高くし、将来的に粥状動脈硬化になりやすくなることから、摂取を控えるような指導がなされることがありました。一方で、最近の結果から、飽和脂肪酸は無害であり、制限する必要はないという説もあります。今回の研究結果からは、日本人におけるこうした議論のひとつの決着として、「飽和脂肪酸摂取は、多すぎても、少なすぎても良くない」という結論が得られました。この結果は、日本人で約40年前に発見された「血清コレステロール値は、高すぎても低すぎても良くない」という知見とよく一致しています。

国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、日本人においては、「飽和脂肪酸摂取は、多すぎても、少なすぎても良くない」という結論が出ています。

ランセット誌に取り上げられたコホート研究について単純に受け取れば、炭水化物を摂る量が多くなるほど死亡リスクが高くなり、脂質の摂取量が多いほど死亡リスクが低下し、飽和脂肪酸の摂取量が多いと脳卒中のリスクが低くなるとなってしまいがちですが、これまで取り上げてきた研究を合わせると、どんな食べ物でも多すぎても少なすぎてもよくないという結論になります。




■まとめ

今回の論文では、今回の知見を含めて世界の食生活ガイドラインを再検討すべきという提言がされていました。

食事バランスガイドを守ると死亡リスクが減少する!|バランスの良い食事をしようというメッセージは伝わっているの?で紹介した国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、食事バランスガイドの遵守得点が高いほど総死亡のリスクが低下し、遵守得点が10点増加するごとに総死亡リスクが7%減少するという結果が出ているそうです。

死因別に見てみると、食事バランスガイドへの遵守得点が10点増加するごとに、循環器疾患死亡リスクが7%減少、脳血管疾患死亡リスクが11%減少しています。

ただ、「健康のためにはバランスの良い食事をおすすめします」というメッセージは実は伝わりにくいのです。

『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)によれば、「もっと健康的な食生活を送る」といった総括的な目標は、不明瞭であり、その曖昧さが感情に言い逃れの余地を与え、失敗を正当化しやすくしてしまうそうです。

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つまり、「健康のためにはバランスの良い食事をしましょう」というメッセージは、受け取る側としてはわかりづらいもので、結果どうしたらよいかわからず、今まで通りの生活をしてしまうことになってしまいます。

ではどのようにしたらよいのでしょうか?

『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)ではこのような提案がされています。

例:アメリカ人に健康的な生活をさせるには?
「もっと健康的に行動しよう」と訴えるのではなく、「次にスーパーの乳製品コーナーに立ち寄ったら、ホールミルクではなく低脂肪乳に手を伸ばしなさい」というべきなのだ。
飲食行動を変える必要でなく、購入行動を変える。
「もっと健康的に行動しよう」と伝えても、解釈の仕方はいくらでもある。

よくテレビで紹介されているような、○○の不足が病気の原因となる恐れがあるので、△△を食べましょうというのは、見ている人に伝わりやすく、行動を変えやすいということなんですね。

デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」によれば、カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったそうです。

しかし、カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。

「魚は幸運の印である」という地元の俗説を利用して、カントロップという魚の形に成形した鉄の塊(Lucky Iron Fish)を調理中の料理にしたところ、Lucky Iron Fishを使っている地域では鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。

普段食べている食事にLucky Iron Fishという鉄の塊を入れるだけで鉄欠乏性貧血が解消するというのは実にわかりやすい方法です。

「バランスの良い食事にしましょう」というのは最も正しいメッセージですが、最も伝わりづらいメッセージでもあります。

ここにもう一つ何らかのアイデアが必要になってくるのではないでしょうか?







【参考リンク】
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爆笑問題・田中裕二さんが前大脳動脈解離によるくも膜下出血、脳梗塞と診断され、入院し、1カ月程度休養




爆笑問題・田中裕二さんが前大脳動脈解離によるくも膜下出血、脳梗塞と診断され、入院し、1カ月程度休養するそうです。

新型コロナウイルスが血栓を招き、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性がある!?では、新型コロナウイルス感染者が、脳梗塞になる可能性があるという記事を取り上げました。

現在考えられるのは2つ。

一つは、新型コロナウイルスによるストレスや炎症が何らかのメカニズムで血液が固まりやすい状況を作り出すことで血液凝固を引き起こし、血栓を作り、脳梗塞を起こしたのではないか。

もう一つは、新型コロナウイルス自体が血管を傷つけることにより血栓ができ、脳梗塞を引き起こしているのではないか。

爆笑問題・田中さんの場合は新型コロナ完治後に時間が経過しているので、今回の病気とは関係ないと考えられますが、長期的な視点で私たちにできることといえば、まずは「マスクを着けて飛沫を飛ばさない、吸い込まない」「手を洗う、消毒する」「喚起する」といった新型コロナウイルスの基本的な対策と食生活、運動、睡眠など生活習慣を見直すこと。

高血圧糖尿病、喫煙などといった元々動脈硬化を引き起こしやすくなる生活習慣病や習慣を持っている人はぜひ今の機会にもう一度生活習慣を見直してくださいね。







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NFL(アメフト)では「Concussion(脳震とう)」問題が起きている!?|脳震盪によって起こる脳損傷・脳しんとう対策とは




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■NFL(アメフト)では「Concussion(脳震とう)」問題が起きている!?

Texans practice '10

by Christopher Brown(画像:Creative Commons)

スポーツにおける「脳震盪(のうしんとう)」問題について興味を持ったのはこちらの記事が最初です。 

NFL有望株が現役1年で引退。深刻な脳しんとう問題

(2016/6/5、NewsPicks)

その将来を嘱望された彼が、引退を表明した理由は、【concussion (コンカッション) = 脳しんとう】である。

24歳のアメフト選手、脳疾患を恐れて現役引退を決意(2015/3/17、AFPBB)によれば、米NFLのSan Francisco 49ersのクリス・ボーランド(Chris Borland)が24歳の若さで現役引退を決意したその理由は度重なる衝撃で頭部に悪影響が及ぶこと、「concussion(脳震とう)」でした。

選手としてプレーし始めたときからカウントして、3回、もしくは4回目のコンカッションがあった時点で、医師から引退の勧告、もしくは引退の勧めを受ける

現在アメリカのフットボール界においては「Concussion(コンカッション)」を3、4回あった時点で医師から引退勧告を受けるのだという事実を知って驚きました。

日本では脳震とうのニュースをたまに目にする機会はありますが、脳震盪に対してそれほど厳しく考えられているというのはこの記事を目にするまで知りませんでした。

日本選手でいえば、米MLBの青木宣親選手が試合中に死球を受け、長期間にわたって脳震盪の影響に苦しんでいたことを知っている方も多いのではないでしょうか。

アメリカにおける「Concussion(脳震とう)」への関心の高さは映画がつくられていることからもわかります。

【参考リンク】

■脳震盪のメカニズムとは?

What Is A Concussion?|Centers for Disease Control and Prevention (CDC)

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が提供している脳震盪における脳の動きを説明している動画をみると、脳が遅れて動くことで頭蓋骨に衝突し、衝突した場所である脳の表層がダメージを受けているように感じます。

しかし、元アメフト選手であり生物工学者のデイビッド・カマリロさんによれば、この動画には正しい点と間違っている点があるそうです。

デイビッド・カマリロ: なぜヘルメットでは脳震盪を防げないのか―何で防げばよいのか|TED

脳は頭がい骨の動きから遅れをとり 頭がい骨の動きに追いついた後 前後に動き そして振動もする この動きは本当だと思います しかし この動画で見られる 脳の動きの程度は おそらく 全く正しくありません 頭蓋内には ほとんど余分な空間はありません たった数ミリの空間に 満たされている脳髄液が 外傷から守る役割を果たしています そして 脳は恐らく 頭蓋骨の中で ほんの少ししか動いていません

脳がこのような動きをするのは正しくても、その脳の動きの程度には間違いがあり、頭蓋内には脳髄液が満たされていてほとんど余分な空間がないため、脳はほんの少ししか動いていないと考えられるそうです。

では、脳震盪はどのようなメカニズムで起きていると考えられるのでしょうか?

お伝えしたいのは 私達や他の研究者が見つけたのは 頭がこの方向で回転する時に 脳震盪が起きる可能性が高いということです この動きはアメフトのようなスポーツで よく起こり― この動きはそれより危険に見えますが いったい何が起きているのでしょうか 一つ気づくことは 人間の脳は― 他の動物と異なり このように大きな半球が二つあります 右脳と左脳です この図で見て頂きたいポイントは 右脳と左脳の間に 脳の深部にまで達する 大きな溝があります この溝の中に この図では見えないのですが 信じて想像してください 線維性のシート状組織があります 鎌(かま)と呼ばれるものです これが前頭から後頭まで 続いています 大変強固なものです こんな構造であるので 衝突で 頭が左右に動いた時 その力が すぐに 脳の中心まで届きます

さて 溝の底はどうなっているのでしょうか これは脳の接続部であり― 実は 溝の底にあるこの赤い神経線維束は 最大の神経線維束で― 右脳と左脳のつながりなのです これを脳梁(のうりょう)といいます 私達は これが 脳震盪のメカニズムで 起こりうる可能性が最も高く 力は下の方に伝わって 脳梁に達し 右脳と左脳間での解離が起こると 考えられます これで いくつかの脳震盪の症状が説明できます

脳震盪は衝突によって頭が左右に動いたときに起こる可能性が高く、脳震盪が起きた時に右脳と左脳をつなぐ脳梁に力が伝わって、右脳と左脳間でのかい離が起こることにより、脳震盪の症状が現れると考えられるそうです。




■米アメフト選手の4割以上が脳に障害を抱えている!?

米アメフット選手の4割以上が脳に障害 最大人気スポーツを揺るがす「危険な証拠」

(2016/5/17、J-castニュース)

その結果、17人(43%)が「外傷性脳損傷」と診断された。これは、交通事故や転落事故などで脳に強い衝撃を受ける場合と同じだ。脳が傷ついて出血し、半身まひ、感覚・記憶・注意力障害などが起こる。さらに、12人(30%)にはもっと深刻な軸索損傷がみられた。これは、脳深部にある軸索がねじれて断裂する症状で、半身まひや記憶障害の後遺症から回復することが非常に難しくなる。

また、記憶力や思考力のテストでは、遂行機能障害が50%、学習・記憶障害が45%、注意力低下が42%に認められた。

米フロリダ州立大のチームがNFL選手の脳について調べたところ、40人の元選手のうち43%にあたる17人が「外傷性脳損傷」と診断されたそうです。

「外傷性脳損傷(がいしょうせいのうそんしょう)」とは、交通事故や転落事故などで脳に強い衝撃を受ける場合と同じで、脳が傷ついて出血し、半身まひ、感覚・記憶・注意力障害などの症状が起こるそうです。

さらに、30%にあたる12人にはさらに深刻な軸索損傷がみられたそうです。

「軸索損傷(じくさくそんしょう)」とは、脳深部にある軸索がねじれて断裂する症状で、半身まひや記憶障害の後遺症から回復することが非常に難しくなるそうです。

今回調査を受けた元選手のデータがこちら。

NFLでの在籍期間は2~17年(平均7年)で、現役中の脳しんとうの発症回数は平均で8.1回だった。

今回調査を受けた元選手たちは脳震盪を平均して約8回ほど受けており、43%が脳に損傷を受けています。

現在では、その状態を改善するためにも、3,4回の脳震とうで医師から引退をすすめるようにしたのだと考えられます。

亡くなった米NFL元選手、99%に脳疾患CTEの徴候 研究

(2017/7/26、時事通信)

CTEは、記憶障害、めまい、うつ病、認知症などの症状を引き起こす。こうした症状は、選手が引退してから何年も経った後に現れる可能性がある。

米ボストン大学(Boston University)の研究チームが米国医師会雑誌(JAMA)に発表した論文によれば、研究のために元NFL選手111人から死後提供された脳のうち、110人の脳、パーセンテージで表すと99%に慢性外傷性脳症(CTE)の徴候が認められたそうです。

【参考リンク】

■脳震とう対策にどのような対策が行なわれているのか?

■ヘルメットへの追加機能

ヘルメット追加機能、脳震盪予防効果少【米国神経学会】

(2015/3/12、m3.com)

米国神経学会(AAN)は2月25日、外側のソフトシェル層やスプレー処理、ヘルメットパッド、ファイバーシートなどのフットボール用ヘルメットの追加機能は、選手の脳震盪リスクをそれほど軽減しないという研究結果を紹介した。

米国神経学会(AAN)によれば、アメフト用ヘルメットに追加された機能は選手の脳震とうリスクを軽減しないという研究結果が出たそうです。

今回の改善(追加機能)では脳震とうリスクの軽減はできなかったそうですが、今後新しいテクノロジーによって、脳震とうリスクを軽減できるヘルメットができるかもしれません。

 

■ヘルメットやマウスピースにセンサーを取り付ける

アメフト界の難題「脳震盪」予防へ、データ解析の挑戦

(2016/5/20、スポーツイノベイターズオンライン)

NFLは2013年3月、米GeneralElectric(GE)と共同で脳震盪問題の解決を目指すオープンイノベーション型のプロジェクト「Head Health Challenge」を立ち上げた。

<中略>

例えば、ヘルメットやマウスピースに重力加速度を測定するセンサーを取り付けるなどして頭部への衝撃を計測し、脳震盪に対するリスクが高まったと判断した時には選手を強制的にフィールド外に出すような運用がなされ始めている。

ヘルメットやマウスピースにセンサーを装着し、頭部への衝撃を計測したうえで、脳震とうリスクが高まったと判断された場合には、選手をフィールド外に出すようにするそうです。

 

■リモコンで動くロボットタックルダミーを用いてトレーニング

アメフト界の難題「脳震盪」予防へ、データ解析の挑戦

(2016/5/20、スポーツイノベイターズオンライン)

米国東海岸の名門8校からなるアイビーリーグでは、ダートマス大学フットボール部が2010年ごろに「練習における対人フルコンタクトを全面禁止」とし、その代わりに「リモコンで動くロボットタックルダミーを用いてトレーニングする」という衝撃的な方針転換を図った。

トレーニング方法の変更が行われると、テクニックの低下が心配されるところですが、「練習における対人フルコンタクトを全面禁止」とし、「リモコンで動くロボットタックルダミーを用いてトレーニングする」という方針に変更したダートマス大学は2015年シーズンにアイビーリーグで優勝したそうで、技術力の低下に関しては問題ないといえるのではないでしょうか。

 

■キツツキにヒントを得たカラー(えり)

キツツキにヒントを得たカラー(えり)|Preventing Brain Injuries | Cincinnati Children’s
キツツキにヒントを得たカラー(えり)|Preventing Brain Injuries | Cincinnati Children’s

参考画像:Preventing Brain Injuries | Cincinnati Children’s|YouTubeスクリーンショット

キツツキがヒントの「えり」、アメフト選手を脳損傷から守れるかも

(2016/7/3、Gizmode)

Q Collarは頸静脈を柔らかく包み、いわば「ホースをつまむ」ことで、脳の中の血液量を増加させます。それによって脳がグラつくゆとりがなくなり、脳損傷のリスクが減るというわけです。

Q30 InnovationsのDavid Smithさんらが開発したカラー「Q Collar」は、頸静脈を柔らかく包むことで、脳の中の血液量を増加させるによって脳を守る緩衝材のような役割を果たすそうですが、そのアイデアのきっかけがユニークです。

●ヘルメットは頭蓋骨の損傷から守る働きはあっても、脳損傷を予防する効果はわずかしかない

ヘルメットによって頭蓋骨の損傷は防げるものの、脳しんとうやそれに関連する脳損傷を予防する効果はわずかです。というのは、上記2つの論文を書いたシンシナティ小児病院のGreg Myerさんによると、かさばるヘルメットによって慣性が増すからです。つまり脳が頭蓋骨の中でより大きく揺れて、脳組織や神経を損傷する可能性がかえって高まるんです。

ヘルメットによって、脳が頭蓋骨の中でより大きく揺れることにより、脳損傷する可能性がかえって高まるそうです。

●キツツキの頭には衝撃を吸収する仕組みが内蔵されている

キツツキは繁殖期になると1日1万2000回、1秒あたり18〜22回も木をつつきます。頭を激しく前後させることで、1200Gもの力が頭にかかっています。

それでもキツツキが脳しんとうで倒れないのは、頭に衝撃を吸収する仕組みが内蔵されているからです。CTスキャンを使った過去の研究では、キツツキの筋肉は厚く、骨はスポンジ状で、第3の内まぶたがあり、それらが脳脊髄液とともに、木をつつく衝撃を吸収していることがわかっています。

またキツツキの舌はとても長く、それによって自分の頭を巻き、頸静脈をつまむこともできます。これによって頭蓋骨内の血液量を増やしてクッションにし、頭蓋骨の中を保護しているんです。

キツツキの頭には衝撃を吸収する仕組みが内蔵されているそうです。

1.キツツキの筋肉は厚く、骨はスポンジ状で、第3の内まぶたがあり、それらが脳脊髄液とともに、木をつつく衝撃を吸収している

2.キツツキは舌で自分の頭を巻き、頸静脈をつまむことによって頭蓋骨内の血液量を増やしてクッションにし、頭蓋骨の中を保護している

キツツキの「つつき行動」、脳に損傷与えている可能性=研究

(2018/2/6、ロイター)

キツツキは、昆虫や樹液の餌を得たり、つがい相手を呼び寄せたりするためにつつき行動をしており、その際、最大1400Gという大きな重力加速度を受けている。人間は、60─100Gで脳震盪を起こす可能性があるが、キツツキには、くちばしや頭蓋骨、舌、脳と頭蓋骨の間にある隙間など、つつき行動による影響を緩和する機能が備わっている。

論文誌「PLoS ONE」に掲載されたボストン大学医学部の研究によれば、キツツキの木の幹をつつく「つつき行動」によって脳が損傷を受けている可能性があるそうです。

これまでキツツキの頭には進化の過程で衝撃を吸収する仕組みが内蔵されているという仮定を基に、安全なアメフト用ヘルメットの開発にキツツキがモデルとして選ばれていましたが、この仮定が崩れる可能性があるかもしれません。

【参考リンク】

●高地では脳震とうが少ない

高地の試合では、高校生で30%、プロで32%、脳しんとうが少なかったんです。

【参考リンク】

この研究はスポーツだけでなく、自動車の安全面も解決するアイデアとなるかもしれません。

Preventing Brain Injuries | Cincinnati Children’s|YouTube

■脳震とう問題はサッカー界にも

アメフト界の難題「脳震盪」予防へ、データ解析の挑戦

(2016/5/20、スポーツイノベイターズオンライン)

例えば、サッカーでは2015年、米サッカー協会が医事委員会の勧告に基づき、10歳以下の子供はヘディングを禁止、11歳~13歳の子供にはヘディング回数を制限する規定を発表している。

アメリカサッカー協会では、10歳以下の子供はヘディングを禁止、11歳~13歳の子供にはヘディング回数を制限する規定を設けたそうです。

日本でも最近話題になった「コリジョンルール」ですが、あらゆる「コリジョン(衝突型)スポーツ」で脳震とう問題は取り上げられていくのではないでしょうか。

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■まとめ

「Concussion(脳震とう)」問題は日本でも話題になっていくことと思います。

ぜひこの問題を医学やテクノロジー、デザインといった力で解決できるといいですね。







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青魚の脂 EPA摂取で脂質改善 動脈硬化を防ぎ、血液サラサラ

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■青魚の脂 EPA摂取で脂質改善 動脈硬化を防ぎ、血液サラサラ

ヘルシーリポート:青魚の脂 EPA摂取で脂質改善 動脈硬化を防ぎ、血液サラサラ

(2009/4/29、毎日新聞)

日本人の食生活は戦後、大きく変わった。

最も大きな変化は動物性たんぱく質と脂肪の摂取量の増加だ。

食の欧米化に伴い、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞など動脈硬化性疾患が増えた。

どうすれば防げるのか。

イワシやサバなど魚をもっと食べ、脂肪の取り方を変えてみるのも方法のひとつだ。

今回のキーワードは「魚の脂」。

食生活が欧米化したことにより、魚から肉へと食べるものが変化しています。

そのことによって、動物性たんぱく質と脂肪の摂取量が増加しています。

記事によれば、

過去約40年間で、日本人の肉類や脂肪の消費量は約2~3倍も増えた。

そうです。

そして、動物性たんぱく質と脂肪の多い食事に変化したことによって、動脈硬化が増加しているといわれています。

健康に対する魚の良さを再認識する必要があるのかもしれません。

北極園に暮らす先住民のイヌイットは肉食の生活ながら心臓病での死亡率が極めて低いことが1960年代に分かり、注目された。

イヌイットは主にアザラシやクジラなどを食べ、野菜や果物をほとんど取らないのに、なぜなのか。

デンマークの研究者らが調べた結果、イヌイットの人たちの血中にはEPAという多価不飽和脂肪酸が多いことが分かった。

EPAはエイコサペンタエン酸の略で、イワシやサンマ、サバ、アジなど青魚に多く含まれる脂肪酸だ。

牛肉や豚肉、鶏肉の脂肪は温度が低いと固まりやすいのに対し、冷たい海に生息するアザラシやクジラ、魚の脂はEPAが多く、水温が低くても固まりにくい。

この固まりにくさが、いわゆる血液のサラサラ状態を保つ。

同じ肉食でも、牛肉や豚肉を食べるのと魚肉を食べるのとでは、血液の脂質や血栓のもとになる血小板への影響が異なるわけだ。

EPAは健康に欠かせないが、人間が体内で作り出せず食事で摂取しなければならない必須脂肪酸。

日本の食事は、動脈硬化を予防するEPA(青魚の脂に含まれる脂肪酸)を摂らない食事にわざわざ変化してきたことになります。

動脈硬化を予防するためにも、魚を積極的に食べるように変えていく必要があるようです。

記事によれば、EPAはメタボリックシンドローム改善にも役に立ちそうです。

肥満を特徴とするメタボリックシンドロームに含まれる高脂血症、高血糖、高血圧といった異常が多い人ほど、血液中に含まれるEPAの濃度が低いという研究も報告されている。

また、EPAは他の健康効果もあるそうです。

EPAは摂取し続けると体内の細胞に少しずつ取り込まれ、徐々に体質を変えてゆく。

マラソン選手での試験では、赤血球の膜に取り込まれると血球の変形能力が高くなり、酸素供給能力が高まるという結果が出ている。

また、糖尿病で皮膚に壊疽(えそ)ができた場合、EPAの摂取で症状が改善されたとの報告もある。

EPAを積極的にとって、健康になりましょう。

◆EPA

多価不飽和脂肪酸の一種で、元は海の藻類や一部の植物に含まれている。

イワシやサンマに多いのは藻類を食べるため。

血小板の凝固を抑えることから、血液の抗凝固(血栓防止)作用がある。

中性脂肪を低下させる特定保健用食品(トクホ)としても市販されている。

しその葉に似た植物のエゴマにも不飽和脂肪酸のα(アルファ)-リノレン酸が多く、人の体内でEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)に変わる。

EPAやDHAはアトピー性皮膚炎花粉症にも効果的という報告もある。

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