認知症の発症リスクが高い人
医学誌『The Lancet』の新たな研究では、2020年の調査結果が修正され、視力の低下とLDLコレステロール値の上昇という2つの新たなリスク要因が特定され、リスク要因の総数は14となりました。
そして、認知症の45%は遅らせたり軽減したりできる可能性があることが明らかになり、これは2020年の調査結果から5%増加しています。
【子供・青年期】
1)子供たちに初等・中等教育を提供する 5%
【中年期】
2)難聴への対策(補聴器など) 7%
3)外傷性脳損傷を防ぐ(頭部のけがを防ぐ) 3%
4)高血圧対策 2%
5)過度のアルコール摂取を避ける 1%
6)肥満対策 1%
【晩年期】
7)禁煙 2%
8)うつ病予防 3%
9)社会的交流・社会的接触を増やして社会的孤立を防ぐ 5%
10)大気汚染を減らす 3%
11)運動不足を解消する 2%
12)糖尿病予防 2%
【新たに追加された2つの要因】
13)視力低下 2%
14)LDLコレステロール値の高さ 7%
国立長寿医療研究センターなどのチームによれば、次のような人が認知症の発症リスクが高いそうです。
- 脳卒中の経験がある人
- 糖尿病や心臓病の持病がある人
- 握力が弱い人
- 学校教育が9年以下の人
- うつ傾向がある人
- 難聴の人
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・認知症の発症リスクが高いのは、脳卒中の経験がある人、糖尿病や心臓病の持病がある人、握力が弱い人、うつ傾向がある人
糖尿病と認知症の関係
糖尿病になると、認知症の発症リスクが2倍高くなる!?で紹介した東京大の植木浩二郎特任教授によれば、糖尿病になると認知症の発症リスクが2倍高くなるそうです。
駆け込みドクター 5月17日|認知症|認知症チェック・認知症予防にアマニ油・デジタル認知症によれば、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病のリスクの高さと認知症(アルツハイマー病)には関係があり、アルツハイマー病の発症リスクは、糖尿病だと2倍、高血圧だと2倍、脂質異常症だと3倍になると紹介していました。
血糖値の高さが脳に影響を及ぼす可能性があることが、2つの研究で示されています。
●ミズーリ州セントルイスのワシントン大学の研究者らは、マウスの実験で血糖値を異常に高い値に引き上げたところ、脳内のアミロイドベータの生産も増加し、双方に何らかの相関性があることを突き止めた。
●ピッツバーグ大学で実施された約180人の中年の成人を対象とした試験では インスリン依存型(1型)糖尿病の患者は、この疾患を持たない被験者と比べ、はるかに多くの脳内病変が認められ、認知機能は低下していた。
なぜ血糖値が高いとアミロイドβが生産されアルツハイマーのリスクが高まるのでしょうか。
インスリンには血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を調節する働きがありますが、インスリンはアミロイドから脳を守り、ニューロン(神経単位)と記憶の形成のつながりを改善するといわれています。
セントルイスのワシントン大学のマウスの実験で医師のデビッド・ホルツマン氏は、糖が脳内のニューロンに刺激を与え、さらにアミロイドが作られると示唆しています。
アルツハイマー病は、アミロイドβタンパクが脳にたまることで、神経細胞が死滅し、萎縮し、認知機能が低下することから起きると考えられています。
つまり、インスリンの分泌が低下したり、生成されなくなるということは、アミロイドから脳を守ることができなくなり、認知機能が低下してしまうと考えられます。
2つの研究は決定的なものではないので、一つの説として受け止めるべきですが、血糖値をコントロールすることが認知症予防につながる可能性があるというのは覚えておいた方がよさそうです。
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・なぜ高血糖でも低血糖でも脳の認知機能が低下するのか?
握力と認知症の関係
握力は健康のバロメーター!?|握力低下は心臓発作・脳卒中リスク増加に関連で紹介したカナダ・マクマスター大学(McMaster University)が主導した国際研究チームは、握力が健康のバロメーターになる可能性についての研究を行ない、その結果、握力が低下すると、心臓発作や脳卒中の発症リスクの増加に関係していることがわかったそうです。
握力が強いほど長生き?で紹介した厚生労働省研究班(研究代表者=熊谷秋三・九州大教授)の約20年間にわたる追跡調査によれば、握力が強いほど長生きする傾向があり、また循環器病発症リスクも低かったそうです。
うつ病と認知症の関係
うつ病性仮性認知症|たけしのみんなの家庭の医学 9月1日で紹介したうつ病性仮性認知症は、高齢者うつ病から認知症のような物忘れ症状などを発症する病気です。
うつ病性仮性認知症は、前頭葉の血流が下がっていることが原因。
前頭葉の血流を増やすためには、有酸素運動(散歩など)+知的刺激(川柳など)。
国立長寿医療研究センターでは、頭を使いながら有酸素運動することを勧めているそうです。
国立長寿医療研究センターではMCIと診断された高齢者約300人に対し、週1回90分の運動を実践するプログラムを10カ月間実施したところ、認知機能や言語機能が維持されており、また脳の特定部位の萎縮傾向がなかったそうです。
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