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日本の子どもは本当にたんぱく質不足?平均身長の低下・学校給食・食事摂取基準から考える

日本人の若い世代の平均身長が低下していることをめぐって、SNSでは「子どものたんぱく質不足が原因ではないか」「学校給食の肉が少なすぎるのではないか」「そもそも日本の食事摂取基準に問題があるのではないか」といった意見を目にします。

「成長期なのだから、もっと肉や魚を食べさせたほうがいい」「身長を伸ばすために子ども用プロテインを飲ませたほうがいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。

確かに、たんぱく質は成長期の子どもにとって欠かせない栄養素です。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみたいと思います。

そもそも日本の子どもは、本当にたんぱく質が不足しているのでしょうか?

学校給食についても、単純に「肉が少ない」だけで評価することはできません。限られた給食費の中で、栄養士・管理栄養士が学校給食の栄養に関する基準などをもとに献立を考えています。

さらに、「日本人の身長」というところまで問題を広げるなら、子どもが現在食べているたんぱく質だけではなく、母親の妊娠前の体格や妊娠中の栄養、出生体重、そして子どもの成長期の栄養など、より長い時間軸で考える必要があります。

そこで今回は、「日本人の食事摂取基準」や「国民健康・栄養調査」などを手がかりに、日本の子どもは本当にたんぱく質不足なのかを考えてみます。さらに、日本のたんぱく質摂取基準は海外と比べて特殊なのか、という点についても確認します。

1. 日本人の食事摂取基準では、子どものたんぱく質はどれくらい必要?

まず、「日本の基準そのものが低いのでは?」という疑問から確認してみましょう。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1歳以上のたんぱく質について、推定平均必要量(EAR)、推奨量(RDA)、目標量(DG)が設定されています。

子どもの1日当たりのたんぱく質推奨量は次のようになっています。

年齢  男子 女子
1~2歳  20g 20g
3~5歳  25g 25g
6~7歳  30g 30g
8~9歳  40g 40g
10~11歳 45g 50g
12~14歳 60g 55g
15~17歳 65g 55g

さらに1~17歳では、総エネルギー摂取量に占めるたんぱく質の目標量が13~20%エネルギーとされています。

ここで区別しておきたいのが「推定平均必要量」と「推奨量」です。

推定平均必要量は母集団の50%が必要量を満たすと推定される量なのに対し、推奨量はほとんどの人、97~98%が充足すると考えられる量です。

したがって、推奨量は「これだけ摂らないと身長が伸びない」という数字でも、「これを上回れば上回るほど成長に有利」という数字でもありません。

2. 子どもは実際にどれくらいたんぱく質を摂っている?

では、日本の子どもたちは実際にどれくらいのたんぱく質を摂っているのでしょうか。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、年齢階級別にエネルギーやたんぱく質などの摂取量が調査されています。

また、国立健康・栄養研究所では、国民健康・栄養調査の結果を再集計し、たんぱく質、動物性たんぱく質、植物性たんぱく質、たんぱく質エネルギー比などについて、性・年齢階級別の経年データを公開しています。

ここで知りたいのは、前章で紹介した「推奨量」と実際の摂取量との関係です。

ただし、この二つを比較するときには注意が必要です。

日本人の食事摂取基準(2025年版)の「推奨量(RDA)」は、ある集団について不足している人の割合をそのまま示すための数字ではありません。

そのため、

「平均摂取量が推奨量を上回っている」=「日本の子どもにはたんぱく質不足の問題がない」

と単純に判断することはできません。

逆に、SNSで学校給食の写真などを見て、

「肉が少ない」=「日本の子どもはたんぱく質不足」

と判断することもできません。

集団として本当にたんぱく質不足が問題になっているのかを考えるには、「平均して何g食べているか」だけではなく、必要量を満たしていない子どもがどのくらいいるのかを見る必要があります。

また、平均値では見えにくい個人差もあります。

食事量が少ない子、偏食のある子、朝食を欠食する子など、食生活は一人ひとり違います。

国民健康・栄養調査は、日本人全体の栄養摂取状況を把握する上で重要な資料ですが、集団の平均値だけから個々の子どもの習慣的な摂取量や栄養状態まで判断することはできません。

したがって、現時点では、

「日本の子どもはみんなたんぱく質が足りている」

とも、

「日本の子どもはたんぱく質不足になっている」

とも、平均摂取量だけから結論づけるべきではないでしょう。

大切なのは、日本の子どもを一括りにするのではなく、集団として必要量を満たせているのかという問題と、個々の子どもが十分に食べられているのかという問題を分けて考えることです。

3. 「給食の肉が少ない」だけで学校給食を評価していい?

SNSでは学校給食の写真を見て、

「肉がこれだけしかない」

「これではたんぱく質が足りないのでは?」

といった意見が出ることがあります。

しかし、学校給食には「学校給食摂取基準」があります。

文部科学省は、学校給食摂取基準について、日本人の食事摂取基準の考え方に加えて、児童生徒の実際の食事調査などを勘案して、学校給食として望ましい栄養量を算出したものと説明しています。

たんぱく質については、給食による摂取エネルギー全体の**13~20%**が基準です。

また文部科学省は、肉だけではなく、穀類、野菜、豆類、魚介類、肉類、卵類、乳類など、多様な食品を適切に組み合わせることを求めています。

つまり、

肉の大きさ=給食のたんぱく質量

ではありません。

魚、卵、大豆・大豆製品、牛乳、そのほかの食品からもたんぱく質を摂取します。

また学校給食摂取基準は「全国的な平均値」であり、児童生徒の健康状態、生活活動、地域の実情などを考慮して弾力的に運用するものとされています。

もちろん、給食費や食材価格など現場の問題については別途検討する必要があります。

しかし、給食の写真で肉が小さく見えることだけから「栄養基準が間違っている」「子どものたんぱく質が不足している」と結論づけるのは難しいでしょう。

4. 日本人の平均身長低下を「たんぱく質不足」だけで説明できる?

ここが今回の問題の中心です。

日本人の平均身長が低下しているという話自体には、研究による裏付けがあります。

国立成育医療研究センターなどの研究では、1969~1996年生まれの成人身長を大規模に解析した結果、平均成人身長は1978~79年生まれで男性171.5cm、女性158.5cmをピークとして、その後20年間低下していました。

では、それは子どものたんぱく質不足が原因なのでしょうか?

この研究から直接その結論を出すことはできません。

むしろ研究チームが注目したのは出生体重でした。

低出生体重児の割合と、その年に生まれた子どもの平均成人身長には強い逆相関がみられ、研究チームは低出生体重児の増加が、日本人の平均身長低下の一因になっている可能性を示しています。

これは非常に重要なポイントです。

「最近の日本人が小さくなった → 子どものたんぱく質が足りない」

という一直線の因果関係だけで説明するのではなく、もっと前から考える必要があるわけです。

5. 母親の体格、妊娠期、出生体重まで遡って考える

子どもの身体の成長は、小中学生になってから始まるわけではありません。

厚生労働省の食事摂取基準も、ライフステージ初期について、胎内での栄養状態、乳児期の栄養状態、成長期の栄養状態に特段の配慮が必要としています。

国立成育医療研究センターの研究によると、日本では低出生体重児の割合が1970年代後半の5.1%から2007年には9.7%に増加しました。さらに、早産や胎児発育不全などによって低出生体重で生まれた子どもは、成人身長が低くなりやすいことが国内外の研究で示されているとしています。

したがって、日本人の平均身長の変化を考えるなら、

妊娠前 → 妊娠中 → 胎児期 → 出生 → 乳幼児期 → 成長期

という長い時間軸で考える必要があります。

少なくとも現在利用できる研究からは、日本人の平均身長低下を「学校給食の肉が少ないから」と一つの要因だけで説明するのは難しいと言えます。

6. 成長スパート期こそ「たんぱく質だけ」に注目しない

子どもの成長を考える上で、もう一つ重要なのが成長スパートです。

食事摂取基準を見ると、年齢とともに必要な栄養量も変化します。

例えば12~14歳のたんぱく質推奨量は男子60g、女子55gで、参照体重は男子49.0kg、女子47.5kgです。

ただし、身体を成長させるためにはたんぱく質だけを摂ればよいわけではありません。

食事摂取基準では、たんぱく質だけでなく、エネルギー、脂質、炭水化物、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンなど、それぞれについて基準が設けられています。

つまり成長期の問題を考える場合、

「肉を増やすべきか?」

だけを見るのではなく、

「成長に必要なエネルギーと栄養素を食事全体として確保できているか?」

という視点が必要になります。

7. 日本のたんぱく質基準は海外より低い?

ではSNSで出てくるもう一つの疑問、

「そもそも日本の食事摂取基準が低すぎるのではないか?」

について海外と比較してみましょう。

欧州食品安全機関(EFSA)は、乳児・子ども・青少年について、年齢に応じて体重1kg当たり1日0.83~1.31gのたんぱく質をPopulation Reference Intake(PRI)として設定しています。

より細かく見ると、EFSAの値は3歳0.90g/kg/日、8歳0.92g/kg/日、男子12歳0.90g/kg/日、女子12歳0.89g/kg/日など、年齢・性別によって設定されています。WHO/FAO/UNUの基準も併記されており、同程度の範囲です。

米国のDRIも、年齢・性別によってたんぱく質の基準を設定しています。NIHはRDAを「ほぼすべて(97~98%)の健康な人の必要量を満たす1日平均摂取量」と説明しています。

子どもの基準値の算出方法については議論もあり、あるレビューでは、現在の米国DRIは4~13歳0.95g/kg/日、14~18歳0.85g/kg/日としながら、新しい測定方法による研究ではより多い必要量を示唆するものもあると紹介しています。一方で、現時点では既存の推定値を覆すだけの公表データは十分ではないとも結論づけています。

このように、日本と海外では年齢区分や表示方法などに違いがあります。

したがって、

「海外より日本の基準が低いから、日本の子どもが小さくなっている」

と現時点の比較だけから結論づけることはできません。

むしろ、日本の基準そのものが特殊なのかという疑問については、海外基準と同じ土俵にそろえて慎重に比較する必要があります。

これは、今回の記事から出てくる重要な論点だと思います。

8. 子ども用プロテインを追加する必要はある?

ここまで見てくると、

「だったら念のためプロテインを飲ませておけばいいのでは?」

という疑問も出てきます。

しかし、ここでも順序が重要です。

まず確認すべきなのは、その子の普段の食事です。

肉だけでなく、

魚
卵
牛乳・乳製品
大豆・大豆製品
穀類

などさまざまな食品から、私たちはたんぱく質を摂取しています。学校給食についても、文部科学省は多様な食品を適切に組み合わせることを求めています。

また、「推奨量」は「摂れば摂るほど成長する量」ではありません。

子どもの食事を考えるときには、単一の栄養素だけを増やすより、

エネルギーを十分に摂れているか、食事全体のバランスはどうか

を見ることが先になります。

偏食や食事量の少なさなどで栄養状態に心配がある場合や、成長について具体的な懸念がある場合は、「身長のためにプロテインを追加する」と自己判断するのではなく、小児科医や管理栄養士などに相談して、その子の成長や食生活全体から考えた方がよいでしょう。

9.個人の努力だけでなく「自然と栄養をとれる環境」も大切

ここまで、子どもの成長を「たんぱく質」という一つの栄養素だけで考えるのではなく、食事全体や出生前からの長い時間軸で考えてきました。

しかし、もう一つ考えておきたいのが、健康を個人や家庭の努力だけに任せない仕組みです。

例えばアメリカでは、小麦粉など日常的に食べる食品に鉄や葉酸などを加える「栄養強化」という考え方があります。以前ハクライドウでも「鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!」という記事で取り上げました。

こうした考え方の興味深いところは、「鉄を摂らなければ」と一人ひとりが意識し続けなくても、普段食べる食品を通じて必要な栄養素を摂取しやすくすることです。

子どもの健康や成長を考える場合も、「何を食べさせるべきか」という家庭への働きかけだけでなく、普通に生活していても必要な栄養素を摂りやすい食品環境をどうつくるか、という視点があってもいいのではないでしょうか。

子どもの成長を支えるには、家庭の食事だけでなく、学校給食や食品の栄養強化など、社会全体で栄養を支える仕組みについて考えることも必要なのかもしれません。

まとめ|「給食の肉が少ない→日本人の身長が低下」は一度立ち止まって考えたい

今回、SNSで出ている疑問を一つずつ確認していくと、かなり違った景色が見えてきます。

日本の子どもには、年齢・性別に応じたたんぱく質の推奨量が設定されています。学校給食についても食事摂取基準や児童生徒の食事調査などを考慮した「学校給食摂取基準」があり、たんぱく質を含めて栄養管理する仕組みがあります。

一方、日本人の平均成人身長が1970年代末生まれをピークに低下したことを示す研究はありますが、その研究が示した重要な関連要因の一つは低出生体重児の増加でした。

ですから、

日本人の平均身長が低下している
↓
子どものたんぱく質が不足している
↓
学校給食の肉が少ない
↓
もっと肉やプロテインを増やせばいい

というストーリーは、現段階では単純化しすぎているように見えます。

だからといって、「子どものたんぱく質について何も問題がない」と結論づけるのも早計です。

平均値が十分でも、個々の子どもには食事量や食生活、活動量などの違いがあります。また、子どもの成長を考えるなら、妊娠前・胎児期・出生時・乳幼児期・思春期までを連続したものとして見る必要があります。厚生労働省の食事摂取基準も、ライフステージ初期について胎内、乳児期、成長期の栄養状態への配慮を求めています。

今回の問題から見えてくるのは、

「たんぱく質が足りているか?」という一つの数字だけではなく、日本の子どもが成長するために必要な栄養とエネルギーを、胎児期から成長期まで十分に確保できているのか

という、もっと大きな問いなのかもしれません。

健康を支えるのは、本人の生活習慣だけではなく、健康的な選択をしやすい環境でもあるんですよね。

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鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!|#たけしの家庭の医学

【参考資料】
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」
文部科学省「学校給食摂取基準の策定について(報告)」
文部科学省「学校給食実施基準の一部改正について」
国立成育医療研究センター「日本人の平均身長は低下傾向―低出生体重児増加が影響している可能性あり―」
European Food Safety Authority(EFSA), Population Reference Intakes for Protein
NIH Office of Dietary Supplements, Dietary Reference Intakes
Hudson JL, et al. Dietary Protein Requirements in Children: Methods for Consideration. Nutrients. 2021.







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運動や食事がなぜうつ病と関係するのか?バラバラだった研究が「慢性炎症」でつながってきた

これまでハクライドウでは、「運動とうつ病」「食事とうつ病」について、さまざまな研究を紹介してきました。

例えば、

・運動によって筋肉から「アペリン」が分泌され、脳の海馬に働きかける可能性
・1日7,000歩程度歩く人では、うつ症状のリスクが低いという研究
・魚介類やオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)とうつ病との関係
・果物を多く食べる人ほどうつ病の発症リスクが低いという研究
・キノコを食べる習慣とうつ病リスクとの関係

などです。

一つひとつを見ると、まったく違う研究に見えます。

しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。

なぜ「歩く」「運動する」「魚を食べる」「果物を食べる」といった、一見バラバラな習慣が、どれもうつ病やうつ症状と関連するのでしょうか?

その背景を説明する可能性があるものの一つとして、近年注目されているのが、「慢性炎症」です。

ただし最初に大事なことを書いておきます。

「うつ病の原因は慢性炎症だった」と判明したわけではありません。

うつ病は単一の原因で説明できる病気ではなく、炎症はそのなかの一つの経路、特に一部の患者で重要な経路になっている可能性が研究されています。

今回は、これまで紹介してきた「運動」「食事」「腸内環境」の研究を、「炎症」という視点から一度つないで考えてみたいと思います。

■「うつ病=セロトニン不足」だけでは説明できない

「うつ病」と聞くと、セロトニンが不足することで起こるという説明を聞いたことがある人も多いかもしれません。

しかし現在の研究では、うつ病を単純な「セロトニン不足」だけで説明することは難しいと考えられています。

ハクライドウでも以前、NHKスペシャル「うつ病 克服へのカギ」について紹介しました。

番組では、心理的ストレスに伴う脳内炎症やミクログリア、全身の炎症、肥満や糖尿病などとの関係が取り上げられていました。

また、炎症マーカーであるCRPが高い人が、うつ病患者の一部に存在することも紹介しました。

→ NHKスペシャル「うつ病 克服へのカギ」まとめ|体の炎症が原因?食事で予防できる可能性

研究ではIL-6、TNF-α、CRPなどの炎症に関連する物質とうつ病との関係が調べられています。

2026年のレビューでも、炎症性サイトカインが、トリプトファン・キヌレニン代謝、モノアミン神経伝達、BDNFに関連する神経可塑性、ミクログリアによる神経炎症などに関係する可能性が整理されています。

つまり、「心の病気」を脳だけで考えるのではなく、

免疫・炎症・代謝・腸・筋肉・脳

まで含めて考える研究が進められているのです。

■ 炎症が起こると、なぜ「気分」にまで影響するの?

ここが今回もっとも重要なポイントです。

炎症というと、

「ケガをしたところが赤く腫れる」

といった炎症をイメージするかもしれません。

しかし体内では、IL-6やTNF-αなどさまざまなサイトカインが免疫反応に関わっています。

そして、長期的な炎症状態とうつ症状との関係が研究されています。

考えられている経路を非常に単純化すると、

ストレス・肥満・感染・腸内環境など

↓

炎症・免疫系の変化

↓

IL-6・TNF-αなどの炎症性サイトカイン

↓

脳・神経系にも影響

↓

神経伝達・神経可塑性などの変化

↓

一部の人ではうつ症状と関連

という流れです。

そして、この中で注目したいのが「トリプトファン」です。

■ セロトニンだけじゃない?「キヌレニン経路」というもう一つのルート

トリプトファンというと、

トリプトファン → セロトニン

というイメージが強いかもしれません。

ところがトリプトファンには別の重要な代謝ルートがあります。

それが、

キヌレニン経路

です。

炎症とキヌレニン経路、うつ病の関係については現在も研究が続けられており、2026年のレビューでも、炎症によるキヌレニン経路の活性化がうつ病の病態に関与する候補として整理されています。

つまり、

炎症
↓
トリプトファン代謝の変化
↓
キヌレニン経路
↓
神経系への影響

というルートが、「炎症」と「うつ症状」をつなぐ候補の一つとして考えられているわけです。

ただし、

炎症が起こる
↓
セロトニンがなくなる
↓
うつ病になる

と単純化できるものではありません。

キヌレニンからも複数の物質が作られ、炎症と脳との関係にも複数の経路があります。

■ すると「なぜ運動がうつにいいの?」も違って見えてくる

ハクライドウでは以前、

運動がなぜうつ症状を改善するの?運動すると筋肉がアペリンを出して、脳に届いて海馬を元気にし、うつを軽くする

という研究を紹介しました。

この研究から見えてきたのは、

運動
↓
筋肉
↓
アペリンなどのシグナル
↓
脳・海馬
↓
神経新生・神経可塑性

という考え方です。

つまり筋肉は単に体を動かす器官ではなく、運動によって脳へ影響するシグナルを出す可能性があります。

そして、もう一つ興味深いルートがあります。

炎症です。

うつ病患者を対象とした運動研究をまとめたメタ解析では、運動と炎症・神経栄養・免疫関連マーカーなどとの関係が検討されています。研究者自身も「運動が抗うつ効果を生む生物学的経路はまだ明らかではない」としたうえで、血中バイオマーカーと抑うつ症状の変化を検討しています。

さらに2025年のシステマティックレビュー・メタ解析でも、うつ病患者における運動、抑うつ症状、CRP・IL-6・TNF-αなどの炎症マーカーとの関係が検討されています。

運動によって抑うつ症状は改善しましたが、炎症マーカーについては研究間のばらつきもあり、「運動の抗うつ効果が炎症改善によって媒介されている」と断定できる段階ではありません。

ここは非常に重要です。

「運動→炎症低下→うつ改善」という一本線が証明されたわけではない。

むしろ、

運動
├ 筋肉・マイオカイン
├ アペリン
├ 神経可塑性
├ 代謝
└ 炎症・免疫

など、複数の経路が組み合わさっている可能性を考えた方がよさそうです。

■「歩くとうつになりにくい」という研究にも、生物学的背景があるのかもしれない

ハクライドウでは歩数についても、

1日7千歩で死亡リスクが47%低下!心血管疾患・がん・2型糖尿病・認知症・うつ病も抑制!

という記事を紹介しています。

こうした疫学研究では「よく歩く人とうつ症状のリスク」に関連が見つかったとしても、それだけでは、

なぜ歩くとうつ病のリスクが低くなるのか

までは分かりません。

ところが、運動と炎症、運動と神経可塑性、筋肉から脳へ送られるシグナルなどの研究を合わせて考えると、

単に、

運動すると気分転換になるから

という説明ではなく、

体を動かすこと自体が、身体の代謝・免疫・筋肉・脳の状態を変化させている可能性

が見えてきます。

■ 食事とうつ病の研究も「炎症」でつながる?

食事についても同じです。

これまでにハクライドウでは、

魚介類を多く食べる人はうつ病の発症率が低くなる傾向|オメガ3(EPA・DHA)が多いと発症率が低くなる|国立がん研究センター・慶応義塾大学
果物の摂取量が多いほど、うつ病が発症するリスクが低い!
日常的にキノコを食べる習慣を持つとうつ病リスクを下げてくれる
などを紹介してきました。

これらを一つ一つ見ると、

魚とうつ病

果物とうつ病

キノコとうつ病

という別々の研究です。

そこで興味深いのが、

「これらに共通する背景の一つに、炎症という経路があるのではないか?」

という考え方です。

■ 魚・EPA・DHAとうつ病

特に研究が進んでいるのがオメガ3脂肪酸です。

2025年のレビューでは、うつ病と診断された人を対象とする近年のRCTが検討され、高用量EPAを使った研究、とりわけ炎症マーカーが高いMDDなどで改善が報告されています。

またオメガ3由来の抗炎症・炎症収束に関わる脂質メディエーターの増加と、抑うつ症状改善との関連も報告されています。

一方で研究者は、どの患者が恩恵を受けるのか、用量や治療期間について、さらに研究が必要としています。

したがって、

EPAを摂ればうつ病が治る

という話ではありません。

むしろ、

魚・オメガ3
↓
炎症・代謝などへの影響
↓
一部のうつ病との関連を研究中

という段階だと理解するのがよいでしょう。

■ 腸内細菌から「炎症」が起こる可能性も

さらに興味深いのが腸です。

以前、

うつ病は脳だけの病気ではなく、腸内細菌+環境汚染物質による炎症も原因の一つ!?

という研究も紹介しました。

この研究では、腸内細菌 Morganella morganii と環境中の物質との相互作用によって作られる特殊なリン脂質が、免疫反応とIL-6産生に関係することが報告されています。

つまり、こちらから見ると、

食事・環境
↓
腸・腸内細菌
↓
免疫・炎症
↓
脳

という別のルートも考えられます。

■ ここまでをつなぐと、一つの「ネットワーク」が見えてくる

これまで紹介してきた研究を一つの図にすると、こんなイメージになります。

食事・運動・睡眠・ストレスなどの生活環境

↓     ↓

腸・脂肪組織・筋肉・代謝・免疫

↓     ↓

慢性炎症・筋肉由来シグナルなど

↓

サイトカイン・キヌレニン代謝・神経可塑性など

↓

脳

↓

気分・意欲・疲労など

重要なのは、

「慢性炎症がすべてを説明する」という図ではない

ことです。

むしろこれまでバラバラに研究されてきた、

腸
食事
運動
筋肉
免疫
炎症
神経伝達
神経可塑性

が、相互につながったネットワークとして見えてきた、と捉える方がよいでしょう。

■「魚を食べればいい」「キノコを食べればいい」という話ではない

こうして研究を並べると、

「ではEPAのサプリを飲めばいいの?」

「毎日キノコを食べればいいの?」

と思ってしまいます。

しかし、ここには注意が必要です。

魚、果物、キノコなどの摂取とうつ病との関連を示した観察研究だけでは、

その食品がうつ病を予防した

という因果関係までは証明できません。

また、炎症が関係していないうつ病も当然考えられます。

食品を一つだけ取り出すより、

食事、運動、睡眠、体重管理、ストレスなど、炎症や代謝に影響する生活全体を考える

ことが重要なのではないでしょうか。

■ うつ病には「炎症が強く関係するタイプ」がある?

そして非常に興味深いのが、うつ病を一つの病気として扱うのではなく、

「炎症の関与が強い人がいるのではないか」

という考え方です。

だからこそ、

ある人には運動がよく効く。

ある人には食事改善の影響が大きい。

ある人には従来の抗うつ薬がよく効く。

という違いの一部を、将来的には生物学的な特徴から説明できるようになる可能性があります。

ただし現時点では、CRPやIL-6、TNF-αなどを測れば「あなたは炎症型うつ病です」と一般的に診断できる段階ではありません。

ここは研究と医療を混同しないようにする必要があります。

■ 結論:「心」と「体」を分けて考えない

これまで、

魚を食べる人はうつ病が少ない。

果物を食べる人はうつ病が少ない。

キノコを食べる人は抑うつが少ない。

よく歩く人はうつ症状が少ない。

運動すると抗うつ効果がある。

という研究を、それぞれ別の記事として紹介してきました。

当時は「なぜ?」を十分説明できなかったものもあります。

ところが新しい研究を重ねて見ていくと、その間に、

免疫・炎症・腸・筋肉・代謝・神経可塑性

という橋が少しずつ架かってきました。

だから今回の話から私たちが得られるメッセージは、

「うつ病は炎症が原因だから、抗炎症食品を食べよう」

ではありません。

むしろ、

心の健康と体の健康は、私たちが思っているほど別々ではないのかもしれない。

ということではないでしょうか。

運動する。

歩く。

魚を食べる。

野菜や果物、キノコなどさまざまな食品を食べる。

睡眠をとる。

肥満や生活習慣病を予防する。

これまで「体の健康」のために勧められてきた習慣が、炎症、代謝、筋肉、腸などを介して「心の健康」ともつながっている。

その仕組みが、少しずつ明らかになってきています。

ただし、食事や運動はうつ病の標準治療の代わりではありません。

強いうつ症状がある場合や日常生活に支障が生じている場合は、食事や運動だけで対処しようとせず、医療機関に相談することが大切です。

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NHKスペシャル「うつ病 克服へのカギ」まとめ|体の炎症が原因?食事で予防できる可能性

【参考文献】
Cunha LL, Feter N, Alt R, Rombaldi AJ. Effects of exercise training on inflammatory, neurotrophic and immunological markers and neurotransmitters in people with depression: A systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2023. 運動による抗うつ効果の生物学的経路を、炎症・神経栄養・免疫関連マーカーなどから検討したメタ解析です。
Song J, et al. Effect of Different Exercise Modalities on Inflammatory Markers in Individuals with Depressive Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis. Life. 2025. うつ病患者を対象として、運動とCRP、IL-6、TNF-αなどの炎症指標を検討しています。
Dyall SC, Malau IA, Su KP. Omega-3 polyunsaturated fatty acids in depression: insights from recent clinical trials. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2025. オメガ3とうつ病について、炎症性MDDを含む近年の臨床研究をレビューしています。







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「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

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抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」とは?増やす方法・食べ物・オメガ3との関係|カズレーザーと学ぶ。




「DEL-1(デルワン)」というタンパク質をご存じでしょうか?

DEL-1は体内で作られるタンパク質で、炎症や骨代謝、老化細胞などとの関係が研究されています。

テレビ番組では「抗老化タンパク質」「若返りタンパク質」として紹介されたこともあり、

「DEL-1とは何?」
「DEL-1を増やす方法は?」
「何を食べたらいいの?」
「オメガ3を摂ればDEL-1は増えるの?」

と気になった方も多いのではないでしょうか。

私がDEL-1について初めて知ったのは、2025年1月14日放送の『カズレーザーと学ぶ。』でした。

番組ではDEL-1とオメガ3脂肪酸との関係や、アマニ油、サバなどが紹介されていました。

その後、DEL-1の研究はさらに進んでいます。

そこでこの記事では、DEL-1とは何か、増やす方法、オメガ3や食べ物との関係について、『カズレーザーと学ぶ。』で紹介された内容と、その後の研究をあわせて整理します。

■DEL-1(デルワン)とは?

DEL-1(Developmental Endothelial Locus-1)とは、おもに血管の内皮細胞から産生される抗炎症作用をもつタンパク質です。

以前から抗炎症作用や骨代謝などとの関係が研究されてきました。

デルワンは主に血管内皮細胞から出てきて体の中をぐるぐると回っており、炎症を抑える役割があることが発見されています。

デルワンは腎臓や腸管、神経系でたくさん作られていて、再生もでき、肌にも効果的なのだそうです。

デルワンは老化細胞に「(免疫細胞に)食べてくれ!」という自らの除去をお願いするシグナルを出すことを判断/指令してくれることで、細胞の再生を促進することがわかりました。

デルワンの産生量は加齢とともに減少して、30-40代から激減します。

老化細胞が増えると、炎症性サイトカインが出てきて、DEL-1を抑制して、悪循環を起こします。

また、若返りの効果もあり、歯を支える骨を再生してくれます。

老化すると、破骨細胞(骨を溶かす細胞)が活性化すると同時に骨を作る機能が少しずつ遅れてきて、破骨細胞のほうが強くなってくると、骨粗しょう症のようになります。

デルワンは骨を壊す細胞に対して強力に作用して抑え、骨芽細胞に働きかけて骨の再生を手助けすることがわかってきました。

デルワンの数値が高いとスキンケアの反応が良いそうです。

肥満になるとデルワンは下がる。デルワンを欠損させたマウスは太っている。

例えば2015年に発表された研究では、DEL-1が破骨細胞への分化を抑え、非ヒト霊長類における炎症性の骨減少を抑制したことが報告されています。

さらに2026年には、DEL-1が老化した骨髄間葉系幹細胞を選択的に死滅させ、その後の除去も促す「生体内セノリティック(老化細胞除去)タンパク質」として働くことが、新潟大学などの研究グループによって報告されました。

つまりDEL-1は、炎症だけではなく、骨や老化細胞との関係からも研究されているタンパク質ということになります。

■DEL-1を増やす方法は?

では、一番気になる、「DEL-1を増やすことはできるの?」という疑問について見てみましょう。

DEL-1との関係で注目されているのが、オメガ3脂肪酸です。

私が最初にDEL-1について知った『カズレーザーと学ぶ。』でも、DEL-1とオメガ3脂肪酸の関係が紹介されていました。

また、DEL-1についてはオメガ3に由来する炎症収束性脂質メディエーター「リゾルビン」との関係についても研究されています。

元の記事で紹介した研究資料では、減少したDEL-1発現がリゾルビンによって定常状態まで回復したことが報告されています。

つまり、DEL-1とオメガ3の関係には研究上の背景があります。

ただし、「オメガ3を摂れば誰でもDEL-1が増える」とまで単純に考えないことも大切です。

細胞や動物などを対象とした研究で分かったことと、私たちが毎日の食事としてオメガ3を摂った場合の影響は分けて考える必要があります。

■DEL-1と関係する食べ物は?

オメガ3脂肪酸は、大きく見ると

・αリノレン酸
・EPA
・DHA

などがあります。

食品としては、

αリノレン酸を含む食品

・アマニ油
・えごま油
・クルミ

EPA・DHAを含む食品

・サバ
・イワシ
・サンマなどの魚

などがあります。

『カズレーザーと学ぶ。』では、オメガ3脂肪酸を含む食品としてアマニ油やサバが紹介されていました。

→ オメガ3脂肪酸を含む食品 について詳しくはこちら

ただ、ここで注意したいのは、

「DEL-1を増やす食品=○○」

と一つの食品に決めてしまわないことです。

現時点では、「DEL-1との関係が研究されているオメガ3脂肪酸を含む食品」くらいに考えておくのがよさそうです。

■『カズレーザーと学ぶ。』ではDEL-1について何が紹介された?

ここで、私がDEL-1について知るきっかけになった『カズレーザーと学ぶ。』で紹介された内容をまとめておきます。

2025年1月14日放送のテーマは「2025年イイ顔になる最新科学」。

番組では、新潟大学の前川知樹研究教授がDEL-1について解説しました。

番組をもとに当時の記事に記録したポイントを整理すると、

DEL-1は抗炎症作用をもつタンパク質
加齢とともにDEL-1の産生が減少する
老化細胞とDEL-1の関係
DEL-1と骨の維持・再生との関係
DEL-1とオメガ3脂肪酸との関係

などが紹介されていました。

■スキンケアだけでは老化は防げない!

老化細胞が肌の中で増えてしまうと、体の外から行う通常のスキンケアではその細胞を取り除くことが難しいため、シミやシワの原因となってしまいます。

そこで必要になるのが体の中からのアプローチであり、そのカギとなるのが抗老化タンパク質「DEL-1」です。

DEL-1をコントロールすることができれば、肌の再生力もアップし、肉体も若返る可能性があるそうです。

その中でも、食生活という観点から興味深かったのがオメガ3でした。

当時の記事には、番組で紹介された内容として「10歳の高齢サルにオメガ3脂肪酸を与える実験では、4カ月後にDEL-1発現量が約1.5倍に増加した」と記録しています。

そしてオメガ3を含む食品として紹介されたのが、アマニ油やサバでした。

この番組を見たときには、

「オメガ3とDEL-1にはこんな関係があるんだ!」

というところに興味を持ったのですが、その後研究を追ってみると、DEL-1と老化細胞との関係もさらに詳しく分かってきました。

■その後の研究で分かってきたDEL-1と老化細胞の関係

2026年1月、新潟大学などの国際共同研究グループからDEL-1について新たな研究成果が発表されました。

研究グループは、DEL-1が老化細胞を選択的に死滅させ、さらにマクロファージによる除去を促す「生体内セノリティック(老化細胞除去)タンパク質」であることを報告しています。研究成果は2026年1月20日に国際学術誌「Advanced Science」に掲載されました。

老化細胞は、ストレスや加齢などによって増殖を停止した細胞です。

新潟大学によると、こうした老化細胞は炎症物質を放出し、周囲の組織に影響を与えます。

今回の研究では、

DEL-1
↓
老化した骨髄間葉系幹細胞に選択的に作用
↓
老化細胞の死滅を促す
↓
マクロファージによる除去も促す

という仕組みが示されました。

新潟大学は、この仕組みを体に備わった「天然の老化細胞除去システム」と表現しています。

2025年に『カズレーザーと学ぶ。』を見た時に興味を持った「DEL-1と老化にはどんな関係があるのだろう?」という疑問について、その後の研究でさらに仕組みが見えてきたわけですね。

■DEL-1と骨粗しょう症・歯周病との関係

DEL-1では「骨」との関係についても研究が続けられています。

2026年の研究では、DEL-1を欠損させたマウスでは老化細胞が蓄積して骨粗しょう症が重症化した一方、DEL-1を過剰発現させたマウスでは老化細胞が効率よく除去され、骨密度が維持されたと報告されています。

こうした研究成果から、骨粗しょう症や歯周病などの治療法への応用が期待されています。

ただし、「DEL-1を増やせば人間が若返ることが証明された」という意味ではありません。

ここはテレビなどで使われる「若返りタンパク質」という言葉と、実際の研究成果を分けて考える必要があります。

■運動でもDEL-1は増える?

DEL-1については、食事だけでなく運動との関係も注目されています。

2026年10月に前川研究教授が解説したメディア記事では、普段あまり運動習慣のなかった40~50代の男女24人が1時間のウォーキングを1カ月間続けたところ、DEL-1量が平均約1.5倍になったという取り組みが紹介されています。

同じ記事では、40~50代の男女10人を対象としたアマニ油摂取についてもDEL-1量の変化が紹介されています。

興味深い内容ではありますが、今回確認できたものは小規模な取り組みについて研究者がメディアで紹介した情報です。

そのため、「ウォーキングをすればDEL-1が1.5倍になる」とすべての人に一般化するのではなく、今後の研究にも注目したいところです。

■結局、DEL-1を増やすために何をすればいいの?

ここまで調べて、「じゃあ結局、何をすればいいの?」と思った方もいるかもしれません。

現時点では「DEL-1を増やすためにこの食品だけを食べればいい」と考えるより、

・魚などオメガ3脂肪酸を含む食品を普段の食事に取り入れる
・アマニ油やえごま油なども食生活に取り入れる
・適度に体を動かす

といった健康習慣を考えるきっかけとしてDEL-1研究を見る方がよいのではないでしょうか。

「若返り成分があるから、これだけ食べる」という考え方ではなく、普段の食生活や運動を整える中で、その仕組みの一つとしてDEL-1研究にも注目する。

そんな捉え方が現時点ではよさそうです。

■DEL-1について「分かっていること」と「まだ分からないこと」

●分かってきたこと

DEL-1は体内で作られるタンパク質で、抗炎症作用や骨代謝などとの関係が研究されてきました。

2026年の研究では、DEL-1が老化した骨髄間葉系幹細胞を選択的に死滅させ、その後の除去も促すことが報告されています。

●注目されていること

DEL-1とオメガ3脂肪酸との関係が研究されています。

また、小規模な取り組みとして、運動やアマニ油摂取後のDEL-1量についての情報も紹介されています。

●まだ慎重に考えたいこと

特定の食品を食べることで、人のDEL-1がどの程度増え、それによって老化や健康にどの程度の影響があるのかについては、

「この食べ物を食べればDEL-1が増えて若返る」

と単純化しない方がよいでしょう。

研究結果と毎日の健康習慣の間には、一段階置いて考える必要があります。

■まとめ

DEL-1(デルワン)は、体内で作られ、抗炎症作用や骨代謝、さらに老化細胞との関係が研究されているタンパク質です。

私がDEL-1を初めて知ったのは、2025年1月14日放送の『カズレーザーと学ぶ。』でした。

当時特に興味を持ったのが、「DEL-1を増やす方法」そして、「DEL-1とオメガ3の関係」でした。

番組では、オメガ3を含む食品としてアマニ油やサバなどが紹介されました。

それから研究を追っていくと、2026年にはDEL-1が老化細胞を選択的に死滅させ、その除去を促す生体内セノリティックタンパク質として働くことが報告されました。

つまり、『カズレーザーと学ぶ。』をきっかけに知ったDEL-1について、その後も研究が進んでいるということですね。

ただ、ここから、「若返るために○○をたくさん食べよう」と考えてしまうのは少し違います。

DEL-1とオメガ3や運動との関係は興味深いものですが、魚やアマニ油、えごま油などを含めた日々の食生活や運動について考えるきっかけの一つとしてDEL-1研究を見る。

今のところは、そのくらいの距離感がよいのではないでしょうか。

今後も新しい研究が発表されたら、この記事に追記していきたいと思います。

【参考リンク】

■デルワンサプリ

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【補足】

筋肉量が多い人ほど顔のシミやシワ、毛穴の目立ちが少ない!マイオネクチンがメラニンの生成を抑えている!|ポーラ化成で紹介したポーラ化成工業が行ったゲノム研究(GWAS)によれば、シミができない体質の人は、生まれつき筋肉の性質が異なる可能性があること、また、体重当りの体幹と下半身の総筋肉量が多い人ほど、顔のシミが少ないことが分かったそうです。

また、筋肉で作られる「マイオネクチン」が血液成分として皮膚に運ばれ、シミのもとであるメラニンの生成を抑えていることが示唆され、さらには、体の筋肉量が多いほど、シワ、毛穴の目立ち、色ムラなどが少ないことも明らかになったことから、美肌体質の秘密は、筋肉がカギを握っている可能性があるようです。

今回の番組では運動とデルワンの関係については説明がなかったのですが、筋肉量が多い人ほどど顔のシミやシワ、毛穴の目立ちが少ないことから、もしかすると筋肉とデルワンにも関係もあるのかもしれませんね。

【参考リンク】

減少した DEL-1 発現は、抗炎症作用をもつオメガ3脂肪酸であるリゾルビンを作用させることで、定常状態まで回復させることができた

■まとめ

以前オメガ3の美肌効果については次のように紹介しました。

オメガ3の美肌効果|オメガ3を摂取するとなぜ美肌になるのか?|摂取量の目安によれば、オメガ3が十分にあると、オメガ3は血管にも作用し、血管を拡張する力を持っているため、血流を改善することにより、血液の循環はとてもスムーズです。

その結果、肌には栄養分が運ばれていくことにより、皮膚の細胞の新陳代謝を活発にして、肌を美しくしてくれると考えられます。

しかし、血液中にオメガ3が不足すると、栄養分の運搬が滞ってしまいがちになり、新陳代謝が活発ではないため、肌が荒れてしまうと考えられます。

麻布大学の守口徹教授によれば、オメガ3が細胞にあると本来の細胞の機能が維持でき、皮脂の供給などすべてがバランスよくいくそうです。

また、分泌を促してくれる下の方の細胞にオメガ3がないと指令が来なくなるそうです。

→ EPAを摂ると、赤血球がしなやかになり、顔色が良くなり、目の下のクマがなくなる!【美と若さの新常識】 についてくわしくはこちら

今回の記事を参考にして考えると、オメガ3を摂ることで抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」が増えて、肌の衰えやシワ、シミの原因となる「老化細胞」を取り除き、肌の再生を助ける役割を果たしているため美肌になっていると考えられるんですね。

→ オメガ3脂肪酸を含む食品 について詳しくはこちら

【追記】

2025年5月29日放送の「ひるおび!」で新潟大学・前川知樹教授が解説し、抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」が健康寿命を延ばすことに期待されるそうです。

→ 健康寿命を延ばすカギ!?デルワン減少チェックリスト【ひるおび】

→ 抗老化タンパク質「デルワン(DEL-1)」で若返り!デルワンを増やす方法とは?【ホンマでっかTV】 について詳しくはこちら







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「ウベ抹茶ラテ」が世界でブームに!韓国から広がる紫×緑のドリンク、フィリピンではウベ増産も

日本の「抹茶」とフィリピンで親しまれてきた紫色のヤムイモ「ウベ」。

この2つを組み合わせた「ウベ抹茶ラテ」などのドリンクやスイーツが、韓国のカフェをきっかけにSNSなどを通じて広がり、Z世代を中心に注目されているというニュースがNHKで紹介されていました。

鮮やかな紫色のウベと、緑色の抹茶。

写真や動画にしたときのインパクトが大きく、「SNS映え」することも人気の理由の一つとして考えられそうです。

ただ、今回のニュースを見ていて興味深かったのは、単に「新しいスイーツが流行っています」という話ではありませんでした。

世界的な需要の高まりを受けてフィリピンではウベを加工する工場が生産を増やす一方、原料となるウベが不足しているというのです。

これを聞いて、どこかで聞いたことがある話だと思いました。

「抹茶」です。

ハクライドウでは以前、

なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?

という記事で、世界的な抹茶ブームについて取り上げました。

海外で抹茶の需要が急増したことによって、原料となる碾茶の生産や供給にも影響が出ています。以前の記事でも、需要に対応するため碾茶生産を拡大する動きを取り上げています。

もしかすると「ウベ」と「抹茶」という全く違う食材に、同じような現象が起きているのでしょうか?

今回は「ウベ抹茶ラテ」から、世界的な食のトレンドについて考えてみたいと思います。

■そもそも「ウベ」とは?

ウベ(UBE)は、主にフィリピンで親しまれてきた紫色のヤムイモです。

鮮やかな紫色が大きな特徴で、フィリピンでは昔からアイスクリームやケーキ、かき氷など、さまざまなスイーツに使われてきました。

日本で「紫色の芋」と聞くと紫芋を想像するかもしれません。

また、アジアのスイーツでよく使われるタロイモを思い浮かべる人もいるでしょう。

しかし、ウベは日本の紫芋やタロイモとは別のものです。

つまり、ウベは最近突然誕生した「流行のための食材」ではありません。

フィリピンでは以前から食べられてきた食材が、別の国や地域で新しい形にアレンジされ、世界から注目され始めたというところが面白いのです。

■なぜ「ウベ」が人気になっているの?

NHKのニュースでは、韓国のカフェを中心に人気になり、SNSやZ世代へと広がっていることや、健康志向という側面も紹介されていました。

特にSNSとの相性がよさそうなのが、ウベの鮮やかな紫色です。

実際、海外では以前からウベを使ったドリンクやスイーツが存在していましたが、近年はその色を生かしたウベラテやウベシェイクなども注目されています。

そこに抹茶を組み合わせると、

ウベの紫 × 抹茶の緑

という非常に特徴的な色の組み合わせが生まれます。

海外では紫、白、緑の層を作ったウベ抹茶ラテも紹介されており、TikTokを中心に話題になっていると報じられています。

味だけではなく、見た瞬間に「これは何?」と思わせるビジュアルがあることは、SNS時代の食トレンドでは大きな特徴なのかもしれません。

■健康志向もウベや抹茶人気の理由?

もう一つ興味深いのが「健康志向」です。

抹茶についても、海外では単なる日本のお茶ではなく、「健康的」「ウェルネス」といったイメージと結びついて広まってきた側面があります。

以前のハクライドウの記事でも、海外における抹茶人気には健康志向だけでなく、SNSで映える鮮やかな緑色、日本文化への関心、カフェ文化など複数の要素があることを紹介しました。

ただ、ここでは注意も必要です。

「健康的なイメージで人気になっていること」と「ウベ抹茶ラテを飲めば健康になること」は別の話です。

ラテやスイーツは商品によって使用される材料も異なります。

そのため「ウベ抹茶ラテ=健康食品」と考えるのではなく、健康志向やウェルネスというイメージも、消費者が関心を持つ背景の一つになっている、と捉える方がよいのではないでしょうか。

■「抹茶の次はウベ」といわれているけれど、本当にそう?

2026年には日本でも「抹茶の次はウベ」と、ウベを次のトレンド候補として紹介する記事が登場しています。

でも、今回の「ウベ抹茶ラテ」を見ていると、

「抹茶 → ウベ」

と人気食材が交代しているわけではないことに気づきます。

むしろ、

「抹茶 × ウベ」

なのです。

ここが今回のブームの面白いところではないでしょうか?

世界でMATCHAそのものが知られるようになったことで、「抹茶とは何か」を一から説明しなくても、別の食材と組み合わせることができる。

つまり抹茶が、

「日本独自の飲み物」から「世界中でアレンジできる素材」へ

変化してきたとも考えられます。

■実は「抹茶×現地の食材」はウベだけではない

この仮説を考えるうえで面白い例があります。

ベトナムでは、日本の抹茶とココナッツジュースを組み合わせた「抹茶ココナッツジュース」が若者の間で広がった事例が報告されています。

つまり、

日本の抹茶 × フィリピンのウベ

だけではありません。

抹茶 × ココナッツ

という別の組み合わせも生まれているわけです。

個々の流行だけを見ると、

「ウベが流行っている」

「抹茶ココナッツが流行っている」

という別々のニュースに見えます。

しかし少し引いて見ると、

日本から広がったMATCHAが、それぞれの地域で親しまれている食材と組み合わされ、新しいドリンクやスイーツへと変化している

という共通した動きとして見ることもできそうです。

■ウベは世界同時多発的に流行する「ファッションフード」?

今回のNHKのニュースで興味深かったのが、食文化研究家が「ファッションフード」という言葉で今回のウベ人気を紹介していたことです。

ここでいう「ファッションフード」とは、ある食べ物が一つの地域から順番に広がっていくだけではなく、世界各地で同時多発的に流行していくような現象を捉えた言葉です。

この視点から「ウベ抹茶ラテ」を見ると、とても興味深いものがあります。

もともとウベは、フィリピンで昔からアイスクリームやケーキなどに使われてきた食材です。

ところが現在は、韓国などのカフェ文化の中で新しいドリンクやスイーツにアレンジされ、SNSなどを通じて世界に広がっています。

一方の抹茶も、日本から海外へ広がり、現在ではラテやスイーツなどさまざまな形で楽しまれるようになっています。

ハクライドウでも以前、なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?という記事で、健康志向だけでなく、鮮やかな緑色、日本文化への関心、SNS、カフェ文化など、さまざまな要素が海外での抹茶人気と結びついていることを紹介しました。

つまり「ウベ抹茶ラテ」には、

フィリピンのウベ
× 日本の抹茶
× 韓国などのカフェ文化
× SNS

という、いくつもの国や文化の要素が重なっています。

もはや「どこの国の食べ物なのか?」だけでは説明しにくい、新しい食文化が生まれているともいえそうです。

■SNS時代は「食の流行の伝わり方」そのものが変わった?

これまで食の流行というと、

ある地域で流行
↓
別の地域へ広がる
↓
少しずつ世界へ

というイメージがあったのではないでしょうか。

しかしSNSの登場によって、世界各地の人が同じ食べ物の写真や動画を見ることができるようになりました。

すると、

ある地域で昔から親しまれてきた食材
↓
別の国で新しい食べ方にアレンジされる
↓
SNSなどを通じて世界へ広がる
↓
それぞれの地域でさらに新しいアレンジが生まれる

という循環も考えられます。

今回の「ウベ抹茶ラテ」は、まさにその象徴のように見えます。

フィリピンのウベと、日本の抹茶が組み合わされ、韓国などのカフェ文化の中で新しい形となって発信されている。

「ファッションフード」という視点から見ると、重要なのは「ウベが次に流行する食材なのか?」だけではありません。

食の流行が世界へ伝わる仕組みそのものが変わってきているのではないか?

というところまで考えることができます。

■そして「流行」が生産現場まで動かす

さらに今回のニュースが興味深いのは、流行がSNSの中だけで終わっていないことです。

NHKの報道では、世界的な需要の高まりに対応してフィリピンの工場が生産を増やす一方、原料となるウベが不足していることも紹介されていました。

ここで以前取り上げた抹茶の話とつながります。

抹茶も海外での需要拡大によって、生産や供給にまで影響が及んでいます。

以前の記事では、抹茶需要の拡大を受けて中国でも碾茶の生産拡大が進んでいることや、日本でも抹茶需要に対応する動きについて取り上げました。

もちろん、抹茶とウベでは生産地も栽培方法も市場も異なるため、両者の供給問題が同じ原因だとはいえません。

ただ、共通して見えるのは、

ローカルな食材が注目される
↓
SNSなどを通じて世界的なトレンドになる
↓
需要が増える
↓
商品の増産が進む
↓
原料の生産・供給にも影響する

という流れです。

ここまで来ると、「SNS映えするドリンクが流行した」というだけの話ではありません。

デジタル上で生まれた世界的な食のトレンドが、農業や食品加工といったリアルな生産現場にも影響している。

今回のニュースで本当に興味深いのは、ここなのではないでしょうか。

■まとめ:「抹茶の次はウベ」ではなく「食の流行そのものが変わった」?

紫色のウベと緑色の抹茶。

「ウベ抹茶ラテ」は、一見するとSNS映えするカラフルなドリンクの流行に見えます。

しかし、その背景を追っていくと、もう少し大きな変化が見えてきます。

フィリピンで昔から親しまれてきた「ウベ」が、別の地域のカフェ文化の中で新しい姿にアレンジされ、そこへ世界的に人気となった日本の「MATCHA」が組み合わされる。

そしてSNSなどを通じて世界各地で注目され、需要が増えることで、その影響は原料を作る生産現場にまで及んでいます。

今回紹介されていた「ファッションフード」という考え方で見ると、

「抹茶の次はウベなのか?」

だけを考えるのでは少し足りないのかもしれません。

むしろ今回のウベ人気から見えてくるのは、

「食の流行そのものが変わってきている」

ということではないでしょうか。

一つの国で生まれた食文化がそのまま世界へ輸出されるのではなく、別の国の食材やカフェ文化と混ざり、新しいものに変化しながら世界各地で同時多発的に広がっていく。

そしてその流行が、実際の農業や食品生産まで動かしていく。

「ウベ抹茶ラテ」は、そんなSNS時代のファッションフードの生まれ方を象徴する一杯なのかもしれません。

■参考文献・参考記事

NHK:ウベ、ウベ抹茶ラテの世界的な流行に関する報道(2026年10月11日)
韓国のカフェを起点としたウベ人気、Z世代・SNS、健康志向、世界的な需要拡大、フィリピンでの増産・原料不足、「ファッションフード」という視点について参照。

macaroni「抹茶の次は『ウベ』!世界でブームが加速する紫スイーツが日本でもトレンドになる予感」(2026年6月9日)
ウベがフィリピンで親しまれてきた紫山芋(パープルヤム)であること、アイスやケーキなどに使われてきたこと、日本の紫芋やタロイモとは異なることなどを参照。

Businesia「次世代トレンドは比日融合?TikTokで話題の『ウベ・抹茶』の魅力」(2026年6月17日)
ウベと抹茶を組み合わせたメニューや、TikTokを中心としたウベ・抹茶の話題について参照。記事では、ジャカルタのカフェで紫・白・緑の3層からなるウベ・抹茶ラテの提供例も紹介されています。

TNCアジアトレンドラボ「ベトナムZ世代の間で大流行の新抹茶体験/『抹茶×ココナッツジュース』に注目!」(2025年3月25日)
ベトナムでの「抹茶×ココナッツジュース」とSNS・若者への広がりについて参照。

ハクライドウ「なぜ抹茶(碾茶)が海外でブームになったのか?」(2025年8月19日)
海外での抹茶人気と健康志向、SNS・カフェ文化、抹茶需要拡大と生産・供給への影響などについて参照。
ハクライドウの記事を読む







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この考え方の全体像(意味のハブ)

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この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

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