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人工知能(AI)を活用した医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表|エルピクセル(LPixel)

参考画像:人工知能を活用した医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表(2017/11/24、LPixelプレスリリース)|スクリーンショット




■人工知能を活用した医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表|エルピクセル(LPixel)

人工知能を活用した医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表

(2017/11/24、LPixelプレスリリース)

「EIRL(エイル)」とは、人工知能を活用した医療画像診断支援技術の総称です。LPixelは、EIRL(エイル)を活用し、脳MRI、胸部X線、乳腺MRI、大腸内視鏡、病理などの医療画像診断支援技術の研究開発を進めており、本日10のテーマを公開いたしました。EIRL(エイル)には (1)医師のダブルチェック・トリプルチェックによって品質が担保された学習データを使用(2)学習データが少なくても効率的・高精度に学習する独自技術を活用(3)主要な画像診断装置および撮影プロトコルで撮影した医療画像に対応(4)PACSシステムと連携可能など4つの特徴があります。

エルピクセル(LPixel)」は、画像解析技術に人工知能技術を応用し医療画像診断の効率化を促進することで、診断医の画像診断をサポートするための医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表しました。




■背景

近年、医療の進歩とともに、医師は膨大な数の医療画像と向き合うこととなりました。CT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴断層撮影装置)等のモダリティ装置の進化により、高度な読影スキルが要求される画像診断では対象となるデータ量が増え続け、全国に約5,500人(医師全体の2%未満[1]) の放射線診断医[2]の業務負担の増加が問題視されています。

緑内障のリスク要因を4つの類型に自動で分類する手法を開発|東北大・トプコンによれば、緑内障の治療では、視神経の変形を肉眼で判定し、分類作業を行なう上で、従来は、医師の経験や主観的な要素が大きく、また一般的な診療所では分類が難しいことが問題となっていました。

医療画像診断支援技術があることによって、比較的経験の浅い医師や主観を取り除いた状態での画像診断ができることが期待されます。

また、テクノロジーと医療分野のトレンド|ウェアラブルデバイス・健康アプリ・医学研究|メアリー・ミーカー(MARY MEEKER)レポートで紹介したレポート(スライド300)によれば、インプットのデジタル化の増加によって、医療データは年間成長率は48%となっているそうです。

また、レポート(スライド302)によれば、インプットされるデータ量が増えていくことで、科学論文引用が増加しており、医学研究・知識は3.5年ごとに倍増しているそうです。

以前取り上げたIBMの「WATSON」によってがん治療がスピードアップする!?によれば、医療従事者は、膨大な数の情報(最新の医療研究、論文、医療データ、患者の医療記録)を取り扱っていて、すでに人の頭脳では把握することができないほどなのだそうです。

そこで、注目を集めているのが、人工知能で医師や患者をサポートするシステムであり、その代表的なものがWatsonです。

Watsonは膨大な量の医療データや論文などのデータベースが格納されており、患者のデータを高速で解析し、医療データを照らし合わせることで、患者に最も最適と思われる治療方針を提案することで、医師や患者が意思決定の支援をするシステムです。

現在でも様々ながんの治療法(外科手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療など)があります。

そして、がんの遺伝子を解析して患者ごとの診断を行い、がんを引き起こす特定の変異細胞を狙った治療ということも実現しています。

しかし、がんと立ち向かうことは、時間との闘いなのですが、がんの遺伝子を解析して患者ごとの診断を行い、治療方針を決める際には、専門の医師によるチームでも数週間という長い時間を要してしまうのが現状です。

Watsonを活用することで、遺伝子情報の解析、医療データや論文などと照らし合わせる作業の時間短縮が可能になります。

今後は、テクノロジー(AI、機械学習、ディープラーニングなど)による解析が低価格で行われるようになることによって、蓄積されるデータの量が増え、またそれに合わせて医学論文などの文献も飛躍的に増加するため、ますますコンピュータの力を活用することが重要になってくることでしょう。

■まとめ

テクノロジー(AI、機械学習、ディープラーニングなど)を活用した医療画像診断支援システムが取り上げられる機会が増えてきました。

今後はテクノロジー(AI、機械学習、ディープラーニングなど)を活用した画像認識による病気診断システム同士をつないだり、研究結果から得られた知見をつなぎ合わせるプラットフォームが必要になってくるのではないでしょうか。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 17年8月号 (ブロックチェーンの衝撃)

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「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 17年8月号 (ブロックチェーンの衝撃)」によれば、別のシステムを結び付けるという仕組みによる脆弱性について書かれてあります。

複数のビットコイン取引所がハッキングされてビットコインの評判を落としたが、この事例で明らかになったのはブロックチェーン自体の脆弱性ではなく、複数の当事者がそれぞれ別のシステムを結び付けてブロックチェーンを使うという仕組みの脆弱性だった

医療ビックデータ解析にテクノロジーを活用する場合の共通のプラットフォームがあれば、お互いの知見同士を活用しあえるようになり、さらなる発展が期待できるのではないでしょうか?

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【#BostonDynamics #Atlas】ロボット開発では、複雑な動きをシンプルな動きに分解し、それぞれを組み合わせて複雑な動きを再現する

参考画像:What’s new, Atlas?|YouTubeスクリーンショット




■【#BostonDynamics #Atlas】ロボット開発では、複雑な動きをシンプルな動きに分解し、それぞれを組み合わせて複雑な動きを再現する

What’s new, Atlas?

BostonDynamics(ボストンダイナミクス)の「Atlas(アトラス)」がまるで「パルクール(Parkour)」のような動きでバク宙をしている動画が公開されるのを見て、驚かれた方も多いのではないでしょうか?

The New SpotMini

このAtlasを開発しているボストン・ダイナミクスのCEO マーク・レイバート氏が「SoftBank Robot World 2017」で行なった講演でのコメントが興味深いので取り上げてみたいと思います。

「ボストン・ダイナミクス」CEOが語る、ロボット開発に大切な3つのこと。未公開映像も披露

(2017/11/22、ロボスタ)

多くの人たちは、コンピュータが指令を出せば、ハードウェアが思うまま動くと思っているかもしれません。人間も脳が指令を出すと指示通りに動くと考えている人も多いと思います。しかしそれは間違った考え方で、実際の世界ではあらゆるものがロボットに影響を与えているのです。

例えば、何かに触れば空気の流動の問題も起きます。重力もあります。内部と外部の両方から影響を受けているのです。

大谷翔平投手がボール(剛速球)を投げる際の感覚を話していたのですが、コントロール良く投げるにはキャッチボールのような感覚で投げるとよいのですが、速球を投げようとすると、自分の身体を制御すればよいわけではなく、遠心力のような周りの影響を受けてしまい、コントロールがズレてしまうそうです。(記憶を頼りにしていますので、大体のニュアンスで読んでいただけると幸いです)

【参考リンク】

つまり、ロボットの動きも同じでコンピュータでどんなに指示を出しても、思い通りの複雑な動きをできるとは限らないということであり、ボストンダイナミクスは一つ一つの動きをシンプルに分解し、シンプルなモデルを組み合わせて高度な振る舞いを実現しようと考えているそうです。

ここで気になったのは、複雑な動きを複雑なままに再現することと、複雑な動きをシンプルな動きに分解し、シンプルな動きを組み合わせて複雑な動きを再現することという考え方の違いがあり、実に東洋的な考えと西洋的な考えがわかりやすく現れていると感じました。

「頭のでき」(著:リチャード・E・ニスベット)を参考にそれぞれの考え方の違いを紹介します。

頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か

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■西洋人=分析的

西洋人の知覚や志向は分析的で、身の回りのうち比較的小さな部分、何らかの方法で影響を与えたいと思う物事や人に意識を集中させる。

そして、その小さな部分の属性に注意を向け、それを分類したりその振る舞いをモデル化しようとしたりする。

また、形式的な論理規則を使って推論することが多い。

【参考リンク】

「人工知能と黒魔術」(視点・論点)

(2017/6/16、NHK)

私たちが普段の教育で触れる科学は、基本的に還元主義という考え方でできています。還元主義は「物事を分解し、細部の構造を理解していけば、全体を理解できる」という考え方です。

■東洋人=包括的

東洋人は幅広い物事や出来事に注意を払い、物事や出来事同士の関係や類似性に関心を持つ。

また、対立する考え方の「中庸」を探すなど、弁証法的な考え方を使って思考する。

東洋人は他者に注意をはらう必要があるため、外部の幅広い社会環境に目を向け、その結果として物理的環境にも意識を注ぐ。

■日本人とアメリカ人に見せて何が見えたかを報告してもらった、カラーアニメーションの一場面

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masuda&nisbett(2001)

  • アメリカ人はおもに、最も目立つもの-例えば大きく機敏な魚-に注目した。
  • 日本人は、もっと周囲の状況-岩、海藻、貝のような動かない生き物-に目を向けた。
  • 日本人は、背景に注意を払うだけでなく、背景とその中にある特定のものとの関係にも気づいた。
  • 日本人は、背景の細部についてアメリカ人よりも60%多く語った。

東アジア人は背景により注意をはらうため、関係性や因果関係を正しく判断できると考えられる。




■まとめ

なぜ複雑な動きを複雑なままに再現することと、複雑な動きをシンプルな動きに分解し、シンプルな動きを組み合わせて複雑な動きを再現することという考え方の違いに興味があるかといえば、ヒトの生理学反応を生体外で再現する試験法の開発が求められている中で注目されている「Organ on a Chip」の課題に重なるところがあるのではないかと思ったからです。

抗がん剤の副作用を生体外で再現するデバイス「ボディ・オン・チップ」の開発に成功

(2017/7/25、京都大学プレスリリース)

単一臓器モデルであるため、例えば、組織が放出する物質(代謝産物※5や成長因子※6など)が血管を通して他の臓器に与える影響(臓器間相互作用)を再現できません。近年では、数種類の単一組織チップを細いチューブで連結したモデルも報告されていますが、その連結法に課題があり正確な実験・測定が困難とされています。

そこで、考えられたのが、複数の組織を単一チップに搭載した生体外ヒトモデル「BODY ON A CHIP(ボディ・オン・ チップ)」の開発に成功|京大で紹介した複数の組織を単一チップに搭載した生体外ヒトモデル「Body on a Chip(ボディ・オン・チップ)」であり、従来の単一組織モデル「Organ on a Chip 」とは違い、生体内における組織間相互作用を生体外で再現できるチップであるので、薬剤開発や化学物質全般の有害性・毒性試験などへの応用が期待されています。

人間や動物の動きにも同じようなつながりがあるのではないかと思い、複雑なものを複雑なまま、関連性がないのかを認識しながら開発する必要はないのかという点が気になるところです。







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#ライフスタイル認証|IDやパスワードに頼らず #IoT #ビッグデータ を活用し個人の生活習慣で認証する技術|#東京大学

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by jseliger2(画像:Creative Commons)




■ライフスタイル認証|IDやパスワードに頼らずIoT・ビッグデータを活用し個人の生活習慣で認証する技術|東京大学

東京大学、次世代個人認証技術の大規模実証実験を開始 ビッグデータ、IoT 社会に適用するライフスタイル認証の実証が目的

(2017/1/19、東京大学 ソーシャルICT研究センター)

2017年1月から、次世代個人認証技術の実用性を検証するため、複数の民間企業からの協力を得て、被験者50,000人規模の大規模な実証実験を開始いたします。凸版印刷 Shufoo! 及び、小学館マンガワンなど各企業の人気商用サービスにて、次世代認証技術を利用する形で実験を行います。

東京大学大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センターでは、ライフスタイル個人認証に関する5万人規模の大規模実証実験を行ないました。

「ライフスタイル認証」とはどのようなものなのでしょうか?

ライフスタイル認証による安全快適な社会の実現|東京大学 ソーシャルICT研究センター

ライフスタイル認証は、ライフログデータを用いて認証を行います。
ライフログとは、スマートフォンなど様々なICT技術を使った個人ごとの利用履歴を指します。
このライフログを活用し、個人の生活習慣で認証することをライフスタイル認証と呼びます。

ライフスタイル認証とは、スマホなどから収集されたデータ(スマホの端末情報、位置情報やWi-Fi情報、買い物履歴、ウェアラブル端末のセンサー情報など)であるライフログを基に個人の生活習慣で認証する個人認証技術です。

例えば、スマホの位置情報を用いて、いつもと違う行動をしていないかを判定することで認証を行うそうです。

これまでにも、指紋認証や虹彩認証、耳の穴の形状(耳の穴で反響した音の違い)で生体認証する技術、歩容認証など個人認証についていくつか取り上げてきました。

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個人認証技術に注目が集まっているのには、現在の認証技術の限界が背景にあるようです。

ライフスタイル認証による安全快適な社会の実現|東京大学 ソーシャルICT研究センター

現状の認証技術の課題として「ほとんどのウェブサイトがIDとパスワードに頼っていること」「ユーザーが同じパスワードを使いがちなこと」があります。
こうした問題に対応するため、ワンタイムパスワードやICカード、SMSによる2段階認証など、多様な認証方法が提案されてきましたが、導入が進んでいないのが現状です。

スマホを多くの人がもつようになった現在でも、新しい認証方法が提案されてきましたが、個人認証技術は主にID・パスワードで支えられており、同じパスワードの使いまわしや推測されやすいパスワードを使用するなどによるリスクを抱えています。

ポイントは「”完全な””完璧な”セキュリティを目指さない」というところにあるのではないでしょうか?

わかりやすいのが、私たちが使っている「クレジットカード」です。

ライフスタイル認証による安全快適な社会の実現|東京大学 ソーシャルICT研究センター

クレジットカードの流れで考えてみると、ユーザに明細を送り後で不正を発見する、という枠組みを利用しています。
不正に対して「後から保証する」ことで、利用時のセキュリティについてはある程度重視するものの、完全なものを求めてはいません。
我々は「不正を完全になくす」というよりは「不正を減らしていく」技術の研究を進めていく必要性があると考えています。

カードが第三者によって不正利用されたという連絡を受けた方もいらっしゃると思いますが、これはクレジットカードも日ごろのお金の使い方(金額・場所)とは違ったときに、つまりお買い物行動というライフスタイルでチェックしているということであり、また不正を予め発見するために強固なセキュリティを用いるというよりも後から保証するというものになっているのがポイントです。

買い物行動からどれくらいのことがわかるのかといえば、例えば、「クレジットカード情報で健康状態を予想するシステム」がアメリカで始まっている!?で紹介した病院の中には、消費者の購買データと予測モデルを使用して健康状態を予測するというやり方が始まっているようです。

また、買い物パターンからお店の方が父親よりも前に娘の妊娠がわかったというケースもあるそうです。

「#Noom」|人工知能(AI)と専門コーチが行動変容をサポートするヘルスケアアプリ|特定保健指導プログラムも開始によれば、私たちはあらゆる場面でセルフ・コントロールを消耗するものであり、一つ一つの行動をいちいち決定してしまうと疲れてしまうため、人は習慣として自動化された行動をしてしまうのです。

つまり、人間は習慣の生き物なのです。

その性質を利用したのが、「ライフスタイル認証」です。

安全快適な社会を実現させる『ライフスタイル認証』

動画によれば、ライフスタイル認証の特徴は自動的にデータが収集できるため、パスワードや指紋認証のように認証するときにパスワードを入力しなければならないというようなユーザーからのアクションが必要になりますが、ライフスタイル認証ではユーザーは何もしなくても裏では計算されて認証されながらまるで認証されていないような行動をとることができるようになるそうです。

Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology

以前Amazon Goのケースを紹介しましたが、このライフスタイル認証が実用化されれば、Amazon Goのようなお店のスタイルが珍しいものではなく、一般的なものになっていくのではないでしょうか。




■まとめ

参考画像:Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット

参考画像:Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット

Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)

「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会。」(第5期科学技術基本計画)

【SoftBank World 2017】特別講演 落合 陽一 氏

「人間社会から計算機自然へ」MOA大学特別講義Vol.2落合陽一先生

(2017/8/27、MOA大学メディア)

つまり、あれだけ多様性があっても、どうやったらコンピューターで、多様性のある人間のままいけるかっていうのが次の時代の勝負なんじゃないかなと僕は思ってます。

それってつまり、一人一人がわりと好きな方向に向いててもまあ社会が成立するようになってきたのかなと。

これまでの社会は、あらゆるものを標準化することによって、人間がその標準化された社会に合わせて生活をすることで問題を解決してきましたが、Society5.0では、多様な違いを持ったままで、必要なサービスを、必要な時に、必要な分だけ提供される社会になっていくことを目指しています。

みんなが自由に行動していても社会が成立するようになるようなテクノロジーが生まれてきており、ライフスタイル認証のような認証されていないようで裏では認証されているような個人認証技術の向上はこの分野に役立てられるようになるのではないでしょうか。







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深層学習を用いた高精度歩容認証技術によって、個人認証・個人識別が可能になり、未来科学捜査やゲートのない世界の実現の可能性がある|#大阪大学




■深層学習を用いた高精度歩容認証技術によって、個人認証・個人識別が可能になり、未来科学捜査やゲートのない世界の実現の可能性がある|#大阪大学

「未来科学捜査」歩容鑑定

(2017/11/7、大阪大学)

歩く向きの差が小さい場合、見た目が比較的近くなるため、画像同士の同じ位置での差を特徴として比較することが有効です。一方、歩く向きの差が大きい場合、見た目が大きく異なるため、手の振り方や脚の振り幅等の抽象的な特徴の差を比較することが有効です。

本開発技術では、独自の深層学習モデルを提案し、これらの特徴を適切に使い分けることで、歩く向きが異なる人物映像からの高精度な歩容認証を可能にしました。

大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループでは、深層学習を用いた高精度歩容認証技術を開発しました。

今回のポイントはこちら。

参考画像:歩く向きの違いに応じた深層学習モデル|「未来科学捜査」歩容鑑定(2017/11/7、大阪大学)|スクリーンショット

その結果、歩く向きが大きく異なる場合、従来技術では本人認証の誤り率が約40%であったのに対し、本開発技術では約4%(世界最高精度)まで低減できました。

これにより、今まで適用が困難であった歩く向きが異なる場合についても個人認証が可能になり、「未来科学捜査」歩容鑑定の適用範囲を大きく広げます。

歩く向きが異なる人物映像からの高精度(本人認証の誤り率約4%)な歩容認証ができるようになったことから、歩く向きが異なる場合においての個人認証が可能になり、カメラに映った複数の人物から特定の一人を探すといった個人識別が可能になったことから、「未来科学捜査」歩容鑑定の適用範囲を広げることができます。

■まとめ

歩く向きが異なる場合についても個人認証が可能になり、また、カメラに映った複数の人物から特定の一人を探すといった個人識別が可能になったことで「未来科学捜査」歩容鑑定や店舗・商業施設などでの同一人物の移動経路の解析に利用し、顧客に応じたサービス提供等のマーケティング応用も期待されるそうです。

つまり、現在起きているテロや犯罪などに対する安全対策だけでなく、個人認証と個人識別によって、ゲートが必要のない世界の実現にも活用ができるかもしれません。

世界から「重力、ゲート、繋ぎ目」はなくなる。メディアアーティスト落合陽一さん2

(2015/11/3、東大新聞オンライン)

2つ目、ゲートをなくすこと。

この世界にはゲートが多すぎる。大体が人の労働コストに縛られた改札構造だと思う。都市の特徴。

本当は電車から降りた瞬間に、改札なんかに集まらずに自由な方向に向かって行ったっていいわけじゃん?
なのになんで改札があるかというときっとホワイトカラー時代の名残で、誰かが観察して、警備して、管理する必要があったから。つまりそれって、マンパワーの労働力を基準にして人間の行動が束縛されてきた訳で。

でもそんな束縛はコンピュータ時代には不要だと思っていて、人間は自由な方に自由に行っていいはずだし、ゲートが一個もない地下鉄とか、レジがないコンビニとかがあってもいいよね。

こういった都市構造自体の再定義をデジタルネイチャー時代にどうやっていくかには、すごい興味がある。

「黒川紀章ノート」にこのように書かれています。

黒川紀章ノート―思索と創造の軌跡

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農業化社会は実は工業化社会に非常に近いということに気づいたのである。

両方共、人は、決まった時間に決まったことをやっていればいい。農業は、月が出たらどうするとか、何月にはこうすると、季節によってきちんとすべきことが決まっている。

それは、工業も同じだ。工場も、屋内の畑のようなもので手順がきちんと決められていて、それにしたがって作業が行われている。

だが、情報化社会は違う。ここでは決まったやり方というものはない。人々は、常に情報を集め、それによってアドホックに動く。

※アドホック:「特定の目的のための」という意味

現在存在する都市は、決まった時間に決まったことをやる、人々はそれを実行し、管理していくという農業化社会・工業化社会の考えに基づいて作られて都市が作られているのではないかということ。

情報化社会といわれて久しいですが、実際の私たちの都市は情報化社会に合わせた都市づくりにはなっていないのかもしれません。

情報化社会では、生きるために必要な情報をより早く仕入れ、それに基づいてすばやく動いていくという遊牧民(ノマド)のような人が生き残る社会です。

そういう人たちにとっては、「ゲート」というものは行動を制限してしまうかもしれません。

メタボリズムの方法論では、都市の遊びの空間について、こう展開している。

「高度に秩序化された都市は、同時に魚釣りを楽しみ、虫の音を聞き、スポーツを楽しむ都市でなくてはならない。高度に機能化されたオフィスや工場は同時に、自由な思索の場であり、遊びの場でなくてはならない。しかしこの両端を妥協的に調和させるのではなく、それを対立的に劇的に共生させることが都市の中にドラマティックな緊張感を作り出す」

(「黒川紀章ノート」より)

今は働く場所と生活する場所、遊ぶ場所は分かれています。

これは、ある種「ゲート」で管理されているともいえるのではないでしょうか。

新しい都市の発想から考えれば、新しい都市では、働きながら(働くということも将来はどうなるのかわかりませんが)、遊びながら、生活しながらということをひと続きに行なえるようになっていくでしょう。

■Amazon Go の例

アマゾンの「レジなしでの買い物」は実現間近!Amazon Goの仕組みをYouTube動画から考える|#Bloomberg

Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology

■スマホアプリでチェックイン

●Amazonアカウント(クレカ情報や個人情報をあらかじめ登録)

●Beacon(店舗内でのユーザーの滞在証明)

PayPal、iBeacon、Hands Free、Origami Payもすでに利用

■棚から商品をとる

●カメラとセンサーで商品位置と顧客の動きを読み取る

●一度とったものを戻すというような動作もディープラーニングで学習

●リアルタイムでオンライン上の仮想ショッピングカートに加える

●電子タグ(RFID)は使わない

■レジを通らずに決済→Just walk out

●入り口付近のセンサーでアプリを認識し、顧客を識別

●データを転送してAmazonアカウントで決済

●#uber のように降りるときに支払う作業がいらない

【Amazon Goの先の未来】

●アプリを起動する必要もない

ライブや万引き防止用の顔認識システムや生体認証、歩く姿で個人がわかる「歩容認証」を活用する

http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/22_letter/data/news_2014_vol2/p12.pdf

但し、それではBeaconが使えないので滞在証明を別の方法でする必要がある。

●「これからの世界をつくる仲間たちへ」(著:落合陽一)には、テラヘルツ電波と画像認識技術を組み合わせて一人ひとりをスキャニングして検札を済ませ「どこからでも出入りできるシステム」というアイデアがありました。

■「CUBIC」|”ゲートなしの改札機”というコンセプト

[vimeo]https://vimeo.com/236719488[/vimeo]

facial recognition to be your future ticket on the london underground

ロンドンの地下鉄が顔認証でチケットやカードいらずに?

(2017/10/6、Fashionsnap.com)

「CUBIC」がデザインしたそんな画期的なシステムは、現在ユーザーテスト中ではあるが、”ゲートなしの改札機”というコンセプトを掲げ、物理的な改札ゲートの代わりに、毎分およそ65〜75人が通ることができる長めのコースを設計。そこを通過すると顔がスキャンされ、支払いはスマートフォンに同期されるという時間と手間を省く効率的な仕組みになっている。

これからの社会のキーワードとして注目しているのが「Society5.0」です。

参考画像:Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット

参考画像:Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット

Society5.0・Connected Industriesを実現する「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)

「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会。」(第5期科学技術基本計画)

「人間社会から計算機自然へ」MOA大学特別講義Vol.2落合陽一先生

(2017/8/27、MOA大学メディア)

つまり、あれだけ多様性があっても、どうやったらコンピューターで、多様性のある人間のままいけるかっていうのが次の時代の勝負なんじゃないかなと僕は思ってます。

それってつまり、一人一人がわりと好きな方向に向いててもまあ社会が成立するようになってきたのかなと。

これまでの社会は、あらゆるものを標準化することによって、人間がその標準化された社会に合わせて生活をすることで問題を解決してきましたが、Society5.0では、多様な違いを持ったままで、必要なサービスを、必要な時に、必要な分だけ提供される社会になっていくことを目指しています。

みんなが自由に行動していても社会が成立するようになるようなテクノロジーが生まれてきており、歩容認証技術の向上はこの分野に役立てられるようになるのではないでしょうか。







【参考リンク】
続きを読む 深層学習を用いた高精度歩容認証技術によって、個人認証・個人識別が可能になり、未来科学捜査やゲートのない世界の実現の可能性がある|#大阪大学

キューブ型ロボット「Primer」|折りたたみ式外骨格で陸上・水上・空中移動が可能に|MIT CSAIL

参考画像:Transforming Robots with Origami Exoskeletons|YouTubeスクリーンショット




■キューブ型ロボット「Primer」|折りたたみ式外骨格で陸上・水上・空中移動が可能に|MIT CSAIL

“SUPERHERO” ROBOT WEARS DIFFERENT OUTFITS FOR DIFFERENT TASKS

(2017/9/27、MIT CSAIL)

Dubbed “Primer,” a new cube-shaped robot can be controlled via magnets to make it walk, roll, sail, and glide. It carries out these actions by wearing different exoskeletons, which start out as sheets of plastic that fold into specific shapes when heated.

MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory)が発表したのは、折りたたみ式のキューブ型ロボット「Primer」です。

「Primer」は、加熱すると特定の形状に折り畳まれるシートの外骨格をつけていて、磁石を使って歩く、転がす、帆走する、滑るなどの操作が可能です。

Transforming Robots with Origami Exoskeletons

■まとめ

これまでにも折り紙からインスピレーションを受けたロボットや血液の中を泳ぐ小さな医療用ロボットについていくつか取り上げてきました。

これまでのマイクロロボットは動き方のパターンは単純なものでしたが、今回紹介した動画によれば、陸上での移動ができる「Walk-bot」、「Wheel-bot」、水の上に浮くことができる「Boat-bot」、紙飛行機(グライダー)のように滑空できる「Glider-bot」のように外骨格を身にまとうことによって、移動手段が増えています。

「Microbot Origami」|単一細胞をつかんで輸送することができる超小型ロボットを開発|米ノースカロライナ州立大学・デューク大学で紹介した磁場を通したエネルギーを使って形を変えることにより、多くのタスクを実行することができるロボットと組み合わせれば、いろんな場所で多くの機能を果たすことができるロボットができるのではないでしょうか。







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