コペンハーゲン大学病院のMette Christoffersenさんの研究によれば、眼瞼黄色腫は、虚血性心疾患や心筋梗塞あるいは死亡の予測因子となりうることが報告されています。
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眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)とは、上まぶたの目頭側にできる黄色味がかった平らな盛り上がりの病気で、徐々に大きくなり見た目が気になるものの、痛みなどはないため、これ自体にはそこまで気にする必要がないものですが、ただ今回の研究によれば、この眼瞼黄色腫が動脈硬化 のサインと考えられるそうです。
それはなぜ?
眼瞼黄色腫は虚血性心疾患、心筋梗塞、死亡の予測因子 (2020年11月15日、日経メディカル)
眼瞼黄色腫はまぶたのコレステロール沈着で、アテロームのようにコレステロールを吸収し泡沫細胞となっているマクロファージからできている。眼瞼黄色腫がある人の50%は血中脂質濃度が正常であることから、血しょう中のコレステロール濃度とは独立してアテローム性動脈硬化症の重要な皮膚マーカーとなることが示唆されている。
目頭に黄色いしこりのようなものがあること=動脈硬化が進んでいるサインの一つであるとすれば、動脈硬化が進むと心筋梗塞 や脳卒中 になるリスクが高まるわけですから、体に負担をかけることなく体の外側から見て見た目で病気を判断できる可能性があるということですね。
■虚血性心疾患のリスクを下げるには?
●食事からのマグネシウム摂取量が多いグループは虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の発症リスクが低い|#国立がん研究センター
食事からのマグネシウム摂取量と循環器疾患発症との関係(男性・女性)
参考画像:食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果- (2017/9/8、国立がん研究センター)|スクリーンショット
国立がん研究センターと国立循環器病研究センターの共同研究 によれば、食事からのマグネシウム摂取量と循環器疾患(脳卒中 及び虚血性心疾患)との関連を検討したところ、マグネシウム摂取量が多いグループは虚血性心疾患の発症リスクが低いことがわかったそうです。
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●魚、果物、大豆による循環器疾患の発症リスク
多目的コホート研究の先行研究では、魚、果物、大豆による循環器疾患の発症リスクの低下が報告されています。
魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連について |多目的コホート研究
魚を多く食べるグループで虚血性心疾患のリスクが低下
n-3系多価不脂肪酸摂取量が多いグループで虚血性心疾患のリスクが低下
多目的コホート研究によれば、魚やオメガ3脂肪酸 の摂取量が多いと、虚血性心疾患に予防的な効果があるということが示されています。
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野菜・果物と全がん・循環器疾患罹患との関連について |多目的コホート研究
果物で循環器疾患のリスク減
果物の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループより循環器疾患リスクが19%低いという結果が出ましたが、野菜と循環器疾患リスクとの関連はみられなかったようです。
イソフラボンと脳梗塞・心筋梗塞発症との関連について
大豆をよく食べる女性グループで脳梗塞・心筋梗塞のリスクが低下
大豆を週に5日以上摂取するグループで、週に0-2日摂取するグループに比べて、脳梗塞 のリスクが0.64倍、心筋梗塞のリスクが0.55倍、循環器疾患による死亡リスクが0.31倍と低いことがわかっています。
●なぜ喫煙によって虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)リスクが上がってしまうのか?
喫煙は、糖尿病 ・高血圧 ・脂質異常症 と並び、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞 )の4大危険因子の1つなのだそうです。
なぜ喫煙によって虚血性心疾患リスクが上がってしまうのでしょうか。
喫煙によって、直接血管の壁が傷害され動脈硬化 が促進されます。
それだけでなく、喫煙は、血清脂質に悪影響を及ぼし、善玉のHDLコレステロールを減少させ、悪玉のLDLコレステロールを増加させたり、ニコチンを介して血圧上昇させたりすることによって動脈硬化促進を助長させます。
また、フィブリノーゲンなどの凝固因子を増加させ、血小板の粘着及び凝集を高め血栓が形成されやすい(血が固まりやすい)状態となり、血管も収縮しやすくなるので、心筋梗塞の引き金となります。
血管がぼろぼろになる、血液がどろどろになるというのは、決して食事や運動などだけの問題ではないのです。
喫煙が健康への影響について記事の中から簡単にまとめてみました。
喫煙により虚血性心疾患のリスクは約3倍になるそうです。
また、1日の喫煙本数が多いほど心筋梗塞のリスクが増加することがわかったそうです。
逆に、禁煙すると、2年以内で虚血性心疾患の発症リスクが低下したそうです。
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■まとめ
他にもいろいろな病気のサインがあります。
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もちろん本格的に調べるためには血液検査などによる検査ではないとわかりませんが、どうしても血液検査には針を刺して採血することによる苦痛や何度も血糖値を測定しなければならないわずらわしさ、精神的ストレスなどが伴い、病気の治療に消極的になりがちです。
こうした研究が進むことで、非侵襲(生体を傷つけず、身体に負担を与えないこと)的なアイデアで、いろんなサインを総合的に見ることができれば、予防医学としてより積極的に取り組む人も増えていくのではないでしょうか?