クエン酸サイクルとは?
クエン酸サイクルとは、摂取した食べ物をエネルギーに変える仕組みの一つで、クエン酸について説明するときには、決して欠かすことのできない重要なメカニズムです。
では、クエン酸サイクルとはどんなものなのでしょうか。
摂取した栄養物は唾液や胃液により、デンプンはブドウ糖に、たんぱく質はアミノ酸に、脂質はグリセリンと脂肪酸に、というようにより小さな物質に分解(消化)されてから体内に吸収されるようになっています。
簡単にいえば、体内に取り入れた栄養物がさらに分解され、そのときに放出される熱をエネルギーとして利用することで、私達人間を含む全ての生物は生命活動を行なっているのです。
このようなエネルギーの産生は、まずはじめに解糖系と呼ばれる「嫌気性系路」で行なわれます。
この嫌気性系路では、酸素を必要としないでエネルギーを生み出すことができます。
私達が反射的に行動するときや急激な運動をする際には、この系路で得られるエネルギーを利用しているのです。
そして、この嫌気性系路では、ブドウ糖が乳酸や焦性ブドウ酸にまで分解されます。
これらは疲労感をもたらす物質で、嫌気性系路において分解された乳酸が筋肉に蓄積していくことが、疲労の原因というわけです。
この系路の次に働くのが、「好気性系路」です。
好気性系路では、酸素を利用することによって大量のエネルギーを効率よく生み出しています。
エネルギーの産生量を比較してみると、エネルギーは、ブドウ糖などの分解によってATP(アデノシン3リン酸;エネルギー貯蔵物質)を生成することで得られます。
嫌気性系路ではブドウ糖1に対してATP2、一方、好気性系路では38ものATPを生成しています。
ATPの生成によって得られるエネルギーは、運動エネルギーにもなるほか、細胞の働きを活性化させたり、酵素などの体内物質の合成を促したりといった、生体活動のさまざまな部分に関わっていますから、この好気性系路がうまく機能して多くのエネルギーを作り出してくれることが、生体維持には必要不可欠なのです。
そして、この好気性系路の要になるのが、クエン酸サイクルなのです。
嫌気性系路で分解されてできた焦性ブドウ酸が、クエン酸サイクルに取り込まれ、クエン酸をはじめとする8種類の酸に次々と変化しながら分解されて、エネルギーを生み出していきます。
しかも、この分解は極めて効率よく行なわれ、最終的に残るのは炭酸ガスと水だけです。
炭酸ガスは呼吸によって肺から身体の外に排出され、水は汗や尿となって捨てられます。
こうした酸の循環をクエン酸サイクルと呼んでいます。
このメカニズムを明らかにしたのがイギリスのクレブス博士で、その功績によりクレブス博士は1953年にノーベル賞を受賞しました。
|