抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」とは?増やす方法・食べ物・オメガ3との関係|カズレーザーと学ぶ。




「DEL-1(デルワン)」というタンパク質をご存じでしょうか?

DEL-1は体内で作られるタンパク質で、炎症や骨代謝、老化細胞などとの関係が研究されています。

テレビ番組では「抗老化タンパク質」「若返りタンパク質」として紹介されたこともあり、

「DEL-1とは何?」
「DEL-1を増やす方法は?」
「何を食べたらいいの?」
「オメガ3を摂ればDEL-1は増えるの?」

と気になった方も多いのではないでしょうか。

私がDEL-1について初めて知ったのは、2025年1月14日放送の『カズレーザーと学ぶ。』でした。

番組ではDEL-1とオメガ3脂肪酸との関係や、アマニ油、サバなどが紹介されていました。

その後、DEL-1の研究はさらに進んでいます。

そこでこの記事では、DEL-1とは何か、増やす方法、オメガ3や食べ物との関係について、『カズレーザーと学ぶ。』で紹介された内容と、その後の研究をあわせて整理します。

■DEL-1(デルワン)とは?

DEL-1(Developmental Endothelial Locus-1)とは、おもに血管の内皮細胞から産生される抗炎症作用をもつタンパク質です。

以前から抗炎症作用や骨代謝などとの関係が研究されてきました。

デルワンは主に血管内皮細胞から出てきて体の中をぐるぐると回っており、炎症を抑える役割があることが発見されています。

デルワンは腎臓や腸管、神経系でたくさん作られていて、再生もでき、肌にも効果的なのだそうです。

デルワンは老化細胞に「(免疫細胞に)食べてくれ!」という自らの除去をお願いするシグナルを出すことを判断/指令してくれることで、細胞の再生を促進することがわかりました。

デルワンの産生量は加齢とともに減少して、30-40代から激減します。

老化細胞が増えると、炎症性サイトカインが出てきて、DEL-1を抑制して、悪循環を起こします。

また、若返りの効果もあり、歯を支える骨を再生してくれます。

老化すると、破骨細胞(骨を溶かす細胞)が活性化すると同時に骨を作る機能が少しずつ遅れてきて、破骨細胞のほうが強くなってくると、骨粗しょう症のようになります。

デルワンは骨を壊す細胞に対して強力に作用して抑え、骨芽細胞に働きかけて骨の再生を手助けすることがわかってきました。

デルワンの数値が高いとスキンケアの反応が良いそうです。

肥満になるとデルワンは下がる。デルワンを欠損させたマウスは太っている。

例えば2015年に発表された研究では、DEL-1が破骨細胞への分化を抑え、非ヒト霊長類における炎症性の骨減少を抑制したことが報告されています。

さらに2026年には、DEL-1が老化した骨髄間葉系幹細胞を選択的に死滅させ、その後の除去も促す「生体内セノリティック(老化細胞除去)タンパク質」として働くことが、新潟大学などの研究グループによって報告されました。

つまりDEL-1は、炎症だけではなく、骨や老化細胞との関係からも研究されているタンパク質ということになります。

■DEL-1を増やす方法は?

では、一番気になる、「DEL-1を増やすことはできるの?」という疑問について見てみましょう。

DEL-1との関係で注目されているのが、オメガ3脂肪酸です。

私が最初にDEL-1について知った『カズレーザーと学ぶ。』でも、DEL-1とオメガ3脂肪酸の関係が紹介されていました。

また、DEL-1についてはオメガ3に由来する炎症収束性脂質メディエーター「リゾルビン」との関係についても研究されています。

元の記事で紹介した研究資料では、減少したDEL-1発現がリゾルビンによって定常状態まで回復したことが報告されています。

つまり、DEL-1とオメガ3の関係には研究上の背景があります。

ただし、「オメガ3を摂れば誰でもDEL-1が増える」とまで単純に考えないことも大切です。

細胞や動物などを対象とした研究で分かったことと、私たちが毎日の食事としてオメガ3を摂った場合の影響は分けて考える必要があります。

■DEL-1と関係する食べ物は?

オメガ3脂肪酸は、大きく見ると

・αリノレン酸
・EPA
・DHA

などがあります。

食品としては、

αリノレン酸を含む食品

・アマニ油
・えごま油
・クルミ

EPA・DHAを含む食品

・サバ
・イワシ
・サンマなどの魚

などがあります。

『カズレーザーと学ぶ。』では、オメガ3脂肪酸を含む食品としてアマニ油やサバが紹介されていました。

→ オメガ3脂肪酸を含む食品 について詳しくはこちら

ただ、ここで注意したいのは、

「DEL-1を増やす食品=○○」

と一つの食品に決めてしまわないことです。

現時点では、「DEL-1との関係が研究されているオメガ3脂肪酸を含む食品」くらいに考えておくのがよさそうです。

■『カズレーザーと学ぶ。』ではDEL-1について何が紹介された?

ここで、私がDEL-1について知るきっかけになった『カズレーザーと学ぶ。』で紹介された内容をまとめておきます。

2025年1月14日放送のテーマは「2025年イイ顔になる最新科学」。

番組では、新潟大学の前川知樹研究教授がDEL-1について解説しました。

番組をもとに当時の記事に記録したポイントを整理すると、

DEL-1は抗炎症作用をもつタンパク質
加齢とともにDEL-1の産生が減少する
老化細胞とDEL-1の関係
DEL-1と骨の維持・再生との関係
DEL-1とオメガ3脂肪酸との関係

などが紹介されていました。

■スキンケアだけでは老化は防げない!

老化細胞が肌の中で増えてしまうと、体の外から行う通常のスキンケアではその細胞を取り除くことが難しいため、シミやシワの原因となってしまいます。

そこで必要になるのが体の中からのアプローチであり、そのカギとなるのが抗老化タンパク質「DEL-1」です。

DEL-1をコントロールすることができれば、肌の再生力もアップし、肉体も若返る可能性があるそうです。

その中でも、食生活という観点から興味深かったのがオメガ3でした。

当時の記事には、番組で紹介された内容として「10歳の高齢サルにオメガ3脂肪酸を与える実験では、4カ月後にDEL-1発現量が約1.5倍に増加した」と記録しています。

そしてオメガ3を含む食品として紹介されたのが、アマニ油やサバでした。

この番組を見たときには、

「オメガ3とDEL-1にはこんな関係があるんだ!」

というところに興味を持ったのですが、その後研究を追ってみると、DEL-1と老化細胞との関係もさらに詳しく分かってきました。

■その後の研究で分かってきたDEL-1と老化細胞の関係

2026年1月、新潟大学などの国際共同研究グループからDEL-1について新たな研究成果が発表されました。

研究グループは、DEL-1が老化細胞を選択的に死滅させ、さらにマクロファージによる除去を促す「生体内セノリティック(老化細胞除去)タンパク質」であることを報告しています。研究成果は2026年1月20日に国際学術誌「Advanced Science」に掲載されました。

老化細胞は、ストレスや加齢などによって増殖を停止した細胞です。

新潟大学によると、こうした老化細胞は炎症物質を放出し、周囲の組織に影響を与えます。

今回の研究では、

DEL-1
↓
老化した骨髄間葉系幹細胞に選択的に作用
↓
老化細胞の死滅を促す
↓
マクロファージによる除去も促す

という仕組みが示されました。

新潟大学は、この仕組みを体に備わった「天然の老化細胞除去システム」と表現しています。

2025年に『カズレーザーと学ぶ。』を見た時に興味を持った「DEL-1と老化にはどんな関係があるのだろう?」という疑問について、その後の研究でさらに仕組みが見えてきたわけですね。

■DEL-1と骨粗しょう症・歯周病との関係

DEL-1では「骨」との関係についても研究が続けられています。

2026年の研究では、DEL-1を欠損させたマウスでは老化細胞が蓄積して骨粗しょう症が重症化した一方、DEL-1を過剰発現させたマウスでは老化細胞が効率よく除去され、骨密度が維持されたと報告されています。

こうした研究成果から、骨粗しょう症や歯周病などの治療法への応用が期待されています。

ただし、「DEL-1を増やせば人間が若返ることが証明された」という意味ではありません。

ここはテレビなどで使われる「若返りタンパク質」という言葉と、実際の研究成果を分けて考える必要があります。

■運動でもDEL-1は増える?

DEL-1については、食事だけでなく運動との関係も注目されています。

2026年10月に前川研究教授が解説したメディア記事では、普段あまり運動習慣のなかった40~50代の男女24人が1時間のウォーキングを1カ月間続けたところ、DEL-1量が平均約1.5倍になったという取り組みが紹介されています。

同じ記事では、40~50代の男女10人を対象としたアマニ油摂取についてもDEL-1量の変化が紹介されています。

興味深い内容ではありますが、今回確認できたものは小規模な取り組みについて研究者がメディアで紹介した情報です。

そのため、「ウォーキングをすればDEL-1が1.5倍になる」とすべての人に一般化するのではなく、今後の研究にも注目したいところです。

■結局、DEL-1を増やすために何をすればいいの?

ここまで調べて、「じゃあ結局、何をすればいいの?」と思った方もいるかもしれません。

現時点では「DEL-1を増やすためにこの食品だけを食べればいい」と考えるより、

・魚などオメガ3脂肪酸を含む食品を普段の食事に取り入れる
・アマニ油やえごま油なども食生活に取り入れる
・適度に体を動かす

といった健康習慣を考えるきっかけとしてDEL-1研究を見る方がよいのではないでしょうか。

「若返り成分があるから、これだけ食べる」という考え方ではなく、普段の食生活や運動を整える中で、その仕組みの一つとしてDEL-1研究にも注目する。

そんな捉え方が現時点ではよさそうです。

■DEL-1について「分かっていること」と「まだ分からないこと」

●分かってきたこと

DEL-1は体内で作られるタンパク質で、抗炎症作用や骨代謝などとの関係が研究されてきました。

2026年の研究では、DEL-1が老化した骨髄間葉系幹細胞を選択的に死滅させ、その後の除去も促すことが報告されています。

●注目されていること

DEL-1とオメガ3脂肪酸との関係が研究されています。

また、小規模な取り組みとして、運動やアマニ油摂取後のDEL-1量についての情報も紹介されています。

●まだ慎重に考えたいこと

特定の食品を食べることで、人のDEL-1がどの程度増え、それによって老化や健康にどの程度の影響があるのかについては、

「この食べ物を食べればDEL-1が増えて若返る」

と単純化しない方がよいでしょう。

研究結果と毎日の健康習慣の間には、一段階置いて考える必要があります。

■まとめ

DEL-1(デルワン)は、体内で作られ、抗炎症作用や骨代謝、さらに老化細胞との関係が研究されているタンパク質です。

私がDEL-1を初めて知ったのは、2025年1月14日放送の『カズレーザーと学ぶ。』でした。

当時特に興味を持ったのが、「DEL-1を増やす方法」そして、「DEL-1とオメガ3の関係」でした。

番組では、オメガ3を含む食品としてアマニ油やサバなどが紹介されました。

それから研究を追っていくと、2026年にはDEL-1が老化細胞を選択的に死滅させ、その除去を促す生体内セノリティックタンパク質として働くことが報告されました。

つまり、『カズレーザーと学ぶ。』をきっかけに知ったDEL-1について、その後も研究が進んでいるということですね。

ただ、ここから、「若返るために○○をたくさん食べよう」と考えてしまうのは少し違います。

DEL-1とオメガ3や運動との関係は興味深いものですが、魚やアマニ油、えごま油などを含めた日々の食生活や運動について考えるきっかけの一つとしてDEL-1研究を見る。

今のところは、そのくらいの距離感がよいのではないでしょうか。

今後も新しい研究が発表されたら、この記事に追記していきたいと思います。

【参考リンク】

■デルワンサプリ

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【新物】島根県産えごま油(50g)|低温圧搾生搾り|オメガ3(αリノレン酸)を摂ろう! 1,944円(税込)

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【補足】

筋肉量が多い人ほど顔のシミやシワ、毛穴の目立ちが少ない!マイオネクチンがメラニンの生成を抑えている!|ポーラ化成で紹介したポーラ化成工業が行ったゲノム研究(GWAS)によれば、シミができない体質の人は、生まれつき筋肉の性質が異なる可能性があること、また、体重当りの体幹と下半身の総筋肉量が多い人ほど、顔のシミが少ないことが分かったそうです。

また、筋肉で作られる「マイオネクチン」が血液成分として皮膚に運ばれ、シミのもとであるメラニンの生成を抑えていることが示唆され、さらには、体の筋肉量が多いほど、シワ、毛穴の目立ち、色ムラなどが少ないことも明らかになったことから、美肌体質の秘密は、筋肉がカギを握っている可能性があるようです。

今回の番組では運動とデルワンの関係については説明がなかったのですが、筋肉量が多い人ほどど顔のシミやシワ、毛穴の目立ちが少ないことから、もしかすると筋肉とデルワンにも関係もあるのかもしれませんね。

【参考リンク】

減少した DEL-1 発現は、抗炎症作用をもつオメガ3脂肪酸であるリゾルビンを作用させることで、定常状態まで回復させることができた

■まとめ

以前オメガ3の美肌効果については次のように紹介しました。

オメガ3の美肌効果|オメガ3を摂取するとなぜ美肌になるのか?|摂取量の目安によれば、オメガ3が十分にあると、オメガ3は血管にも作用し、血管を拡張する力を持っているため、血流を改善することにより、血液の循環はとてもスムーズです。

その結果、肌には栄養分が運ばれていくことにより、皮膚の細胞の新陳代謝を活発にして、肌を美しくしてくれると考えられます。

しかし、血液中にオメガ3が不足すると、栄養分の運搬が滞ってしまいがちになり、新陳代謝が活発ではないため、肌が荒れてしまうと考えられます。

麻布大学の守口徹教授によれば、オメガ3が細胞にあると本来の細胞の機能が維持でき、皮脂の供給などすべてがバランスよくいくそうです。

また、分泌を促してくれる下の方の細胞にオメガ3がないと指令が来なくなるそうです。

→ EPAを摂ると、赤血球がしなやかになり、顔色が良くなり、目の下のクマがなくなる!【美と若さの新常識】 についてくわしくはこちら

今回の記事を参考にして考えると、オメガ3を摂ることで抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」が増えて、肌の衰えやシワ、シミの原因となる「老化細胞」を取り除き、肌の再生を助ける役割を果たしているため美肌になっていると考えられるんですね。

→ オメガ3脂肪酸を含む食品 について詳しくはこちら

【追記】

2025年5月29日放送の「ひるおび!」で新潟大学・前川知樹教授が解説し、抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」が健康寿命を延ばすことに期待されるそうです。

→ 健康寿命を延ばすカギ!?デルワン減少チェックリスト【ひるおび】

→ 抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」で若返り!デルワンを増やす方法とは?【ホンマでっかTV】 について詳しくはこちら







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「ウベ抹茶ラテ」が世界でブームに!韓国から広がる紫×緑のドリンク、フィリピンではウベ増産も

日本の「抹茶」とフィリピンで親しまれてきた紫色のヤムイモ「ウベ」。

この2つを組み合わせた「ウベ抹茶ラテ」などのドリンクやスイーツが、韓国のカフェをきっかけにSNSなどを通じて広がり、Z世代を中心に注目されているというニュースがNHKで紹介されていました。

鮮やかな紫色のウベと、緑色の抹茶。

写真や動画にしたときのインパクトが大きく、「SNS映え」することも人気の理由の一つとして考えられそうです。

ただ、今回のニュースを見ていて興味深かったのは、単に「新しいスイーツが流行っています」という話ではありませんでした。

世界的な需要の高まりを受けてフィリピンではウベを加工する工場が生産を増やす一方、原料となるウベが不足しているというのです。

これを聞いて、どこかで聞いたことがある話だと思いました。

「抹茶」です。

ハクライドウでは以前、

なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?

という記事で、世界的な抹茶ブームについて取り上げました。

海外で抹茶の需要が急増したことによって、原料となる碾茶の生産や供給にも影響が出ています。以前の記事でも、需要に対応するため碾茶生産を拡大する動きを取り上げています。

もしかすると「ウベ」と「抹茶」という全く違う食材に、同じような現象が起きているのでしょうか?

今回は「ウベ抹茶ラテ」から、世界的な食のトレンドについて考えてみたいと思います。

■そもそも「ウベ」とは?

ウベ(UBE)は、主にフィリピンで親しまれてきた紫色のヤムイモです。

鮮やかな紫色が大きな特徴で、フィリピンでは昔からアイスクリームやケーキ、かき氷など、さまざまなスイーツに使われてきました。

日本で「紫色の芋」と聞くと紫芋を想像するかもしれません。

また、アジアのスイーツでよく使われるタロイモを思い浮かべる人もいるでしょう。

しかし、ウベは日本の紫芋やタロイモとは別のものです。

つまり、ウベは最近突然誕生した「流行のための食材」ではありません。

フィリピンでは以前から食べられてきた食材が、別の国や地域で新しい形にアレンジされ、世界から注目され始めたというところが面白いのです。

■なぜ「ウベ」が人気になっているの?

NHKのニュースでは、韓国のカフェを中心に人気になり、SNSやZ世代へと広がっていることや、健康志向という側面も紹介されていました。

特にSNSとの相性がよさそうなのが、ウベの鮮やかな紫色です。

実際、海外では以前からウベを使ったドリンクやスイーツが存在していましたが、近年はその色を生かしたウベラテやウベシェイクなども注目されています。

そこに抹茶を組み合わせると、

ウベの紫 × 抹茶の緑

という非常に特徴的な色の組み合わせが生まれます。

海外では紫、白、緑の層を作ったウベ抹茶ラテも紹介されており、TikTokを中心に話題になっていると報じられています。

味だけではなく、見た瞬間に「これは何?」と思わせるビジュアルがあることは、SNS時代の食トレンドでは大きな特徴なのかもしれません。

■健康志向もウベや抹茶人気の理由?

もう一つ興味深いのが「健康志向」です。

抹茶についても、海外では単なる日本のお茶ではなく、「健康的」「ウェルネス」といったイメージと結びついて広まってきた側面があります。

以前のハクライドウの記事でも、海外における抹茶人気には健康志向だけでなく、SNSで映える鮮やかな緑色、日本文化への関心、カフェ文化など複数の要素があることを紹介しました。

ただ、ここでは注意も必要です。

「健康的なイメージで人気になっていること」と「ウベ抹茶ラテを飲めば健康になること」は別の話です。

ラテやスイーツは商品によって使用される材料も異なります。

そのため「ウベ抹茶ラテ=健康食品」と考えるのではなく、健康志向やウェルネスというイメージも、消費者が関心を持つ背景の一つになっている、と捉える方がよいのではないでしょうか。

■「抹茶の次はウベ」といわれているけれど、本当にそう?

2026年には日本でも「抹茶の次はウベ」と、ウベを次のトレンド候補として紹介する記事が登場しています。

でも、今回の「ウベ抹茶ラテ」を見ていると、

「抹茶 → ウベ」

と人気食材が交代しているわけではないことに気づきます。

むしろ、

「抹茶 × ウベ」

なのです。

ここが今回のブームの面白いところではないでしょうか?

世界でMATCHAそのものが知られるようになったことで、「抹茶とは何か」を一から説明しなくても、別の食材と組み合わせることができる。

つまり抹茶が、

「日本独自の飲み物」から「世界中でアレンジできる素材」へ

変化してきたとも考えられます。

■実は「抹茶×現地の食材」はウベだけではない

この仮説を考えるうえで面白い例があります。

ベトナムでは、日本の抹茶とココナッツジュースを組み合わせた「抹茶ココナッツジュース」が若者の間で広がった事例が報告されています。

つまり、

日本の抹茶 × フィリピンのウベ

だけではありません。

抹茶 × ココナッツ

という別の組み合わせも生まれているわけです。

個々の流行だけを見ると、

「ウベが流行っている」

「抹茶ココナッツが流行っている」

という別々のニュースに見えます。

しかし少し引いて見ると、

日本から広がったMATCHAが、それぞれの地域で親しまれている食材と組み合わされ、新しいドリンクやスイーツへと変化している

という共通した動きとして見ることもできそうです。

■ウベは世界同時多発的に流行する「ファッションフード」?

今回のNHKのニュースで興味深かったのが、食文化研究家が「ファッションフード」という言葉で今回のウベ人気を紹介していたことです。

ここでいう「ファッションフード」とは、ある食べ物が一つの地域から順番に広がっていくだけではなく、世界各地で同時多発的に流行していくような現象を捉えた言葉です。

この視点から「ウベ抹茶ラテ」を見ると、とても興味深いものがあります。

もともとウベは、フィリピンで昔からアイスクリームやケーキなどに使われてきた食材です。

ところが現在は、韓国などのカフェ文化の中で新しいドリンクやスイーツにアレンジされ、SNSなどを通じて世界に広がっています。

一方の抹茶も、日本から海外へ広がり、現在ではラテやスイーツなどさまざまな形で楽しまれるようになっています。

ハクライドウでも以前、なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?という記事で、健康志向だけでなく、鮮やかな緑色、日本文化への関心、SNS、カフェ文化など、さまざまな要素が海外での抹茶人気と結びついていることを紹介しました。

つまり「ウベ抹茶ラテ」には、

フィリピンのウベ
× 日本の抹茶
× 韓国などのカフェ文化
× SNS

という、いくつもの国や文化の要素が重なっています。

もはや「どこの国の食べ物なのか?」だけでは説明しにくい、新しい食文化が生まれているともいえそうです。

■SNS時代は「食の流行の伝わり方」そのものが変わった?

これまで食の流行というと、

ある地域で流行
↓
別の地域へ広がる
↓
少しずつ世界へ

というイメージがあったのではないでしょうか。

しかしSNSの登場によって、世界各地の人が同じ食べ物の写真や動画を見ることができるようになりました。

すると、

ある地域で昔から親しまれてきた食材
↓
別の国で新しい食べ方にアレンジされる
↓
SNSなどを通じて世界へ広がる
↓
それぞれの地域でさらに新しいアレンジが生まれる

という循環も考えられます。

今回の「ウベ抹茶ラテ」は、まさにその象徴のように見えます。

フィリピンのウベと、日本の抹茶が組み合わされ、韓国などのカフェ文化の中で新しい形となって発信されている。

「ファッションフード」という視点から見ると、重要なのは「ウベが次に流行する食材なのか?」だけではありません。

食の流行が世界へ伝わる仕組みそのものが変わってきているのではないか?

というところまで考えることができます。

■そして「流行」が生産現場まで動かす

さらに今回のニュースが興味深いのは、流行がSNSの中だけで終わっていないことです。

NHKの報道では、世界的な需要の高まりに対応してフィリピンの工場が生産を増やす一方、原料となるウベが不足していることも紹介されていました。

ここで以前取り上げた抹茶の話とつながります。

抹茶も海外での需要拡大によって、生産や供給にまで影響が及んでいます。

以前の記事では、抹茶需要の拡大を受けて中国でも碾茶の生産拡大が進んでいることや、日本でも抹茶需要に対応する動きについて取り上げました。

もちろん、抹茶とウベでは生産地も栽培方法も市場も異なるため、両者の供給問題が同じ原因だとはいえません。

ただ、共通して見えるのは、

ローカルな食材が注目される
↓
SNSなどを通じて世界的なトレンドになる
↓
需要が増える
↓
商品の増産が進む
↓
原料の生産・供給にも影響する

という流れです。

ここまで来ると、「SNS映えするドリンクが流行した」というだけの話ではありません。

デジタル上で生まれた世界的な食のトレンドが、農業や食品加工といったリアルな生産現場にも影響している。

今回のニュースで本当に興味深いのは、ここなのではないでしょうか。

■まとめ:「抹茶の次はウベ」ではなく「食の流行そのものが変わった」?

紫色のウベと緑色の抹茶。

「ウベ抹茶ラテ」は、一見するとSNS映えするカラフルなドリンクの流行に見えます。

しかし、その背景を追っていくと、もう少し大きな変化が見えてきます。

フィリピンで昔から親しまれてきた「ウベ」が、別の地域のカフェ文化の中で新しい姿にアレンジされ、そこへ世界的に人気となった日本の「MATCHA」が組み合わされる。

そしてSNSなどを通じて世界各地で注目され、需要が増えることで、その影響は原料を作る生産現場にまで及んでいます。

今回紹介されていた「ファッションフード」という考え方で見ると、

「抹茶の次はウベなのか?」

だけを考えるのでは少し足りないのかもしれません。

むしろ今回のウベ人気から見えてくるのは、

「食の流行そのものが変わってきている」

ということではないでしょうか。

一つの国で生まれた食文化がそのまま世界へ輸出されるのではなく、別の国の食材やカフェ文化と混ざり、新しいものに変化しながら世界各地で同時多発的に広がっていく。

そしてその流行が、実際の農業や食品生産まで動かしていく。

「ウベ抹茶ラテ」は、そんなSNS時代のファッションフードの生まれ方を象徴する一杯なのかもしれません。

■参考文献・参考記事

NHK:ウベ、ウベ抹茶ラテの世界的な流行に関する報道(2026年10月11日)
韓国のカフェを起点としたウベ人気、Z世代・SNS、健康志向、世界的な需要拡大、フィリピンでの増産・原料不足、「ファッションフード」という視点について参照。

macaroni「抹茶の次は『ウベ』!世界でブームが加速する紫スイーツが日本でもトレンドになる予感」(2026年6月9日)
ウベがフィリピンで親しまれてきた紫山芋(パープルヤム)であること、アイスやケーキなどに使われてきたこと、日本の紫芋やタロイモとは異なることなどを参照。

Businesia「次世代トレンドは比日融合?TikTokで話題の『ウベ・抹茶』の魅力」(2026年6月17日)
ウベと抹茶を組み合わせたメニューや、TikTokを中心としたウベ・抹茶の話題について参照。記事では、ジャカルタのカフェで紫・白・緑の3層からなるウベ・抹茶ラテの提供例も紹介されています。

TNCアジアトレンドラボ「ベトナムZ世代の間で大流行の新抹茶体験/『抹茶×ココナッツジュース』に注目!」(2025年3月25日)
ベトナムでの「抹茶×ココナッツジュース」とSNS・若者への広がりについて参照。

ハクライドウ「なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?」(2025年8月19日)
海外での抹茶人気と健康志向、SNS・カフェ文化、抹茶需要拡大と生産・供給への影響などについて参照。
ハクライドウの記事を読む







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鶏の生レバーで食中毒が話題に|「新鮮なら大丈夫」は本当?カンピロバクターとギラン・バレー症候群のリスク

2026年10月10日、Xで「鶏の生レバーを食べて食中毒になった」という投稿が話題になっています。

投稿では、

「鶏の生レバーって、法的・保健所的に良かったんでしたっけ?」

という疑問も投げかけられており、「鶏レバーの生食は法律的にはどうなの?」「新鮮な鶏なら大丈夫なの?」といった議論が広がっています。

話題になっているXの投稿

※個別の食中毒については原因食品や原因菌が公的に確定された情報を確認できていないため、この記事ではこの投稿そのものの原因を断定せず、一般的な「鶏レバーの生食とカンピロバクター」のリスクについて紹介します。

■鶏の生レバーは法律で禁止されているの?

ここは少しややこしいポイントです。

牛レバーは2012年7月から、食品衛生法に基づいて生食用として販売・提供することが禁止されています。また豚肉や豚レバーなどの内臓も、2015年6月から生食用として販売・提供することが禁止されています。

では鶏肉はどうなのでしょうか?

東京都保健医療局は、

「鶏肉には、生食用の基準はありませんが、加熱調理が前提です」

と説明しています。また、鶏肉については牛レバーや豚肉と同じような法規制はないものの、カンピロバクターやサルモネラなどの食中毒菌が検出されているため、生や加熱不十分な状態で食べると食中毒のリスクが高まると注意喚起しています。

つまり、

「牛・豚のような生食禁止の法規制がない」ことと、「生で食べても安全」はまったく別の話

なのです。

■「新鮮な鶏レバーなら大丈夫」ではない

今回の話題からもう一つ押さえておきたいのが、

「新鮮=生で食べても安全」ではない

ということです。

農林水産省は鶏肉やレバーなどについて、

「新鮮だから安全」とは限りません

と注意喚起しています。

カンピロバクターは生きた鶏などが保菌している場合があるため、鶏肉や内臓は「新鮮だから生で食べられる」とは限りません。

これは肉の腐敗とは違う問題だからです。

見た目やにおいから「新鮮だから大丈夫そう」と判断できるものではありません。

■鶏レバーで注意したい「カンピロバクター」とは?

鶏の生食で特に問題になる細菌の一つがカンピロバクターです。

厚生労働省によると、カンピロバクター食中毒は日本の細菌性食中毒の中で近年発生件数が最も多く、年間約200件、患者数1,000~2,000人程度で推移しています。

原因として強く示唆されているのが、

生の鶏肉
加熱不足の鶏肉
調理中の二次汚染

などです。

2025年に国内で発生したカンピロバクター食中毒でも、鶏肉が疑われた原因食品には、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品が含まれていました。

■カンピロバクター食中毒になるとどんな症状が出る?

厚生労働省によると、主な症状は、

下痢
腹痛
発熱
悪心
吐き気・嘔吐
頭痛
悪寒
倦怠感

などです。

また、食べてすぐ症状が出るとは限らず、一般的な潜伏期間が1~7日間と比較的長いことも特徴です。多くの患者は1週間ほどで治癒するとされています。

そのため、食中毒が起きた際に「直前に食べたもの」だけが必ずしも原因とは限らない点にも注意が必要です。

■食中毒だけではない。ギラン・バレー症候群との関係

そして、ハクライドウで以前から取り上げてきたのがここです。

カンピロバクター感染の後に、ギラン・バレー症候群を発症する場合があることが知られています。

厚生労働省は、カンピロバクターに感染した数週間後に、

手足の麻痺
顔面神経麻痺
呼吸困難

などを引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があると説明しています。

食品安全委員会も、カンピロバクター感染後にまれにギラン・バレー症候群を発症することがあるとして注意喚起しています。

ハクライドウでも以前、ギラン・バレー症候群について取り上げた際に、

生の鶏肉によるカンピロバクター食中毒がきっかけになる場合がある

ことを紹介しました。過去記事では厚生労働省の資料を基に、感染後に筋力低下やしびれなどが現れることについても紹介しています。

→ 過去記事:ギラン・バレー症候群について

今回の鶏レバーの話は、単に「お腹を壊すかもしれない」という話だけではないわけです。

■では鶏レバーはどうやって食べればいい?

結論はシンプルです。

中心部まで十分に加熱することです。

厚生労働省は、鶏肉について中心部を75℃で1分間以上加熱することを食中毒予防として案内しています。

農林水産省も、鶏レバーを含む鶏肉・内臓について、中心部まで十分に加熱するよう呼びかけています。

また家庭で鶏肉を扱う場合には、肉そのものの加熱だけではなく、

生の鶏肉を他の食材に触れさせない
生肉を扱った調理器具を適切に洗浄・消毒する
生の鶏肉を触った後は手を洗う
生肉をつかむ器具と加熱後の食品を扱う器具を分ける

といった二次汚染対策も重要です。

さらに農林水産省は、鶏肉を洗った際の水はねによって、周囲の食材やキッチンが食中毒菌で汚染される可能性があるとして、鶏肉を洗わないことも呼びかけています。

■まとめ|「禁止されていない」と「安全」は別の話

今回の話題で一番重要なのは、この点ではないでしょうか。

「法律で禁止されていないのだから安全なのでは?」

と思ってしまいがちですが、食品安全では、

法的に禁止されているか

と

健康上のリスクがあるか

は分けて考える必要があります。

鶏肉には牛レバーや豚肉と同様の生食禁止の法規制はありませんが、東京都保健医療局は「加熱調理が前提」と説明しています。

そして厚生労働省は、鶏レバーやささみの刺身、鶏肉のタタキ、鶏わさなどをカンピロバクター食中毒との関連で挙げています。

さらに重要なのは、

「新鮮だから安全」でもありません。

農林水産省も明確にこの点を注意喚起しています。

そしてカンピロバクター感染は、腹痛や下痢などの食中毒症状だけでなく、感染から数週間後にギラン・バレー症候群を発症する場合もあります。

「新鮮だから大丈夫そう」

「お店で出てきたから大丈夫だろう」

ではなく、

鶏肉や鶏レバーは中心部までしっかり加熱して食べる。

これが最も大切な食中毒対策です。

【参考資料】

厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」

農林水産省「鶏料理を楽しむために~カンピロバクターによる食中毒にご注意を!」

食品安全委員会「カンピロバクターによる食中毒にご注意ください」

厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう」

ハクライドウ・過去記事「ギラン・バレー症候群」







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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単発の健康情報やレシピの話ではありません。

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「何を食べるか」よりも
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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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脂質を糖質より先に摂ると食後血糖が緩やかに 「食べる順番」の仕組みを京大などがマウスで解明/なぜ「食べる順番」で血糖値が変わる?

「野菜から先に食べると血糖値が上がりにくい」

いわゆる「ベジファースト」という食べ方を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?

一時期は「食べる順番ダイエット」として紹介されることもありました。

しかしその後、ベジファーストについては、

「野菜から食べれば痩せる」

「とにかく野菜を最初に食べればいい」

といった形で、本来の研究結果よりも単純化されて広まってしまったという指摘も出ています。

ハクライドウでも以前、糖尿病診療ガイドライン2024や食事摂取基準から削除された!?ベジファーストは本当に意味がないの?という記事で、この問題を取り上げました。

では「食べる順番」そのものには意味がないのでしょうか?

実はそう単純ではなさそうです。

2026年10月、京都大学などの共同研究グループが、脂質を糖質より先に摂るとなぜ食後血糖の上昇が緩やかになるのかについて、その仕組みをマウスで詳しく調べた研究を発表しました。

ポイントになったのは「野菜」ではなく、

胃から腸へ食べ物を送り出すスピード

でした。

■「ベジファースト」から「炭水化物を最後に」へ

そもそも「ベジファースト」という言葉からは、

野菜を最初に食べることが重要

という印象を受けます。

ところが、話はもう少し複雑です。

以前の記事で紹介した2020年版「日本人の食事摂取基準」では、食物繊維に富んだ野菜を先に食べることで食後血糖の上昇を抑えたという報告が紹介される一方、野菜だけではなく、タンパク質などの主菜を先に摂り、その後に炭水化物を食べることでも食後血糖上昇が抑制されたという報告が紹介されていました。

つまり、

「野菜を最初に食べる」

という見方だけではなく、

「炭水化物を最後に食べる」

という見方もできるわけです。

■魚や肉を先に食べても血糖値の上昇が緩やかになる?

ハクライドウでは以前、魚や肉を米より先に食べる研究についても紹介しています。

この研究では、魚や肉を米より先に食べることで、食後血糖の上昇が抑えられました。

興味深いのは、すでにこの段階で「胃排出」が重要なポイントとして登場していることです。

食べる順番によってGLP-1やGIPといったインクレチンの分泌が促され、胃の運動が緩やかになり、胃で消化された米飯が小腸へ移動するまでの時間が延長したことが報告されています。

ここから考えると、

「野菜に特別な力があるから」ということだけでなく、炭水化物より先に一定の食品を食べることで、胃腸やホルモンが反応し、その後に入ってくる糖質の吸収のされ方が変わるのではないか?

という疑問が出てきます。

■「脂質を先に食べる」という考え方

さらにハクライドウでは、脂質起動とは?/脂質を先に摂ることで血糖値の上昇を抑える/脂質をとる食事ほど、逆に血中中性脂肪が下がりやすくなる!?という記事でも、「脂質を糖質より先に摂る」という考え方を取り上げています。

ここで一つ面白い疑問が出てきます。

サラダを食べるとき、野菜だけを食べる人ばかりではありません。

たとえば、

野菜+オリーブオイルを使ったドレッシング

を食べてから、ご飯やパンを食べることがあります。

そう考えると、「ベジファースト」で観察される現象のすべてを野菜だけに帰属させるのではなく、一緒に食べる食品や栄養素、その後に炭水化物を食べることなどを含めて考える必要がありそうです。

以前の記事でも、この「脂質を先に摂る」可能性について触れていました。

そして今回、その疑問を考えるうえで非常に興味深い研究が発表されました。

■オリーブ油をブドウ糖より先に与えるとどうなる?

京都大学などの研究グループは、マウスを使って、

オリーブ油 → ブドウ糖

という順番で与えた場合と、

ブドウ糖 → オリーブ油

の場合などを比較しました。

すると、オリーブ油をブドウ糖より先に与えたマウスでは、胃から腸へ内容物を送り出す「胃排出」が遅くなり、糖負荷後早期の血糖上昇が抑えられました。

またこのとき、グルカゴン、GIP、GLP-1の分泌増加も観察されています。

これを一般の人にもわかりやすくすると、

オリーブ油を先に摂る

↓

体が脂質を感知してホルモンなどが反応

↓

胃から腸へ送り出すスピードが遅くなる

↓

後から入ってきた糖が一気に腸へ届きにくくなる

↓

糖負荷後早期の血糖上昇が緩やかになる

というイメージです。

つまり今回の研究で注目したいのは、

血糖値は「糖を処理する能力」だけでなく、「糖がどのくらいのスピードで腸へ到達するか」によっても変わる

という点です。

■カギを握っていた「グルカゴン」と「GLP-1」

ここから研究者は、さらに詳しく仕組みを調べました。

オリーブ油を先に与えることで増加したホルモンのうち、特に研究されたのが、

グルカゴンとGLP-1

です。

GLP-1は糖尿病や肥満症の治療薬との関連から、耳にする機会が増えたホルモンです。

一方のグルカゴンは一般的に、

「血糖値を上げるホルモン」

と説明されます。

そのため、

「グルカゴンが増えたら血糖値が上がるのでは?」

と思うかもしれません。

しかし今回のマウス研究では、グルカゴンとGLP-1が胃排出の調節にも関係することが示されました。

■グルカゴンとGLP-1はお互いを補っていた

さらに興味深い実験があります。

GLP-1受容体を欠損したマウスでは、オリーブ油を先に与える効果は大部分が保たれました。

また、グルカゴンまたはGLP-1の受容体のどちらか一方だけを遮断した場合でも、効果はおおむね保たれました。

ところが、両者の受容体シグナルを同時に遮断すると、血糖上昇を抑える効果が弱まり、胃排出を遅らせる効果が検出されなくなりました。

研究者らは、この結果から両者が部分的にお互いを補いながら働いていると考えています。

つまり、

GLP-1だけ

あるいは、

グルカゴンだけ

という単純な仕組みではなかったわけです。

■さらに「迷走神経」も関わっていた

話はホルモンだけでは終わりません。

研究者がマウスの横隔膜下の迷走神経を両側で結紮(けっさつ;管をしばって内容物が通らないようにすること。)したところ、グルカゴンやGLP-1の分泌は維持または増強されたにもかかわらず、オリーブ油による胃排出の遅延と血糖上昇の抑制効果は弱くなりました。

つまり今回見えてきたのは、

脂質

↓

グルカゴン・GLP-1など

↓

迷走神経も関与

↓

胃排出を調節

↓

食後血糖の上がり方が変わる

という、ホルモンと神経が連携した仕組みです。

食べ物は単に「カロリー」や「糖質○g」として体に入っているわけではありません。

何をどの順番で食べたかによって、胃、腸、ホルモン、神経の反応まで変わる可能性があるというところが、この研究の面白いところではないでしょうか。

■では「ベジファースト」は間違いだったの?

ここで再びベジファーストに戻ってみましょう。

ベジファーストをめぐっては、

「ガイドラインなどから消えたのだから意味がなかった」

と理解してしまうのも、

「野菜を最初に食べれば痩せられる」

と理解してしまうのも、どちらも話を単純化しすぎています。

ハクライドウの過去記事で確認したように、2020年版「日本人の食事摂取基準」ではベジファーストに関連する研究は「推奨」というより研究報告として紹介されていました。

その後の2025年版では「2-9 食事摂取パターン(eating pattern)とシフトワーカー」の章立て自体が削除されています。

したがって、「ベジファーストが間違いと判明したため削除された」と解釈するのは適切ではありません。

一方で、

食べる順番によって食後血糖が変わる現象

について研究が終わったわけでもありません。

今回の研究はむしろ、その先にある

なぜ順番によって血糖値が変わるのか?

を掘り下げています。

■「ベジファースト」より「カーボラスト」?

ここまでの研究を並べてみると、見方が少し変わってきます。

野菜を先に食べる

ということだけに注目するより、

炭水化物の前に何を食べるか

あるいは、

炭水化物を食事のどこに配置するか

という視点です。

たとえば、

サラダ+オリーブオイル
→ 肉や魚などのおかず
→ ご飯

という普通の食事を考えてみます。

ここには、

野菜
食物繊維
脂質
タンパク質
炭水化物を後にする

という複数の要素があります。

だから「ベジファースト」という一言だけでは、この食べ方によって体内で起こっていることを全部説明できないのかもしれません。

■「オリーブオイルを食前に飲もう」という研究ではありません

ただし、ここは非常に重要です。

今回の研究はマウスを使った実験です。

したがって、

「人間も食事の前にオリーブオイルを飲めば血糖値が下がる」

と今回の研究だけから結論づけることはできません。

論文でも、今回の知見を踏まえて人間における食事の順序を評価していくことが示されています。

まして、

オリーブオイルを飲めば痩せる

という研究でもありません。

ここは、かつて「食後血糖」という話だったベジファーストが「ダイエット法」として独り歩きしたことを考えても、注意したいところです。

■まとめ 「○○ファースト」から「食事全体の順番」へ

ベジファーストの話を振り返ってみると、私たちの「食べる順番」に対する理解は少しずつ変わってきたように見えます。

最初は、

「野菜を先に食べよう」

という非常にわかりやすいメッセージでした。

しかし研究を見ると、

野菜 → 炭水化物

だけではなく、

肉・魚 → 炭水化物

や、

脂質 → 炭水化物

についても研究されています。

そして今回のマウス研究では、その背景の一つとして、

グルカゴン・GLP-1・迷走神経
→ 胃排出の調節
→ 食後早期の血糖上昇の変化

というメカニズムが示されました。

大切なのは「野菜が最初」「油が最初」という新しいルールを作ることではないのかもしれません。

むしろ、

食事は「何を食べるか」だけではなく、「何と組み合わせ、どの順番で食べるか」によっても体の反応が変わりうる。

そんなふうに「食べる」という行為全体を考えることが、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。

【参考文献・参考記事】







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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もし、

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糖尿病予備群はみんな同じではない?日本人男性を3タイプに分けると発症リスクに約10倍の差

「糖尿病予備群」と言われたら、何をすればいいのでしょうか?

食生活を見直す。
運動する。
体重を減らす。

これまで、「糖尿病になる前」の段階から生活習慣を見直すことの重要性を紹介してきました。

さらに、「生活習慣を変えたほうがいい」と分かっていても、一人で続けるのは難しいため、電話などを通じて継続的に支援することが糖尿病予防につながるのではないかという研究も紹介してきました。

ところが今回、これまでの考え方をもう一歩進める興味深い研究が発表されました。

実は、同じ「糖尿病予備群」でも、みんな同じ状態ではないのではないか?

日本人男性の糖尿病予備群を分析した研究では、BMI、空腹時血糖値、ALT、non-HDLコレステロールという4つの指標から、特徴の異なる3つのグループが見いだされました。

しかも、その後の2型糖尿病の発症しやすさには大きな差がありました。

つまり、「糖尿病予備群だから生活習慣改善」というところからさらに進んで、

「その人がどんな特徴を持つ糖尿病予備群なのかを見る」

ことが重要になる可能性があるのです。

研究のもとになったのは「J-DOIT1」

今回発表されたのは、

Identification of distinct metabolic subtypes among Japanese men with prediabetes: a data-driven cluster analysis from the J-DOIT1 study

という研究です。

「Diabetology International」に2026年7月に掲載されました。

実は、まったく新しい人たちを集めて行った研究ではありません。

使われたのは、糖尿病予防研究「J-DOIT1」のデータです。

そして、このJ-DOIT1はハクライドウでも以前取り上げています。

2021年に「糖尿病予備軍に電話で予防のアドバイスを続けることで発症率が4割下がる」という記事を紹介していました。

当時の記事では、減量が順調でなければ励ます、長続きする運動法を一緒に考える、食生活改善を勧めるといった電話支援について紹介しています。

今回の論文は、同じJ-DOIT1を「糖尿病予備群の中にも異なるタイプが存在するのでは?」という別の視点から再分析した研究なのです。

ここが今回の研究の面白いところです。

■健診でもおなじみの4項目から分類

今回の分析対象は、J-DOIT1に参加した人のうち、空腹時血糖値100~125mg/dLだった日本人男性2,172人です。

研究者らが分類に使ったのは次の4項目です。

・BMI
・空腹時血糖値(FPG)
・ALT
・non-HDLコレステロール

特別な最先端検査ばかりではありません。

健康診断などで目にすることのある指標です。

研究者らは、この4項目を標準化してk-meansクラスター分析を行い、3つのグループを見いだしました。

■糖尿病予備群は3つのタイプに分かれた

第1群「Metabolically resilient」

1,149人が分類されました。今回使われた代謝指標から、研究では「metabolically resilient phenotype(MRP)」とされています。

第2群「肥満・インスリン抵抗性型」

581人。

肥満やインスリン抵抗性を特徴とするグループ(OFIP)です。

第3群「非肥満・高血糖型」

442人。

第2群とは異なり、非肥満でありながら高血糖を特徴とするグループ(NOHP)です。

そして5年間の糖尿病非発症生存を調べると、3群には大きな違いが現れました。

■糖尿病発症率は0.70%、2.73%、6.73%

年間の2型糖尿病発症率は、

第1群:0.70%
第2群:2.73%
第3群:6.73%

でした。

さらに第1群を基準として比較すると、調整後ハザード比は、

第2群 3.95(95%CI 2.64~5.92)

第3群 9.81(95%CI 6.75~14.26)

となりました。

同じ「糖尿病予備群」とされた人たちなのに、その後の糖尿病への進みやすさは同じではなかったわけです。

■一番リスクが高かったのは「肥満型」ではなかった

ここで注目したいのは、第3群です。

今回最も糖尿病発症リスクが高かったのは、肥満・インスリン抵抗性型ではなく「非肥満・高血糖型」でした。

糖尿病というと、

「太っている人が注意する病気」

というイメージを持っている人もいるかもしれません。

しかし今回の研究結果を見る限り、少なくともこの日本人男性の集団では、肥満だけを見て糖尿病への進みやすさを判断できないことが分かります。

「太っていないから自分は大丈夫」と考えるのではなく、血糖値などの検査結果にも目を向けることが重要だと考えさせられる結果です。

■ここで「電話による生活習慣支援」の話が面白くなる

さらに今回の研究では、生活習慣への介入との関係も分析されています。

すると第2群の「肥満・インスリン抵抗性型」では、生活習慣介入による糖尿病発症リスクの有意な低下がみられ、ハザード比は0.59(95%CI 0.36~0.97)でした。

一方、今回の研究では有意なリスク低下が確認されたのは第2群でした。

ここは非常に重要です。

第1群や第3群では「生活習慣改善が無意味だった」という意味ではありません。

今回の解析では、統計学的に明確な差として示されたのが第2群だった、ということです。

研究者らも、肥満や脂質異常と関連したインスリン抵抗性を持つ人では、ターゲットを絞った生活習慣介入が特に有効である可能性を指摘しています。

■昔のJ-DOIT1研究が、新しい意味を持ってきた

ここでハクライドウの過去記事に戻ってみましょう。

J-DOIT1の原研究では、参加者を介入群と対照群に分け、介入群では1年間に3回、6回、10回という異なる頻度で電話による生活習慣支援が行われました。両群には体重計や歩数計なども提供されています。

興味深いことに、介入群全体で見ると、5.5年間における2型糖尿病発症のハザード比は1.00(95%CI 0.74~1.34)で、介入群全体について糖尿病発症が減少したとはいえませんでした。

一方、最も頻繁に電話支援を受けたサブグループでは、対照群に比べてハザード比0.59(95%CI 0.42~0.83)でした。

ハクライドウが2021年に紹介した「発症率が4割下がる」という話は、この高頻度電話支援グループについての結果でした。実際、当時の記事でも「1年間に10回電話を受けたグループ」と紹介しています。

そして今回、そのJ-DOIT1のデータを別の角度から分析したことで、

「どんな特徴を持った人に生活習慣支援の効果が表れやすいのだろう?」

という、さらに一歩進んだ問いが見えてきたのです。

■糖尿病予防研究は「個別化」の方向へ?

こうして研究の流れを追ってみると興味深いことが分かります。

これまでの考え方は、

糖尿病予備群を見つける
↓
生活習慣を改善する
↓
それを続けられるように支援する

というものでした。

今回の研究によって、そこにもう一段加わります。

その人は「どんな特徴を持つ糖尿病予備群なのか」を見る

という考え方です。

これは、「糖尿病予備群にこの方法を行えばいい」と一律に考えるのではなく、その人自身の特徴に応じて予防を考える方向につながっていくのかもしれません。

■ただし「私は第3群だ」と自己診断しない

ここは今回の記事で必ず押さえておきたいところです。

今回の3分類は、医療現場で「あなたは第2群です」「あなたは第3群です」と診断するために作られた分類ではありません。

研究者が4項目を標準化し、統計的なクラスター分析によって見いだした分類です。

さらに対象は日本人男性2,172人です。

したがって、女性や他の集団でも同じ3分類、同じリスク差がそのまま当てはまるとは、この研究からは判断できません。

まして、

「第3群だから糖尿病になる」

「第1群なら安心」

というものでもありません。

あくまで、この研究集団の中で見いだされたリスクの違いです。

「糖尿病予備群」は、一つの大きな箱の名前なのかもしれない

今回の研究を一般の人向けに考えるなら、私はこのイメージが一番分かりやすいと思います。

■「糖尿病予備群」は、一つの大きな箱の名前なのかもしれない。

同じ箱に入っていても、中には違う特徴を持った人がいる。

体格が違う。

血糖値が違う。

脂質の状態が違う。

そして、その違いによって、その後の糖尿病への進みやすさも違う可能性がある。

今回の研究では、それをBMI、空腹時血糖値、ALT、non-HDLコレステロールという4つの指標から示しました。

だからといって、

「これまで言われてきた生活習慣改善は意味がなかった」

ということではありません。

むしろ逆です。

糖尿病になる前に気づく。
生活習慣を見直す。
一人で続けにくいなら支援する。
そしてこれからは、その人がどのような特徴を持っているのかも考える。

糖尿病予防の考え方が、少しずつ精密になってきたと捉えるとよいのではないでしょうか。

「糖尿病予備群だから、とにかく痩せましょう」という一律の考え方から、

「この人の場合、何を重点的に見て、どんな支援をすればいいのだろう?」

という個別化された糖尿病予防へ。

今回の研究は、その可能性を考えさせてくれる研究ではないでしょうか。

→ 糖尿病の症状(初期症状)チェック について詳しくはこちら

【参考文献】

Sakane N, Takahashi K, Domichi M, Suganuma A, Kuzuya H. Identification of distinct metabolic subtypes among Japanese men with prediabetes: a data-driven cluster analysis from the J-DOIT1 study. Diabetology International. 2026;17(3):62. doi:10.1007/s13340-026-00917-2. 日本人男性2,172人をBMI、空腹時血糖値、ALT、non-HDLコレステロールを用いて3つの代謝サブタイプに分類し、その後の2型糖尿病発症との関連を分析した今回の原著論文です。
Springer Natureの原著論文

Sakane N, Kotani K, Takahashi K, et al. Effects of telephone-delivered lifestyle support on the development of diabetes in participants at high risk of type 2 diabetes: J-DOIT1, a pragmatic cluster randomised trial. BMJ Open. 2015;5:e007316. doi:10.1136/bmjopen-2014-007316. 1年間の電話による生活習慣支援と、その後の2型糖尿病発症について調べたJ-DOIT1の原報です。
BMJ Openの原著論文

【関連記事】

ハクライドウでは2021年に、J-DOIT1について「糖尿病予備軍に電話で予防のアドバイスを続けることで発症率が4割下がる」という記事を掲載しています。今回確認すると、この「4割」はJ-DOIT1全体ではなく、1年間に10回という高頻度の電話支援を受けたサブグループについての結果として理解するのがより正確です。

ハクライドウの過去記事を読む







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