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宇野常寛「遅いインターネット」×家入一真「やさしいインターネット」「滑らかなお金の流れ」|#ハンプラ




■宇野常寛「遅いインターネット」×家入一真「やさしいインターネット」「滑らかなお金の流れ」|#ハンプラ

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by monophonicgirl(画像:Creative Commons)

〈HANGOUTPLUS〉家入一真×宇野常寛 滑らかなお金の流れは社会をどう変えるのか

2018年2月23日放送の「HANGOUTPLUS」では、誰もがクラウドファンディングによって夢を実現させることのできるプラットフォーム「CAMPFIRE」代表であり、そこで生まれる「個人レベルでつながりを持ち、支え合うコミュニティ」を「小さな経済圏」と呼び、資本主義社会そのものをアップデートすると主張する家入一真さんと宇野常寛さんがインターネットやこれからの社会について議論していました。




■遅いインターネット

宇野常寛より、新年のご挨拶(全文無料公開)

(2018/1/1、Daily PLANETS)

いま世の中を変えるために必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ。

評論家の宇野常寛さんは「遅いインターネット」が必要だと新年のあいさつで述べました。

今のインターネットが早すぎると感じているのは私だけではないようです。

最近起きている出来事の中には、インターネットによる「つながりすぎた世界」の影響が大きいと感じています。

英国のEU離脱後の経済危機をインターネット・SNSが増幅してしまう!?で紹介したインディアナ大学情報科学・コンピューティング学科でソーシャルメディアとマーケットの研究をする科学者ヨハン・ボレンによれば、「マーケットが下落し始めるとすぐに、それは市場のムードに、そして大衆の心情に影響し、次いでそれがオンラインで増幅される」そうです。

恐慌や取り付け騒ぎというのは、人々が抱えている不安や本当かどうかわからない噂などによって、不安の感情が増幅され、社会全体が混乱を起こした状態のわかりやすい例ですが、インターネットやソーシャルメディアはそうした不安を増幅させる可能性があるということです。

英国のEU離脱後の経済危機をインターネット・SNSが増幅してしまう!?で紹介した『つながりすぎた世界 インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか』(著:ウィリアム・H・ダビドウ)によれば、インターネットが推し進める環境では、物事は超高速で進展するため、問題はもっと早くに積み上がり、頻度も高くなるそうです。

つながりすぎた世界

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インターネットが物理的な結びつきをより強固で効率的なものにしている。

この21世紀の情報化社会の神経網は、情報を事実上ただで効率良く運び、かつて独立していたシステム同士を結びつけては相関関係を強めていく。

その結果、社会に存在する正のフィードバックは大幅に増幅される。事故が起きやすく、激しやすく、感染に対して脆弱な社会は、こうして生み出されるのである。

わたしたちはこの流れに適応しなければならない。現行の制度の多くはもっと結びつきの弱い社会を前提に築かれたものだ。

<中略>

カギを握るのはシステム内の正のフィードバックを減らすこと、つまり、結びつきを減じるか断ち切ることだ。

インターネット以前の社会では、情報の伝達スピードが遅いことが「ブレーキ」の役目を果たしていましたが、インターネット後の社会は情報の伝達スピードが速く、今出た情報もすぐに世界に広がってしまう可能性があります。

現代の世の中では、住宅ローンや学校、仕事、引っ越しの物流などの物理的な制限にさらされている。

だから人々が心情などによって分離していくプロセスは、きわめて緩慢に進行していく。

こうした制限が変化のブレーキになる。

だがインターネットのコミュニティではそうしたブレーキが効かない。

コミュニティに賛同するのも容易で、たとえば自分のブログの読み手をSNSのメンバーに加えるなど、リンクをクリックするだけでよい。

人間には自分と似た人間とつながりやすい傾向があるだけに、こうしたITのおかげで結びつきははるかに早く進行する。

そして、より甚大な結果をもたらす。(ニコラス・G・カー)

言い換えれば、インターネットは思考感染を促すということだ。

もし仮にスクープを出した側に誤りがあったとしても、インターネットのコミュニティではブレーキが効かないために、また、人間は自分と似た人間とつながりやすいために、思考感染を促してしまう恐れがあるのです。

ブレーキのような存在がなくなってしまった現代では、自らの判断力がそのブレーキの役目を果たす必要がありますが、世界的にパニックに陥った状況で、冷静な判断をするというのは大変難しいことだと思います。

そして、人々は無自覚に誤っているかもしれないフェイクニュースのような情報を拡散していることも分かっています。

現代人は読まない…。リンク先を見ずにリツイートしまくる人が大半であると判明

(2016/6/22、ギズモード)

リツイートがリツイートをよんでニュースは拡散しても、そもそもツイートに含まれているリンクから元のニュース記事へジャンプして内容を確かめたりしない人が、全体の59%にも達することが示されています。

米国のコロンビア大学、フランスのFrench National Instituteのコンピュータ・サイエンス共同研究チーが、Twitterで拡散されていく、CNN、New York Times、Huffington Post、BBC、Fox Newsへのリンク(短縮URL)が含まれたツイートを分析し、どのようにニュースがSNSの力で拡散されていくかの研究調査を実施したところ、元記事のリンクを読まずにリツイートしている人が全体の59%をしめていることがわかったそうです。

同研究チームのArnaud Legoutさんはこのようなコメントを発表しています。

記事を読むよりもシェアするだけで満足する人が増えている。これこそが現代の情報活用の典型的なかたちだ。ただ要約か、その要約の要約を見ただけで、それ以上は深く調べようともせず、人々の思考が形成されていく。

無自覚にシェアした記事で無意識のうちに思考が形成されていくというのは怖いことですね。

流言蜚語|寺田寅彦

流言蜚語

最初の火花に相当する流言の「源」がなければ、流言蜚語は成立しない事は勿論であるが、もしもそれを次へ次へと受け次ぎ取り次ぐべき媒質が存在しなければ「伝播」は起らない。従っていわゆる流言が流言として成立し得ないで、その場限りに立ち消えになってしまう事も明白である。

私たちは知らず知らずの間に間違っているかもしれない情報を拡散してしまい、その情報をもとに判断してしまう人もいるのかもしれません。

真実を見極める目を持つことが重要だといわれますが、これほど情報にあふれた世界では大変難しいことだと思います。

「魔王」(著:伊坂幸太郎)の中に

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『おまえ達のやっていることは検索であって、思索ではない-。』

という台詞があります。

自分自身もこの台詞を読んだ後、何かわからないことがあったらすぐに検索してしまい、その情報が本当にあっているのかどうか考えることなくわかったような気になっているなと思わされました。

情報を知ることは大事ですが、その情報を選別し、そして自分の考えにまでするのには、長い時間がかかります。

「自分の中に毒を持て」(著:岡本太郎)ではこのように書かれています。

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人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。

情報にあふれる世の中だからこそ、情報を収集することに追われるのではなくて、反対に情報を捨てていくことがこれからの時代を生きる上では大事なことなのではないでしょうか。

評論家の宇野常寛さんが提案した「遅いインターネット」のように、情報を自分で咀嚼し、お腹に入れて、それでもいいと思ったものを出すようなスピード感にしていくことが必要なのかもしれません。

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■Twitterのインフルエンサー問題

漠然と頭に浮かんでいた人も多いと思いますが、現在のプラットフォームビジネスにはTwitter有名人であるインフルエンサーが大きな影響を及ぼしています。

Twitterで多くのフォロワーを抱えているインフルエンサーが次々と新しいプラットフォーム(note、VALU、Timebank、Voicyなど)の上位を占めてしまう現象です。

実際に行動力があるからこそそうしたプラットフォームで人気になり、そうした行動をすることがインフルエンサーとしての影響力を大きくしているのでしょうから、ここではいい悪いは別にします。

ただ、この議論の中でも起きていたように、インターネットは本来それを望んでいたのかということです。

みんなが好きなように集まって自分たちのコミュニティを作り上げるのを望んでいたはずなのに、なぜかインフルエンサーに寄っていってしまうということが起きてしまっているんですよね。

家入一真さんはプラットフォームからランキングや新着をなくしたほうがよいという意見を言っていましたが、脳の報酬系の話から考えると、プラットフォームのランキングや新着に表示されるという報酬が得られることによって、ドーパミンが出てハマってしまう設計がないと、ユーザーに使ってもらえるサービスとして成り立たずに、プラットフォームになりえないのかもしれません。

■なめらかなお金の流れ

●お金を持っていない人へのフィンテックが大事

最近のインターネットビジネスでは、「ZOZOツケ払い」(2カ月間内で都合の良い時に支払いができる決済手段)や「メルカリ月イチ払い」(月次で購入した商品の代金をまとめて翌月に支払うことのできる)、「CASH」(モノをスマホで撮影し、食事入金される質屋アプリ)、給料前払いサービスのような今やりたい・買いたいことを我慢することなく、将来入ってくるであろうお金を前借りしたり、モノを現金化する仕組みが増えてきていると感じます。

【関連記事】

こうした流れを受けて、日本のフィンテックは「貧テック」だと揶揄する(読み方「やゆ」意味:からかう)人もいますが、ただそういう人は現状で苦しんでいる人のことが見えていないのかもしれません。

例えば、給与前払いサービスとは?|給料前借りアプリが注目のきっかけ!?人手不足で悩む2018年以降は給与前払いサービスが求人に応募するポイントになる?

で紹介した大手求人サイトの検索キーワードによれば、常に日本全国で「日払い 」「週払い」がベスト10にランクインするほどなのだそうで、求職者にとっては、「前払い」「日払い」「週払い」ということは重要な求人募集の要素となっているそうです。

奨学金による貧困問題|大学生の仕送りは減少傾向、アルバイトの就労率・収入金額の増加、返済に対する不安もによれば、仕送り10万円以上をもらっている学生は減少傾向にあり、アルバイトの就労率・収入金額ともに増加傾向にあり、アルバイトを増やすことで暮らし向きを良くしようとしているのがわかります。

つまり、それだけ多くの人が現在の金融の仕組みからはじき出されているということではないでしょうか?

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●社会包摂(インクルージョン)

「OPTION B」(著:シェリル・サンドバーグ/アダム・グラント)では、日本(特に女性)の貧困に関する記述があります。

日本では6人に1人が相対的に貧困とされる。女性とひとり親の場合、割合はさらに高い。

<中略>

世界全体で2億5800万人いる寡婦のうち、1億1500万人以上が貧困のなかで暮らしている。女性の賃金格差をなくすことが重要な理由は、ここにもある。

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【参考リンク】

貧困率の年次推移|グラフでみる世帯の状況|平成26年国民生活基礎調査(平成25年)の結果から|厚生労働省
貧困率の年次推移|グラフでみる世帯の状況|平成26年国民生活基礎調査(平成25年)の結果から|厚生労働省

参考画像:貧困率の年次推移|グラフでみる世帯の状況|平成26年国民生活基礎調査(平成25年)の結果から|厚生労働省|スクリーンショット

平成24年相対的貧困率は16.1%となっています。

子どもの貧困率|相対的貧困率の国際比較(2010年)|平成26年版子ども・若者白書|内閣府
子どもの貧困率|相対的貧困率の国際比較(2010年)|平成26年版子ども・若者白書|内閣府

参考画像:子どもの貧困|平成26年版子ども・若者白書|内閣府|スクリーンショット

子どもの貧困|平成26年版子ども・若者白書|内閣府

OECDによると,我が国の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34か国中10番目に高く,OECD平均を上回っている。子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い

内閣府の「平成26年版子ども・若者白書」で紹介されているOECDのデータによれば、ひとり親家庭など大人1人で子どもを育てている家庭が貧困に陥っていることがわかります。

以上のデータを参考にすると、日本における特徴としては、子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高いという点です。

人によっては貧困は自己責任ではないかという人もいるかもしれませんが、重要なのは、人は離婚や死別、病気などのアクシデントが重なれば誰でも貧困に陥る可能性があるということです。

【参考リンク】

ひとり親家庭など大人1人で子どもを育てている家庭には母子家庭が多いというデータがあり、そのデータを踏まえて考えると、アクシデントでひとり親になってしまった母子家庭がなぜ貧困に陥りやすいのか、その原因を探り、どのような対策を行なっていく必要があるのかを考えていく必要があると思います。

【関連記事】

そこで、役立つと考えられるのが「インクルージョン」という考え方です。

「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたの周りの世界はやさしくなる!?によれば、「インクルージョン(Inclusion)」とは、包含・含有・包括性・包摂・受け入れるといった意味を持ち、誰も排除せず、様々な人を受け入れる考え方です。

【関連記事】

「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)

ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか

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貧しい地域の人たちにとって、銀行口座を持つための最低残高や、決済の最低支払い額、システム手数料といった壁はあまりに高すぎる。金融機関のインフラにコストがかかりすぎるせいで、貧しい人たちのささやかな経済活動は犠牲になっているのだ。p66

今の仕組みではある程度のまとまった金額を貸さないと企業としては合わない計算であるため、貧しい人々向けに少額の貸し出しなどをするマイクロファイナンス(小規模金融)の分野は手つかずのままでいるのではないでしょうか。

技術の最先端にいる人たちだけを考慮していたのでは、分散ネットワークの力を十分に活用できない。もっと厳しい利用環境も考慮してあらゆる側面をデザインすることが必要だ。インフラが十分に整っていない地域の人たちをも含めて設計する時、初めて本当の意味でのインクルージョンが可能になる。p69

金融の仕組みから外れた人が一定層いて、その人たちがさらに悪い状況にならないための手段として何らかのテクノロジーで解決するというのは考えるべきではないでしょうか。

そして、そうした問題を解決するための根底にある考えとして「インクルージョン」があればサービスのあり方が変わってくると思います。

●生きていくために必要なお金をできるだけ下げていくことと新しい稼ぎ方

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

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「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」(著:ケヴィン・ケリー)では「シェアリング(Sharing)」という項目の中で、未来のライフスタイルの中で複数の自動支払いが受けられる世界が描かれています。

例えば、エンジニアの人は設計したものが別のものに採用・応用されると支払いが流れてきて、そのものが売れれば売れるほど少額決済(マイクロペイメント)が増えていきます。

また、写真や様々な素材も同様に、コピーされたり、利用されると、少額のお金が入ってくるのです。

これからは「富の再分配」を考えるのではなく、複数の自動支払いを受けるサービスが求められるような時代になっていくのではないでしょうか。

そう「富の再分配」から「富の分配」という考え方への転換です。

そのためには、マイクロペイメント(送金コストがほぼゼロ)、創作物(写真や文章、コードなど)に個人の認証情報を埋め込みトラッキング(追跡)可能にすること、支払いに関しては、自動化するために、当事者間の契約条件を再現し、取引の実行や支払いのための価値の移動を(ブロックチェーン上で)自動的に遂行するスマートコントラクト(契約の自動化)、ブロックチェーンテクノロジーの発展が必要になってくるでしょう。

【追記(2018/9/4)】

「ライジングセラー」「オーナーズ」の小さな経済圏が社会を変えていく!で取り上げた「ライジングセラー」や「オーナーズ」という考え方に代表されるように、これまでの社会の問題点であったり、ひずみのようなモノであったものから生まれたプロダクトやサービスを提供する個人や企業が生まれています。

こうした流れは「遅いインターネット」「やさしいインターネット」「滑らかなお金の流れ」に通じるものがあるのではないでしょうか?

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医師からの信頼が高いメディアはインターネット!|医師の9割が「ネット検索で自分の症状に合った医療情報を得るのは容易ではない」|医師の9割が今後の発信についても消極的




■医師からの信頼が高いメディアはインターネット!|医師の9割が「ネット検索で自分の症状に合った医療情報を得るのは容易ではない」|医師の9割が今後の発信についても消極的

Coffee and smartphone

by Mattias Frenne(画像:Creative Commons)

各メディアの医療・健康情報は総合的に見て信頼できるか?
各メディアの医療・健康情報は総合的に見て信頼できるか?

参考画像:医師の9割が「ネットで自分に合った医療情報を得るのは容易ではない」、8割が「ネット検索より医療従事者に聞いてほしい」と回答~オンライン医療相談「first call」が医師530人へ調査~(2018/1/23、メドピア)|スクリーンショット

医師の9割が「ネットで自分に合った医療情報を得るのは容易ではない」、8割が「ネット検索より医療従事者に聞いてほしい」と回答~オンライン医療相談「first call」が医師530人へ調査~

(2018/1/23、メドピア)

1.「テレビ」「雑誌」「新聞」「インターネット」で発信される医療・健康情報の内、医師からの信頼が最も高いのは「インターネット」であった。誤った情報が混在している問題はあるものの、情報を見極めるリテラシーがあれば参考になる情報を取得できると評価。

2.一方、医師の9割が、一般の人がインターネット検索で自分の症状に合った正しい情報にたどり着くのは「容易ではない」という考えを示した。同じ症状でも対象疾患は無数にあり、玉石混交の情報の中から自分に合う正しい情報を判断するのは困難と指摘。

3.また、医師の8割が「自身の症状についてはインターネット検索よりもまずは医師など医療従事者に直接聞いてほしい」との考えを示し、3割の医師が「インターネット上の情報で自己診断・処置をした患者の対応に困った経験がある」と回答した。

4.Googleのアップデートによる情報の改善可能性については、「分からない」という医師が7割と大半を占めた。また、高く評価されていく方針の「医師からの情報発信」に関しては、医師の9割が「(現状)発信していなく、今後も発信するつもりはない」と回答した。

メドピアの連結子会社で、医師によるオンライン医療相談サービス「first call」を運営しているMediplatが、「医療の専門家である医師たちが、インターネット上の医療・健康情報についてどのような考えを持っているのか」に関して、医師530人を対象にアンケート調査によれば、「インターネット」における医療・健康情報は、他メディアよりも信頼性は高いと医師が評価している一方で、「インターネット検索」で自分に合った医療情報にたどり着くのは「容易ではない」と答えています。

ご自身は、インターネット上で一般向けに医療・健康に関する情報を発信していますか?
ご自身は、インターネット上で一般向けに医療・健康に関する情報を発信していますか?

参考画像:医師の9割が「ネットで自分に合った医療情報を得るのは容易ではない」、8割が「ネット検索より医療従事者に聞いてほしい」と回答~オンライン医療相談「first call」が医師530人へ調査~(2018/1/23、メドピア)|スクリーンショット

大手メディアの情報を優先するGoogleと個人のつながりを優先するFacebook|メディアのような影響力を持つ個人のインフルエンサーの価値が高まる?で紹介した医療や健康に関連する検索結果の改善について(2017/12/6、Googleウェブマスター向けブログ)によれば、Googleは日本語検索におけるページの評価方法をアップデートし、医療機関や大手メディアから提供される情報を上位表示しやすい検索結果にしましたが、今回の調査によれば、医師の7割はこれによってインターネット上の医療・健康情報が改善されるかどうかは「分からない」と回答し、Googleの検索表示において優先される方針の医師からの情報に関して、「自身で医療・健康情報を発信している医師」はわずか6%に留まり、9割の医師が今後の発信についても消極的であることがわかりました。

このことを考えると、一部の医療機関や大手メディアが発信する情報の影響力が強くなりそうですね。







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あなたがネット(LINE・Facebook・Twitter)に書いた感情が伝染して世界を変えてしまうかもしれない!?

【目次】




■あなたがネット(LINE・Facebook・Twitter)に書いた感情が伝染して世界を変えてしまうかもしれない!?

Whatsapp

by Marco Verch(画像:Creative Commons)

ネットに吐き出された感情、伝染しやすい

(2014/3/13、WSJ)

米国の1億人以上の人々と、彼らが交流サイト(SNS)フェイスブックへ投稿した10億件のメッセージを対象にした新たな研究によると、ネット上で表わされた感情は人から人へと伝染する可能性があることが分かった。

さらに、前向きなメッセージは後ろ向きなメッセージより、ネット上の他人の感情に影響をもたらす傾向がずっと高いことも分かった。カリフォルニア大学サンディエゴ校、イェール大学、それにフェイスブックの研究者のチームは12日、フェイスブックのソーシャル・ネットワークに関するこれまでで最大規模とも言える研究の結果を公表した。この結果は科学誌「PLOS ONE」の電子版に掲載された。

ネット上に出された感情は人から人へと伝染するそうです。

これまでも、肥満が伝染したり、幸福感が伝染したり、恋愛行動も伝染するということを取り上げてきました。




ケース1.肥満は伝染する

肥満はなぜ「伝染」するのか:実験結果

アメリカ・ハーバード大の研究によれば、肥満は伝染する!?そうなのです。

その研究によれば、配偶者が太ってきた場合、同居する相手も太る確率は37%上昇するそうです。

また、友人が太っている場合、太る確率は57%上昇するそうです。

そして、これは近くにいることは関係なく、遠くに離れていても、親しい人がいれば、肥満は伝染するそうです。

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ケース2.幸福感は伝染する

自分の周りの人を幸せにすること=自分が幸せになる方法

米研究機関Framingham Heart Studyの研究によると、個人の幸福感は社会的なつながりを通して拡散されていくことが分かっている。

「感情の伝染」のようなもので、幸せも病気のごとく伝染していくのだ。

また、人の幸福は、その人の友達の友達の友達まで拡がっていくそうです。

ケース3.恋愛行動も伝染する

スウェーデンの女子大生のセックスパートナーの数が10年前に比べ2倍に増加。性感染症患者も比例して上昇。

「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」(著 ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー)にこのことに関連したことが紹介されています。

性的に積極的な方が仲間に好かれると信じている若者は、愛情を伴わない気軽なセックスをしがちである。

ネットワーク内で他人とつながる経路が多ければ多いほど、ネットワーク内を流れるものの影響を受けやすくなるのである。

また、今回紹介した本によれば、避妊具の使用といったさまざまな恋愛行動や性行為は、自分が属するネットワーク内でそうした行為がなされているかどうかに強い影響を受けるそうです。

■まとめ

今回の記事における重要なポイントは2点。

一つは、ネット上に吐き出された感情は人から人へと伝染すること。

もう一つは、前向きなメッセージは後ろ向きなメッセージより、ネット上の他人の感情に影響をもたらす傾向がずっと高いこと。

インターネットの普及によって、人と人はつながりやすくなりました。

FACEBOOK、世界中の4.7人目は友達の友達という調査結果によれば、Facebook内では、人々は「六次の隔たり」より少ない「四次の隔たり」でつながっているそうです。

「六次の隔たり(six degrees of separation)」とは、世界中の任意の2人は、赤の他人であっても知人の知人というような知り合いの連鎖の中で5人程度の仲介者によって間接的につながっているという考え。

それが、現代では、FacebookをはじめとするSNSによって、よりつながりやすくなっています。

つまり、今回の研究結果と合わせて考えてみると、自分が出した前向きなメッセージは遠く離れた誰かの感情を動かすことができるということですね。

まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」とか、たった1匹の蝶のはばたきが竜巻を起こしてしまうきっかけとなった(かもしれない)「バタフライ効果」のように、自分の感情が世界の運命をも変えてしまうこともあるかもしれません。




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P.S.

自撮り(SELFIE)を活用してダイエットの成功率を上げる!?でも紹介しましたが、人は、近くに住んでいる人よりも社会的な絆が強い人の影響を受けやすいのだそうです。

自分の周りの人を幸せにすること=自分が幸せになる方法で紹介した「スタンフォードの自分を変える教室」(著:ケリー・マクゴニガル)にはこう書かれています。

私たちが愛情や尊敬や親しみを抱いている人たちのことを考えるときは、私たちの脳はその人たちのことを「自分とは違うもの」としてとらえるのではなく、自分と同じものとみなします。

自分が大事だと思っている人は、「自分」の中に含まれているからこそ、社会的絆の強い人の影響を受けやすいと考えるのが自然ですね。

つまり、自分が大事だと思っている人は「自分」の中に含まれているのですから、自分のまわりにいる大事な人を幸せにするということは、つまり、「自分」を幸せにしているということですよね。




ヤフー、「Yahoo!検索」で国立がん研究センター提供のがん情報を掲載開始|検索エンジンの未来は「ディレクトリ型」or「ナレッジグラフ型」?

参考画像:ヤフー、検索結果画面で国立がん研究センター提供の情報を掲載開始 (2018/1/30、日本経済新聞)|スクリーンショット




■ヤフー、「Yahoo!検索」で国立がん研究センター提供のがん情報を掲載開始!

ヤフー、検索結果画面で国立がん研究センター提供の情報を掲載開始

(2018/1/30、日本経済新聞)

国立がん研究センターとヤフーは連携し、本日よりスマホ版「Yahoo!検索」の検索結果画面で国立がん研究センター提供のがん関連情報の掲載を開始しました。

医師からの信頼が高いメディアはインターネット!|医師の9割が「ネット検索で自分の症状に合った医療情報を得るのは容易ではない」|医師の9割が今後の発信についても消極的で紹介した医師530人を対象にアンケート調査によれば、「医療の専門家である医師たちが、インターネット上の医療・健康情報についてどのような考えを持っているのか」に関して、「インターネット」における医療・健康情報は、他メディアよりも信頼性は高いと医師が評価している一方で、「インターネット検索」で自分に合った医療情報にたどり着くのは「容易ではない」と答えています。

インターネットは他のメディアよりも信頼性が高いと医師は評価していても、その中から正しい情報にたどり着くのは難しいということから、ヤフーは国立がん研究センターが提供するがん関連情報の掲載を行なったのだと考えられます。




■検索エンジンの未来は「ディレクトリ型」or「ナレッジグラフ型」?

大手メディアの情報を優先するGoogleと個人のつながりを優先するFacebook|メディアのような影響力を持つ個人のインフルエンサーの価値が高まる?で紹介しましたが、最近、Googleの検索結果の表示とFacebookのニュースフィードの変更に大きな変化が起きています。

Googleは日本語検索におけるページの評価方法をアップデートし、医療機関や大手メディアから提供される情報を上位表示しやすい検索結果にしました。

Facebookはニュースを投稿するメディアよりも親しい友人や家族のコンテンツを優先して表示するというアルゴリズムに変更しました。

2017年は情報操作やフェイクニュースなど情報の信頼性が話題になりましたが、GoogleとFacebookという大手IT企業のアプローチが全く違い、Googleは個人ではなく、大手メディアや医療機関などで信頼性の高さを担保しようとし、Facebookは大手メディアではなく、親しい友人や家族といった個人の信頼関係・つながりで信頼性の高さを担保しようとしているのです。

今回ヤフーが行なった決定を考えると、以前のようなディレクトリ型検索エンジンとなるか、グーグルが取り組んでいるナレッジグラフ型(Google検索での病気に関する検索の結果に、症状や治療法についての情報をまとめたナレッジグラフのカード)に検索エンジンは変わっていくのかもしれません。

あなたが考えるこれからの「検索(検索エンジン)」はどんなものですか?







【関連記事】

ビットコイン取引所「コインチェック」の騒動から学ぶインターネットによる「つながりすぎた世界」の影響の大きさ|寺田寅彦「流言蜚語」を読もう!

Web

by Martyn Wright(画像:Creative Commons)




■ビットコイン取引所「コインチェック」の騒動から学ぶインターネットによる「つながりすぎた世界」の影響の大きさ

ビットコイン取引所「コインチェック」がNEMの入金・出金・売買停止、不正引き出し(セキュリティ対策問題)がニュースで取り上げられており、MtGOX(マウントゴックス)事件を彷彿させるニュースのため、Twitter上では「コインチェック」がトレンド一位になるなど騒動になっているようです。

マウントゴックス破綻 ビットコイン114億円消失

(2014/2/28、日本経済新聞)

現在は、コインチェック側からの発表がないため状況はわかりかねますが、ただ今回の騒動の起き方は、インターネットによる「つながりすぎた世界」の影響が大きいように感じます。

英国のEU離脱後の経済危機をインターネット・SNSが増幅してしまう!?で紹介したインディアナ大学情報科学・コンピューティング学科でソーシャルメディアとマーケットの研究をする科学者ヨハン・ボレンによれば、「マーケットが下落し始めるとすぐに、それは市場のムードに、そして大衆の心情に影響し、次いでそれがオンラインで増幅される」そうです。

恐慌や取り付け騒ぎというのは、人々が抱えている不安や本当かどうかわからない噂などによって、不安の感情が増幅され、社会全体が混乱を起こした状態のわかりやすい例ですが、インターネットやソーシャルメディアはそうした不安を増幅させる可能性があるということです。

英国のEU離脱後の経済危機をインターネット・SNSが増幅してしまう!?で紹介した『つながりすぎた世界 インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか』(著:ウィリアム・H・ダビドウ)によれば、インターネットが推し進める環境では、物事は超高速で進展するため、問題はもっと早くに積み上がり、頻度も高くなるそうです。

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その結果、社会に存在する正のフィードバックは大幅に増幅される。事故が起きやすく、激しやすく、感染に対して脆弱な社会は、こうして生み出されるのである。

わたしたちはこの流れに適応しなければならない。現行の制度の多くはもっと結びつきの弱い社会を前提に築かれたものだ。

<中略>

カギを握るのはシステム内の正のフィードバックを減らすこと、つまり、結びつきを減じるか断ち切ることだ。

インターネット以前の社会では、情報の伝達スピードが遅いことが「ブレーキ」の役目を果たしていましたが、インターネット後の社会は情報の伝達スピードが速く、今出た情報もすぐに世界に広がってしまう可能性があります。

現代の世の中では、住宅ローンや学校、仕事、引っ越しの物流などの物理的な制限にさらされている。

だから人々が心情などによって分離していくプロセスは、きわめて緩慢に進行していく。

こうした制限が変化のブレーキになる。

だがインターネットのコミュニティではそうしたブレーキが効かない。

コミュニティに賛同するのも容易で、たとえば自分のブログの読み手をSNSのメンバーに加えるなど、リンクをクリックするだけでよい。

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そして、より甚大な結果をもたらす。(ニコラス・G・カー)

言い換えれば、インターネットは思考感染を促すということだ。

もし仮にスクープを出した側に誤りがあったとしても、インターネットのコミュニティではブレーキが効かないために、また、人間は自分と似た人間とつながりやすいために、思考感染を促してしまう恐れがあるのです。

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そして、人々は無自覚に誤っているかもしれないフェイクニュースのような情報を拡散していることも分かっています。

現代人は読まない…。リンク先を見ずにリツイートしまくる人が大半であると判明

(2016/6/22、ギズモード)

リツイートがリツイートをよんでニュースは拡散しても、そもそもツイートに含まれているリンクから元のニュース記事へジャンプして内容を確かめたりしない人が、全体の59%にも達することが示されています。

米国のコロンビア大学、フランスのFrench National Instituteのコンピュータ・サイエンス共同研究チーが、Twitterで拡散されていく、CNN、New York Times、Huffington Post、BBC、Fox Newsへのリンク(短縮URL)が含まれたツイートを分析し、どのようにニュースがSNSの力で拡散されていくかの研究調査を実施したところ、元記事のリンクを読まずにリツイートしている人が全体の59%をしめていることがわかったそうです。

同研究チームのArnaud Legoutさんはこのようなコメントを発表しています。

記事を読むよりもシェアするだけで満足する人が増えている。これこそが現代の情報活用の典型的なかたちだ。ただ要約か、その要約の要約を見ただけで、それ以上は深く調べようともせず、人々の思考が形成されていく。

無自覚にシェアした記事で無意識のうちに思考が形成されていくというのは怖いことですね。




■まとめ

流言蜚語|寺田寅彦

流言蜚語

最初の火花に相当する流言の「源」がなければ、流言蜚語は成立しない事は勿論であるが、もしもそれを次へ次へと受け次ぎ取り次ぐべき媒質が存在しなければ「伝播」は起らない。従っていわゆる流言が流言として成立し得ないで、その場限りに立ち消えになってしまう事も明白である。

私たちは知らず知らずの間に間違っているかもしれない情報を拡散してしまい、その情報をもとに判断してしまう人もいるのかもしれません。

真実を見極める目を持つことが重要だといわれますが、これほど情報にあふれた世界では大変難しいことだと思います。

「魔王」(著:伊坂幸太郎)の中に

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『おまえ達のやっていることは検索であって、思索ではない-。』

という台詞があります。

自分自身もこの台詞を読んだ後、何かわからないことがあったらすぐに検索してしまい、その情報が本当にあっているのかどうか考えることなくわかったような気になっているなと思わされました。

情報を知ることは大事ですが、その情報を選別し、そして自分の考えにまでするのには、長い時間がかかります。

「自分の中に毒を持て」(著:岡本太郎)ではこのように書かれています。

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人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。

情報にあふれる世の中だからこそ、情報を収集することに追われるのではなくて、反対に情報を捨てていくことがこれからの時代を生きる上では大事なことなのではないでしょうか。

宇野常寛より、新年のご挨拶(全文無料公開)

(2018/1/1、Daily PLANETS)

いま世の中を変えるために必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ。

評論家の宇野常寛さんは「遅いインターネット」が必要だと新年のあいさつで述べましたが、情報を自分で咀嚼し、お腹に入れて、それでもいいと思ったものを出すようなスピード感にしていくことが必要なのかもしれません。







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