「しっかり食べているのに疲れが取れない」「年齢とともに将来の認知症や生活習慣病が心配……」。
その原因、体内で静かに進行する「慢性炎症」かもしれません。
ハーバード公衆衛生大学院などが提唱する「抗炎症食」をベースに、最新の研究で判明した「臓器老化の転換点」や「和食の弱点を補う食事術」、さらに注目の抗炎症栄養素(タウリン・亜鉛・オメガ3)までを一挙に解説します。
慢性炎症は、認知症、糖尿病、うつ病、さらには臓器の老化など、多くの健康問題に共通して関わる重要な因子として注目されています。
■慢性炎症が引き起こす全身・臓器への影響
●臓器老化の波(30代・50代の転換点)
全身の臓器が一律に老けるのではなく、30代でまず血管や消化管、卵巣などの変化が始まり、50代に入るとさらに多くの臓器で老化が加速する傾向があることが報告されています。
この背景にも、微小な慢性炎症の蓄積が関与していると考えられています。
●認知機能・うつ病との関連
・認知症リスク
炎症を促進する食事(精製炭水化物、赤身肉・加工肉、清涼飲料水など)を多く摂る人は、認知症の発症リスクが高まるという研究結果があります。
・うつ病と腸・環境
うつ病は単なる「脳の神経伝達物質の不均衡」だけでなく、腸内細菌叢の乱れや環境要因によって全身や脳内に引き起こされる炎症反応も、要因の一つとして注目されています。
●女性ホルモン(エストロゲン)の減退
エストロゲンには抗炎症作用があります。
閉経に伴いエストロゲンが減少すると、体内の慢性炎症が広がりやすくなり、生活習慣病や骨粗鬆症などのリスクが高まる可能性が指摘されています。
■ハーバード流「抗炎症食」×「地中海式+和食」のアップデート
ハーバードが推奨する抗炎症食の基本は、「炎症を抑える食材を増やし、炎症をあおる食材を減らす」ことです。
これを日本の食生活に落とし込む際のポイントは以下の通りです。
●推奨される食品(抗炎症)
・主食・穀物
玄米、雑穀、全粒粉パン、オートミール
・油脂類
エキストラバージンオリーブオイル、魚油(EPA/DHA)、アマニ油(非加熱で)
・タンパク質
青魚(サバ・イワシなど)、大豆製品、鶏肉
・野菜・果物
緑黄色野菜、葉物野菜、ベリー類、柑橘類、トマト
→ アブラナ科の野菜 について詳しくはこちら
・その他
ナッツ類、豆類、緑茶、コーヒー、ダークチョコレート(カカオ70%以上)、スパイス(ターメリック・生姜など)
●控えるべき食品(前炎症)
・主食・穀物
白米(多量)、精製小麦製品、砂糖入りパン
・油脂類
マーガリン、ショートニング、トランス脂肪酸を含む加工油脂、過剰な飽和脂肪
・タンパク質
赤身肉(牛肉・豚肉の過剰)、加工肉(ハム・ソーセージなど)
・飲料・加工食品
清涼飲料水、人工甘味料を多く含む加工品
・その他
アルコールの過剰摂取、超加工食品
■「和食」の弱点を「地中海式」で補う
「和食=健康」というイメージは強いですが、抗炎症の観点からは主に次の3つの弱点が指摘されています。
和食が抱える3つの弱点
●塩分の多さ(高血圧や炎症を促しやすい)
●精製白米による高GI(食後高血糖や糖化反応を招きやすい)
●現代の日本の食生活では、使う油の種類や量を見直す余地がある
日本の食生活には魚からEPA・DHAなどのn-3系脂肪酸を摂るという強みがあります。そのため、「日本人にはオリーブオイルが不足している」と単純に考える必要はありません。魚や大豆などを生かしながら、料理によってナッツ類やオリーブオイルなどを取り入れるのも一つの選択肢です。
伝統的な和食が悪いという意味ではありません。現代の日本人の食生活を考えた場合に、改善できるポイントがあるという意味で「弱点」と表現しています。
今日からできる「和食×地中海式」3つのアップデート
伝統的な和食の長所(魚、発酵食品、大豆製品)を活かしつつ、
●主食を未精製穀物(玄米・雑穀)に変える
●調理油にエキストラバージンオリーブオイルを取り入れる
●減塩を意識する
といった工夫を加えることで、より抗炎症に適した食事にアップデートできます。
白米を完全にやめる必要はありません。献立や好みに合わせて、玄米やもち麦、雑穀などを取り入れ、主食の選択肢を増やしてみましょう。
白米そのものだけを見るのではなく、ごはんと一緒に魚、大豆製品、野菜、海藻など何を食べるかという「食事全体」で考えることが大切です。
■注目すべき抗炎症・抗糖化栄養素の役割
食事のベースを整えた上で、特定の栄養素が炎症や酸化・糖化の抑制に役立つ可能性があります。
●タウリン(抗炎症・抗酸化)
タウリンは抗炎症・抗酸化作用が報告されており、細胞の酸化ストレスを緩和したり、炎症性サイトカインを抑える働きが研究されています。また、AGEs(糖化最終生成物)の生成を抑える可能性を示す報告もありますが、まだ研究途上の部分もあります。
→ タウリンの多い食べ物 について詳しくはこちら
●亜鉛(インスリン抵抗性と炎症の改善)
亜鉛はインスリンの合成・分泌や受容体の感度に関与しています。補給することで血糖値を劇的に下げるわけではありませんが、インスリン抵抗性の改善や体内の慢性炎症レベルの低下に寄与することが、複数の研究で示されています。
→ 亜鉛を含む食べ物 について詳しくはこちら
■まとめ
慢性炎症を抑え、健康寿命を延ばすための基本は「ハーバード式の抗炎症食+地中海式の考え方を取り入れた和食」で日常の炎症レベルを低く保つことです。
その上で、必要に応じてタウリンや亜鉛、EPA/DHAなどの栄養素を意識すると、さらにサポートになる可能性があります。
30代や50代といった臓器老化の転換点を意識しながら、早期から食生活を整えていくことが大切です。
【補足】地中海食をそのまま日本に持ってくる必要はない
地中海食の研究で健康との関連が報告されているからといって、日本人がこれまでの食生活をやめて、地中海地域と同じ食事をする必要があるということではありません。
食事は一つの食品や栄養素だけで成り立っているものではありません。日本には、魚介類、大豆製品、野菜、海藻、発酵食品、ごはんなどを組み合わせてきた食文化があります。
だからこそ大切なのは、「和食か地中海食か」という二者択一ではなく、和食のよいところを生かしながら、現代の食生活で改善できる部分を他の食文化から学ぶことではないでしょうか。
例えば、生野菜やトマトをおいしく食べるためにオリーブオイルを使う。間食としてナッツを取り入れる。白米だけでなく、ときどき玄米やもち麦を選んでみる。
「健康にいい食品」を追加すること自体が目的なのではなく、無理なく、おいしく、続けられる食習慣につながるかどうかという視点も大切です。
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