「未分類」カテゴリーアーカイブ

風呂キャン・歯磨きキャンセルはうつ病のサインかも? 不衛生になる本当の理由




「風呂キャンセル」「風呂キャン界隈」といった言葉を目にする機会が増え、最初は「お風呂に入るのを嫌がる、めんどくさがる人がいるんだな」程度に受け取っていました。

しかし、ある投稿で「うつ病で一番怖いのは風呂キャンじゃない、歯磨きキャンセル。これはガチ」という言葉を目にし、調べてみると、うつ病になると「入浴しない」「歯を磨かない」「着替えない」「ごみをためる」など、身だしなみを気にしなくなり、不衛生な状態に陥ることがあると知りました。

品川メンタルクリニックの解説によれば、

何かを計画して行動する能力が低下することで入浴などの連続的作業がおっくうになる、エネルギーが枯渇して「疲れやすい」「やる気が起きない」状態で行動できない、自分自身への関心が薄れることで「良い衛生状態を維持しなければ」というモチベーションを喪失する、などうつ病のさまざまな症状が複合的に影響している

とのことです。

調べてみたところ、うつ病の症状である疲労感・意欲の減退・興味・関心の喪失、実行機能の低下、自己価値感の低下などが、入浴や歯磨きといった「複数のステップを要する日常動作」を特に困難にさせることが研究で指摘されています。

自己ケアの低下はDSM-5の正式な診断基準項目には含まれませんが、意欲低下や興味の喪失といった症状の表れとして臨床現場ではよく観察され、回復を妨げる要因にもなり得ます。

【解説】DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成した、精神疾患の診断基準と分類をまとめた国際的なマニュアル(第5版)です。うつ病や発達障害などの診断において、医師が客観的で統一された判断を下すために世界中で広く使われています。

つまり、「風呂キャン」や「歯磨きキャンセル」は、単に「めんどくさい」という人もいれば、中にはうつ病をはじめとする精神的な不調のサインである可能性も十分にあるのです。

実際、厚生労働省の「2025(令和7)年国民生活基礎調査」では、高齢層で「健康上の問題で日常生活に影響がある」と答えた人の割合が改善している一方、若年層(特に25〜44歳)では悪化傾向が明らかになっています。

若年層の通院理由の上位に「うつ病やその他のこころの病気」が挙がり、その症状を挙げた人の約半数以上が日常生活に影響があると回答しています。

「風呂キャン」「歯磨きキャン」が目立つ背景には、こうした若年層を中心としたメンタルヘルスの負担増加が関係しているのかもしれません。

不衛生な状態が続くと、感染症リスクが上がるだけでなく、特に口腔衛生の悪化は深刻です。

歯磨きを怠ると歯周病のリスクが高まり、歯周病は糖尿病と双方向の関係にあることが多くの研究で示されています。

歯周病による慢性炎症が血糖コントロールを悪化させ、逆に糖尿病が歯周病を進行させるという悪循環が存在します。

また、うつ病と口腔疾患(歯周炎・う蝕・歯の喪失など)にも関連があり、うつ病の人が口腔衛生を疎かにしやすい一方で、口腔の問題がうつ病のリスクを高める可能性も指摘されています。

日本国内の研究でも、高齢者において浴槽入浴の頻度が高い人はうつ病発症リスクが低いことや、口腔衛生習慣とうつ症状の関連が報告されています。

「風呂キャンセル」「歯磨きキャンセル」を単なる流行語やネットミームとして消費するのではなく、むしろこれらの言葉が広まる背景に、日本社会全体でうつ病リスクやメンタルヘルスの負担を抱える人が増えている可能性を読み取るべきではないでしょうか。

ストレスフルな社会環境を個人の努力だけに押しつけるのではなく、働き方、地域のつながり、早期の相談・支援体制など、社会全体で改善していく視点が求められます。

もし身の回りで「なかなかお風呂に入れない」「歯が磨けない」といった状態が続いている人がいたら、まずは「怠けている」と決めつけず、優しく声をかけ、必要に応じて専門機関への相談を促すことが大切です。

そして、自分自身も「ちょっとした自己ケアの困難さ」をサインとして捉えられる社会になればと思います。

【補足】

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加によれば、糖尿病と歯周病には悪循環を起こす関係があるそうです。

  1. 糖尿病が進行すると、免疫機能が低下し、歯周病を起こす細菌が増えることから。
  2. 歯周病が重症化すると、その細菌と戦おうと「TNF-α」と呼ばれるタンパク質が出されるが、そのTNF-αがインスリンの働きを悪くして、血糖値のコントロールをも悪化させるから。

【関連記事】

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加で紹介した愛知学院大歯学部歯周病科(名古屋市)の野口俊英教授によれば、糖尿病と歯周病には5つの共通点があるそうです。

  1. 初期に顕著な自覚症状がない
  2. 罹患率が高い
  3. 生活習慣病
  4. 慢性疾患
  5. 病気の進行のメカニズムが似ている

さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化する、という逆の関係も明らかになってきて、糖尿病を持つ歯周病患者に治療を行うと血糖値が改善したという報告もあるそうです。

→ 歯周病を予防する方法(歯磨き・歯ブラシ) について詳しくはこちら

【参考文献】

  1. Gibbs, A. (2024). Why Is It So Hard to Shower When I’m Depressed? The New York Times
    (うつ病時の入浴・衛生行動の困難さについての解説)
  2. 品川メンタルクリニック. 「お風呂がめんどくさい」のはうつ病だから?
    (入浴困難とうつ病症状の関連を解説したクリニックコラム。引用部分の出典)
  3. 品川メンタルクリニック. うつ病の早期発見に関するコラム
    (記事内で引用した説明の関連ページ)
  4. Medical News Today (2022). “I can’t shower because of depression”: Tips and coping strategies
    (うつ病によるシャワー困難の理由と対処法)
  5. Everyday Health (2023). Why Does Depression Make It Hard to Shower?
    (個人衛生の維持が難しくなるメカニズムと工夫)
  6. Psych Central (2022). Poor Hygiene in Depression: Is It a Formal Symptom?
    (衛生低下が正式な診断基準項目ではないが、関連症状として現れる点の解説)
  7. Stewart, V. et al. (2022). Practitioners’ experiences of deteriorating personal hygiene standards in people living with depression in Australia: A qualitative study. Health & Social Care in the Community
    (うつ病患者の衛生低下に関する実践者視点の質的研究)
  8. Hayasaka, S., Ojima, T., Yagi, A., & Kondo, K. (2023(Advance)). Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project.
    The Journal of The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
    DOI: https://doi.org/10.11390/onki.2359
    (高齢者の浴槽入浴頻度とうつ病発症リスクに関するJAGESコホート研究)
  9. Kloeckner, F. L. et al. (2026). Depression is associated with periodontitis, dental caries and edentulism: A systematic review and meta-analysis of observational studies.
    Community Dental Health
    (うつ病と歯周炎・う蝕・無歯顎の関連を調べた系統的レビュー・メタ分析)
  10. Cademartori, M. G. et al. (2018). Is depression associated with oral health outcomes in adults and elders? A systematic review and meta-analysis.
    Clinical Oral Investigations
    (うつ病と口腔疾患の関連に関する系統的レビュー)
  11. NIDDK (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases). Diabetes, Gum Disease, & Other Dental Problems
    (糖尿病と歯周病の双方向の関係についての公式解説)
  12. Psychiatric Annals (2024). Mood Disorder and Oral Health
    (気分障害と口腔健康の関連レビュー)
  13. Cureus / WHITE CROSS関連 (2024). Brushing Away the Blues: Self-Reported Oral Hygiene Practices Are Associated With Mild Depressive Symptoms in Airline Pilots.
    (口腔衛生習慣と軽度うつ症状の関連を示した研究例)
  14. 厚生労働省. 2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況.
    (若年層におけるうつ病による日常生活への影響に関するデータ)







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

▶ この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

▶ 料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

▶ この街の中心に置いている憲法を読む

疲れたT細胞が出すIL-26が大腸がんを強くする仕組みを解明




順天堂大学などの研究グループが、2026年7月にNature Communications誌で発表した論文によれば、大腸がんで、疲れたT細胞が出すIL-26が、がん細胞の核に直接入り込んで遺伝子のスイッチを変え、がんを攻撃するT細胞の働きを邪魔する免疫細胞を呼び寄せてがんを強くし、治療を効きにくくするという新しい仕組みがわかりました。

■背景:なぜこの研究が重要か?

大腸がんは日本でも患者数が多く、治療が難しいがんのひとつです。

特に「免疫チェックポイント阻害薬」(がんを攻撃するT細胞のブレーキを外して活性化させる治療)が効かない(治療抵抗性になる)ケースが少なくありません。

がん組織の周りでは炎症が起きやすく、この炎症ががんをさらに悪性にしたり、治療を効きにくくしたりすることが知られています。

しかし、「炎症がどうやってがん細胞の遺伝子の働きを変えてしまうのか」という詳しい仕組みはよくわかっていませんでした。

■主な発見

IL-26という分子が鍵です。

研究チームは、免疫治療に抵抗性のある大腸がん患者のデータを調べ、IL-26という炎症性サイトカイン(免疫細胞から出る情報伝達物質)に注目しました。

IL-26は、腫瘍の周りに集まった「疲弊した(働きが弱った)T細胞」(特にtype 17と呼ばれる特殊なT細胞)から多く産生されます。

大腸がん患者で全体的に発現が高く、胃がんや食道がんでも同様の傾向が見られます。

マウス実験でも、IL-26があると免疫治療の効果が大きく下がることが確認されました。

■IL-26ががんを悪性化させる仕組み

ここがこの研究の一番新しいポイントです。

通常のサイトカインは細胞表面の受容体に結合して信号を送りますが、IL-26はもっと直接的に働きます。

1)腫瘍特異的なtype 17 T細胞がIL-26を放出する(疲れたT細胞がIL-26を出す)。
2)IL-26ががん細胞の中に入り、核(細胞の司令塔)まで到達する。
3)核内で遺伝子調節因子(STAT1やBRD4など)と結合し、転写複合体を形成する(遺伝子のスイッチをコントロールする部品とくっつく)。
4)エピジェネティックな変化を起こす。DNA配列そのものは変わらずに、遺伝子の「オン・オフ」のスイッチが変わる。具体的には、BRD4やH3K27acが集まって遺伝子が活性化しやすい状態になる。
5)その結果、がん細胞がCXCLケモカイン(CXCL1、2、3など)を通常の数千倍も大量に産生する(「CXCL」という呼び寄せ物質を大量に作る)。
6)CXCLケモカインが好中球などの骨髄由来の免疫細胞を大量に呼び寄せる。
7)これらの細胞が、がんを攻撃するCD8陽性T細胞の働きを抑え込む。
8)結果として、免疫回避(がんが免疫から逃げやすくなる)、腫瘍の進行、免疫治療抵抗性が進む。

簡単に言うと、「疲れたT細胞が出すIL-26が、がん細胞の核に直接入り込んで悪性化のスイッチを押す」ようなイメージです。

T細胞由来の分子ががん細胞の遺伝子制御にここまで直接関与する現象は、これまであまり考えられていませんでした。

■治療への可能性

マウスモデルでIL-26やBRD4を阻害すると、がんの悪性化や免疫治療抵抗性が弱まりました。

つまり、免疫の薬も効きやすくなりました。

IL-26はマウスやラットには存在しない、人間にだけある分子のため、これまで見過ごされやすかったのですが、ヒト特有の標的として有望です。

今後、IL-26を標的にした治療法や、このエピジェネティックな仕組みを逆手に取った新しいアプローチが期待されます。

また、IL-26は自己免疫疾患や線維症、COVID-19感染時などでも上昇することが知られており、がん以外の慢性炎症疾患への応用も視野に入っています。

■まとめ

今回の研究でわかったのは、大腸がんで疲れたT細胞が出すIL-26が、がん細胞の核に直接入り込んで遺伝子のスイッチを変え、攻撃するT細胞の働きを邪魔する免疫細胞を呼び寄せてがんを強くし、治療を効きにくくするという新しい仕組みです。

「IL-26ががん細胞の中に入って直接スイッチをいじる」というイメージですね。

今後、IL-26を標的とした治療開発により、免疫治療が効きにくい大腸がんなどへの新しい道が開ける可能性が期待されます。

【参考文献】

→ 大腸がんの症状(初期症状)チェック はこちら







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

▶ この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

▶ 料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

▶ この街の憲法を読む

よもぎ蒸しの後に体調が悪くなる?その原因とは?よもぎアレルギー(キク科)?脱水?




よもぎ蒸しの後に体調が悪くなるという投稿を見かけたので調べてみました。

■よもぎアレルギーの可能性

よもぎ(ヨモギ)はキク科の植物です。

キク科アレルギー(ブタクサ、キク、タンポポ、カモミールなど)がある人は、よもぎの蒸気や成分に反応することがあります。

典型的なアレルギー症状としては

・くしゃみ、鼻水、鼻づまり
・目のかゆみ・充血
・皮膚のかゆみ、発疹、赤み
・まれに咳や息苦しさ

サロンでも「キク科アレルギーの人は避けてください」「よもぎアレルギーの人は不可」と明記しているところが多いです。

よもぎ餅などを問題なく食べられる人でも、蒸気での吸入・接触で反応が出るケースはあるようです。

■アレルギー以外でよくある原因

投稿で「体調が悪くなった」と書かれる場合、アレルギー以外の要因の方が多い印象です。

〇脱水
頭痛、だるさ、めまい、吐き気といった症状

〇のぼせ・湯あたり
顔のほてり、めまい、吐き気、倦怠感

■まとめ

キク科アレルギーが関係している可能性がありますが、他にも脱水や温度・時間も関係している可能性があります。







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

▶ この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

▶ 料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

▶ この街の中心に置いている憲法を読む

日本人の大腸がんの「コリバクチン」問題/なぜ1965年以降に増えたのか?/10歳未満の変異/腸活で予防できるの?




日本人の大腸がんの主要な原因の一つに、腸内細菌のコリバクチン毒素が関与していることが明らかに!というニュースを聞いて驚いた方も多いですよね。

このニュースを受けて、Xの投稿の中には「腸活をしよう」という結論を出しているアカウントがありました。

私がこの研究で気になっているのは1)1965年以降出生での増加、2)40歳未満での高頻度、3)10歳未満での変異獲得の可能性です。

これが腸活のような食習慣の改善によって予防ができるのかどうか、また1965年前後で何が変わったのかについて考えてみたいと思います。

1. 食習慣改善・腸内環境を変えることで予防できるか?

今回の研究を参考にすれば、すでに変異が刷り込まれた成人では「腸活だけで完全に予防できる」とは言えず、むしろ次世代や幼少期への介入が重要になる可能性が高い、というのが現在の見解に近いです。

解析から「最初の10年以内に刷り込まれ、その後は暴露が止まっている」ケースが多いと推定されています。

つまり、幼少期に「発がんの頭出し」が起き、数十年後に他の要因が加わってがん化するイメージです。

成人になってから腸内細菌を変えても、すでにDNAに刻まれた変異は消えないため、過去の暴露によるリスクをゼロにはできない可能性が高いです。

しかし、決して腸活を否定しているわけではありませんし、むしろ推奨される一般的な健康習慣といえます。

食物繊維を増やす、発酵食品を取るなどは、炎症を抑えたり、他の発がん経路(例:フソバクテリウム関連)を弱めたりする点で有益だと考えます。

マウス実験では、食物繊維(特に可溶性)がpks+大腸菌(コリバクチンという毒素を産生する一部の大腸菌)の増殖やコリバクチンによるDNA損傷を抑える例も報告されています。

マウス実験などで低繊維・高脂肪食だと逆に悪化しやすい、というデータもあります。

ただし、すでに変異を持っている人では「進行を遅らせる・他のヒットを減らす」程度の効果にとどまる可能性が高いです。

つまり、腸活は全体的な大腸がんリスクを下げるためには役立つ可能性があっても、この研究特有のコリバクチン経路に対して過剰に期待しすぎるのは注意が必要です。

やはり本命となるのは「早期介入」でしょう。

研究チームも「ピロリ菌のように検出・除菌で予防できる可能性」に言及しています。

将来的には、乳幼児期のpks+大腸菌の保有チェックや、選択的除去、ワクチン、母子感染の抑制などが現実的なターゲットになるかもしれません。

成人向けの便検査によるリスク評価も期待されています。

この研究特有のコリバクチン経路に対して言えば、現時点では、定期健診を受けて生活習慣の改善を続けるのが現実的な対応だと考えます。

2. 1965年前後で何が変わったのか?

考えられる主な可能性を挙げてみます。

〇抗生物質使用の急増

1960年代〜70年代、日本では国民皆保険の定着や抗生物質の普及で、使用量が大幅に増えました(クロラムフェニコールやテトラサイクリン系などが特に増加)。

抗生物質は腸内細菌叢を撹乱し、pks+大腸菌のような特定の株が定着しやすくなる可能性があります。

幼少期の抗生物質暴露が後のマイクロバイオームに長期影響を与えることは、他の研究でも知られています。

谷内田教授自身も「日本で60〜70年代に抗生物質の使用が急増したことが腸内細菌に影響を及ぼしたとする仮説は考えられる」とコメントしています。

〇食生活の急速な変化

戦後の高度経済成長期に、食物繊維摂取量が急激に減少し(1940年代後半の約30g/日から1965年頃には約16g/日へ)、赤身肉・脂質・加工食品の増加、和食中心からのシフトが起き、腸内環境が「pks+大腸菌が優位になりやすい」方向に変わった可能性があります。

繊維不足は炎症を促し、コリバクチンの作用を強めるとの実験データもあります。

1975年型食事が健康によい!?(都築毅)|#世界一受けたい授業によれば、私たちの食習慣は次のように変化しています。

【1960年の食事】

  • コメの割合が多く、おかずの種類・量が少ない
  • 75年に比べると栄養バランスに劣る

【1975年の食事】

  • 1975年の食事は、果実類、海藻類、魚介類が豊富で、卵や豆類、砂糖なども使われていた。
  • 肉ではなく魚介類からタンパク質や脂質を主に摂取している
  • ワカメやヒジキなどの海藻を多く食べており、食物繊維が豊富にとれていた

【1990年の食事】

  • 乳製品やイモ類が豊富だが、パン食が増えた
  • カロリーの摂取過多

【2005年の食事】

  • コメが少なく、肉類、油脂類が多いのと、丼ものやパスタなどの単品メニューが目立ってきた
  • 油分の取り過ぎ

〇出生・育児環境の変化

出産様式(帝王切開の増加)、母乳哺育率の変動、衛生環境の向上(いわゆる「衛生仮説」的な要素)により、新生児期の腸内細菌定着パターンが変わった可能性があります。

pks+大腸菌は母子垂直感染や早期の環境暴露で乳児に高頻度に定着することが知られており(生後数ヶ月〜2歳でピーク)、この時期の変化が後の変異増加につながったかもしれません。

〇その他の複合要因

都市化・生活様式の変化、畜産での抗生物質使用増加による食品経由の影響、環境中の微生物組成の変化など。これらが単独ではなく、複合的に作用した可能性が高いです。

■ポイント

興味深いのは、pks+大腸菌自体は「正常な乳児マイクロバイオームの一部」としてかなり高頻度に検出される点です。

全員ががんになるわけではなく、「定着のしやすさ・暴露の量・持続期間・宿主側の要因(炎症など)」が鍵になっていると思われます。

1965年頃を境に、これらのバランスが日本人集団で変わった、というのが現在の有力な仮説の一つです。

■まとめ

1)腸活は全体的な腸の健康や他のリスク低減には有効ですが、この研究が示す「幼少期の刷り込み」を考えると、成人後の腸活だけでコリバクチン関連リスクを完全に打ち消すのは難しい可能性が高いです。次世代への影響を考えると、乳幼児期のマイクロバイオームケアや抗生物質の慎重な使用がより重要になるかもしれません。

2)1965年前後は、抗生物質ブームと食の欧米化が重なった転換点で、腸内細菌叢全体が大きく揺らいだ時代だった可能性があります。

研究はまだ進行中で、因果関係の最終的な解明や具体的な予防法は今後の課題です。

【関連記事】

→ 大腸がんの症状(初期症状)チェック はこちら







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

▶ この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

▶ 料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

▶ この街の中心に置いている憲法を読む

桐谷広人さんが前立腺がん+大腸がんを告白…『要精密検査』を甘く見ていた反省から、私たちが学べること




60cmの腸を切除、それでも退院は自転車で…桐谷広人さんが笑って語る「がん闘病」と株主優待フル活用の入院生活!(2026年7月27日、ダイヤモンドオンライン)によれば、2026年1月に前立腺がんが見つかり、その後血栓が見つかって、再検査を受けたところ、ステージ3の大腸がんが見つかり、6月末に大腸がんの手術を行い、抗がん剤治療を行っているそうです。

今回の記事で気になったのは、毎年の健康診断、人間ドックの結果で「要精密検査」と出ていたこと、前立腺から分泌されるタンパク質の量を測る 「PSA」という数値が年々上がっていたこと、以前ポリープで電話連絡があったのに、今回は『要精密検査』だけで放置してしまったこと。

大腸がんになりにくい体質にするための方法|#ガッテン(#NHK)やドランクドラゴン塚地さんにガン化の可能性の高い直径8MMの大腸ポリープが見つかるによれば、大腸ポリープは大腸がんのリスクを高めるリスク要因であると考えられています。

ポリープの大きさが大きいほど大腸がんになるリスクが高くなり、また、ポリープの出来やすい人は大腸がんになるリスクが高いことから、大腸ポリープをいかに小さく、またできにくくするかが大腸がんを予防するうえで大切です。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら

私たちは高齢化に伴う健康や金融リスクを低く見積もりがち!?|英エコノミスト「リアリティ・チェック:健康・経済プラン・QOLが映し出す未来像と現実のギャップ」によれば、人びとは高齢化に伴う健康リスクを低く見積もっているようです。

桐谷さんは健康診断・人間ドックを受けながらも、数値の悪化や過去のサインを見逃してしまったことを反省されており、私自身も他人事だと思わず、改めて肝に銘じました

大腸がんの予防には大腸内視鏡検査による早期発見・早期治療が重要なので、積極的に受けて、早期発見・早期治療を心がけたいですね。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら

■有名人と大腸がん

多くの有名人の方が大腸がんになったことがニュースになっています。

■大腸がんの症状

■大腸がんのリスク要因

■大腸がんの治療・予防

■大腸がんになりにくい体質にするための方法

大腸がんでは、直系の親族に大腸がんの人がいることは、大腸がんのリスク要因とされていますが、生活習慣を改善することによって大腸がんになりにくい体質にすることも可能なのだそうです。

●禁煙

●アルコールを控える

肥満や飲酒なども大腸がんリスクとされています。

大腸がん予防方法・大腸がんの危険度チェックによれば、最もリスクが高いのは飲酒。

飲酒による大腸がんのリスクは一日に日本酒を1合⇒1.4倍、2合⇒2.0倍、3合⇒2.2倍、4合⇒約3倍となっているそうです。

葉酸代謝と大腸腺腫との関連|国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究 |国立がん研究センター

アルコール摂取と大腸腺腫との間には、統計学的有意な正の関連が見られました(傾向性P = 0.04)。非飲酒グループに比べ、週300g以上飲酒している大量飲酒グループでは、大腸腺腫のリスクが約1.5倍上昇していました。

飲酒と大腸がんリスク|科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究|国立がん研究センター

男性では、23-45.9g/日、46-68.9g/日、69-91.9g/日、92g以上/日のグループでまったく飲まないグループよりもそれぞれ1.4倍、2.0倍、2.2倍、3.0倍と、量が増えるほどリスクが高くなりました。1日のアルコール摂取量が15g増えるごとに、大腸がんリスクが約10%増えると推定されます。部位別には、結腸がんでも直腸がんでも同様の傾向が見られました。

女性では、23g以上/日のグループでまったく飲まないグループよりも大腸がんリスクは1.6倍、結腸がんリスクは1.7倍、直腸がんリスクは2.4倍高いという結果でした。男性と同様に、1日のアルコール摂取量が15g増えるごとに、大腸がんリスクが約10%増えると推定されます。

アルコールの摂取量が増えれば増えるほど大腸がんのリスクが増えるという結果が出ています。

葉酸代謝と大腸腺腫との関連|国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究 |国立がん研究センター

アルコールには、葉酸の腸吸収を阻害したり、腎排泄を促進したりする作用があるため、その摂取により体内の葉酸レベルが低下することが知られています。

●運動

運動は、大腸がん予防に非常に効果が高いことがわかっているそうです。

全身運動(水泳・ジョギング・ダンスなど)がおすすめなのだそうです。

※大腸がん危険度チェックによれば、毎日合計60分歩く程度の運動をしていない方が運動不足に該当します。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら

■大腸ポリープ・大腸がんを予防する方法

●葉酸

【みんなの家庭の医学】大腸がん予防に葉酸の多い海苔|10月20日によれば、大腸がんのリスクを高める大腸ポリープのできやすさと葉酸の濃度には関係があるといわれ、血液中の葉酸濃度の値が8ng/ml(ナノグラム)以上あれば、女性なら大腸ポリープの頻度が約2割減、男性なら約5割減するそうです。

→ 葉酸の多い食品 について詳しくはこちら

→ 葉酸の効果|妊娠初期・うつ・動脈硬化・大腸がん について詳しくはこちら

【関連記事】

■葉酸代謝が大腸がんの発がんの初期段階で重要な働きを示している

葉酸代謝と大腸腺腫との関連|多目的コホート研究|国立がん研究センター

大腸発がんには、DNAのメチル化が関わっていると考えられています。適切なDNAメチル化の維持には、葉酸が重要な役割を果たしていることが知ら れています。葉酸は、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)、メチオニン合成酵素(MTR)、メチオニン合成酵素還元酵素(MTRR)などの酵素群とビタミンB2、B6、B12などの補酵素群の働きにより代謝され、DNAのメチル化に必要なメチル基を供給しています(図1)。

葉酸、ビタミンB2、B6、B12摂取については、大腸腺腫との間に統計学的有意な関連は見られませんでした。

大腸がんの発がんにはDNAのメチル化がかかわっていると考えられており、葉酸が重要な働きを果たしていると考えられますが、葉酸、ビタミンB2、B6、B12摂取と大腸線種との間に統計学的な関連は見られなかったようです。

メチオニン合成酵素 の遺伝子多型とアルコール摂取および葉酸摂取との間に交互作用を認めたことは、「葉酸代謝が大腸発がんの初期段階において重要な役割を果たしている」とするこれまでの研究結果を支持するものであると考えられます。

ただ、葉酸代謝が大腸がんの発がんの初期段階で重要な働きを示していることは間違いないようです。

■葉酸濃度が高くても大腸がんリスクが下がるという関連は見られない

血中の葉酸と大腸がん罹患との関係について|多目的コホート研究|国立がん研究センター

これまでの研究では、葉酸が不足している場合に、わずかに大腸がんリスクが高くなることが示されていますが、日本人の多くでは必要な量が摂取されているため、その中での差が見られなかったという可能性があります。また、葉酸は、大腸がんの多段階発がんの初期の段階では予防的に働くにも関わらず、進行した段階ではかえって促進するという可能性を示す研究結果もあります。また、ある特定の遺伝子多型のタイプの人やアルコールを多量に飲む人で、葉酸不足によって大腸がんリスクが高くなるという研究結果もあります。

葉酸と大腸がんの関係については様々な研究が行なわれています。

  • 葉酸が不足している場合に、わずかに大腸がんリスクが高くなる
    しかし、日本人の多くでは必要な量が摂取されているため、その中での差が見られなかったという可能性
  • 葉酸は、大腸がんの多段階発がんの初期の段階では予防的に働くにも関わらず、進行した段階ではかえって促進するという可能性
  • ある特定の遺伝子多型のタイプの人やアルコールを多量に飲む人で、葉酸不足によって大腸がんリスクが高くなる

多目的コホート研究では、男女とも、葉酸濃度が高くなっても、大腸がんリスクが下がるという関連はみられませんでした(図1)。また、飲酒量でグループ分けしても、結腸がんと直腸がんに分けて調べても、どのグループでも男女とも関連は見られませんでした。

国立がん研究センターが発表している多目的コホート研究によれば、葉酸濃度が高くても大腸がんリスクが下がるという関連は見られなかったそうです。

葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、メチオニン摂取と大腸がん罹患との関連について|多目的コホート研究|国立がん研究センター

葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、メチオニンは、生体内でのメチル代謝において、それぞれ異なる役割を担っています。アルコールやアセトアルデヒドはそれらの代謝経路を阻害したり、栄養素を破壊したりすることによって、大腸がん発がんの初期段階である遺伝子の低メチル化を引き起こすと考えられます。

今回、特にビタミンB6と大腸がんの関連が強かった理由として、日本人の一般的な食事からは葉酸やビタミンB12は十分取れるのに対し、ビタミンB6摂取量は不足していることが挙げられます。その最大の摂取源は白米ですが、茶碗1杯(約150g)に約0.03mgのビタミンB6しか含まれていません。ビタミンB6を多く含む食品(魚・ナッツ・穀類等)を積極的に摂取することが、大腸がんの予防につながる可能性があります。

日本人の一般的な食事からは葉酸は十分に摂取できるため、差が見られなかった可能性が考えられます。

→ 大腸がんとは|大腸がんの症状・初期症状・原因・予防 について詳しくはこちら

【追記】







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

▶ この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

▶ 料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

▶ この街の中心に置いている憲法を読む