by hakuraidou
■「ili(イリー)」を購入してみての感想
「ili(イリー)」とは?特徴|「#ili」のようなウェアラブル音声翻訳機で語学学習に必要な時間を旅行を楽しむ時間に使える時代になる! によれば、「ili(イリー) 」には、1.「英語」「中国語」「韓国語」の3言語に切替可能、2.一方向翻訳、3.ワンフレーズの旅行会話に特化、という3つの特徴があります。
VIDEO
ili – Exploring Tokyo
使用してみた感想(※海外旅行で使用したり、外国人の方と話したわけではありません)としては、少しだけ間が開いたような印象を受けるものの、短いフレーズに対して簡単なフレーズできちんと変換してくれる印象を受けました。
オフラインで使用可能、つまりインターネットに接続することなく、No-Wifiでネット環境を気にすることなく、音声翻訳ができます。
重さも「42g」と非常に軽くできているので、旅行中は極力荷物を軽くしておきたいという希望を叶えてくれています。
コミュニケーションには間があるのも怖いものですが、起動時間が早いので気にならないのではないでしょうか。
■5Gの未来のイリーはこう変わる?
イリーの特徴であるところが実は弱点でもあるのではないでしょうか?
双方向でない理由としては、見知らぬ相手に使い方を教える事は難しく、相手に嫌がられたり、疑われたりという場合もあり、また、見知らぬ相手に自分の端末を渡したくはないということから、伝えたいことを伝えることにフォーカスした設計、つまり「一方向翻訳」になっています。
「アップデート・シティ(更新都市)」|既存の言葉・価値観をアップデートし、シームレス・インタラクティブ・非言語のレイヤーを重ねる で紹介しましたが、これからはますます「インタラクティブ(双方向性)」が重要なキーワードになると思います。
なぜインタラクティブ(双方向性)である必要があるのかということについては2つの理由があり、1.ポジティブなインタラクティブ性があれば自分と他者という関係性がポジティブなものに変化する、2.一期一会の考え方にあります。
猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第4回「モナ・リザの前が混んでて嫌なのは、絵画がインタラクティブじゃないから」
(2016/4/5、PLANET)
これが面白いのは、他の人の振る舞いでアートが変化しているのを、第三者的に見て面白がってることなんだよ。
インタラクティブというときに、みんな「自分の振る舞いで作品を変えること」を考えていると思う。でも、それってデジタルゲームに代表されるように、「自分と作品」の一対一関係になってしまう。そこには他者がいない。だけど、こういう作品を上手く設計すると、同じ空間にいる「自分と他者」の関係をポジティブに思える気がするんだよね。
その意味で、僕は自分がインタラクションする必要すらないと思ってるの。むしろ第三者の視点で見て、同じ空間にいる他の人が作品の一部みたいになることがすごくいいと思うし、そうすることで同じ空間にいる人々同士の関係性をポジティブに変化させたいんだよね。
<中略>
これまでの人類は「他者の存在は人間にとって不快なもので、だからこそちゃんと受け止めるのが人間としての成熟だ」みたいな議論をしてきたわけだよ。でも、猪子寿之は現代のテクノロジーと洗練された表現を使えば、それをポジティブなものに転化できると信じている。理解もできないし、コントロールもできない他者が周囲にいることは、我慢して受け入れるものではなくて、むしろポジティブに捉え直せるんじゃないかと思っている。
チームラボでは「デジタルアートがその場の鑑賞者の関係性に影響を与える」という考えを持っていて、人々の存在によってアート作品がポジティブに変化すれば、鑑賞者もポジティブな受け取り方をすることにより、関係性がポジティブなものになると考えています。
これまでの考え方は、他者を排斥する存在や我慢して受け入れる存在としてきましたが、チームラボの考え方は、ポジティブなインタラクティブ性があれば、自分と他者という関係性がポジティブなものに変化するのではないかというものです。
もう一つは、一期一会の考え方があります。
「一期一会」とは、一生で一度の出会いという意味だけではなく、今というこの機会は二度と繰り返すことのない瞬間なのだから、その今をいかに大事にするかという意味が込められています。
一期一会の考え方を大事にしているのが、「能楽」なのだそうです。
「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」という能舞台と最後の桜見
(2011/9/28、本気新聞)
能楽とは、他の演劇とは違って、本番の一回性に特別な意味を置く芸能である。
例えば、能に関する対談本(「能・狂言なんでも質問箱」)の中では、能の演目・「道成寺」の落ちてくる鐘に入る場面の稽古に関してこんなことが記されている。
葛西(聞き手):現代の言葉で言うリハーサル、何回か出来るんですか。
出雲(シテ方喜多流):1回ぐらいです。だけど、鐘には入りません。
葛西:入らないで。どうやって稽古するんですか。
出雲:申合せっていうのが二三日前にあるんですが、そこで鐘に向かっていって、さっきみたいにやるんです。しかし、申合せで、本来の位置を少しずらして、同じタイミングで、こっちはドン、ドンとやって、ピョンと飛び上がるときに、向こうで鐘をドーンと落とす。
葛西:つまり別々に稽古して、本番一回きりなんですか。
出雲:はい。
山崎(シテ方喜多流):本番で初めて入るんですからね。
能楽において、その本番の一回がどのようになるかは、演者も想像出来ない部分を残すということなのである。
その意味で、能楽とは、再生芸術ではない。
能楽は「一期一会」を大事にしていて、能の上演は一日限りが原則なのだそうです。
そして、能楽においては本番の一回性を大事にしていて、演者にとっても想像のできない部分を残した、巡り合わせのようなものを大事にしている芸術といえます。
インタラクティブであるということも同じではないでしょうか?
その空間に偶然居合わせた人たちと互いに影響を及ぼしあうという「一期一会」の考え方によって、この機会は二度と繰り返すことのない瞬間なのだから、その今をいかに大事にするかという考え方がもたらされるのではないでしょうか。
イリーを一方向翻訳にした理由は、見知らぬ相手に使い方を教える事は難しく、相手に嫌がられたり、疑われたりという場合もあり、また、見知らぬ相手に自分の端末を渡したくはないというネガティブなインタラクティブの結果を基にしていますが、もしこれがポジティブなインタラクティブであれば、もっと見知らぬ人同士にポジティブな影響を与えてくれたはずです。
つまり、イリーをいかにポジティブなインタラクティブ性をもたらす存在にできるかがポイントになるのです。
もう一つ、イリーの特徴として、オフラインで使用可能であることが挙げられますが、それは現在の通信環境・通信システムを基に考えられているからであり、きっと本来であれば、オンラインで接続してどんどん新しくアップデートできた方が良いはずです。
もし仮に【初心者向け!5G入門編】5Gで世界はどう変わる?|5Gとは?特徴は超高速・多数同時接続・超低遅延|#5G についてコレだけおさえよう! を参考にして、5Gの環境で未来の翻訳機を想定すると、スマホから新しいデバイスに変わり、イリーの仕組みはそのデバイスの中に入っていくことでしょう。
#5G によって産業はどう変わる?|#スマートシティ #自動車 #建設 #VR #スポーツ中継 #ショッピング #金融 #決済 #医療 #農業 で紹介した“現代の魔法使い”が読み解く「5Gが拓く未来」【動画】 (2017/7/12、ホウドウキョク)で解説されていたピクシーダストテクノロジーズの落合陽一さんによれば、5Gになるとスマホから新たなデバイスに変わるのだそうです。
4Gと最適化されたデバイスがスマホだった。
5Gだと空間をどう共有するかがポイントとなるので、空間自体を閲覧する新たなデバイスが必要になる。
情報の転送速度が遅延がない速度になるとすると、情報処理を身の回りのものでするメリットがほとんどない。
つまり、5Gがあればスマートフォン側で処理をしないでストリームを受けるための機械となれるんです。
処理側はサーバーでやればいいとか、ある程度デバイスについては思い切って割り切れる。
現在ではHMD(ヘッドマウントディスプレイ)型やメガネ型が開発されていますが、5Gになると、超高速・超低遅延化によって、スマホで処理を行わず、サーバーで情報処理をする必要がないので、サイズが小さく、軽くすることが可能になるそうです。
5Gには、超低遅延化・高信頼化、省コスト&省消費電力という特徴がありますから、イリーに入っている旅行会話のためのデータは、利用者が遅延(タイムラグ)を意識することなくなることから、リアルタイムに翻訳することができるようになるでしょうし、また、ネットワークと端末の低消費電力化によってバッテリーの心配も少なくなることでしょう。
もしかすると、「ili(イリー)」が持つ本質的な価値は、ウェアラブル翻訳デバイスにあるではなくて、海外旅行で海外の人とコミュニケーションを円滑にしたいというユーザーを持つことにあるのかもしれませんね。
つまり、将来的には「ili(イリー)」はよりよい旅(旅行)の体験ができるお手伝いをする企業になるかもしれません。
そうなるのだとしたら、2017年には破産した旅行会社「てるみくらぶ」のニュースが話題になりましたが、こうした企業を買収したとしたら、すでにそれだけの海外旅行に行きたいという利用者がいるのですから、よりよい旅(旅行)の体験ができるお手伝いをするというような新しい価値を加えることができれば、面白い企業になっていくのではないでしょうか。
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