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ビタミンD3の摂取がテロメアの短縮を抑え、老化や病気(がんや自己免疫疾患など)の予防に役立つ可能性




ビタミンD3と海洋性オメガ3脂肪酸(魚油に含まれるEPAやDHAなど)のサプリメントが、白血球テロメア長(LTL)にどのような影響を与えるかを調べた研究です。

テロメアは、染色体の末端にある構造で、細胞分裂のたびに短くなり、短くなると細胞の老化や病気(がんや心血管疾患など)のリスクが高まるとされています。

この研究では、ビタミンD3やオメガ3脂肪酸がテロメアの短縮を抑え、老化や病気の予防に役立つかどうかを検証しました。

米国で50歳以上の男性と55歳以上の女性、合計25,871人を対象に、5年間にわたって行なった実験で、ビタミンD3グループ(1日2,000 IUのビタミンD3を摂取)、オメガ3脂肪酸グループ(1日1gの海洋性オメガ3脂肪酸(EPA 460mg + DHA 380mg)を摂取)、プラセボグループ(何も効果のない薬を摂取)、両方摂取グループ(ビタミンD3とオメガ3脂肪酸の両方を摂取)に分けて、1,031人の参加者の白血球テロメア長を測定したところ、次のような結果が出ました。

1)ビタミンD3の効果

ビタミンD3を摂取したグループでは、4年間でテロメアの短縮がプラセボグループに比べて140塩基対(bp)少なく、統計的に有意な差(p=0.039)が確認されました。

1年あたり約0.035キロ塩基対(kb)のテロメア長の維持が観察されました。これは、ビタミンD3がテロメアの短縮を抑え、細胞の老化を遅らせる可能性を示しています。

2)オメガ3脂肪酸の効果

オメガ3脂肪酸を摂取したグループでは、2年目や4年目でテロメア長に有意な変化は見られませんでした。オメガ3脂肪酸はテロメア保護に目立った効果を示しませんでした。

【参考リンク】

■テロメアとは?

テロメアは、DNAの「保護キャップ」のようなもので、短くなると細胞が老化し、病気になりやすくなります。

健康的な生活や栄養がテロメアを長く保つ手助けになるかもしれません。

■ビタミンDと健康の関係

ビタミンDはどんな栄養素?必要摂取量は?によれば、ビタミンDが不足すると、骨粗しょう症だけでなく、高血圧、結核、癌、歯周病、多発性硬化症、冬季うつ病、末梢動脈疾患、自己免疫疾患などの疾病への罹患率が上昇する可能性が指摘されています。

また、厚生労働省によれば、ビタミンD欠乏は転倒や骨折などから身体活動が低下し、筋肉量を減少させ、サルコペニア(加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少)及びフレイルティのリスクを高める恐れがあると書かれています。

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高齢者を対象にした研究によれば、血中25─ヒドロキシビタミン (体内のビタミンD量の指標となるビタミンDの代謝物)濃度が50nmol/L未満であると身体機能の低下、筋力の減少、血中パラトルモン(副甲状腺ホルモン)濃度の増加、転倒及び骨折のリスクが高いことが報告されています。

■まとめ

ビタミンD3(1日2,000 IU)の摂取は、テロメアの短縮を抑え、細胞の老化や加齢に伴う病気(がんや自己免疫疾患など)の予防に役立つ可能性があります。

ビタミンDは日光や食事(サーモン、卵黄など)から得られますが、サプリメントで補うことで老化防止に役立つ可能性があります。特に日光不足の人は注目!

→ ビタミンDはどんな栄養素?必要摂取量は?ビタミンDを含む食品・サプリメント について詳しくはこちら







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くるみの摂取で腸内環境が改善し、ストレスの軽減や睡眠の質が改善する可能性




ある研究によれば、大学生に1日56gのクルミ(約14個)を16週間にわたり摂取してもらったところ、クルミを摂取したグループは腸内環境が改善する兆候が見られ、メンタルヘルスや睡眠の質が改善し、学業ストレスによる悪影響を軽減することがわかりました。

クルミを食べたグループでは、腸内に健康に良いとされる細菌(例:ローズバリア属)が増え、腸内環境が改善する兆候が見られました。

■なぜクルミが効果的なの?

オメガ3脂肪酸:脳の健康や抗炎症作用に関係。

ポリフェノール:抗酸化作用があり、ストレスによるダメージを軽減。

食物繊維:腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整える。

これらの成分が、ストレスへの対処や腸内細菌のバランスを整えるのに役立ったと考えられます。

→ オメガ3脂肪酸|オメガ3の効果・効能・食べ物(オイル)・ダイエット について詳しくはこちら

【参考リンク】

■まとめ

朝食に50gのクルミを食べると脳の反応速度が速くなり、一日の後半の記憶力が向上する!で紹介されているレディング大学の研究によれば、朝食に50gのクルミをとったときは、ナッツ抜きで同じカロリーの朝食を食べた時と比べて、一日を通して脳の反応時間が速くなり、一日の後半の記憶力が向上することがわかりました。

2つの研究を合わせると、1日に約50gのクルミを食べると、脳(記憶力)にも良いし、メンタルヘルスにも、腸内環境にも良い影響を与える可能性があるということですから、リカバリー食の一つともいえそうです。

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あなたの腸内は肉派?野菜派?どんな食べ物を食べているかで腸内細菌叢が変わる!その影響は健康や環境にも関わってくる!によれば、食べ物によって腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう;マイクロバイオーム)が変わり、そしてそれが健康に直結していることがわかります。

どんな食べ物を選ぶかで、自分自身の健康を選択できるということなので、せっかくならよい食べ物を選びたいですね。







閉経が早い女性の特徴とは?




これまで閉経後の病気のリスクや閉経が早い女性の病気のリスクに関して取り上げてきました。

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今回は閉経が早い女性(早期閉経、通常40歳未満での閉経、または卵巣機能不全を指す)の特徴があるのかということについて、論文ベースで簡潔にまとめます。

1. 遺伝的要因

家族歴: 早期閉経の女性は、母親や姉妹など近親者に同様の病歴を持つことが多い。特定の遺伝子変異(例: BRCA1/2、FMR1遺伝子のプレミューテーション)が関連している(Venturella et al., 2016; Qin et al., 2015)。

遺伝性疾患: ターナー症候群や脆弱X症候群など、染色体異常や遺伝子変異が早期閉経のリスクを高める(Sullivan et al., 2011)。

BRCA1/2やFMR1遺伝子のプレミューテーションと早期閉経の関連は広く知られていて、ターナー症候群や脆弱X症候群といった染色体異常や遺伝性疾患も重要な要因です。

2. 生活習慣

喫煙: 喫煙は卵巣機能の低下を早め、閉経年齢を1~2年早める可能性がある(Sun et al., 2012)。これはタバコに含まれる化学物質が卵胞の損傷を引き起こすため。

低体重・BMI: 低いBMI(18.5未満)の女性は、ホルモン分泌の乱れにより早期閉経のリスクが高まる(Mishra et al., 2017)。

生喫煙が閉経を早めるというエビデンスは確立されています。

低BMIとの関連も指摘されていますが、BMIと閉経年齢の関係は複雑で、高BMIとの関連を指摘する研究もあります(ただし、早期閉経との関連で低BMIが強調されることが多いのは確かです)。

3. 医療的要因

化学療法・放射線治療: がん治療による卵巣へのダメージは、早期閉経の主要な原因(Chemaitilly et al., 2015)。

手術: 子宮摘出や卵巣摘出術を受けた女性は、閉経が早まる(Farquhar et al., 2005)。

化学療法や放射線治療による卵巣機能への影響は深刻です。

子宮摘出のみの場合、卵巣が残っていれば直ちに閉経するわけではありませんが、血流の変化などにより卵巣機能が早期に低下する可能性が示唆されています。

卵巣摘出術は当然ながら閉経を引き起こします。

4. 自己免疫疾患

甲状腺疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患が卵巣機能を損なう可能性があり、早期閉経と関連(Goswami & Conway, 2005)。

甲状腺疾患との関連はよく知られています。他の自己免疫疾患との関連も研究が進んでいます。

5. 環境要因

環境中の内分泌かく乱物質(例: フタル酸エステル類、ビスフェノールA)への暴露が卵巣機能を低下させ、閉経を早める可能性がある(Vabre et al., 2017)。

6. 社会経済的要因

低い教育水準や経済的困窮は、ストレスや栄養不良を通じて間接的に早期閉経のリスクを高める可能性がある(Gold et al., 2001)。

■注意点

診断には血中FSH(卵胞刺激ホルモン)やAMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定が用いられることが多い(Nelson, 2009)。

■まとめ

早期閉経は多因子性であり、個人差が大きく、すべての女性に当てはまる特徴は存在しないのですが、生活習慣、特に喫煙が閉経を早めるというエビデンスは確立されていますので、気を付けましょう。







【参考文献】

Venturella, R., et al. (2016). Human Reproduction Update.

Qin, Y., et al. (2015). Nature Reviews Endocrinology.

Sullivan, S. D., et al. (2011). Fertility and Sterility.

Sun, L., et al. (2012). Menopause.

Mishra, G. D., et al. (2017). Human Reproduction.

Chemaitilly, W., et al. (2015). Journal of Clinical Oncology.

Farquhar, C. M., et al. (2005). BJOG.

Goswami, D., & Conway, G. S. (2005). Human Reproduction Update.

Vabre, P., et al. (2017). Environmental Health Perspectives.

Gold, E. B., et al. (2001). American Journal of Epidemiology.

Nelson, L. M. (2009). New England Journal of Medicine.

閉経が早い女性は認知機能の低下が進む可能性!女性ホルモンの欠如が認知症リスクに関わっている!?




閉経が早い女性は認知機能の低下が進む可能性がある イングランド高齢者コホートのデータ解析から

(2025年4月16日、東北大学)

女性は男性と比べて認知症になるリスクが高いことが分かっていますが、性別や閉経(注1)による女性ホルモンの欠如と認知機能の関連は不明でした。
閉経が50歳以上であった女性と比べ、閉経が40歳未満であった女性は2年間で認知機能がより低下していることを明らかにしました。
男性は閉経が50歳以上であった女性と比べて、うつ症状(注2)は軽い一方で2年後の認知機能はより低下し、女性ホルモンの欠如が認知症リスクに関わることが示唆されました。

東北大学の研究によれば、閉経が早い女性は遅い女性に比べて認知機能がより低下していることがわかりました。

これまで女性は男性と比べて認知症になるリスクが高いことが分かっていましたが、性別や閉経による女性ホルモンの欠如と認知機能の関連は不明でした。

今回の研究で女性ホルモンの欠如が認知症リスクに関わることが示唆されました。

今後は、女性ホルモンが認知機能の老化にどのように影響するのかが解明されることが期待されます。

【参考リンク】

→ 閉経が早い女性の特徴とは? について詳しくはこちら

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら







閉経後の女性は入浴でのヒートショックに注意!




《専門医解説》ヒートショックによる入浴死「50代でもあり得る」閉経後の女性は特に要注意(2024年12月23日、週刊女性PRIME)で紹介されている東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉さんによれば、お風呂場で亡くなった中山美穂さんや白川由美さん、平幹二朗さん、野村克也さんが亡くなった理由としてヒートショックの可能性があるそうです。

ヒートショックは高齢者だけでなく、血圧が高い方、コレステロール中性脂肪が高い方、糖尿病でも治療をしていない方、動脈硬化のリスクが高い方、喫煙者の方、肥満の方もリスクが高いそうです。

また女性だけの注意点もあります。

「動脈硬化の予防効果がある女性ホルモンが減る閉経後は、血圧が上がることがありますので注意が必要です」

【モーニングショー】閉経後の女性でLDLコレステロールの数値が上がったら、どのように食事に気を付けたらいいの?
によれば、ある人(当時56歳)のBMI20.7(標準は22)なので肥満ではなく、また週2日以上ジムに通い、喫煙なし、お酒は1日1合未満と生活習慣に一見問題はなかったのですが、LDLコレステロールの経年変化をチェックすると気になるところが出てきました。

54歳 112 → 56歳 136

LDLコレステロールが急上昇して、基準値の120を超えていました。

本当に血管が若返る!コレステロール調節術|#ためしてガッテン(#NHK)によれば、女性ホルモンには、“悪玉コレステロール”値を下げる作用をはじめ、血管を保護する様々な効果があります。

そのため、40代までの間、女性の血管は男性よりはるかに若く保たれています。

女性ホルモンの値が下がってくる 50才前後になると“悪玉コレステロール”値が急上昇して、男性より高くなることも多くなります。

つまり、女性は閉経のタイミングでこれまでよりも意識的に健康をチェックする必要があるわけですね。

→ 悪玉コレステロールを下げる食事・食べ物|LDLコレステロールが高い原因 について詳しくはこちら

女性は、閉経後LDLコレステロールの数値が上がったら、コレステロールや飽和脂肪酸が多い食品を食べ過ぎないようにした方がいいようです。

コレステロールが多い食品は、たらこ・かずのこなどの魚卵や白子、レバー、鶏卵など。

飽和脂肪酸が多い食品は、牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトといった乳製品など。

LDLコレステロール値を下げるには、食物繊維も積極的に摂りましょう!

【#たけしの家庭の医学】食後高脂血症・隠れ中性脂肪を改善し動脈硬化を予防する方法(水溶性食物繊維&運動)によれば、水溶性食物繊維は、腸に入るとゲル状に変化し、腸の内壁に付いて、脂肪分などの吸収を抑える効果があるそうです。

また、中性脂肪を分解するリポ蛋白リパーゼの働きを活性化してくれるそうです。

そのため、水溶性食物繊維を食事の最初に食べておくと、中性脂肪の急上昇を防ぐことができるそうです。

【水溶性食物繊維を含む食品】

●ネバネバした食品

納豆・オクラ・なめこ・なめたけなど

●海藻類

ノリ・ワカメ・寒天・昆布など

●根菜類

大根・人参・ゴボウなど

→ 食物繊維の多い食品 について詳しくはこちら

→ イヌリンとは|イヌリンの効果・効能|イヌリンの多い食品・食べ物 について詳しくはこちら

→ 動脈硬化改善・予防に良い食事・食べ物・食品 について詳しくはこちら







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