糖質より先に制限すべきものがある…大学教授が「がんの悪性化を加速させる」と警告する”意外な真犯人”によれば、がんと食事の関係を考えるうえで、糖質全体を極端に減らすのではなく、加糖飲料などから摂る果糖や砂糖の過剰摂取を避けることに注目した研究が増えています。
■なぜ「糖質制限」だけでは不十分なのか?
・がん細胞はブドウ糖を活発に利用することが知られています(ワールブルグ効果)。しかし、食事から糖質を減らせばそのままがん細胞へのブドウ糖供給を断てるという単純な仕組みではありません。
・糖質を制限しても、肝臓が血糖値をほぼ一定に保つため、がん細胞へのブドウ糖供給はほとんど減りません。
・がん患者さんでは、病気や治療によって食事量が減り、体重や筋肉量が低下することがあります。自己判断で厳しい糖質制限を行うと、必要なエネルギーや栄養を十分に摂れず、低栄養を悪化させる可能性があります。
人ががんに命を奪われる主な要因は、原発巣(最初の腫瘍)の大きさではなく、悪性化して転移・浸潤することです。
原発巣を小さくすることよりも、転移を抑えることの方が、がんとの長期的な共存につながります。
■果糖が「意外な真犯人」になる理由
問題になりやすいのは、加工食品や加糖飲料(清涼飲料水、果汁飲料、HFCS=高果糖コーンシロップなど)からの果糖の過剰摂取です。
●最近の研究でわかってきたこと
・一部のがんでは、果糖を運ぶGLUT5という輸送体の発現が増え、果糖を利用しやすくなることが報告されています。
・果糖を利用することで、がん細胞がより動きやすくなり、転移しやすくなる可能性があります。
・果糖は直接がん細胞のエネルギー源になる場合もあれば、肝臓で脂質に変換されてがんに届き、細胞膜の材料になる場合もあります。
・動物モデルなどの前臨床研究では、砂糖入り飲料に含まれる「ブドウ糖+果糖の組み合わせ」が、大腸がんの肝臓転移を加速させるという結果も出ています。
動物実験では、果糖を多く与えると腫瘍の成長が速くなったり、転移が増えたりする結果が複数報告されています。
逆に果糖を制限したり、取り込みを阻害すると、進行が抑えられる例もあります。
■私たちにできること
・加糖飲料や甘い加工食品を減らす(これが最も現実的で効果的)。
・果物は適量であれば問題ありません(食物繊維やビタミンも一緒に摂れます)。ただしジュースや濃縮還元果汁は控えめに。
・極端な糖質制限はせず、バランスの良い食事を心がける。
現時点では、「果糖を控えればがんを予防できる」「がんの進行を確実に抑えられる」と臨床的に証明されているわけではありません。
一方で、近年の基礎研究では、過剰な果糖がさまざまな経路を通じて腫瘍の成長や転移に関わる可能性が明らかになってきました。
だからといって果物や糖質を一律に避ける必要はありません。
まずできる健康習慣として、清涼飲料水などの加糖飲料や砂糖を多く含む食品を日常的に摂りすぎないことを意識するとよいでしょう。
加糖飲料を控えることは、体重管理を通じたがん予防の観点からも国際的に推奨されています。
特にがん治療中は、体重や筋肉量を維持するための栄養管理も重要です。
自己判断で極端な糖質制限や果糖制限を行わず、食事を大きく変更する場合は主治医や管理栄養士に相談してください。
がん患者では疾患と治療の双方が低栄養のリスクになることが指摘されています。
【参考文献】
Fowle-Grider R, et al. Dietary fructose enhances tumour growth indirectly via interorgan lipid transfer. Nature. 2024;636:737-744. doi:10.1038/s41586-024-08258-3
(果糖が肝臓経由で脂質を増やし、腫瘍成長を促進)
Feng T, et al. Fructose and glucose from sugary drinks enhance colorectal cancer metastasis via SORD. Nature Metabolism. 2025. doi:10.1038/s42255-025-01368-w
(加糖飲料のブドウ糖+果糖が大腸がん転移を加速)
Cole AR, et al. The chemotherapy-induced senescence-associated secretome promotes cell detachment and metastatic dissemination through metabolic reprogramming. Nature Aging. 2026;6:1647-1666. doi:10.1038/s43587-026-01172-5
(化学療法後の老化がん細胞が放出する果糖が、卵巣がんの転移を促す仕組み)
Cui Y, et al. Fructose-Induced mTORC1 Activation Promotes Pancreatic Cancer Progression through Inhibition of Autophagy. Cancer Research. 2023;83(24):4063-4079. doi:10.1158/0008-5472.CAN-23-0464
(果糖が膵臓がんの進行を促進)
Yang J, et al. Fructose utilization enhanced by GLUT5 promotes lung cancer cell migration via activating glycolysis/AKT pathway. Clinical and Translational Oncology. 2023;25(4):1080-1090.
(GLUT5を介した果糖利用が肺がん転移を促進)
Jin C, et al. GLUT5 increases fructose utilization in ovarian cancer. OncoTargets and Therapy. 2019.
(卵巣がんでのGLUT5と果糖利用)
佐藤拓己『アメリカ人を巨大化し、日本人を糖尿病・脂肪肝にする果糖の正体』(光文社新書, 2026頃)
(記事の原典。一般向け解説書)
これらの論文は主に動物・細胞実験に基づくものです。臨床への応用は今後の研究が待たれます。最新情報は医師にご確認ください。
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